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鑢
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やすり
ふりがな文庫
“
鑢
(
やすり
)” の例文
「左樣、
鑢
(
やすり
)
一梃の
根
(
こん
)
仕事だから、先づ一生懸命に打ち込んでも、延べにして一千日——つまり一人の力では三年くらゐかゝりませう」
銭形平次捕物控:184 御時計師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この果実を植える時砥石あるいは
鑢
(
やすり
)
でその頭を磨り破るか、あるいは
焙烙
(
ほうらく
)
で炒って置くときは、水が滲み込み易い故早く芽が出ます。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
『師匠。……すみません。これから、自分の愚鈍へも
鑢
(
やすり
)
をかけて、
猶
(
なお
)
、一生懸命にやりますから、どうか、もっと叱って下さいまし』
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
針金が手の平に食い入って、
鑢
(
やすり
)
の様に骨をこすった。畸形児は
半
(
なかば
)
も滑らぬ内に、痛さに耐え難くなった。もう針金を握る力がなかった。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ソコデ江戸に
這入
(
はいっ
)
たとき、今思えば芝の
田町
(
たまち
)
、処も覚えて居る、江戸に這入て往来の右側の家で、小僧が
鋸
(
のこぎり
)
の
鑢
(
やすり
)
の目を
叩
(
たたい
)
て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
針金を接いだり、
鑢
(
やすり
)
をかけたりするような「休養」がなくては、普通の人だったら、とても長い研究生活などには耐えられないのであろう。
米粒の中の仏様
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
さまでの苦痛を
堪
(
こら
)
えたな。——あとでお澄の片頬に、畳の目が
鑢
(
やすり
)
のようについた。横顔で
突
(
つっ
)
ぷして歯をくいしばったのである。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そしてそれを
捩
(
ね
)
ぢ、叩き、ひつかき、
鑢
(
やすり
)
をかける。絹糸は一つ一つに負けて擦りきれてゆく。穴が出来る。蝶は外に出るのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
たとへばシチーリアの牡牛が(こは
鑢
(
やすり
)
をもて己を造れる者の歎きをその
初聲
(
はつごゑ
)
となせる牛なり、またかくなせるや好し) 七—九
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
治療室からはギリギリと
鑢
(
やすり
)
を擦る音が聞えました。さうして時々ガチヤリ/\といふ金属性の道具の触れ合ふ音がします。
美智子と歯痛
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
爪を鋏で切りっぱなせば
角
(
かど
)
があって方々へ引っかかる。この角をなくするために
鑢
(
やすり
)
というものがあるが、おいそれと常に間に合うものではない。
白銅貨の効用
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
「櫻材をもつて模型をつくり數多の
鑢
(
やすり
)
と
鏨
(
たがね
)
をあつらへ、銅又は眞鍮を用ひて、長方形大小各種の種字を作りだし」云々。
光をかかぐる人々
(旧字旧仮名)
/
徳永直
(著)
まぎれもなく金属を細かくたたく音や、
鑢
(
やすり
)
をかける響きや、そうかと思うと何をするのかわからないが、金と金との触れ合う音が断続して伝わる。
早耳三次捕物聞書:03 浮世芝居女看板
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
爪の間にかくせるほどの
鑢
(
やすり
)
で、鉄窓のボールトをすり切ろうとしているときの通りの、寸分異わない熱心さ——常識で判断出来ない忍耐と、努力
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それから硝子戸をあけて格子を見ました。果たしてそのうちの二本が
鑢
(
やすり
)
で切られ、左右へ折りまげてありました。
暗夜の格闘
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
彼は妻の枕頭で注射器をとりだして、アンプルを截ろうとしたが、いつも使う
鑢
(
やすり
)
がふと見あたらなくなった。
遥かな旅
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
べつだんに詰責するらしい様子もなく、吉本は微笑を含みながら言うのであったが、永峯にはなにかしら
鑢
(
やすり
)
にかけられるようなものが身内を走る感じだった。
街頭の偽映鏡
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
