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臆面
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おくめん
ふりがな文庫
“
臆面
(
おくめん
)” の例文
身をせめて深く
懺悔
(
ざんげ
)
するといふにもあらず、唯
臆面
(
おくめん
)
もなく身の耻とすべきことどもみだりに書きしるして、或時は
閲歴
(
えつれき
)
を語ると号し
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
苦
(
にが
)
い真実を
臆面
(
おくめん
)
なく諸君の前にさらけ出して、幸福な諸君にたとい一時間たりとも不快の念を与えたのは重々
御詫
(
おわび
)
を申し上げますが
現代日本の開化
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、ナオミはそれでも私よりは
臆面
(
おくめん
)
がなく、ジロジロ見られている中をすうッと済まして通り越して、とあるテーブルへ就きました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一足飛びに大木戸まで来て、人だかりを突き退けて前へ出て、ちょうど検視の役人が取調べの真最中へ、
臆面
(
おくめん
)
もなく
面
(
かお
)
を突き出して
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
『酒のみも出い、意気地なしも出い、恥知らずも出い!』そこで、我々が
臆面
(
おくめん
)
もなく出て行っておん前に立つと、神さまは仰せられる。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
▼ もっと見る
按
(
あん
)
ずるに日本橋の上へは、困った浪花節の大高源吾が
臆面
(
おくめん
)
もなく
顕
(
あらわ
)
れるのであるが、いまだ幸に西河岸へ定九郎の出た唄を聞かぬ。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ぼくも
臆面
(
おくめん
)
なく——かにかくにオリムピックの
想
(
おも
)
い
出
(
で
)
となりにし人と土地のことかな、——と書きなぐり、中村嬢に
渡
(
わた
)
しておきました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
ようやく八五郎は結論に
辿
(
たど
)
りつきました。さう言つてなんがい顎を撫で廻すほど、彼氏は
臆面
(
おくめん
)
もなく出來上がつてゐるのです。
銭形平次捕物控:230 艶妻伝
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
リニーやカトル・ブラの脱走兵らは、その卑劣の報酬を受けて、王に対する彼らの忠誠を
臆面
(
おくめん
)
もなくすっかり見せかけていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
人の
醜
(
みにく
)
い部分に
臆面
(
おくめん
)
もなく注意を向けていたのを……そのつもりではなかったのだが……すまなく思った。といっても、いい訳もできなかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
つねに
生真面目
(
きまじめ
)
な彼にたいして、よく
臆面
(
おくめん
)
もない冗談など云いかけるが、尊敬すべきところでは充分尊敬を払っていた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
両親の友人などが来ても、
臆面
(
おくめん
)
もなくその前に出て、しゃべりたいことをしゃべり、
家
(
うち
)
の人々の手にもてあまされた。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「アッ、ハッ、ハッ、ハッ、面白いことをおっしゃる。だが無作法はお許しを願い、どうぞもう少しお見せくだされ」そこで
臆面
(
おくめん
)
もなくマジマジと見る。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
僕がまた
臆面
(
おくめん
)
なく「エエあなたも大変
好
(
すき
)
だけれど、おんなじじゃないわ。だっておっかさんは、そんな立派な光る物なんぞ着てる人じゃなかったんだものを」
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
そこで今まで
臆面
(
おくめん
)
も無く力競べをしていた若者たちはいずれも
興
(
きょう
)
のさめた顔を見合せながら、周囲に
佇
(
たたず
)
んでいる見物仲間へ
嫌
(
いや
)
でも加わらずにはいられなかった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いざと云う時が来たら、一太刀に切って捨てようとする
気勢
(
けはい
)
が、あり/\と感ぜられた。が、勝平は相手の
容子
(
ようす
)
などには、一切
頓着
(
とんちゃく
)
しないように、
臆面
(
おくめん
)
もなく話し続けた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
或る所で
臆面
(
おくめん
)
もなくこの頃南画を練習していますなどと話をしたら、
暫
(
しばら
)
くして、
判
(
はん
)
を作ったらどうだといって、丁度その頃札幌へ来ていた
篆刻家
