トップ
>
瘧
>
おこり
ふりがな文庫
“
瘧
(
おこり
)” の例文
それを聞くと、ハッチソンは弾かれたように腰を浮かし、まるで
瘧
(
おこり
)
にでもかかったように慄えていたが、やがてとぎれとぎれな声で
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「幽霊も大袈裟だがよ、悪く、蜻蛉に
祟
(
たた
)
られると、
瘧
(
おこり
)
を病むというから
可恐
(
おっかね
)
えです。縄をかけたら、また祟って出やしねえかな。」
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
また、福島県信夫郡平野村、医王寺境内にある信夫荘司の墓石が、
瘧
(
おこり
)
を治するに特効ありとて、これを砕きて持ち去るそうである。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
この恐ろしいスッパ抜きは
却
(
かえ
)
って気分をサバサバとさせ、私は
瘧
(
おこり
)
が取れたように一時に肩が軽くなって、涙さえ止まってしまいました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「本人は歸りたいに決つてゐます。あんな
蛸入道
(
たこにふだう
)
が
瘧
(
おこり
)
を
患
(
わづら
)
つたやうな、五十男の手掛になつて、日蔭者で一生を送りたい筈はありません」
銭形平次捕物控:099 お篠姉妹
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
瘧
(
おこり
)
の様に身を
戦
(
おのの
)
かせながら、でも、そんなでいて、やっぱり上の話声に聞き耳を立てないではいられなかったのでございます。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
余は淡路町の下宿に「大文学者」という四字を半紙に書いて壁に張りつけながら
瘧
(
おこり
)
を病んでうんうん言っていたことがあった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
勿論一種の
信仰療法
(
クリスチャンサイエンス
)
なんだが、まずデイは、
瘧
(
おこり
)
患者を附添いといっしょに一室へ入れ、鍵を附添いに与えて扉を鎖さしめる。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
春濤は失意に
加
(
くわう
)
るに
瘧
(
おこり
)
を
患
(
わずら
)
い、毅堂の帰府を待ち得ず
悄然
(
しょうぜん
)
として西帰の途に上った。これらの事は皆『春濤先生逸事談』に記述せられている。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私は、その瞬間、ぞっとして、背筋を冷たいものが走った様に感じたのでございます——
瘧
(
おこり
)
の
発作
(
ほっさ
)
にでもとらわれたような
慄
(
ふる
)
えを感じて参りました。
両面競牡丹
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
私は着くや否父の並びに床をとってもらい、打臥したが、右の西崎医の診察では
瘧
(
おこり
)
だというのでその手当をした。数日間は随分熱も高く出て苦しかった。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
「
姐
(
あね
)
さん、どうしただね!」
教父
(
クーム
)
は家のなかへ入るなり声をかけた。「お前さんまだ
瘧
(
おこり
)
をふるつてるだかね?」
ディカーニカ近郷夜話 前篇:03 ソロチンツイの定期市
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
さうかそんぢやよし/\
歸
(
けえ
)
れなんていふもんだからほつと
息
(
いき
)
つきあんした、
瘧
(
おこり
)
落
(
お
)
ちたやうでさあはあ、そんだからわし
等
(
ら
)
なんぼにもあゝい
處
(
ところ
)
へは
出
(
で
)
んな
厭
(
や
)
で
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
すでに、都を立つまえから彼は持病の
瘧
(
おこり
)
をわずらっていた。それも
癒
(
い
)
えぬうち征途についていたのである。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私はまるで猛烈な
瘧
(
おこり
)
の発作におそわれたように、頭のてっぺんから足の
爪先
(
つまさき
)
まで、がたがた震えました。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
