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殺戮
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さつりく
ふりがな文庫
“
殺戮
(
さつりく
)” の例文
恥を知らない太陽の光は、再び薔薇に返って来た真昼の
寂寞
(
せきばく
)
を切り開いて、この
殺戮
(
さつりく
)
と掠奪とに勝ち誇っている蜘蛛の姿を照らした。
女
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
同時に彼等の持前とする
殺戮
(
さつりく
)
と兇暴な
質
(
たち
)
も、野に返った野獣と同じで、とても人間の
仕業
(
しわざ
)
とは解し得ないことを平然とやって歩いた。
剣の四君子:03 林崎甚助
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
崇拝の共通ということのために、彼らは互いに剣をもって
殺戮
(
さつりく
)
し合った。彼らはおのおのの神を創り出して互いに招き合っている。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
しのつくばかりの霰弾は、フランスの鷲の勇士のまわりに風にひるがえってる三色旗に雨注した。全軍は殺到し、無比の
殺戮
(
さつりく
)
が初まった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
いや、こんな理窟はどうでも、俺は暴動に、
殺戮
(
さつりく
)
に、流血に魅力を感じていたのだ。理窟抜きに、俺は血に飢えていたのである。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
▼ もっと見る
このような闘争
殺戮
(
さつりく
)
の世界が、美しい花園や庭の木立ちの間に行なわれているのである。人間が国際連盟の夢を見ている間に。
簔虫と蜘蛛
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
蠢
(
うごめ
)
き、まつわるものの、いやらしさ。周囲の空寂と神秘との迷信的な不気味さ。私自身の荒廃の感じ。絶えざる
殺戮
(
さつりく
)
の残酷さ。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
氏は極端にまでこの説を推論して、もし神が我々に命ずるに
殺戮
(
さつりく
)
を以てしたならば、殺戮も善となるであろうとまでにいった。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
たとえば英国のごとくデーンがセルトを
逐
(
お
)
い、ノルマンがサクソンを
殺戮
(
さつりく
)
するという歴史であったら、地名はその都度改まらずにはいない。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ニコリフスクに恐ろしい
殺戮
(
さつりく
)
の起った時分のことであった。そのニコリフスクから五六里離れた村に過激派のクラネクと云う警察署長がいた。
警察署長
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
あるいは同族
殺戮
(
さつりく
)
の日において民心に宿った悲痛の思いと願いを、一身にうけてあらわされたのだと申してもいいであろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
殺戮
(
さつりく
)
がどうして平和を齎らし得よう。吾々はいつも自然な人情の声にこそ耳を傾けねばならぬ。愛し合いたいとそれは言っているではないか。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
果して然らば、地球人類がお互い同士に
猜疑
(
さいぎ
)
し、
堕
(
お
)
とし合い、
殺戮
(
さつりく
)
し合うことは賢明なることであろうか。断じて然らず。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
この夏あたりから、神田一圓を荒し廻る辻斬の無法慘虐な
殺戮
(
さつりく
)
は町人達は言ふ迄もなく武家も役人も、御用聞の平次も腹に据ゑ兼ねてゐたのです。
銭形平次捕物控:068 辻斬綺談
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
技術が進歩したために、戦争の規模が大きくなり、戦闘の方法が残酷になり、被害者が多数になって、人類は相互
殺戮
(
さつりく
)
による恐怖におびえている。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
そしてすぺいんに闘牛という「聖なる
殺戮
(
さつりく
)
」があとを絶たないあいだ、
過ぎし日
(
バイ・ゴン・デイス
)
を盲愛するこの国の人々は、銘々がめいめいの魂の全部をあげて
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
曩
(
さ
)
きに
奇貨
(
きか
)
とし重んじたる
彼
(
か
)
の敵国の人物を
目
(
もく
)
して
不臣不忠
(
ふしんふちゅう
)
と
唱
(
とな
)
え、これを
擯斥
