自害じがい)” の例文
無理に三杉さんの御次男を迎へたら、三日經たないうちに、お孃さんは自害じがいをするに違ひない。急場のしのぎが付いたら又何んとかならう。
パリスどのと祝言しうげんするよりもいっ自害じがいせうとほどたくましい意志こゝろざしがおりゃるなら、いゝやさ、恥辱はぢまぬかれうためになうとさへおやるならば
「ええうるさいッ」梅雪はもの狂わしげに首をふって、——「自害じがいせいとぬかすか、バカなことを!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悲叫ひきょうとともに、お妙は自害じがいして散ったのだった。壁辰は娘の介抱かいほうもしたいが、刻は移る。そうしてはいられない。待っていた音松も、なみだをかくしてき立てる。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
引開ひきあけ見ればお光はすでにはや庄兵衞をば刺留しとめつゝ今や自害じがいをなさんとする景樣ありさまなるに大きに慌忙あわてヤレまてしばしと大聲おほごゑあげんとなししが夜隱やいんのこともしも長家へ漏聞もれきこえ目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼だって人間の心は持っているだろう。重盛しげもりもついている。あゝそれよりももしやあの純潔な、ほこりをもった妻が、侮辱ぶじょくされるのを恐れて、子供をし殺して、自害じがいしはしなかったろうか。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
伊吹虎尾いぶきとらのを、振りかざす手のいかりからになつた心臟にしがみつくまむし自害じがいした人。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
嫁入よめいりしてから、わたくし幾度いくたび自害じがいしようとしたかれませぬ。
「それだけの話じゃ間違いもなく自害じがいじゃないか。お前一人で御検死までらちを明けるがい。この真夜中に俺を引っぱり出すのは殺生せっしょうだぜ」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「そうだ、野武士らの手から、織田家おだけへ売られて名をはずかしめるよりは、いさぎよく自害じがいしよう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殺さば罪科ざいくわのがるところもなければいき憂恥うきはぢさらさんより其の場を去ず自害じがいして相果て申せば先立さきだちまする不孝はお許し下されかしと今死る身を氣丈きぢやう女兒むすめ筆の前後少もみだれず一一什しじふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ロミオが自害じがいでもなされたか? これ、あいってや、そのあいといふ一言ひとことが、たゞ一目ひとめひところ毒龍コカトリスにもまして、おそろしい憂目うきめする。其樣そのやう羽目はめとならば、わし最早もう駄目だめぢゃ。
俊寛 あゝくなったか。自害じがいしたか。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「そのうるさい男が、金が溜つて商賣が繁昌して、娘が綺麗で申分のない暮しをして居るのに、毒を呑んで自害じがいしたとしたらどんなもので?」
ながいあいだ、なにかにつけてじぶんの前途ぜんとをさまたげていた勝家かついえ自害じがいし、かれと策応さくおうしていた信長のぶなが遺子いし神戸信孝かんべのぶたか勇猛ゆうもう佐久間盛政さくまもりまさ毛受勝介めんじゅかつすけ、みな討死うちじにしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たのしみに此世に存命ながらへべきや何卒なにとぞわたくしへも自害じがい仰付られ度と願はれければ越前守是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なくば此處こゝ自害じがいすると半狂亂はんきゃうらん面持おもゝち是非ぜひなく、自得じとくはふにより、眠劑ねむりぐすりさづけましたところ、あんごとくに效力きゝめありて、せるにひとしきその容態ようだい手前てまへ其間そのあひだ書状しょじゃうして、藥力やくりきつくるは今宵こよひ
「申上げにくいことだが、——一人は奧方の御憎しみを受けて自害じがいし、一人は不義の疑ひがあつて、御成敗を受けたよ」
『——おれの父の銀左衛門は、たった今、恩人のやしきへ行って、自害じがいした』
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伜へ遺書くらゐは書いたかも知れないが、それは氣の廻るお茂與が隱したことだらう。中氣で手が顫へるから、武家の出でも刄物の自害じがい覺束おぼつかない。
「親分、こいつはたつた一と眼で殺しとわかりましたよ。自害じがいのやうに見せかけてはゐるが、馴れた眼で見ると決して自分でやつたものぢやありません」
自害じがいしかけた人間が、死に損ねると氣が變つて、無闇に死に度くなくなるものらしいよ。兎も角行つて見よう」
それに、丈吉はなか/\の道樂者で諸方に不義理の借金もあり、年中馬鹿々々しい女出入で惱まされて居たので、十人が十人、自害じがいを疑ふ者はありません。
「大抵解つた積りです。藤兵衞は上屋敷から歸つた晩から、自害じがいする日まで、一歩も外へ出なかつたさうです」
寅藏の死んだのが自害じがいなら、側に毒を入れた椀なり紙なりある筈だ。それに、遺書が半枚の半紙を眞ん中でいで『おれはげしゆじんだ』と讀ませたらう。
自害じがいで御座いますよ、親分さん。なんだつて死に度くなつたか、あつしには見當もつきませんが、死にやうに事をいて、自分で舌を噛み切つたんで、へえ。
自害じがいを見付けたのは、早起はやおきの良助と太吉、雨戸を繰つて、春の朝風を入れる時、この慘事さんじに氣がついた——といふことは、先刻他の奉公人達から聽いたことでした。
あの高慢ちきな野郎がどうしたつて、驚きやしません、——死んだのは、嫁のお鈴ですよ。醫者は自害じがいだらうつて言ふけれど、——あのピカピカするやうな嫁が自害を
「もう一つ、自分の胸をひろげて娘に刺させたとしたら、これは殺しではなくて自害じがいだよ」
「あ、錢形の親分、これは良い方が來て下さいました。八五郎親分が飛んで行つたやうですが、夜中でもあり、嫁は自害じがいのやうだから、親分に來ていたゞく迄もないと思ひましたが」
父上市太郎樣は、身をぢて自害じがいをなすつたのです。それをかばつたのは、此處に居られる奧方樣と、お女中のお菊さん。萬一自害と知れては、父上樣の非をあばくことになりませう。
その扱帶でくびれ死んだのを、翌朝お茂與が見付け、自害じがいは面白くないことがあつたので、引おろして扱帶しごきを解き、——その時扱帶の端に縛つてある細紐まで解いて、押入へ投げ込み
「よく解つて居るぢやないか、あの美しい内儀が自害じがいしたのだよ。可哀想に」
「宗方善五郎は昨夕死んださうだ、——自害じがいしたといつたな、平次殿」
「五兵衞は自害じがいしたのぢやねえ、人手に掛つて死んだのだぜ」
「何? 自害じがいをした? あり相も無いことだが」