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瞞
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だま
ふりがな文庫
“
瞞
(
だま
)” の例文
「無念!」と老人は悲痛な声で、「卑怯者め!
瞞
(
だま
)
し討ちとはな!」じいいっと鳰鳥を見詰めたが、「おっ、お前は! お前様は!」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
持って、外へ出ると言えば八人
舁
(
かつ
)
ぎの
轎
(
かご
)
で出るくせに、エラクないだって、ふん、そんなことを言ってわたしを
瞞
(
だま
)
すつもりですかい
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
胡堂氏の話によると、村には二つとない、見事だったこの庭の良石と植木は、隣村の何兵衛に
瞞
(
だま
)
され
尽
(
ことごと
)
く持ち去られたとのことである。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
とうに打明けようとも思ったが、それもならず、いわばわしは最初からそなたを
瞞
(
だま
)
していたようなものじゃ。ま、せいてくれるな。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
官費で嘘を吐く商売は気象台丈けだろうね? 早い話が嘘は泥棒の始まり、親からして毎日人を
瞞
(
だま
)
していたんじゃ
迚
(
とて
)
も善い子は出来ない
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
▼ もっと見る
「これ、二つでたった五十銭さ。なに、これでも
不断
(
ふだん
)
嵌
(
は
)
めていちゃすぐ
剥
(
は
)
げるけど、着更えした時だけだったらちょっと
瞞
(
だま
)
かせるからね」
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
もしその易がここに留ってよいという事が出ると私の方の
便宜
(
べんぎ
)
のためにお前を
瞞
(
だま
)
して留めて居ったというような事に取られてもいけない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
それだけ、あたしも、本気になれたんだわ。釣るとか、
瞞
(
だま
)
すとか、そんな腹は、どつちにもない。恩も義理もない代り、秘密も
見栄
(
みえ
)
もない。
モノロオグ
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
太一郎の、小間使ひの話に
瞞
(
だま
)
されて、飛んだ破目におとしいれられた漁場の仲間の者の娘に就いての事件を七郎は知つてゐる。
南風譜
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
暗
(
あん
)
に人から
瞞
(
だま
)
されて、働かないでもすんだところを、無理に
馬鹿気
(
ばかげ
)
た働きをした事になっているから、奥さんの実着な勤勉は、精神的にも
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
わたしの
炯眼
(
けいがん
)
は、残念ながら自分の鼻の先までしか届かず、また折角のわたしの密計も、誰ひとり
瞞
(
だま
)
しおおせることはできなかったらしい。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
彼の家の中では万事がうまくいっていなかった。彼はいつも家事女らと
諍
(
いさか
)
いばかりしていたし、雇い人らからはたえず
瞞
(
だま
)
され盗まれていた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「いったいあの男は何者だろう?……確かにどこかで見たようだが。……いずれにしても俺はあんな奴に
瞞
(
だま
)
されはしないぞ。」
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
半「本心の何のとってお前さんも疑ぐり
深
(
ぶけ
)
え、
私
(
わっち
)
が本心の証拠には、山三郎が来たら手初めの奉公に、一番山三郎を
瞞
(
だま
)
かして見せましょう」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「驚きましたか。こんなことはほんの子供
瞞
(
だま
)
しですよ。それともあなたが御望みなら、もう一つ何か御覧に入れましょう。」
魔術
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
而も一番私に云う強い語気で「ふん、あれでも神伝流の免許皆伝か。」麻川氏「くどく云うなよ。」赫子「だってとうとう
瞞
(
だま
)
されちゃった。」
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「……少し
媒介人
(
なこうど
)
に
瞞
(
だま
)
されたようですよ。」と、お庄は帯の間から莨入れを取り出して、
含嗽莨
(
うがいたばこ
)
をふかしながら言い出した。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あいつは人を売りもすれば
瞞
(
だま
)
しもする、それでいて、あんた方と一緒に飯まで食いおるのじゃ。わしには、あいつらのことがちゃんと分っとる。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
私はあなたを
瞞
(
だま
)
したけれど、それは私の元々の意志ではなかつた。私は自分のことを明らさまに話して、公然と申込をしようと思つてゐたのです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
彼等は別々の意味でその結婚を急いでゐたのだが、どつちかと言へば、子供のやうな単純さで自ら
瞞
(
だま
)
されてゐた愚かさは伊曾の方にあつたと言へる。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
「そしてね、ぜひ、至急に寄っていただきたいっておっしゃったわ。どうぞ
瞞
(
だま
)
さないでぜひいらっしてくださいって」
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
二十七にはなつても世間
不見
(
みず
)
のあの雅之、
能
(
よ
)
うも能うもおのれは
瞞
(
だま
)
したな! さあ、さあさ
讐
(
かたき
)
を討つから立合ひなさい
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「まア、この
罰当
(
ばちあた
)
りが!」と
魔女
(
まじょ
)
が
急
(
きゅう
)
に
高
(
たか
)
い
声
(
こえ
)
を
立
(
た
)
てた。「
何
(
なん
)
だって?