(
ひんせき
)
して近づけざるのみか、時としては
殺戮
(
さつりく
)
することさえ
少
(
すく
)
なからず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
刑者にとつて
殺戮
(
さつりく
)
は欲する所ではない。被刑者がもしその苦痛に堪へず宗門を「転ぶ」と一言云ふならば彼等はすぐその場に刑をとかれるのである。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
いなそれのみならず
殺戮
(
さつりく
)
の先登者として、生きんがための行動者として、今や三島由紀夫は完全な自覺と決意とをわがものにしたと言つていいだらう。
三島由紀夫:ナルシシスムの運命
(旧字旧仮名)
/
神西清
(著)
どうせ、駄目なものは苦しませぬようにと、野獣にも友愛の
殺戮
(
さつりく
)
がある。医師にも、陰微な愛として安死術がある。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
私がこの書を書いたのは、日本の文壇に自然主義が横行して、すべての詩美と詩的精神を
殺戮
(
さつりく
)
した時代であった。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
唯一の理由なる生命の回復、或は持続を、平然と裏切って、
却
(
かえ
)
って之を
殺戮
(
さつりく
)
することによってのみ成り立ち得る。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
教授は、
殺戮
(
さつりく
)
に対する自分の側の不備をちゃんと知っていた。ところで、漁夫のほうも教授がこれから何をしようとしているのか、すぐ察してしまった。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
もちろん土人たちに教えられずとも、類人猿にあらずして何者がかくまでも惨酷なる
殺戮
(
さつりく
)
をなし得たであろう。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
大きくすれば味方に怪我人の出るのは言うまでもないこと、捕り手のうちにも
殺戮
(
さつりく
)
される者が出るに違いない。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
若
(
も
)
し又
惣
(
すべ
)
ての
文学者
(
ぶんがくしや
)
を
一時
(
いちじ
)
に
殺戮
(
さつりく
)
すれば其
死屍
(
しゝ
)
は以て
日本海
(
につぽんかい
)
を
埋
(
うづ
)
むべく其
血
(
ち
)
は以て
太平洋
(
たいへいよう
)
を
変色
(
へんしよく
)
せしむべし。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
何かしら血を湧かせ、何かしら心を踊らせ、何かしらゾクゾクさせるものを、女性
殺戮
(
さつりく
)
から彼は感じられた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
逸楽と
殺戮
(
さつりく
)
との幻覚を胸にはらんでる巨大な
猫
(
ねこ
)
のように、内に思いを潜めながら影の中にうずくまってる民衆の姿を、クリストフは眼に見るような気がした。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
破壊と
殺戮
(
さつりく
)
を行ない、自分の徳をうしなって子孫まで絶やしてしまうのですが、それもつまりは財宝を軽んじて名誉を重しとする、その惑いのせいであります。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
西洋人は、日本が平和な文芸にふけっていた間は、野蛮国と見なしていたものである。しかるに満州の戦場に大々的
殺戮
(
さつりく
)
を行ない始めてから文明国と呼んでいる。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
しかし、今や彼らは連戦連勝の栄光の頂点で、
尽
(
ことごと
)
く彼らの過去に
殺戮
(
さつりく
)
した血色のために気が狂っていた。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しかし、今や彼らは連戦連勝の栄光の頂点で、尽く彼らの過去に
殺戮
(
さつりく
)
した血色のために気が狂っていた。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
ところが
漢奸
(
かんかん
)
だというので漢口の附近で一網打尽に
殺戮
(
さつりく
)
されたらしい。漢口の山の中に伝書鳩の箱や設備が残っていたということだが、全然それきり消息がない。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
遂にこれを
殺戮
(
さつりく
)
するか、または奴隷として虐使するのが、殊に原始時代にあっては普通の人情であろう。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
田崎は例の如く肩を
怒
(
いか
)
らして力味返った。此の人は
其後
(
そのご
)
陸軍士官となり日清戦争の時、
