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かんしゃく
ふりがな文庫
“
癇癪
(
かんしゃく
)” の例文
その怒りは心頭より発したる怒りではなく、
癇癪
(
かんしゃく
)
より出でた怒りでしたけれども、この場合怒ることのできたのは
物怪
(
もっけ
)
の幸いでした。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
語学だの数学だのという基礎学は、
癇癪
(
かんしゃく
)
にさわるほど同級の者たちが呑込みがおそいのでただもどかしさをそそられるばかりだった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「はア。まだお帰りになっていらっしゃいません。」と、いう別な電話を受けているらしい声が、また、じりじりと
癇癪
(
かんしゃく
)
にさわった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
内匠頭の
為
(
し
)
た事を、武士として、当然だとする者もあるし、
短慮
(
たんりょ
)
である、世間知らずの
坊
(
ぼ
)
ンチの
癇癪
(
かんしゃく
)
だと、非難する者もかなり多い。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
癇癪
(
かんしゃく
)
持ちの一方ならぬ、ガムシャラおやじだが、雷だけは性に合わんのだな! と、子供心にも、憐れんでいてくれる様子である。
雷嫌いの話
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
検事さんはとうとう
癇癪
(
かんしゃく
)
を起こして、下村さんか内野さんかを呼ぶつもりでしょう。壁に取りつけたポッチを一生懸命に押し出したの。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
あの
癇癪
(
かんしゃく
)
もちの小鳥が、
赤銅張
(
しゃくどうば
)
りの自分をどうにもあつかいかねている姿を想像するのは、雨蛙にとってこの上もない満足でした。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
新聞社の都合でその文章が一日でも登載されぬことがあると居士の
癇癪
(
かんしゃく
)
はたちまち破裂して早速新聞社に抗議を申込むのが常であった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
女が
癇癪
(
かんしゃく
)
を起して、mélange のコップを床に打ち附けて壊す。それから Karlstrasse の下宿屋を思い出す。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
己は
癇癪
(
かんしゃく
)
を起したり、
猜疑
(
さいぎ
)
の
目附
(
めつ
)
きで見たり、苦々しい事を
云
(
い
)
ったりした。礼を言わなくてはならないのに、そんな事をしたのだ。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
大抵
(
たいてい
)
はその顔を知っているものの、ことをあらだてるとかえって店の人気がなくなる。そこでおかみさんの
癇癪
(
かんしゃく
)
が小僧の頭に破裂する。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
どうせ褒められようとは思っていない、小さいじぶんこの伯父さんが江戸に来るたんびに、
癇癪
(
かんしゃく
)
を起こすのが面白くってよく
悪戯
(
いたずら
)
をした。
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
平田氏が
癇癪
(
かんしゃく
)
を起してこう怒鳴りつけると、その声は段々小さくなって、ウ、ウ、ウ……と、すうっと遠くの方へ消えて行った。
幽霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
僕のような弟を持ち、妹とて子供らしい意地をあらわしはじめた……兄の言葉に兄の気持が感ぜられるだけ、僕は
癇癪
(
かんしゃく
)
が起きるのだった。
わが師への書
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
……
癇癪
(
かんしゃく
)
持らしく頬のこけたそのころ六十近い師匠の国芳は、朝から晩までガブガブ茶碗酒ばかり呻っていて、滅多に仕事をしなかった。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
癇癪
(
かんしゃく
)
を起したり、大声で怒鳴りつけたりせねばならぬやうになるので、普通の病苦の上に、更に余計な苦痛を添へるわけになる。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
こういう
癇癪
(
かんしゃく
)
の起きた時は、
平常
(
ふだん
)
より余計に立働くのがお雪の癖で、虫干した物を片付けるやら、黙って
拭掃除
(
ふきそうじ
)
をするやらした。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
自分は
癇癪
(
かんしゃく
)
の不意に起る野蛮な気質を兄と同様に持っていたが、この場合兄の言葉を聞いたとき、
毫
(
ごう
)
も憤怒の念が
萌
(
きざ
)
さなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼が自分の小さな領地に
坐
(
すわ
)
りこんで、こういう細糸をありとあらゆる方向に延べひろげている様は、太鼓腹の、
癇癪
(
かんしゃく
)
もちの
古蜘蛛
(
ふるぐも
)
のようだ。
ジョン・ブル
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
が、そばには太った
癇癪
(
かんしゃく
)
もちのかみさんが、腕まくりで歩きまわって、耳ががんがんするような大声で、しゃべり立てている。
ねむい
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
しかし兄の
口惜
(
くや
)
しそうな眼つきは、今でもまざまざと見えるような気がする。兄はただ母に叱られたのが、
癇癪
(
かんしゃく
)
に
障
(
さわ
)
っただけかも知れない。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼はできるだけ我慢をしてはいたが、ついにある日、馬鹿でおまけに横着なその
女郎
(
めろう
)
にたいして、
稽古
(
けいこ
)
中に
癇癪
(
かんしゃく
)
を破裂さした。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
癇癪
(
かんしゃく
)
もちのばかが夢中になったことだから、グルーシェンカのために親爺を殺すようなことがあるが、強盗なんぞに出かけてたまるものか!
