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躊躇
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ちゅうちょ
ふりがな文庫
“
躊躇
(
ちゅうちょ
)” の例文
さすがにそれであったならどんなことになろう、夫人はどんなに恥じて苦しがるであろうとお思いになると
躊躇
(
ちゅうちょ
)
もされるのであって
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
老栓はなおも
躊躇
(
ちゅうちょ
)
していると、黒い人は提灯を引ッたくって
幌
(
ほろ
)
を下げ、その中へ饅頭を詰めて老栓の手に渡し、同時に銀貨を
引掴
(
ひっつか
)
んで
薬
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
著者もし今日に生きて、ローンツリー氏やボウレイ氏の著作を見るに及びたらば、おそらくその言を改むるに
躊躇
(
ちゅうちょ
)
せざるべしと思う。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
秀麿は少し返事に
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するらしく見えた。「それは舟の中でも色々考えてみましたが、どうも当分手が
著
(
つ
)
けられそうもないのです。」
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
断然なんの
躊躇
(
ちゅうちょ
)
もなく決定されていた。『おれが生きているうちは、こんな結婚をさせるもんか。ルージン氏なんかくそ食らえだ!』
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
▼ もっと見る
広巳は
瓦盃
(
かわらけ
)
を手にした。瓦盃には酒がすこしあった。広巳はそれを飲んで
盃洗
(
はいせん
)
ですすごうとしたが、すすぐものがないので
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「こんなことをいうのはまだ早すぎはしないかと思いますのですけれども、事情がこれ以上
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するのを許さないようですから……」
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
長い間の
悔悛
(
かいしゅん
)
と克己との後、みごとにはじめられた
贖罪
(
しょくざい
)
の生活の最中に、かくも恐ろしき事情に直面しても少しも
躊躇
(
ちゅうちょ
)
することなく
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「お延の返事はここにある」といって、
綺麗
(
きれい
)
に持って来た金を彼に渡すつもりでいた彼は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。その代り
話頭
(
わとう
)
を前へ押し戻した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すると、
流石
(
さすが
)
に女は、自分の夫の恥を打ち明けた上で、名前まで知らせる事は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しないではいられませんでした。思いまどった女は
気の毒な奥様
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
すると僕はそこにロップの粗悪な寝顔を見て、廻れ右をすると、彼女の腹部に片足で立上って、そのまま
躊躇
(
ちゅうちょ
)
なく外へ飛び出した。
飛行機から墜ちるまで
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
数学者はなんの
躊躇
(
ちゅうちょ
)
もなく常識を投げ出して論理を取る。物理学者はたとえいやいやながらでもこの例にならわなければならない。
相対性原理側面観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
躊躇
(
ちゅうちょ
)
なくくるりと廻れ右して家へ引きかえし、そうしてきちんと指輪をはめて、出直し、やあ、お待ちどおさま、と澄ましていました。
兄たち
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
嘉三郎は、途中、しばらく
躊躇
(
ちゅうちょ
)
してから、
米問屋
(
こめどんや
)
に這入った。ちょうど折よく主人は家にいた。そして嘉三郎はすぐ茶の間へ通された。
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
ガラッ八はほんの少しばかり
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しました。泣き濡れてはいるものの、この時不思議そうに顔を挙げたお糸は、全く美し過ぎたのです。
銭形平次捕物控:060 蝉丸の香炉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
最後に死人の身体にある多くの生傷について刑事の質問があった。主人は非常に
躊躇
(
ちゅうちょ
)
して居ったが、やっと自分がつけたのだと答えた。
D坂の殺人事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは、最後に残った山口の分の一つに、彼の
痩
(
や
)
せた青白い手が
躊躇
(
ちゅうちょ
)
なくのびたのを見とどけたとき、ほとんど、感謝にまで成長した。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
その結果は予期の通りで別にこれぞと思う発見もなく、それかと言って事件に関係のないことを保証することも
躊躇
(
ちゅうちょ
)
されたのです。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私は何が何んだかよく分からないながら、子供特有の順応性で、そういうすべてのものをそのまま何んの
躊躇
(
ちゅうちょ
)
もせずに受け入れた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
腕を差し上げて、女はやや
躊躇
(
ちゅうちょ
)
の色が見えたが、それも束の間、キリキリッと歯噛みをすると一緒に振り上げた刃がキラリッと光った。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
駅前まで来た時、加世子はもう一度ホテルへ帰り父に
挨拶
(
あいさつ
)
したものか、それともこのまま富士見へ帰ったものかと、ちょっと
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それが、ふと、わたしの胸にあったものですから、ツイ、わたしはこの神主様の前に、一切を打明けることを
躊躇
(
ちゅうちょ
)
いたしましたのです。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼は行くのを
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。
窖
(
あなぐら
)
へ行こうとしていたオイレル老人が、彼を見て呼びかけた。彼は足を返した。夢をみたような気がした。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
真淵歿せしは蕪村五十四歳の時、ほぼその時を同じゅうしたれば、和歌にして取るべくは蕪村はこれを取るに
躊躇
(
ちゅうちょ
)
せざりしならん。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
(走り行き岩かどに頭を打ちつけんとして
躊躇
(
ちゅうちょ
)
す)あゝ死ね! 死ね! (地に伏す)あゝだめだ。これでもわしは死ねないのか。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
それは見張りをしているのだ。が、私は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
する。なぜなら、その首が動かないのである。間違えて、木の根を撃っても
馬鹿
(
ばか
)
馬鹿しい。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それかと云って、自分の恋人の父を、
情
(
すげ
)
