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燥
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はしゃ
ふりがな文庫
“
燥
(
はしゃ
)” の例文
「あらッ!」とお宮は、入って来るからちょうど
真正面
(
まとも
)
にそっち向きに
趺座
(
あぐら
)
をかいていた柳沢の顔を見て
燥
(
はしゃ
)
いだように笑いかかった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
些細
(
ささい
)
のことで
燥
(
はしゃ
)
いだり、又逆に
直
(
す
)
ぐ
不貞腐
(
ふてく
)
された。こういう
性質
(
たち
)
のものは、とうてい我々のような仕事をやって行くことは出来ない。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「好いお天気」の聯想、「蝉」の想像も盲目の自分にはつかないのに妻はまたひとりで
燥
(
はしゃ
)
いでいるとでも思っているのではなかろうか。
明暗
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
昨夜あんなに
燥
(
はしゃ
)
いだのは、ただ訳もなく酔っ払っていただけなのだ。………この妹は自分のことより外に何も考えない人なのだ。………
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お島はそうした男たちと一緒に働いたり、ふざけたりして
燥
(
はしゃ
)
ぐことが
好
(
すき
)
であったが、誰もまだ彼女の
頬
(
ほお
)
や手に触れたという者はなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
私はまだ
燥
(
はしゃ
)
いでる一同の後ろから、この不意な、そして無遠慮な異郷人の闖入行為を立ち
竦
(
すく
)
んで恥じねばならなかった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
名古屋の客は、あとで、廓の明保野で——落雁で馴染の芸妓を二三人一座に——そう云って、
燥
(
はしゃ
)
ぎもしたのだそうで。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
不味
(
まず
)
い紅茶だの菓子だのを取り寄せながら、私の枕元で夜遅くまで芝居や活動の話をしいしい、何の他愛もなくキャッキャと
燥
(
はしゃ
)
いで帰って行ったので
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
君の実感のこもった
猥談
(
わいだん
)
でも聞こうじゃないか、と阿部は急に
燥
(
はしゃ
)
いだ調子になって、書類を懐に入れ、手を叩いた。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
おかみさんはきいきい
言
(
い
)
って、
火箸
(
ひばし
)
でぶとうとするし、
子供達
(
こどもたち
)
もわいわい
燥
(
はしゃ
)
いで、
捕
(
つかま
)
えようとするはずみにお
互
(
たが
)
いにぶつかって
転
(
ころ
)
んだりしてしまいました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その不安定な無名指に異様な
顫動
(
せんどう
)
が起って、クリヴォフ夫人は俄然
燥
(
はしゃ
)
ぎだしたような態度に変ったからだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
朝
燥
(
はしゃ
)
いでいて、昼から滅入ったとか、昼まで滅入っていて、夕方から元気になったとか——、ともかく、
真物
(
ほんもの
)
の主人が殺されるまで一日の間に、様子の変った人間はなかったか
銭形平次捕物控:074 二度死んだ男
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
本当に深い香りを
漂
(
ただよ
)
わせる花です。それが
燥
(
はしゃ
)
ぎきった空気の中を遠くまで流れて行きます。小鳥も人間も、この香りに花の在所へと
誘
(
さそ
)
われるのです。鼻の感覚の鈍くなったお爺さんもです。
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
朝起懸けから、飲めるぜとばかりで、酒を買いに行く者、
肴
(
さかな
)
を拵える者、その中には万年屋の女房も交って、人一倍
燥
(
はしゃ
)
いでいる。
元方
(
もとかた
)
の銭占屋は気のない顔をして、皆のする様を見ていた。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
細君は
燥
(
はしゃ
)
いだ唇に、ヒステレックな淋しい
笑
(
え
)
みを浮べた。筋の通った鼻などの上に、
斑
(
まだら
)
になった白粉の
痕
(
あと
)