路地の突当りにある
鍍金屋
(
めっきや
)
の
鑢
(
やすり
)
の響もしない。みんな日比谷か上野へでも出掛けたにちがいない。花火の音につれて耳をすますとかすかに人の叫ぶ声も聞える。
花火
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ねえ、お前さん、あたしゃもう我慢ができないんだから。
昨夜
(
ゆうべ
)
はとろっともしないんだよ。布団に
噛
(
か
)
みついていたのさ。もうたくさん。
鑢
(
やすり
)
を持っといでよ。歯を
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
大工は
鉢巻
(
はちま
)
きをはじめるし、
木挽
(
こび
)
きは
鑢
(
やすり
)
の目を
舐
(
な
)
めてみるのであった。今までのところは
鳶
(
とび
)
と大工と木挽きであった。やがて左官や屋根屋が必要になるだろう。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
しばらくは父の
押木
(
おしぎ
)
の上に一ぱいに散らかっている
鉄槌
(
かなづち
)
だの、
鏨
(
たがね
)
だの、
鑢
(
やすり
)
だのを私にいじらせてくれた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
工程は鉄に最初
鑢
(
やすり
)
目をつけ、銀の針金または
延金
(
のべがね
)
を、上から
叩
(
たた
)
きつつ入れる。そうして多くはこれに黒漆をかけてみがき出すのである。古きもの例外なく美しい。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
こちらの武士は、耳を着けていたところより一尺ばかり下の透間へ手を当てると、その透間からスーッと抜き取ったのは、
柄
(
え
)
のない一挺の
鑢
(
やすり
)
のようなものであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
教室で卵が割られる場合、特殊技能をもった技師君がいて、彼が
鑢
(
やすり
)
を用いて実に正確に卵を割る。
オフ・ア・ラ・コック・ファンタスティーク:――空想半熟卵――
(新字新仮名)
/
森於菟
(著)
細君は小さい、
可哀
(
かはい
)
らしい手を振つて、さも厭だと云ふ様子をして、己の前を遮つた。たつた今ブラシで掃除して
鑢
(
やすり
)
を掛けた爪には、薄赤い血が透き通つて見えてゐる。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
やはり、以前の所に
天幕
(
テント
)
をはっていて、みるも哀れな死を遂げているのだ。氷海嘯の端に当ったらしく
鑢
(
やすり
)
で切ったように、左腕、左膝から下が無残にもなくなっている。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
押
(
おさ
)
える必要上左手の指の
爪
(
つめ
)
の
生
(
は
)
え加減を気にするものだが必ず三日目ごとに爪を
剪
(
き
)
らせ
鑢
(
やすり
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
鮫の皮は荒いが、鱏の皮は
鑢
(
やすり
)
そっくりで、この辺の原住民が木目を出して木肌を滑らかにするために使うが、それで顔や胸を一と撫でされると、いっぺんに皮膚が剥げて赤味がでる。
ノア
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
尤
(
もっと
)
もこういう顔は世間にざらにあって、これを仕上げるのに造物主は大して苦心も払わず、
鑢
(
やすり
)
だの
錐
(
きり
)
だのといったような小道具は一つも使わないで、ただおおざっぱに刻んだだけだ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
鳶
(
とび
)
のように、虚空へ分け入ったのは、私たちである、あれから五夜で、私たちは海抜八千尺ほどの、甲州アルプスへ来た、山の上には多年雪に氷に磨り減らされて、
鑢
(
やすり
)
のように尖った岩が
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
はっきりと大きくは
唸
(
うな
)
ったものの、すぐとその後から、ゴウゴウゴウと
何処
(
どこ
)
かの無電がしっきりなく邪魔をしかけて、それからの義太夫も
太棹
(
ふと
)
も聴いてる方で頭を
鑢
(
やすり
)
でこすられるようで苦しかった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
沢べりに大鋸を控えて、眼鏡をかけた老爺が
鑢
(
やすり
)
を使っていた。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
覆面も 麻藥も
鑢
(
やすり
)
も
匕首
(
あひくち
)
も 七つ道具はそろつてゐる
駱駝の瘤にまたがつて
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
槌
(
つち
)
に
鑢
(
やすり
)
の
音
(
ね
)
もかすれ、言葉悲しき
木
(
き
)
の
函
(
はこ
)
よ
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
