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せんちう
すべて、
海上の
規則では、
船の
出港の十
分乃至十五
分前に、
船中を
布れ
廻る
銅鑼の
響の
聽ゆると
共に
本船を
立去らねばならぬのである。
此の
船中に
話したがね、
船頭はじめ——
白癡め、
婦に
誘はれて、
駈落の
眞似がしたいのか——で、
船は
人ぐるみ、
然うして
奈落へ
逆に
落込んだんです。
引誘納涼に出し歸り
懸船中より
直に吉原の
燈籠を見物せんと
勸めけるに吉之助は
御當地始めての事なれば吉原は
別して
不案内ゆゑ
堅く
辭退此日は
漸々宿へ歸り番頭傳兵衞に此事を
話ければ傳兵衞
首を
……
船中にて
然やうな
事は
申さぬものだが、
龍宮場末の
活動寫眞が
宣傳をするやうな
風説を
聞いて、
乘らざるべけんやと、
旅費の
苦しいのが
二人づれで
驅出した。
可悲い、
可恐い、
滅亡の
運命が、
人たちの
身に、
暴風雨と
成つて、
天地とともに
崩掛らうとする
前の
夜、……
風はよし、
凪はよし……
船出の
祝ひに
酒盛したあと、
船中殘らず
それは
興行のためにと
香港へ
赴かんとて、
此船に
乘組んで
居つた
伊太利の
曲馬師の
虎が
檻を
破つて
飛び
出した
事で、
船中鼎の
沸くが
如く、
怒る
水夫、
叫ぶ
支那人、
目を
暈す
婦人もあるといふ
騷ぎで