はへ)” の例文
またそれはへいとふべし、然れどもこれを花片はなびらの場合と仮定せよ「木の下はしるなますも桜かな」食物を犯すは同一おなじきも美なるがゆゑに春興たり。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
絶えも入りたげな面目なさに、長い睫毛まつげを伏せたまゝ——、惡い女も隨分大勢見て來た平次にも、たゞの巾着切や胡麻ごまはへとは思へないいぢらしさです。
侍所さぶらひどころにゐる連中は、五位に対して、殆どはへ程の注意も払はない。有位うゐ無位むゐ、併せて二十人に近い下役さへ、彼の出入りには、不思議な位、冷淡を極めてゐる。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
唐土もろこしの書)此せつむなしからず、越後の雪中にも雪蛆せつじよあり、此虫早春の頃より雪中にしやうじ雪消終きえをはれば虫も消終きえをはる、始終ししゆう死生しせいを雪とおなじうす。字書じしよあんずるに、じよ腐中ふちゆうはへとあれば所謂いはゆる蛆蠅うじばへ也。
「生ひ立ちの記か。——砂とはへのなかで育つた男に幼い日のロマンはないよ。」
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
孤独こどくなるもののごとくに目のまへの日に照らされしすなはへ居り
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
わが鼬將軍いたちしやうぐんよ。いたづらにとりなどかまふな。毒蛇コブラ咬倒かみたふしたあとは、ねがはくはねずみれ。はへでは役不足やくぶそくであらうもれない。きみは獸中ぢうちうはやぶさである。……
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
殊に自然らしい死にかたをする為に一日にはへを十匹づつ食つた。蠅を細かにむしつた上、のみこんでしまふのは何でもない。しかし噛みつぶすのはきたない気がした。
闇中問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
源吉の鹽辛しほから聲を聞くと、お菊の死骸にはへのやうにむらがつた彌次馬は、一ぺんにパツと飛散ります。
はへはひよりしやうず、灰は火の燼末もえたこな也、しかれば蠅は火の虫也。はへころしてかたちあるもの灰中はひのなかにおけばよみがへる也。又しらみは人のねつよりしやうず、ねつは火也、火より生たる虫ゆゑにはへしらみともあたゝかなるをこのむ。
さじとかこ魂棚たまだな可懷なつかしき面影おもかげに、はら/\と小雨こさめ降添ふりそそでのあはれも、やがてがた日盛ひざかりや、人間にんげんあせり、蒟蒻こんにやくすなり、はへおとつぶてる。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まるで蜘蛛くもの巣に吊られた一匹のはへのやうに、月見の松へキリ/\と引上げられた
我越後の雪蛆せつじよはちひさき事ごとし。此虫は二しゆあり、一ツははねありて飛行とびあるき、一ツははねあれどもおさめ蚑行はひありく。共に足六ツあり、色ははへうすく(一は黒し)其る所は市中原野しちゆうげんやにおなじ。
はへうじも、とは、まさかひはしなかつたけれども、場合ばあひ……きれいきたないなんぞ勿體もつたいないと、たちのき場所ばしよ周圍しうゐからせつて、使つかひかはつて、もう一度いちど
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はへいたことはふまでもなからう。ねずみがそんなに跋扈ばつこしては、夜寒よさむ破襖やぶれぶすまうしよう。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
孫權そんけん或時あるときさう再興さいこうをして屏風びやうぶゑがかしむ、畫伯ぐわはくふでつてあやまつておとしてしろきにてんつ。つてごまかして、はへとなす、孫權そんけんしんなることをうたがうてもつはじいてかへりみてわらふといへり。
聞きたるまゝ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)