七日
(
なぬか
)
にて
鑢
(
やすり
)
に削り取られ
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
鑢
(
やすり
)
の音よ、だみ声よ
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
時計一つ
鑢
(
やすり
)
で刻み出すのに人間の力を二年かけなければならぬとは、何んといふ馬鹿々々しくも氣の遠くなる
根仕事
(
こんしごと
)
でせう。
銭形平次捕物控:184 御時計師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
鑢
(
やすり
)
かけして、
相造
(
すがたづく
)
りが終ると、
焼入
(
やきい
)
れにかかった。弟子に教えることは
懇切
(
こんせつ
)
だった。だが、清人は清人だけの才分しかなかった。何か、気に触れた時である。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
孫六の専用した古式の
鑢
(
やすり
)
を使いこなす域にまで到達したものがなかったために、やすりの箱は埃をかぶったまま長く開かれずついに彼の死後こんにちにいたるまで
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
あとは実験室の片隅で
鑢
(
やすり
)
がけや
盤陀
(
はんだ
)
付けで小さい実験装置の部分品を作ったり、漫談に花を咲かせたり、時にはビーカーで湯を
沸
(
わか
)
して紅茶を
淹
(
い
)
れて飲んだりしていた。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
と申すは
只
(
ただ
)
の鑢は
鋼鉄
(
はがね
)
を
斯
(
こ
)
うして斯う遣れば私の手にもヲシ/\出来るが、
鋸
(
のこぎり
)
鑢
(
やすり
)
ばかりは
六
(
むず
)
かしい。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ソレガトウダンスノ胼胝ノオ蔭デスッカリ穢クナッチャッタンデ、トウヲ止メテカラ一生懸命モトノヨウニシヨウト思ッテ、毎日々々軽石ダノ
鑢
(
やすり
)
ダノイロンナモノデ
擦
(
こす
)
ッタノヨ。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
直ちにポケットから
鑢
(
やすり
)
を取り出して先端をこすると、間もなくビュンという音がした。
鼻に基く殺人
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
鉄片の先のトンがった方を電気
鑢
(
やすり
)
へかまして、モーターを入れると、ツイーッ!
ズラかった信吉
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼は、親羊を抱き上げ、
檻
(
おり
)
の中へ、そいつを別に入れる。
頸
(
くび
)
へ
藁
(
わら
)
のネクタイを結びつける。逃げた時にわかるようにだ。仔羊は、その後について行った。牝羊は
鑢
(
やすり
)
のような音を立てて食っている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
その賤しい一筋の思いが、彼をして
行方
(
ゆくえ
)
定めぬ旅に立たせる。背の荷にしょい込んだ幾枚かの
大鋸
(
おおのこ
)
小鋸と何十丁かの
鑢
(
やすり
)
が、彼の生命であり財産でもあった。拓けて行く蝦夷は彼らの
餌食
(
えじき
)
であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
よろしいか、長さは二尺四寸、ちと長過ぎる故、
摺上物
(
すりあげもの
)
に致そうかと思ったけれど、これほどの名物に
鑢
(
やすり
)
を入れるのも
勿体
(
もったい
)
なき故、このまま拵えをつけた、この
地鉄
(
じがね
)
の細かに
冴
(
さ
)
えた板目の波、肌の
潤
(
うるお
)
い
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
槌
(
つち
)
に
鑢
(
やすり
)
の
音
(
ね
)
もかすれ、言葉悲しき
木
(
き
)
の
函
(
はこ
)
よ
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
血の
香
(
か
)
滴る鋸を
鑢
(
やすり
)
の
刃
(
は
)
もて
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
但し竹針も程度によりけりで、突端が潰れるまで使ってはレコードの溝に
鑢
(
やすり
)
をかけるような結果になって勿論良くない。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
“鑢(やすり)”の解説
やすり(鑢、鈩、英:File )は、おもに金属の研削を行う手動工具である。
やすりの語源は、「鏃(やじり)をする」の「やする」が「ヤスリ」になった説と、ますますきれいに磨くという意味の「弥磨(いやすり)」が「ヤスリ」になった説がある。
(出典:Wikipedia)
鑢
漢検1級
部首:⾦
23画
“鑢”を含む語句
鑢山
爪鑢
鑢屑
横鑢
洋鑢
紙鑢
鑢場
鑢屋
鑢様
鑢目
鑢紙
鑢鞴戸
雁木鑢