なく返す気にもなれなかった。彼女が
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しているのを見ると、子爵は
不審
(
いぶかし
)
そうに
訊
(
き
)
いた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
が、何だか其では
聊
(
いささ
)
か相済まぬような気もして何となく
躊躇
(
ちゅうちょ
)
せられる一方で、
矢張
(
やっぱり
)
何だか
切
(
しきり
)
に……こう……敬意を表したくて
耐
(
たま
)
らない。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
当代の
噺家
(
はなしか
)
の中では、私は文楽と志ん生とを
躊躇
(
ちゅうちょ
)
なく最高位におきたい。文楽は菊五郎、志ん生は吉右衛門、まさしくそういえると思う。
随筆 寄席囃子
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
これをお
聞
(
き
)
きになると、
女皇
(
じょおう
)
はだれの
心
(
こころ
)
も
同
(
おな
)
じものだと
思
(
おも
)
われて、いまはなんの
躊躇
(
ちゅうちょ
)
もなく、
位
(
くらい
)
を
妹
(
いもうと
)
に
譲
(
ゆず
)
ることになさいました。
黒い塔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
美味
(
うま
)
そうにみえ
喰
(
た
)
べたいと思うと、堂々と入っていって柿を一つ下さいと云った、女が抱きたくなれば
躊躇
(
ちゅうちょ
)
なく湯の山へでかけていった。
初夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
オースチン師は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
もせず、あるだけの食物へ
箸
(
はし
)
をつけた。若い二人もその後について、ようやく空腹を充たさせたのであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼が
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するのを見た
長老
(
ルバック
)
の従者が、怒って棒切を投げつけ、彼の左の目を傷けた。
已
(
や
)
むを得ず、彼は鱶の泳いでいる水の中に跳び込んだ。
南島譚:01 幸福
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
が、相手は編笠をかぶったまま、騒ぐ気色もなく左近を見て、「うろたえ者め。人違いをするな。」と叱りつけた。左近は思わず
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
何の
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するところもなく、言下に答えたキッパリとした彼女の返辞に、私は多少の驚きを感じないではいられませんでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
女は馬車を雇う事を男に勧めようかと
一寸
(
ちょっと
)
考えたが、それを口に出す事を
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。ゆっくり歩けば
好
(
い
)
いと思ったからである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
そこに見られる
冴
(
さ
)
えたる美、
躊躇
(
ちゅうちょ
)
なき勢い、走れる筆、悉くが
狐疑
(
こぎ
)
なき仕事の現れではないか。懐疑に強い者は、信仰に弱い。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それはいつも
躊躇
(
ちゅうちょ
)
して空しく歳月を過ごしてしまう人のために、ともかく十七字を並べてご覧になることをおすすめいたしたのであります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
しかし私は単に時間的順序によってのみ区別されるメトロノームの相継いで鳴る一つ一つの音を個性と考えることを
躊躇
(
ちゅうちょ
)
する。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
「まだ
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するか。いかん。せっかく充填した圧搾空気が効力を失い、浮揚力を失ってしまうじゃないか。それ、もっと圧搾空気を
填
(
こ
)
めろ」
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
しばらく
二人
(
ふたり
)
は黙って寺町の通りを歩いて行った。そのうちに、縫助は何か言い出そうとして、すこし
躊躇
(
ちゅうちょ
)
して、また始めた。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
わが輩も返事に
窮
(
きゅう
)
し
躊躇
(
ちゅうちょ
)
していると、三銭
切手
(
きって
)
を封入せる以上返事をうながす権利があると
催促
(
さいそく
)
されたことも一、二度でない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
月明の
渚
(
なぎさ
)
を霊山ヶ崎まで歩いたが、途中でひたひたの稲瀬川を渡る時は、多少
躊躇
(
ちゅうちょ
)
している翠子を、無理におぶって渡った。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
その
中
(
うち
)
に東京行の列車が着きましたので、ほかの人達はみんな乗込みました。わたくしも乗らうとして又
俄
(
にわか
)
に
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しました。
停車場の少女:――「近代異妖編」
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「見る値打ちがありますかね?」と、Kは
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しながらきいたが、いっしょに行ってみたいという欲望を大いに感じていた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
わが邦人民たるものはただこの好機会に
躊躇
(
ちゅうちょ
)
することなく、遅疑することなく、
攫取
(
かくしゅ
)
するにあるのみ。しかして首を転じて四囲の光景を看よ。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
この覚悟ある以上は、いかなる手が助力を求めて差し出されようとも、何の
躊躇
(
ちゅうちょ
)
もなくそれを充たすことができるのである。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
彼は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。金銭食糧に困窮している彼らの立場を、あらためて人々の前で口にし、討議しなければならないのだろうか。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
しかしこの
褐色飲料
(
かっしょくいんりょう
)
は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
もなく受け入れてしまった。午後の喫茶は、今や西洋の社会における重要な役をつとめている。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
私の寡読のせいかも知れませぬが、あのような描写を見せられた事は、今までに一度もなかった事を、私は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
せずにお答えする事が出来ます。
江戸川乱歩氏に対する私の感想
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“躊躇”の意味
《名詞》
躊 躇(ちゅうちょ)
決心がつかず、迷うこと。
《動詞》
躊 躇 する(ちゅうちょ-する)
決心がつかず、迷う。
(出典:Wiktionary)
躊
漢検1級
部首:⾜
21画
躇
漢検1級
部首:⾜
19画
“躊躇”で始まる語句
躊躇逡巡