)” の例文
こう云う代助は無論臆病おくびょうである。又臆病でずかしいという気はしんから起らない。ある場合には臆病をもって自任したくなる位である。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして喰べ酔つた友達を見つけると、こんな不心得者を自分の巣から出したのをぢるやうに、何かひそひそ合図でもしてゐるらしかつた。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
それでその人倫のみだれて居ることはほとんどいうに忍びないほどの事もありますけれども、チベット人はてんとしてじない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
婦女は貞節を忘れ、士は二君に事えてじず、禄と位とその本源を二つに分つ。これによって名を好むものは彼につき、利を好むものはこれに従う。
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
翌日は、金之丞は手土産を持つて平次のところへ顏を出しましたが、さすがに身にぢたものか、自分を狙ふ者の心當りについては、何にも打明けません。
子の敦忠あつたゞも美男であったと云うことであるから、矢張美人系の一族たるにじない容姿だったのであろう。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「叱るでないぞ。いずれも近頃は気が張り切っている様子じゃ。僅かな粗相をも深くじて割腹する者が出ぬとも限らぬからな。よいか。決して強くとがめるでないぞ」
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
言ッちゃアからかいますのサ。それでもネ、そのたんびに私がはずかしめ辱しめい為いしたら、あれでも些とはじたと見えてネ、この頃じゃアそんなに言わなくなりましたよ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
満枝は彼にぢよとばかり嗤笑あざわらひぬ。さ知つたる荒尾は飽くまで真顔を作りて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さうしてたゞあざむかれた自分じぶん不明ふめいいてばかり彼女かのぢよぢたのである。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
そこでマトノ姫がじて、「同じ姉妹の中で顏が醜いによつて返されることは、近所に聞えてもずかしい」と言つて、山城の國の相樂さがらかに行きました時に木の枝に懸かつて死のうとなさいました。
彼女自身も気のつかぬうちいつからという事もなく私娼ししょうの生活にらされてずべき事をもはじとは思わぬようになったものであろう。折々は反省して他の職業に転じようと思う事もあるにちがいない。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わたしは今更に自分の無智をづかしく思ひます」梅子は又た語をぎぬ「私は今日こんにちまで、教会はたしかに世の光であると信じて居りました、今ま始めて既に悪魔の巣であつたことを見ることが出来ました、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
よ、硝煙せうえんうちをぬけ。 つきひかりがほに。
れをぢずばなにづ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
たんあたまからした、あたかにかいたもちやう代物しろものつて、義理ぎりにも室中しつちゆうらなければならない自分じぶん空虚くうきよことぢたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
女はさすがに身をぢて、二つの乳房をたなごころに隱し、八方から投げかけられる視線を痛さうに受けてうづくまりました。
松尾はまるで自分がわらわれているようなずかしい口惜しい思いでわれ知らず頬を熱くしながら云った。
石ころ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
孰方どっちが悪いと云うのではない、もしも悪いと云う者があれば、それは現代に通用しない古い道徳にとらわれた見方だ、これからの子供はそんなことをじてはいけない
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
醜きをぢざる女
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
去れど城を守るものも、城を攻むるものも、おのが叫びのわずかにやんで、この深き響きを不用意に聞き得たるときずかしと思えるはなし。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
父上市太郎樣は、身をぢて自害じがいをなすつたのです。それをかばつたのは、此處に居られる奧方樣と、お女中のお菊さん。萬一自害と知れては、父上樣の非をあばくことになりませう。
けれども今の人間はたといわずかな苦痛にもせよ、もしそんなものをあじわわないで同じ結果が得られるならば、その道を取るのを賢いとする。自分たちは自分たちの臆病をじるにはあたらない。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
双方共何時いつもの様に軽くは話し得なかった。代助は酒の力を借りて、己れを語らなければならない様な自分をじた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この時ルーファスの次に座を占めたるウィリアムが「渾名あだなこそ狼なれ、君が剣にきざめる文字にじずや」と右手めてを延ばしてルーファスの腰のあたりをゆびさす。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼等かれら彼等かれらに、不徳義ふとくぎ男女なんによとしてづべくうつまへに、すで不合理ふがふり男女なんによとして、不可思議ふかしぎうつつたのである。其所そこ言譯いひわけらしい言譯いひわけなんにもなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しか宗助そうすけにはまる時間じかんつぶしにやう自覺じかくあきらかにあつた。それをつくろつてつてもらふのも、自分じぶん腑甲斐ふがひなさからであると、ひとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
巨人のついを下すや四たび、四たび目に巨人の足は、血を含む泥をて、木枯の天狗てんぐの杉を倒すが如く、あざみの花のゆらぐ中に、落雷もじよとばかりどうと横たわる。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助は少々平岡を低く見過ぎたのにじ入った。実はこの側から、彼の心を動かして、旨く油の乗った所を、中途から転がして、元の家庭へ滑り込ませるのが、代助の計画であった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)