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
闇太郎、慣れぬ問題だけに、当惑して、考え込んでいたが、ここで、
癇癪
(
かんしゃく
)
を起してしまったら、相手はいよいよねじけるばかりであろう——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
この侮辱的な一言はやっと鎮まりかけた私の
癇癪
(
かんしゃく
)
をぶり返すのに十分であった。思わず皮肉な冷笑を浮べながら云い放った。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
とうとう
癇癪
(
かんしゃく
)
をおこしてしまった母親は、
削
(
けず
)
りかけのコルクをいきなり畳に投げつけて「野郎ぉ……」と
喚
(
わめ
)
くのであった。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
この文辞の間にはラスキンの
癇癪
(
かんしゃく
)
から出た皮肉も交じってはいるが、ともかくもある意味ではやはり思想上の浅草紙の弁護のようにも思われる。
浅草紙
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
声はいつもは豊かな
次中音
(
テナー
)
なのが最高音になり、発音が落ちついていてはっきりしていなかったら、まるで
癇癪
(
かんしゃく
)
を起しているように聞えたろう。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
千両の茶碗を叩きつけたところは
些
(
ちと
)
癇癪
(
かんしゃく
)
が強過ぎるか知らぬが、物に
囚
(
とら
)
われる心を砕いたところは千両じゃ
廉
(
やす
)
いくらいだ。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「君と一緒の時に限ってやられる。
俺
(
おれ
)
は一人でやられたことはないのだぜ」と私は
癇癪
(
かんしゃく
)
を起して万事彼のせいにしたが
篠笹の陰の顔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ところが、少年は何をそんなに憤慨しているのか、わけもなく
癇癪
(
かんしゃく
)
筋をふくらませて、おそろしくいけぞんざいな
痛罵
(
つうば
)
を右門に浴びせかけました。
右門捕物帖:14 曲芸三人娘
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「嘘を
吐
(
つ
)
け。」男はそう言って、わけのわからない激怒をかんじて、手をあげて女を打とうとした。ぐらぐらした苛立った
癇癪
(
かんしゃく
)
が額に筋を立てた。
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
癇癪
(
かんしゃく
)
もちの悠吉にあいそをつかして、ミネは心の冷える思いをどれほど味ったことか。そしてミネ自身が又、ひどい短気を起すこともしばしばだ。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
貞奴は
癇癪
(
かんしゃく
)
持ちだという。その癇癪が薬にもなり毒にもなったであろう。勝気で癇癪持ちに皮肉もののあるはずがない。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ついに持ち前の
癇癪
(
かんしゃく
)
玉を破裂さし、失意の人となられたのは私から見て当然すぎるほど当然ではあるが、誠にお気の毒な瞬間を作られたものである。
素人製陶本窯を築くべからず:――製陶上についてかつて前山久吉さんを激怒せしめた私のあやまち――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
その手紙をかき出すについて、まず伸子は、
癇癪
(
かんしゃく
)
をしずめなければならないと考えているところだった。文明社の社長、木下徹は、案外な男だった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
少し自分がその人のせいで苦しい目をしたというような場合すぐに
癇癪
(
かんしゃく
)
を立てておこりつける母親の寐ている隙に
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「そんな
莫迦気
(
ばかげ
)
た証跡が」熊城は