ゆうべ何もかも過ぎ去ったように思ったのは、
瘧
(
おこり
)
の発作の
後
(
のち
)
に、病人が全快したように思う
類
(
るい
)
ではあるまいか。又あの
謎
(
なぞ
)
の目が見たくなることがありはすまいか。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
気イ沈着ける心持で力ア入れて
踏張
(
ふんば
)
れば踏張る程足イ顫えるが、
何
(
ど
)
ういうもんだろう、
私
(
わし
)
イ
斯
(
こ
)
んなに身体顫った事アねえ、四年前に
瘧
(
おこり
)
イふるった事が有ったがね
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「都合のいい言葉だ」と去定は云った、「高熱が続けば
瘧
(
おこり
)
、咳が出れば労咳、内臓に故障がなくてぶらぶらしていれば気鬱症、——おまえ今日からでも町医者ができるぞ」
赤ひげ診療譚:04 三度目の正直
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
瘧
(
おこり
)
でぶるぶる震え、考える力も動く力もなく、憂鬱の暗がりのなかで、何日も何日も病臥した。
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
昔大竜大湖の
湄
(
ほとり
)
に
蛻
(
かわぬ
)
ぎ、その鱗甲より虫出で
頃刻
(
しばらく
)
して蜻蜓の
朱
(
あか
)
きに
化
(
な
)
る、人これを取れば
瘧
(
おこり
)
を病む、それより朱蜻蜓を竜甲とも竜孫ともいい
敢
(
あ
)
えて
傷
(
そこな
)
わずと載せたを見て
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
斯
(
こ
)
う頭の芯がシーンと冷めたくなって、まるで
瘧
(
おこり
)
のように、ぶるぶる
顫
(
ふる
)
えてしまうんですからね、まったく、子供だましみたいな話なんですけど、僕はこの恐怖のために
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
甚内が
瘧
(
おこり
)
を
患
(
わずら
)
い出したということを聞き込んで、押入ってついにこれを捕縛することができた。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
弥三郎
(
やさぶろう
)
!」——わたしは舌さえ動かせたなら、こう叫んでいたかも知れません。が、声を揚げるどころかわたしの体は
瘧
(
おこり
)
を病んだように、
震
(
ふる
)
えているばかりでございました。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さすがの迷亭もこの
不意撃
(
ふいうち
)
には
胆
(
きも
)
を抜かれたものと見えて、しばらくは
呆然
(
ぼうぜん
)
として
瘧
(
おこり
)
の落ちた病人のように坐っていたが、
驚愕
(
きょうがく
)
の
箍
(
たが
)
がゆるんでだんだん持前の本態に復すると共に
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蚊の
嘴
(
くちばし
)
といえば云うにも足らぬものだが、淀川両岸に多いアノフェレスという蚊の嘴は、其昔其川の傍の山崎村に
棲
(
す
)
んで居た
一夜庵
(
いちやあん
)
の宗鑑の
膚
(
はだえ
)
を
螫
(
さ
)
して、そして宗鑑に
瘧
(
おこり
)
をわずらわせ
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
どれだけ歯を喰い縛ってみても止らないです。仕様がないからそのまま倒れて居るとやっぱり震えて居る。まるで
瘧
(
おこり
)
が起ったような有様。……で大方二、三時間も震えて居ったでしょう。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
炮烙を捨つるは頭痛を直す
呪
(
まじない
)
、火吹竹は
瘧
(
おこり
)
の呪とかいへどたしかならず。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
手前たちはほんとの大学出の医者が毎日
診
(
み
)
に来てくれるのを有難えとも思わねえんだろな?——ジョン、頭を打ち割られたお前も、——ジョージ・メリー、まだ六時間とたたねえ前に
瘧
(
おこり
)
をやって
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
まるで
瘧
(
おこり
)
の落ちた病人よろしく、ケロリとしたもので
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
「なじょでがす?
