)” の例文
旧字:
「お勢さん、あきらめなすったら? そんなものをったって何にもならないし、手に戻ったところで仕様がないじゃありませんか」
「だって、いかにもあたしが意気地いくじがないから柿をられたんだって云うような口ぶりなんですもの。あの梵妻さんも随分ずいぶんだわ。」
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
まわりの乗客たちは、黒い外套を着た小柄な外国女がピオニェールのなりをした小僧にスモーチカをられたという事実を知った。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「あれ見や。まだあんなこといってら。自分の女房をられてさ、よくも、おッとりいられたもんだな。武大さんは、偉いのかなあ?」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが俺の方程式は今の所まだ間違いだらけでったって何の役にも立たぬぞというとそれなら俺が見て直してやろうという。
機械 (新字新仮名) / 横光利一(著)
もしも首飾をった犯人が野口を殺害したものとすれば、何故犯人は首飾を遺棄したか? もし又首飾を盗った者を被害者自身とすれば
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「ええしゃくだ、腕時計をられたのは惜しくはないが一週間もたつのにまだこの癖がぬけない、おれの頭はよっぽど単純に出来てるんだな」
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この世に生きていないつもりなら、羞汚はじも顔向けもありはしない。大それたことだけれども、金はろう。盗ってそうして死のう死のう!
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
網打ちに行った人から魚をったり、買物をして町から遅く帰る人から油揚げを取りかえしたり、実に始末におえないものだったそうです。
とっこべとら子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「本当だよ。った男が今晩ると、魔物も其処へ寐に行くんだよ。じきに其の男は病気になるだろうよ。豚を盗ったむくいさ。」
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
何か御主人のものをったとか、とんでもないぎぬをきせて、そのために、お仕着せまで取り上げられて、ほうり出されたのだそうです。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「ええ羽織何点代価いくらと云う風に表にして出すんです。——いや這入はいって見たって仕方がない。られたあとなんだから」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
梅「す……はてな……何だろうか知ら、気味の悪い奴だ、どうして賊が入ったか、るものもない訳だが……己を殺しにでも来た奴か知らん」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「乞食よりも、泥棒よりも、もっとひどいわ。泥棒だって、親姉妹のものなんかは、りはしないと思うわ……お姉さまは……お姉さまは……」
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
現に盗んだところを見たのではなし又高が少しばかしの炭をられたからってそれを荒立てて彼人者あんなものだちに怨恨うらまれたらお損になりますぞ。真実ほんと
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「まあ、それじゃなんだって……どうしてあなたは……物をるためだなんておっしゃりながら、ご自分じゃなんにもお取りにならなかったの?」
「別段かかはつてゐる訳じやないさ。しかしみづ江さんを僕にられると紋ちやん首を吊つてしまふに定つてるよ。」
青春の天刑病者達 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
「それを言ったら、留守番なんかしてくれないでしょ。そこは掛引よ。それで、久慈さんのお宅、なにかられたの」
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
財布の方はられてしまったけれども、幸い、小銭がポケットにすこしあった。ラムネ三本代を払うと、あとに、五銭。やっと、割引電車に乗れる。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
物をるのはつぐないがつくが、女をはずかしめるのは罪だ……というような気に制せられるのを、自分ながら不思議に思う。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
たとえ電車の中の掏摸すりといえども、乗客から蟇口がまぐちったときは、その代償として相手のポケットへ、チョコレートか何かをねじこんでおくべきだ。
「ううん……新墓へ行ってって来ちゃったのよ。私、もったいないと思うたわよ。だって随分あるの、お金持ちのお墓なんて十円位も花束があがっててよ……」
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「あれ、なんでハア、わたしがそんなものをりますだね? そんなものは、わたしにゃ何の役にも立ちましねえだよ、別に読み書きが出来るわけでもなしね。」
御新造ごしんぞが娘にいっているんだ——あれ、変な奴が、衣笠きぬがささんのお裏口をのぞいている、このごろこまかい物が、よくなくなるが、屹度きっとあいつがるんだよ、泥棒だ
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「母、俺ら学校の帰り何時でも取ってくるか?——由何んぼでも、見付からないようにれるワ。」
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
