門出かどで)” の例文
「遅い。もう遅い。われわれの同胞はあの通りの大激昂だいげきこうだ。君は……君は気の毒だが、われわれの門出かどでの血祭だ。ひッひッひッひッ」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おふきはだれよりも先に半蔵の門出かどでを見送りに来て、もはや本陣の囲炉裏ばたのところで旅じたくをしている下男の佐吉を見つけた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小ジェリーは、こう言って父親の門出かどでを祝うと、例の床几に腰を下して、父親の噛んでいた藁に継承的な興味を持ち始め、それから考え込んだ。
得手えてとやら、お門出かどでは上々吉です。が、野分のあとを見てくると、東へ行くほど、荒れがひどいようですが」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
如何に感嘆されても称讃されても藪睨やぶにらみの感嘆や色盲的の称讃では甘受する事が出来ないで、先ず出発の門出かどでからして不満足を感ぜざるを得なかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
泉のく所へ来た。姉は樏子かれいけに添えてある木のまりを出して、清水を汲んだ。「これがお前の門出かどでを祝うお酒だよ」
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
心のうちで自分の目の前にいるこの一対いっついの老夫婦と、結婚してからまだ一年とたない、云わば新生活の門出かどでにある彼ら二人とを比較して見なければならなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大事な門出かどでと見たから、お靜は火打箱を持つて追つかけて來て、チヨン/\とかねを鳴らしました。
それは、なつわりにちかづいた、あるでありました。むすめは、薬売くすりうりの小父おじさんにつれられて、みんなとわかれて、門出かどでをしたのであります。母親ははおやなみだをもって見送みおくりました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども、これは永久に甲府を去るの門出かどでではない、自分は能登守に教えられた通り、これより程遠からぬ松里まつさと村の恵林寺へ落ちて、暫らくそこに隠匿かくまってもらうのである。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その時かれは二十二歳であったが、郷党みな彼が前途ゆくすえの成功をぼくしてその門出かどでを祝した。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
只〻門出かどでの勢ひに引きかへて、戻足もどりあしの打ちしおれたる樣、さすがに遠路のつかれとも思はれず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
さてはと、それからは私がその娘に出逢う門出かどでだった誕生日に、鈴見すずみの橋の上まで来ては、こちらを拝んで帰り帰りしたですが、母がなくなりました翌年から、東京へ修行に参って
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自由を得る門出かどでに、と、あたしは寒い戦慄のもとに、親のもとを離れる第一歩を覚悟した。昔の人が厄年だという十九歳の十二月の末に、親の家から他家へ嫁入りとなって家を出た。
そうして父は、叔母に命じて赤飯を炊かせ、賢の出世の門出かどでを祝った。無論、自分はいつもよりはたくさんの酒をのんで喜んだ。そしてまた、例の通り系図の前に座らせてのお説教だ。
涙を隠し愁懼しゅうくを包み、いさぎよく彼の門出かどでを送りしごとく彼の遠逝えんせいを送らんのみと。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「これで門出かどでさかずきはすんだ、出かけよう、油断して痴漢しれものうちもらすな」
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ハヽヽヽヽ、時局と女とは何の関係もあるまい、戦争いくさ門出かどで祝言しうげんするなど云ふことあるぢやないか、松島も久しい鰥暮やもめくらしぢや、可哀さうぢやに早くして遣れ——それに一体、山木、誰ぢや、媒酌ばいしやくは」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
蒲「どうしても敵討かたきうち門出かどでだ。互に交す茶盃ちやさかづきか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
行先ゆくさきはさぞや門出かどでの初ざくら
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
カビ博士は、僕にきせた潜航服をもう一度めんみつに点検して、異常のないのをたしかめた後、僕に門出かどで祝福しゅくふくをのべてくれた。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
民家は一斉に業をめて軒ばをきよめ、かりそめのみ事にも気をつかってその門出かどでを見送り、兵は旗幟きし馬印うまじるしを護って陣列を作り、将は威武を飾って、一鼓六足いっころくそく
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはこれまで抑え抑えて来た慾望のいましめを解く第一歩を踏み出そうと云う、門出かどでのよろこびの意味で、tête-à-têteテタテト はそれには第一要件になっていた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
いよいよ、門出かどでがきました。かれは、停車場ていしゃじょうへのみちいそぎつつ、ふりかえって、一にちとしてなかったことのない、山々やまやまをながめました。くもていて、けんみねだけが、かくれていました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「今日の門出かどでに、これをそなたにつかわします」
たるぞ、軍陣ぐんぢん門出かどでさい
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
門出かどでなり
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「それならまたとないいお門出かどで、その折には、藤夜叉が一生のお願いを、どうぞおかなえ下さいませ」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし隊の勇ましい門出かどで余所よそに見て、ひとり岡山にとゞまるに忍びないから、し戦闘が始まつたら、微力ながら応援いたさうと思つて、同じ街道を進んでゐるのだと云つた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
軍陣の門出かどで
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
「せっかく、大死一番して、かように生れかわって、修業の第一歩に向おうと、心を固めております門出かどで
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さていよいよ九郎右衛門、宇平の二人が門出かどでをしようとしたが、二人共敵の顔を識らない。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「いや、あとは明日の夜、冥途の月を見て飲もうよ。門出かどでに不覚な二日酔いをしてはなるまい。ははは」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『承知しました。先生の詩を御覧になったら、猶更、感激なさるでしょう。お話をうかがえば、これが生死のお別れになるかも知れぬ門出かどで、ぜひお渡しいたしましょう』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊勢方面の味方へ聯絡れんらくをとるにしても、果たして、その急援が間にあうかどうか。——長兵衛は心もとない気もしたが、叔父の滝川一益は、かれの門出かどでに、こういっていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武士ぶしにかえった門出かどでに、小文治こぶんじは、母の亡骸なきがらをしずかなうみの底へ水葬すいそうにするつもりと見える。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「久しいのう。……それにしても、勅勘ちょっかん流人るにん門出かどでへ、よう参ることができたの」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おっしゃる通り、天下の大事へのり出そうとする門出かどで、もう、人殺しと道連れになろうが、泥棒と合宿あいやどになろうが、決して、小さなことに、目明し根性は出さねえことにいたします」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(良人は、辺土の北国へ、念仏をひろめ賜うために立って今朝は教化きょうげの旅の門出かどで——)と信じているので、そこに悲惨らしい影や、流人的るにんてき傷心いたみとか悶えなどは、見られないからであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一個の人命如きは、あしたあって夕べも知れぬが、はかるに、わが軍の門出かどでは、天もその名分をよみし、前途を味方し給うものと思われるぞ。まず、腹いっぱい、ときをあげて、この発足を天下に告げよう
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この大戦の門出かどでに、余りに涙することばかり多いので、近側の大将は
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお」と鴻山も、門出かどでへ気味よくうなずいたが
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(されば、戦場へ打立つ門出かどで
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お門出かどでのお祝いに」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
門出かどでの祝いに」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)