癇癪
(
かんしゃく
)
を抑えるような声を出して、「いったいどこで足跡の前後が証明されるね?」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
チッバ
無理往生
(
むりわうじゃう
)
の
堪忍
(
かんにん
)
と
持前
(
もちまへ
)
の
癇癪
(
かんしゃく
)
との
出逢
(
であ
)
ひがしらで、
挨拶
(
あいさつ
)
の
反
(
そり
)
が
合
(
あは
)
ぬゆゑ、
肉體中
(
からだぢゅう
)
が
顫動
(
ふるへ
)
るわい。
引退
(
ひきさが
)
らう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
癇癪
(
かんしゃく
)
を起して横顔の一ツも
撲
(
なぐ
)
られたいと、
芸妓
(
げいしゃ
)
のお前にいつも言われた、男が一人そのくらいに
惚
(
ほ
)
れたら
可
(
よ
)
かろう。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おじいさんや、おばあさんは、その可愛い孫の
我儘
(
わがまま
)
とか
癇癪
(
かんしゃく
)
持とか、或は、臆病とかの欠点をよく知っています。
童話を書く時の心
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
山鶯
(
やまうぐいす
)
だの、
閑古鳥
(
かんこどり
)
だのの元気よく
囀
(
さえず
)
ることといったら! すこし僕は考えごとがあるんだから
黙
(
だま
)
っていてくれないかなあ、と
癇癪
(
かんしゃく
)
を起したくなる位です。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
久三は例の持前の
癇癪
(
かんしゃく
)
癖から、一寸した事で昨夜は激しい口調で
謠
(
うたい
)
をしたりした五十嵐をしかり飛ばしたりした。
雪
(新字新仮名)
/
楠田匡介
(著)
要次郎も
癇癪
(
かんしゃく
)
をおこして、足もとの小石を拾って、二、三度
叩
(
たた
)
きつけると、二匹の犬は悲鳴をあげて逃げ去った。
影を踏まれた女
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
何があつても素人のやうには立騒がずともすむ
咄
(
はなし
)
なり。万事さばけて呑込み早かるべきはずなり。亭主の
癇癪
(
かんしゃく
)
も
巧
(
たくみ
)
にそらして気嫌を直さすべきはずなり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
たゞ彼は気短かになつて、しば/\
癇癪
(
かんしゃく
)
を起した。それらの性癖の諸点が
却
(
かえ
)
つて彼を厳格端正に表面化させたのだと雪子はYに就いての世評の裏を知つた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
もう、
癇癪
(
かんしゃく
)
を起こしている。どこもここもひどく誇張したジコップ・ピジャマの
裾
(
すそ
)
が、ヒラヒラと風になびく。
キャラコさん:05 鴎
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
真実一身の道楽と
云
(
い
)
おうか、慈悲と云おうか、
癇癪
(
かんしゃく
)
と云おうか、マアそんな所から
大
(
おおい
)
に働いたことがあります。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
きっと私の言い方が気に
障
(
さわ
)
ったに違いない。彼女の頭にはかっと血が上る。
嘴
(
くちばし
)
のところに
癇癪
(
かんしゃく
)
の
皺
(
しわ
)
が垂れ下がる。彼女は今にも真っ赤に怒り出しそうになる。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「行けんじゃい!」と木之助は
癇癪
(
かんしゃく
)
を起して
呶鳴
(
どな
)
るようにいった。「おツタのいう通りだ」と女房もいった。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
“癇癪”の意味
《名詞》
神経質で怒りっぽい性質。
立腹すること。
(出典:Wiktionary)
癇
漢検1級
部首:⽧
17画
癪
漢検1級
部首:⽧
21画
“癇癪”で始まる語句
癇癪持
癇癪玉
癇癪筋
癇癪声
癇癪事
癇癪交
癇癪紛
癇癪面