(
てんこくか
)
を紹介してくれた人があった。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
しかし、恥を知らぬ自堕落な連中が、どこまでもただ道楽を道楽として
臆面
(
おくめん
)
もなく下等にばか話を
吹聴
(
ふいちょう
)
し合っている時、
一人
(
ひとり
)
沈黙を守るのは
偽瞞
(
ぎまん
)
でもなければ
衒
(
ぶ
)
ることでもない。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
そのうちのある者らが、
臆面
(
おくめん
)
もない眼つきをしたこの
大子供
(
おおこども
)
たる彼をたがいにさし示しながら、鼻先であざけったりたがいに
肱
(
ひじ
)
でつつき合ったりしても、彼は腹をたてなかった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼女はこの恋愛の苦しい擬装からいつでも解放されうるわけであったが、葉子から見れば、この世間しらずの老作家は、
臆面
(
おくめん
)
もなく人にのしかかって来る、大きな
駄々児
(
だだっこ
)
であった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
専務車掌の倉内は、警部の愚問に
匹敵
(
ひってき
)
するような
愚答
(
ぐとう
)
を
臆面
(
おくめん
)
もなくスラリと述べた。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
戸籍まで引いたは、永住の
心算
(
つもり
)
でした。然し落ち着きは中々出来ないものです。村居七年目に出した「みみずのたはこと」は、開巻第一に
臆面
(
おくめん
)
もなく心のぐらつきを告白して居ます。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
君の研究している司法制度のことはまだよくは知らないが、確かにもう
臆面
(
おくめん
)
もなくりっぱにやってのけることを心得ていなさるような乱暴な演説とは、関係がないものと考えていますよ
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
と
臆面
(
おくめん
)
もなく自分の身に罪を引受けようと云う志は
殊勝
(
しゅしょう
)
なものでございます。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
魔子は
臆面
(
おくめん
)
のない無邪気な子で、来ると早々私の子と一緒に遊び出した。野枝さんの
膝
(
ひざ
)
に抱かれたぎりのルイゼはマダあんよの出来ない可愛いい子で、何をいっても合点々々ばかりしていた。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そして、灰色の頭の
古鼠
(
ふるねずみ
)
どもは邸のどの部屋にもいて、真昼間から
臆面
(
おくめん
)
もなく、穴を出たり入ったり
駈
(
か
)
けまわっている。要するに、ジョンは一門に長く伝わったものはなんでも
崇
(
あが
)
めたてるのだ。
ジョン・ブル
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
斯う
臆面
(
おくめん
)
なしに物を言う連中にかゝっては案内者も全く容易でない。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それを
臆面
(
おくめん
)
なく告白すれば先生が喜ぶ。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
臆面
(
おくめん
)
もなく
親
(
した
)
しげに
話
(
はな
)
し
出
(
だ
)
しました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
女房が気を利かせて、箸箱をと思う間もなく、愛吉のを取って、
臆面
(
おくめん
)
なし、海鼠は、口に
入
(
い
)
って紫の珠はつるりと
皓歯
(
しらは
)
を
潜
(
くぐ
)
った。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さはあれ、驚いた痛ましい目でマリユスが見守っているうちにも、若い娘は幽霊のように
臆面
(
おくめん
)
もなく
室
(
へや
)
の中を歩き回っていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「いや好男子の
御入来
(
ごにゅうらい
)
だが、喰い掛けたものだからちょっと失敬しますよ」と迷亭君は
衆人環座
(
しゅうじんかんざ
)
の
裏
(
うち
)
にあって
臆面
(
おくめん
)
もなく残った蒸籠を
平
(
たいら
)
げる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
新聞屋の
種取
(
たねと
)
りにと
尋来
(
たずねきた
)
るに逢ひてもその身丈夫にて人の顔さへ見れば
臆面
(
おくめん
)
なく
大風呂敷
(
おおぶろしき
)
ひろぐる勇気あらば願うてもなき自慢話の相手たるべきに
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
はばかりなく、こういう言を吐くときの彼は、まるで別人の
観
(
かん
)
がある。公卿たちにはそれが、身のほど知らぬ
臆面
(
おくめん
)
なしに見えもしたろうほどだった。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