私
(
わたし
)
はお
前
(
まえ
)
を
世間
(
せけん
)
から
引離
(
ひきはな
)
して
置
(
お
)
いたつもりだったのに、お
前
(
まえ
)
は
私
(
わたし
)
を
瞞
(
だま
)
したんだね!」
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
うっかり
瞞
(
だま
)
されて一つ目の橋の上まで来ると、人通りのないのを見すまして、万力は不意にお俊の喉を絞めました。相撲の力で絞められちゃあ堪まりません。
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「でも、これを売りに来た女は、贋物だったんだぜ。」と私は、
瞞
(
だま
)
された
顛末
(
てんまつ
)
を早速、物語って聞かせた。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「瀬川さんも、たうとう病院で花見をするやうになりましたね、もう二週間もしたら立派に咲きますぜ、この模樣ぢや。……えゝえゝ
瞞
(
だま
)
したつて構ひませんとも!」
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
「なにを馬鹿な。こんな子供
瞞
(
だま
)
しのおどし文句で、俺がビクビクするとでも思っているのか。いい年をして、さては奴も病気のせいでいくらか
耄碌
(
もうろく
)
していたんだな」
幽霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
第一、神社合祀で敬神思想を高めたりとは、政府当局が地方官公吏の
書上
(
かきあげ
)
に
瞞
(
だま
)
されおるの至りなり。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
涯
(
はて
)
もないマンネリズム、意味のない党派心、猜怨と嫉視、繰り返えさるる朋党の
瞞
(
だま
)
しあい、執拗なる剽窃等々の中に画布が浸さるるかぎりにおいて、すでに白き画布は
絵画の不安
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
落し入れようとしているのだろうか? おれは何かに
瞞
(
だま
)
されているのではないか?——そう思いながら彼はなおも魅せられたようにその虚空に回転する虹に見入っていたが
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
川島先生の何時も私の顔にじろじろと向けられる神経質な注視に
逢
(
あ
)
ふ度、私はまんまと
瞞
(
だま
)
したことに気が
咎
(
とが
)
め、何か剣の刃渡りをしてゐるやうな
懼
(
おそ
)
れが身の毛を総立たせた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
賑やかな人で、自分の家の二階で八人芸をやっていると、まったく
瞞
(
だま
)
されるほど、
大勢
(
おおぜい
)
寄
(
よ
)
っているようにきこえた。かみさんは新宿あたりの
上
(
あが
)
りもの(遊女の)で、
強者
(
したたかもの
)
だった。
旧聞日本橋:22 大門通り界隈一束(続旧聞日本橋・その一)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私どもは
瞞
(
だま
)
され通しで、瞞されている間にいよいよ悲惨な境涯に突きおとされたのです
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
何しろ役人位えにアビクビク
為
(
し
)
ねえ悪党揃だからナ、今迄の木ッ葉役人は
瞞
(
だま
)
かされたり、脅かされたり、御馳走されたりで追ッ払われたんだが、東京から大所が来ると成りゃ、今度ア
監獄部屋
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
これは明らかに不合理だ、エレシュキガル神ともあろうものが、あんな子供
瞞
(
だま
)
しの計に欺かれるはずがあるか、と、彼
等
(
ら
)
は言う。
碩学
(
せきがく
)
ナブ・アヘ・エリバはこれを聞いて
厭
(
いや
)
な顔をした。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それでは、せめて、君の愛する其顏だけでも、其儘
變
(
かはり
)
なくまたと眺められるだらうか。悲しいことには、さういかない。或は
思做
(
おもひなし
)
でさうと
瞞
(
だま
)
されることはあつても、
儚
(
はかな
)
い心の試に過ぎぬ。
落葉