血気
(
けっき
)
の戦死を
遂
(
と
)
げた位であったから、
殺戮
(
さつりく
)
には
天性
(
てんせい
)
の興味を持って居たのであろう。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
数からいって
殺戮
(
さつりく
)
からいってそれは一つのアウステルリッツもしくはドレスデンであった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
十一月二十六日より二十九日にわたって数万のフランス兵が
殺戮
(
さつりく
)
されあるいは
溺死
(
できし
)
した。
早すぎる埋葬
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
悉
(
ことごと
)
くこれを打払い、我より行かんとするものは、悉くこれを禁じ、その禁を侵すものは、これを
遠島
(
えんとう
)
し、これを
殺戮
(
さつりく
)
し、
甚
(
はなは
)
だしきは
磔刑
(
たっけい
)
に処し、
而
(
しこう
)
してさらに五百石以上の軍船
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
だからこの八部衆の悪神と合戦をやってその悪神等を
殺戮
(
さつりく
)
してその
降霰
(
こうさん
)
を
防禦
(
ぼうぎょ
)
しなくてはならないということを主張するところから、その防禦に従事するところの僧侶が出来た。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
自分は自分の内の愛を
殺戮
(
さつりく
)
するために、忍びやかに苦痛を感じてはいなかったろうか。
自己の肯定と否定と
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
たった一人のために数十人を
殺戮
(
さつりく
)
するという、
残虐
(
ざんぎゃく
)
と滑稽のまじりあったふしぎな味。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
当時
殺戮
(
さつりく
)
を好む秀次のために、罪なき者を害し給うのは
不便
(
ふびん
)
であるからと、毎日牢屋から一人ずつ罪人を引き出して献じたところ、大坂、伏見、京、堺の牢の者共を悉く斬り盡し
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
マリウス敗れて此河岸に濳み、萬死を出で一生を得て、難を
亞弗利加
(
アフリカ
)
に避けしが、その翌年土を捲きて重ねて來るや、羅馬府を陷いれ、兵を
縱
(
はな
)
ちて
殺戮
(
さつりく
)
せしむること五日間なりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
そうした政治的な
殺戮
(
さつりく
)
の中にとりかこまれて生長したのだから並々の生涯ではない。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
殺戮
(
さつりく
)
の奇巧なるものに至つては、晴天白日の
下
(
もと
)
に巨万の民を殺しつゝあるなり。
最後の勝利者は誰ぞ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
恐ろしい戦争の
殺戮
(
さつりく
)
、
無辜
(
むこ
)
のものの流るゝ血、
乃至
(
ないし
)
は新しい恐ろしい思潮、共同生活を破壊する個人思想、意志と魂との
扞格
(
かんかく
)
、さういふものがこの世界にあらうなどとは夢にも知らずに
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
それを人間同士
殺戮
(
さつりく
)
の道具に造るなんていうことが、罰が当らないで済むものですか、やがて、欧羅巴がいい見せしめです、東洋の方々よ、東洋は欧羅巴に比べると、遥かに偉大なる宗教
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして、インド、アフリカ、ラテン・アメリカ等の植民地大衆は、今日第一次世界戦争の時のように従順に、帝国主義戦争の尨大な予備軍として利用され
殺戮
(
さつりく
)
される事はがえんじないだろう。
一九三二年の春
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
秘密警察の
殺戮
(
さつりく
)
や拷問等々がそこにはあって、「自由の女神」や、フォード工場や、「飢える自由」や、政府の政治をどんなに否定的にでも批判する自由等々がそこにあるはずはありません。
清水幾太郎さんへの手紙
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
いつ
炸裂
(
さくれつ
)
するかわからない、血みどろで兇悪な手あたりしだいのものを破壊し
殺戮
(
さつりく
)
したい願望、そんな危険を内包したダイナマイトみたいに、私は彼らの中にいて、しかも彼らから離れている。
愛のごとく
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
殺
常用漢字
小5
部首:⽎
10画
戮
漢検1級
部首:⼽
15画
“殺戮”で始まる語句
殺戮者
殺戮戦