思いきったぼくは
臆面
(
おくめん
)
もなく、あなた達の間に割りこみました。あなたは泣いたあとの汚い顔はしていたけれど、なにか頼りなげな
可憐
(
かれん
)
な風がありました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
諸君の僕に勧めるのは僕自身を主人公にし、僕の身の上に起つた事件を
臆面
(
おくめん
)
もなしに書けと云ふのである。
澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
新聞記者の
臆面
(
おくめん
)
もないのが、その真相を訊ねると、ファーラー少しも騒がず「確かに宣伝にはなったワ」と軽くいなしたという
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
交際社会の一つの話がある。
随筆銭形平次:18 平次読む人読まぬ人――三人の政治家――
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
茂太郎はそれを見ていると、みんな立派な人たちが、いい年をして、どうしてまた、あんなに食いついたり、抱き合ったりして、
臆面
(
おくめん
)
もなく踊れるのだろうと思いました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
臆面
(
おくめん
)
もなくじっと目を定めてその顔を見やった後に、
無頓着
(
むとんじゃく
)
にスプーンを動かしながら、時々食卓の客を見回して気を配っていた事務長は、下くちびるを返して
鬚
(
ひげ
)
の先を吸いながら
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
これでも昔は
内芸者
(
うちげいしゃ
)
ぐらいやったと云うを鼻に掛けて、
臆面
(
おくめん
)
もなく三味線を腰に結び付け、片肌脱ぎで大きな口を
開
(
あ
)
いて唄う其の
後
(
あと
)
から、茶碗を叩く
薬缶頭
(
やかんあたま
)
は、赤手拭の
捩
(
ねじ
)
り鉢巻、
一群
(
ひとむれ
)
大込
(
おおごみ
)
の
後
(
うしろ
)
から
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
臆面
(
おくめん
)
のない葉子のことなので、それを好いことにしていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は
臆面
(
おくめん
)
もなく、店先へ腰を下した。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
帰りがけには、
武蔵坊
(
むさしぼう
)
も、緋縅も、雁がねも、一所に床屋の店に見た。が、雁がねの
臆面
(
おくめん
)
なく白粉を塗りつつ居たのは言うまでもなかろう。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
円熟して深厚な趣味を体して、人間の万事を
臆面
(
おくめん
)
なく取り
捌
(
さば
)
いたり、感得したりする普通以上の吾々を
指
(
さ
)
すのであります。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
朝のような
臆面
(
おくめん
)
なさはもうなかった。はいってもこないで、廊下の陰の所に立っていた。マリユスはただ半開きの
扉
(
とびら
)
からその姿を見るだけだった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
へんなことをいう
臆面
(
おくめん
)
のない男だと、秀吉は、感心しているような、またすこし、
鼻白
(
はなじろ
)
んだような
面持
(
おももち
)
で、まじまじと、弥九郎の
唇
(
くち
)
もとを見まもった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
きめて居たんださうで、最初のうちはお百合も相手にしなかつたが、相手の
臆面
(
おくめん
)
もないのに釣られた上、貧乏疲れのした町人の悲しさで、母親が先づ三千五百石に惚れ込んだ
銭形平次捕物控:186 御宰籠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこへ
臆面
(
おくめん
)
もなく訪ねてきた山本南竜軒。例の二十七貫を玄関に横づけにして頼もうという。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
生れ落ちてから畳の上に両足を
折曲
(
おりま
)
げて育った
揉
(
ねじ
)
れた
身体
(
からだ
)
にも、当節の流行とあれば、直立した国の人たちの着る洋服も
臆面
(
おくめん
)
なく採用しよう。用があれば停電しがちの電車にも乗ろう。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、果して大井も
臆面
(
おくめん
)
なく、その給仕女の方へまっ赤になった顔を向けると
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“臆面”の意味
《名詞》
気後れした表情や様子。
(出典:Wiktionary)
臆
常用漢字
中学
部首:⾁
17画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“臆”で始まる語句
臆病
臆
臆測
臆病者
臆病風
臆劫
臆説
臆断
臆病心
臆斷