(旧字旧仮名)
/
レミ・ドゥ・グルモン
(著)
私は日を浴びていても、否、日を浴びるときはことに、太陽を憎むことばかり考えていた。結局は私を生かさないであろう太陽。しかもうっとりとした生の幻影で私を
瞞
(
だま
)
そうとする太陽。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
▼その相手の感銘にこっちの鼻以外の表現で
瞞
(
だま
)
したり乱したりする事が出来る。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それとも、また一面にはシュテッヘ、艇長、今度の事件——と『
鷹の城
(
ハビヒツブルグ
)
』の怪奇にも通じていると思うが……ああなるほど、いかにもブルンヒルトは、グンテル王の身代りに
瞞
(
だま
)
されたんだ。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
アリョーシャは部屋の隅の方に坐って、いかにも恐ろしくて
堪
(
たま
)
らない様子で、自分が
瞞
(
だま
)
された次第をソーニャに物語っていた。彼はぶるぶると身顫いがとまらないで、
吃
(
ども
)
ったり泣いたりした。
小波瀾
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「……たしかに、私は貴方を
瞞
(
だま
)
してたわ」と、やっと妻はいった。
あるドライブ
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
あたしに
瞞
(
だま
)
されたと思うものは、それや馬鹿なの。だって、今頃瞞されたと思って
口惜
(
くや
)
しがってる男なんか、日本にだっていやしないわ。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「お気の毒さま、贋金だよ! 一度は妾も
瞞
(
だま
)
されたが、へん、二度とは喰うものか! お前、カヤパに貰ったね。妾がカヤパに遣ったのさ」
銀三十枚
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
おやまア
彼奴
(
あいつ
)
が、
私
(
わたくし
)
の方へ来ても貴方がお亡くなり遊ばしたといいましたが、私の考えでは、貴方様はお人がよいものだから旨く
瞞
(
だま
)
したのです
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
出来もしないことを出来るやうにいひふらしたこと、人にやらせながら自分でやつたやうな顔をしたこと、いづれも、僕を
瞞
(
だま
)
したことになります。
五月晴れ
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
つまり奈良の
老若
(
ろうにゃく
)
をかつごうと思ってした悪戯が、思いもよらず
四方
(
よも
)
の国々で何万人とも知れない人間を
瞞
(
だま
)
す事になってしまったのでございます。
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
実を云うとどてらがこんな事を
饒舌
(
しゃべ
)
るのは、自分を
若年
(
じゃくねん
)
と
侮
(
あなど
)
って、好い加減に人を
瞞
(
だま
)
すのではないかと考えた。ところが相手は存外真面目である。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それでも、自分をしばしば欺いた子供をこんどはこちらから
瞞
(
だま
)
すために、絶望の念を隠しておかなければならなかった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「まあそうやって、後生大事に働いてるが
可
(
い
)
いや。私も
危
(
あぶな
)
く
瞞
(
だま
)
されるところだったよ。
養母
(
おっか
)
さんたちは人がわるいからね」お島も
棄白
(
すてぜりふ
)
でそこを出た。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あなたは初めの
三月
(
みつき
)
は些っとも嘘を仰有らなかったわ。けれども四月目からチョク/\私をお
瞞
(
だま
)
しになりましたよ。
髪の毛
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
瞞
漢検1級
部首:⽬
16画
“瞞”を含む語句
瞞着
欺瞞
偽瞞
瞞著
欺瞞者
阿瞞
騙瞞
自己欺瞞
自己偽瞞
素人欺瞞
瞞過
瞞着者
欺瞞性
曹瞞伝
小児瞞
大欺瞞
大偽瞞
偽瞞者