覆面ふくめん)” の例文
は既に頭巾と覆面ふくめんとの事に付きて言ひしが如く遮光器の存在そんざいに關しても當時たうじ氣候きかう寒冷かんれいなりしならんとの事を想像さうざうするなり。(續出)
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
二人の姿は朦朧もうろうと見えた。二人ながら覆面ふくめんをし、目立たない衣裳をまとっていた。一人は大小を差していた。しかし一人は丸腰であった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
顔に何か不具な箇所かしょがあるとかで、いつも黒い覆面ふくめんをかぶっていて、誰にも素顔を見せたことがないという、極端に内気なお嬢さんです。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
散りぢりにびあい、叫びあいながら、柳姿りゅうし覆面ふくめん三、四十人、すすきとそよぐやいばをさげて、長屋門ながやもん番士ばんしり、いっきに奥へはしりった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
船長が、とつおいつ、覆面ふくめんの敵に対してこののちどうしようかと、思案しあんにくれていたとき、そばにいた古谷局長が、暗闇くらやみの中から声をかけた。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
皆んなで止めるのも聽かず、小僧の龜吉をつれて横町の風呂へ行つたまでは宜かつたが、歸りには覆面ふくめんの曲者三人に取卷かれ、命辛々から/″\逃げ出した
そこに西洋人の人形が一つずあたりをうかがっている。覆面ふくめんをかけているのを見ると、この室へ忍びこんだ盗人ぬすびとらしい。室の隅には金庫が一つ。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「主はだれ、むらさきの覆面ふくめん二十三騎くつわをならべて……タララララタ、タララララタ、プカプカプカララララララ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
開て二しなを取出し越前守の前に出す越前守は覆面ふくめんもせず先墨附を拜見するに將軍の直筆に相違なく亦短刀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
火事装束しょうぞく! おのれッ何やつ? トトト覆面ふくめんを? ウヌ! 覆面をがぬかッ! ツウッ……!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その完成の日には、私も覆面ふくめんをとって私の住所姓名を明らかにして、貴下とお逢いしたいと思いますが、ただ今は、はるかに声援をお送りするだけで止そうと思います。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
そのとき黒装束くろせうぞく覆面ふくめんした怪物くわいぶつが澤村路之助丈えとめぬいたまくうらからあらはれいでヽあか毛布けつとをたれて、姫君ひめぎみ死骸しがいをば金泥きんでいふすまのうらへといていつてしまつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
忠作は素早く奥の間に駈け込んで、証文や在金ありがねの類を詰め込んで用心していた葛籠つづらの始末にかかると、いつのまに入って来たか覆面ふくめんの大の男が二人、突立っていました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大戦当時のフランスの密偵局に、ドイツのスパイ団をむこうにまわして智慧競ちえくらべを演じ、さんざん悩ました辣腕らつわん家に「第二号」と称する覆面ふくめんの士のあったことはあまりに有名だ。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
覆面ふくめん盗賊とうぞく今暁こんぎょう渋谷の××銀行を襲う、行金こうきん強奪ごうだつして逃走す
香水紳士 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
これで覆面ふくめんの男たちの奇妙な会合は散会になった。
鉄の規律 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
とつぜんふたりの覆面ふくめんをした怪漢かいかんに呼びとめられ、ピストルをつきつけられて、有無をいわせず、しばりあげられてしまったというのです。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
咲耶子さくやこも、覆面ふくめんなのを幸いに一刀をもって、伊那丸の身をまもろうとしたが、さえぎる槍や大刀にたたみかけられ、はなればなれに斬りむすぶ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨夜は丁度下女を葛西かさいの在所に歸して、たつた一人淋しく過してゐると、夜中過ぎに、天窓をコジあけて、覆面ふくめんの大男が入つて來たといふのです。
二に二個においては兩眼のしたに小點數個或は横の並行線數個すうこ有るが故に覆面ふくめんの性質は殊に著名ちよめいに表示されたり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
これは、いつも覆面ふくめんをしている頭目を、エックス線で照らして、その正体を見てやろうという陰謀であった。そして思いがけなく、早くその機会がきたのだ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
からかさした一人の武士が静々と町を歩いていた。と、その後から覆面ふくめんの武士が、慕うように追って行った。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
神変夢想流しんぺんむそうりゅうの道場を破って、巧みに大の乾雲丸を持ち出したことから、その後のいきさつ、覆面ふくめん火事装束の一団の出現、坤竜の諏訪栄三郎に蒲生泰軒という思わぬ助けがついていて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
覆面ふくめんの人、突然二人ふたりあひだに立ち現る。
売文問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