が、浅井の目に物悲しく映った。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
明日はいよいよ乗船すると云う前の晩には、ローゼマリーは特に許されて悦子の部屋に泊ったが、その夜の二人の
燥
(
はしゃ
)
ぎようと云ったらなかった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「はあ、これなればこそ
可
(
よ
)
けれ、聞くも
可恐
(
おそろ
)
しげな
煙硝庫
(
えんしょうぐら
)
が、カラカラとして
燥
(
はしゃ
)
いで、日が当っては大事じゃ。」
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
N老人と警部のA君が飛び込んで来て、俊敏のF君が奮起し、それに私までが
燥
(
はしゃ
)
ぎ出したので、重厚のHさん、風邪ひき
鯰
(
なまず
)
のわが庄亮までが、よし行こうとなった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
ガタガタする車体の中で、メチャメチャに
燥
(
はしゃ
)
いでお出でになった三人は、私が安全剃刀の刃で、
後窓
(
アイホール
)
の
周囲
(
まわり
)
をUの字型に切抜くのをチットモお気付きになりませんでした。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
注
(
つ
)
げ、注げ、今日はわがうんこ会社のために大宴会を張るのだ、と阿部は黄色い声をあげ、小森君、僕は八年前からこの
女子
(
おなご
)
に惚れて居るのじゃ、というのは
嘘
(
うそ
)
じゃ、などと
燥
(
はしゃ
)
いだ。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
健は昨日からのお恵の
燥
(
はしゃ
)
いだ、ソワソワした態度にムカムカしていた。
不在地主
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「では、その男は死人の室を、親しきものが行き通うがごとくに、戻っていったと
仰言
(
おっしゃ
)
るのですね」とクリヴォフ夫人は、急に
燥
(
はしゃ
)
ぎ出したような陽気な調子になって、レナウの「
秋の心
(
ヘルプストゲフュール
)
」を口にした。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
豊作が先ず斯う、
燥
(
はしゃ
)
いだ口調で切り出したのであった。
都会地図の膨脹
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「あら、ご
馳走
(
ちそう
)
さま、
妬
(
や
)
けますわ」と
燥
(
はしゃ
)
いでいった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
外は今日も暑い日が照りはじめているらしい。路次のなかの
水道際
(
すいどうぎわ
)
に、ばちゃばちゃという水の音がしてバケツの
鉉
(
つる
)
の響きが
燥
(
はしゃ
)
いで聞えた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
羽目も天井も乾いて
燥
(
はしゃ
)
いで、
煤
(
すす
)
の
引火奴
(
ほくち
)
に
礫
(
つぶて
)
が飛ぶと、そのままチリチリと火の粉になって燃出しそうな物騒さ。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それに今宵は誰も彼もが羽目を
外
(
はず
)
して
燥
(
はしゃ
)
いでいるのに、どう云うわけか平中はひとり沈んで、自分だけは酒が
甘
(
うま
)
くないと云いたげな様子をしているのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私があんなに打ち解けて皆様と一緒に愉快そうに
燥
(
はしゃ
)
いだ事は生まれて初めてだったでしょう。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
盛んに
燥
(
はしゃ
)
いで、昔のパンの会の話やら、その頃の私たちの唄をせがまれるままに歌って、大恐悦で教授したこと、それから、みんなの顔のスケッチをする、胴上げはされる。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
そして
小
(
ちいさ
)
いおりから母親に
媚
(
こ
)
びることを学ばされて、そんな事にのみ
敏
(
さと
)
い心から、
自然
(
ひとりで
)
に
故
(
ことさ
)
ら二人に甘えてみせたり、
燥
(
はしゃ
)
いでみせたりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
幼いものは、
驚破
(
すわ
)
というと自分の目を先に
塞
(
ふさ
)
ぐのであるから、敵の動静はよくも認めず、血迷ってただ
燥
(
はしゃ
)
