苦笑にがわらひ)” の例文
いぬはまたなめた。其舌そのした鹽梅あんばいといつたらない、いやにべろ/\してすこぶるをかしいので、見物けんぶつ一齊いつせいわらつた。巡査じゆんさ苦笑にがわらひをして
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「御挨拶ですね。」と紳士は苦笑にがわらひした。「これには理由わけがあるんです、私は口許くちもとが悪いもんですから、それで……」
三人のうちで、一番たけの高いお山と云ふ女がひよい振顧ふりむくと、『可厭いやだよ。誰かと思つたらお大なんだよ。』と苦笑にがわらひしながらばつが惡いと言ふていで顏を見る。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
うかね。しかし然う一々天氣にかこつけられちや、天氣もつらの皮といふもんさ。」と苦笑にがわらひして、「だが幾ら梅雨つゆだからツて、う毎日々々降られたんぢや遣切やりきれんね。 ...
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
けふ月給の渡る日と聞いて、酒の貸の催促に来たか、とは敬之進の寂しい苦笑にがわらひで知れる。『ちよツ、学校まで取りに来なくてもよささうなものだ。』と敬之進は独語ひとりごとのやうに言つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこでカサンドルは大事さうに假髮かづらをお拾ひなさる、アルルカンは粗忽者の尻をいやといふほど蹴飛すと、コロムビイヌは笑ひこけて涙をく、ピエロオは厚化粧の苦笑にがわらひで耳までも口をいた。
胡弓 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
お峯は苦笑にがわらひしつ。あきらかなる障子の日脚ひざしはそのおもて小皺こじわの読まれぬは無きまでに照しぬ。髪は薄けれど、くしの歯通りて、一髪いつぱつを乱さず円髷まるわげに結ひて顔の色は赤きかたなれど、いと好くみがきてきよらなめらかなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
三四郎は苦笑にがわらひをした。余計な事を云つたと思つた。すると広田さんが
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
持出し伊賀亮どの貴殿きでん只今の失言しつげん聞惡きゝにくし則ち御落胤らくいん相違さうゐなき證據は是にありとく拜見はいけんあるべしと出し示せば伊賀亮苦笑にがわらひしながらさらば拜見せんと手に取上これはまがひなきたう將軍家の御直筆ごぢきひつなり又御短刀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ときには苦笑にがわらひをしたりして。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ひるやうに言つた。然し大日向は苦笑にがわらひするばかり。奈何どんなすゝめられても、決して上らうとはしない。いづれ近い内に東京へ出向くから、猪子の家を尋ねよう。其折丑松にも逢はう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
苦笑にがわらひをしてまた俯向うつむいた……フとくと、川風かはかぜ手尖てさきつめたいばかり、ぐつしよりらしたあたらしい、しろ手巾ハンケチに——闇夜やみだとはしむかうからは、近頃ちかごろきこえたさびしいところ卯辰山うたつやまふもととほる、陰火おにび
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その頃流行の探偵小説から思ひついて、ニツク・カアタアといふ名で宝石屋荒しをつてゐたのが、実はそのワルゼエ自身なので、上官の捜索命令をうけた時は流石さすが苦笑にがわらひをしない訳にかなかつた。
長きひげ推揉おしもみつつ鴫沢は為方無せんかたなさに苦笑にがわらひして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
野中のなか古廟こべうはひつて、一休ひとやすみしながら、苦笑にがわらひをして、さびしさうに獨言ひとりごとつたのは、むかし四川酆都縣しせんほうとけん御城代家老ごじやうだいがらう手紙てがみつて、遙々はる/″\燕州えんしう殿樣とのさま使つかひをする、一刀いつぽんさした威勢ゐせいいお飛脚ひきやくで。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
う事無さに主も苦笑にがわらひせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ほとけ苦笑にがわらひしたまひて、われらずとのたまひぬ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わつぱ猿眼さるまなこちひさいのをると苦笑にがわらひをして
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とばかりに、苦笑にがわらひ
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とフト苦笑にがわらひした。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)