うむ、そんなら貴樣きさまがこないだ途中とちうで、南京米なんきんまいをぬきつたのを巡査じゆんさげるがいいかとふんです
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ったな! 僕ははっと四辺あたりを見廻した。その子供たちは、内側の方に腰かけている。ふり返って僕を眺めていたらしい小さい方の子供の視線と、僕の視線がパッと合った。
魚の餌 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
まして、彼が鞄をるために被害者を窓から突き落としたものとは想像もされないことである。すると、その陳述はそのまま事実と認めてもいい。ほかに訊きたいことがある。
五階の窓:03 合作の三 (新字新仮名) / 森下雨村(著)
大型の器械は、中の真空管だの測器だのという部分品だけをって行ったようである。
硝子を破る者 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
しょっちゅうお給金わりにこしらえちゃ、ただ楽しんでいるってこういうわけなんで。じゃ、つまりるんでもない、ただこうこしれえちゃ楽しんでるだけ……こいつァ、こいつァ……
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
子供にられたことにしておけばいいが、それじゃどうも気が済まない。自分を虫ケラ同様に思えばいいが、それじゃどうも気が済まない。彼は今度こそいささか失敗の苦痛を感じた。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
ぼくは、車にられているうち、どうも、はじめの運転手にられたんだ、という気がしてきました。(彼奴あいつに一円もやった。泥棒どろぼうに追銭とはこのことだ)と思えば口惜くやしくてならない。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
で、私は筆箱にはいっているちびた鉛筆をろうと思った。何か、常に彼の持っているものを身につけていたいと思ったからなのだ。ある放課後、私は彼の学級の前へ一人で偵察に行った。
灰色の記憶 (新字新仮名) / 久坂葉子(著)
あげられぬ奪られるの云い争いの末何楼なにや獅顔火鉢しかみひばちり出さんとして朋友ともだちの仙の野郎が大失策おおしくじりをした話、五十間で地廻りをなぐったことなど、縁に引かれ図に乗ってそれからそれへと饒舌しゃべり散らすうち
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「まあ! 海蛇ショウ・オルムが? あの海蛇の頸飾りがられたんですの?」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
何もらずに逃出しました理由は、ほかでも御座いませぬ。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「君、これはったやつかね。それとも脱税品コントラバンドか」
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
せいぜい農家の鶏をりにくる位なものだろう。
雪の上の足跡 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
つても駄目だ
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
見せびらかして、平気でいたのは、自分がった金じゃないからだ。第一、曲者の履いていた、裏金を剥いだ雪駄が洒落過ぎている——
「でも、わたしは、出来心にしろ他人ひと様のお金をって逃げたんですから、捕まれば、泥棒といわれても仕方がありませんもの」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう方々でも鎮まって、かれこれられたものの気の附く時分なんだけれど、騒ぎがあんまりひどかったから、まだみんな心が落着かないでいるんだよ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうも全く孝助はらないようにございます、お腹立はらだちの段は重々御尤ごもっともでござりますが、お手打の儀は何卒なにとぞ廿三までお日延ひのべの程を願いとう存じます
「のみならず、栄三郎め、その女にみつぐ金に窮して、いたし方もあろうに蔵宿からかたった! 用人白木重兵衛がそのあとへ行って調べて参りました」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
むしろったの殺したのとやにヤボ臭い刑事事件なんぞよりも、いっそ民事の、なにか離婚ばなしかなんかのほうが、こうしんみりして、面白い位いですよ……
あやつり裁判 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
人の命を取ることと、人の財布をることといずれが重い——人を斬ることをなんとも思わぬ竜之助が、人の金銭をとったことに苦悶くもんするは何故なぜであろう。
「ぬすが? 馬鹿な奴ですなあ。そげん山の芋の好きな男がおりますか?」と三平君おおいに感心している。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
るのならもっと上手にとって貰いたいと澄ましていうと主人は一層大きな声で面白そうに笑い続けた。
機械 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「高次てえ人はなんにもりゃあしねえ。みんな知らねえんだ。高次てえ人は金なんか盗りゃあしなかった。あのときお店には、盗るような金なんてなかったんだ」
夜の蝶 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一度やられると、たとえやった犯人の顔がわかっていても、二度とおたからは出て来ないのです。さわぎたてると、どうせろくなことにはならない。また何かられます。