ぐ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
葡萄酒のせいもあるかも知れないが、雪子はさすがによく
燥
(
はしゃ
)
いで例になくおしゃべりをした。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「私横浜の叔母のところへ行けば、少しは相談に乗ってくれますよ。」お銀は
燥
(
はしゃ
)
いだような調子で、
披露
(
ひろう
)
のことなどをいろいろに考えていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お嬢様も近々御縁が
極
(
きま
)
りますそうで、おめでとう存じます、えへへ、と
燥
(
はしゃ
)
いだ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
野村は非常な
燥
(
はしゃ
)
ぎ方で、子供のように喜んでしまって、海の方が見える座敷の雨戸を大急ぎで開けさせ、書斎を見て戴きましょうと云って、ついでに家じゅうの部屋を台所まで案内して廻った。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
機嫌のいい時には、これまで口にしたこともなかった、
猥
(
みだ
)
らな
端唄
(
はうた
)
の文句などを
低声
(
こごえ
)
で
謡
(
うた
)
って、一人で
燥
(
はしゃ
)
いでいた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
路傍
(
みちばた
)
に石の古井筒があるが、欠目に
青苔
(
あおごけ
)
の生えた、それにも濡色はなく、ばさばさ
燥
(
はしゃ
)
いで、
流
(
ながし
)
も
乾
(
から
)
びている。そこいら何軒かして日に幾度、と数えるほどは米を磨ぐものも無いのであろう。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ひどく興奮して
燥
(
はしゃ
)
いだりした。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
燥
(
はしゃ
)
いだ
舗石
(
しきいし
)
のうえに、下駄や靴の音が騒々しく聞えて、寒い風が陽気な店の明り先に白い砂を吹き立てていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「陰気だ陰気だ、
此奴
(
こいつ
)
滅入
(
めい
)
って気が浮かん、こりゃ、
汝等
(
わいら
)
出て
燥
(
はしゃ
)
げやい。」
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二階の連中と出しっこをして、菓子も水ものを買って、それを食べながら、花を引いたり、
燥
(
はしゃ
)
いだ調子で話をしたりするうちに、夜
寄席
(
よせ
)
へ行く約束などが出来た。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いつもそこに集まって陽気に
燥
(
はしゃ
)
いでいる芸術家仲間の
雰囲気
(
ふんいき
)
も、
棄
(
す
)
てがたいものであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お銀のちょっとした
燥
(
はしゃ
)
いだ口の利き方や、
焦
(
いら
)
だちやすい動物をおひゃらかして
悦
(
よろこ
)
んでいるような気軽な態度を見せられるたんびに、笹村をして妻を太々しい女のように思わしめた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
燥
(
はしゃ
)
ぎきった
廂
(
ひさし
)
にぱちぱちと音がして、二時ごろ雨が降って来た。その音にお庄は目をさまして、急いで高い
物干竿
(
ものほしざお
)
にかかっていた洗濯物を取り入れた。中にはまだ
湿々
(
じめじめ
)
しているのもあった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
しかし間もなく
錦紗
(
きんしゃ
)
の絞りの
風呂敷包
(
ふろしきづつ
)
みが届いて、葉子がそのつもりで羽織を着て、独りで
燥
(
はしゃ
)
ぎ気味になったところで、今夜ここで一泊したいからと女中を呼んで言い入れると、しばらくしてから
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
三時ごろ、お庄は帳場の蔭で、新聞の三面記事に読み
耽
(
ふけ
)
りながら、そうした世間や自分の身のうえなどをいろいろに考えていた。広い通りには折々荷車が通って、
燥
(
はしゃ
)
ぎきった砂がぼこぼこと立った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
燥
常用漢字
中学
部首:⽕
17画
“燥”を含む語句
焦燥
乾燥
燥気
無味乾燥
枯燥
急燥
高燥
燥々
燥立
乾燥無味
燥烈
燥焦
焦燥感
狂燥
空焦燥
遣悶焦燥
燥氣
燥急
焦燥気味
涸燥
...