爺様
(
じんつぁま
)
の
瘧
(
おこり
)
は?」
芋
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「印度洋の特有な悪性の
瘧
(
おこり
)
らしい」
氷れる花嫁
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
瘧
(
おこり
)
を
慄
(
ふる
)
ふ電線に
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「
瘧
(
おこり
)
か。」
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
花はまるで
瘧
(
おこり
)
に憑かれたように、ワナワナと体を慄わせながら微かに頷くと、真名古に手を取られてよろめくように課長室を出ていった。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
また民間にて、
瘧
(
おこり
)
にかかるものは
茄子
(
なす
)
を食するを忌む。その意味に、茄子は熟して落ちぬものなれば、落ちぬを嫌う故であるとのことだ。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
「本人は帰りたいに決っています。あんな
蛸入道
(
たこにゅうどう
)
が
瘧
(
おこり
)
を患ったような、五十男の手掛けになって、日蔭者で一生を送りたいはずはありません」
銭形平次捕物控:099 お篠姉妹
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
突然、
瘧
(
おこり
)
がおちたという感じで、あれ程うめき苦しんでいた三笠老人が、グッタリと死人の様に動かなくなってしまった。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ふざけるな。
瘧
(
おこり
)
は俺の持病なんだ。この持病の苦しみを、いちいち他人へ
断
(
ことわ
)
ッてから寝ろというのか
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
霊廟
(
れいびょう
)
の土の
瘧
(
おこり
)
を落し、
秘符
(
ひふ
)
の威徳の鬼を追ふやう、
立処
(
たちどころ
)
に坊主の虫歯を
癒
(
いや
)
したは
然
(
さ
)
ることながら、
路々
(
みちみち
)
も
悪臭
(
わるぐさ
)
さの消えないばかりか、
口中
(
こうちゅう
)
の臭気は、次第に持つ手を
伝
(
つたわ
)
つて
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それが群臣の耳に入ったので、多年兵を動かして人臣辛苦
息
(
や
)
まざるにこの上北海を攻むるようではとても続かぬ故王を除くべしと同意し、
瘧
(
おこり
)
を病むに乗じ
蒲団蒸
(
ふとんむし
)
にして
弑
(
しい
)
した。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
素足のままふところ手をして
瘧
(
おこり
)
にかかったかのようにがたがた震えている者、きみの悪いほど、白い硬ばった顔でときどきびくんと
発条
(
ばね
)
じかけのように首だけ後ろへ振向ける者
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
が、そうではないような気がして、
瘧
(
おこり
)
の発作にでもかかったかのようにぶるぶる震えた。その顔のなにが自分をそんなぐあいにどぎまぎさせたのであろうか? 私はじっと見つめた。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
甚内が鳥越橋でお
処刑
(
しおき
)
になる最後の時の言葉に、
瘧
(
おこり
)
さえ患わなければ、召捕られるようなことはなかったのだ、我れ死すとも
魂魄
(
こんぱく
)
をこの
土
(
ど
)
に留め、永く瘧に悩む人を助けんと言いながら
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どれもこれも蒲団の下でまるで
瘧
(
おこり
)
でもわづらつてをるかのやうにガタガタ震へて、まだその上に、自分の毛皮外套のなかへ頭を突つこみかねないことを、ちやんとわしは知つてゐるのぢや。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:06 紛失した国書
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
若い伯爵は
瘧
(
おこり
)
に苦しみながら、突然、絶望に陥った。
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
ひどい
移り気
(
キャプリシュウ
)
で、何かにひどく熱中するかと思うと、すぐ飽きて、次の日になると
瘧
(
おこり
)
でも落ちたように見向きもしなくなる。
キャラコさん:02 雪の山小屋
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
巻いてしまいました。——あとは無我夢中、気の付いた時は、ここへ帰って来て
瘧
(
おこり
)
のように
顫
(
ふる
)
えておりました
銭形平次捕物控:084 お染の歎き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私はもう夢中でした。丁度
瘧
(
おこり
)
にでも
罹
(
かか
)
った様に、身体が小刻みに絶えず震えていました。腋の下から冷いものが、タラタラと腕を伝って落ちるのが分りました。
双生児:――ある死刑囚が教誨師にうちあけた話――
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
また、
瘧
(
おこり
)
と称する病を治する方法は、梨を厚く切りて、これに向かいて
呪文
(
じゅもん
)
を唱うるなり。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
霊廟
(
れいびょう
)
の土の
瘧
(
おこり
)
を落し、秘符の威徳の鬼を追うよう、たちどころに坊主の虫歯を
癒
(
いや
)
したはさることながら、
路々
(
みちみち
)
も
悪臭
(
わるぐさ
)
さの消えないばかりか、口中の臭気は、次第に持つ手を
伝
(
つたわ
)
って
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“瘧”の意味
《名詞》
(ギャク、おこり)マラリア。(夏の季語)
(出典:Wiktionary)
瘧
漢検1級
部首:⽧
14画
“瘧”を含む語句
瘧病
瘧疾
截瘧
痎瘧
瘧疫
瘧鬼