顔には、目だけかくす覆面ふくめんをして、高い鼻の下に、ピンとはねたひげが、はえています。西洋の悪魔のような顔です。
魔法博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
皆んなで止めるのも聴かず、小僧の亀吉をつれて横町の風呂へ行ったまではよかったが、帰りには覆面ふくめんの曲者三人に取巻かれ、命からがら逃げ出した
白駒しろこま手綱たづなをひきだしたとき、はじめて月に照らされた覆面ふくめんのまなざしを見た伊那丸は、思わずおおきなこえで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういい捨てて、頭目はうしろのれ幕をわけて、その奥に姿を消した。異様な背高のっぽの覆面ふくめん巨人だ。牛丸少年は、感心して、頭目のうしろ姿を見送った。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
覆面ふくめんを着けたる形と見ゆる土偶五六個有り。覆面はみなかほ全部ぜんぶを覆ふ假面形のものにして、粗布そふを以てつくられたるが如し。製作の精なる方よりはじめて是等土偶の出所及び所在しよざい列記れつきすれば次の如し。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
覆面ふくめんはして居りましたが、顏はムキ出して、髯の跡の青々とした三十男で、眉の濃い、眼に愛嬌のある——人を馬鹿にしたやうに、笑ひをふくんで居りました。
ピッタリと身についた黒いシャツとズボン下をはき、顔には黒い覆面ふくめんをした、クモそっくりの人間です。
妖人ゴング (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だから、わしにはどうも、あの四馬剣尺という覆面ふくめんの頭目が何者だか、さっぱり見当がつかんのじゃ
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その三人とすれ違った覆面ふくめんの侍があった。ふりかえったが、やり過ごして、また
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その晩戌刻半いつゝはん頃、生暖かいのに覆面ふくめんをした一人の武家が、三人の供をつれて釜屋の入口に立ちました。
顔も黒い覆面ふくめんで、かくしていた。暗闇の中へ影法師かげぼうしみたいなやつが、ヌーッとはいってきたんだよ。
夜光人間 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
従って、ここには一人の珍客ちんきゃくがお出席になっていることと拝察する。皆さん、覆面ふくめんをとっていただきたい。その代り現倶楽部員は即刻、解任されたものと御承知願いたい
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼の先には、覆面ふくめんをしたお蝶の姿が見えました。そして、そこは例の切支丹坂きりしたんざか——
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人にあうときは、かならずそのみょうな黒ビロードの覆面ふくめんをつけることにしているのだそうです。
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この物語のはじめに出没しゅつぼつした覆面ふくめん怪人かいじんガスコであった。またギンネコ号の艇長スコールだと名乗って、テッド博士座乗ざじょうのロケット第一号のなかへ変装してやってきた怪漢だった。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
覆面ふくめんのまゝ懷手か何んかで頤で指圖をするから、あんまりしやくにさはつて、甚三郎が追つかけて庭まで出ると、——馬鹿奴つ、神妙に引込んで居れ——と振り返りざま一刀を浴びせた相だ。
土肥実平のことばをしおに、藤九郎盛長、仁田、天野など、刎頸ふんけいの友の一群は、みの覆面ふくめんのしずくに、武者ぶるいを見せながら、また降り出した暗い小雨の中を、どこともなく駈け去った。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぴったりと身についた、灰色のシャツの上下、灰色の覆面ふくめん、灰色の手ぶくろ、灰色のくつ下、灰色のズックぐつ。夕やみと見さかいのつかぬような、全身灰色の変装です。
塔上の奇術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
炬燵蒲団ぶとんへ横顔を当てながら何気なく、上の一冊をめくってみると、城外の濠端ほりばた覆面ふくめんの男が老武士を暗殺している絵があって、次の絵には、人品のいい乞食が躄車いざりぐるまに曳かれている、そして
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つは、鎌倉町を飛出したお勘坊の死體が神田川に浮いて來たことゝ、もう一つは、源太郎の家は二三十人の覆面ふくめん武士に襲はれて、天井裏から床下まで、殘る隈なく家搜しをされたことです。
さていま、帆村探偵は、その怪マスクを手にして覆面ふくめんの怪塔王とむかいあっているのです。その怪塔王は、あわれにも帆村のため、両手をうしろにしばられ、手をつかうことができなくなっています。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
熊井君は、その高梨のお嬢さんが、不具者で、いつも顔に覆面ふくめんをしていると言ったのですね。あれを聞いたとき、僕はハッとしましたよ。僕の思いすごしかもしれません。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
覆面ふくめんの怪人物
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
覆面ふくめん船団せんだん
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
覆面ふくめんの強盗だ」
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
覆面ふくめんの敵
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)