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歯牙
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しが
ふりがな文庫
“
歯牙
(
しが
)” の例文
旧字:
齒牙
その黙々たる優秀者らが潜み込んでる薄明の境は、彼には息苦しかった。堅忍主義は、もう
歯牙
(
しが
)
を失ってる人々にはよいことである。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
咎立
(
とがめだて
)
をしようと
云
(
いっ
)
ても及ぶ話でないと
諦
(
あき
)
らめて居ながら、心の底には丸で
歯牙
(
しが
)
に掛けずに、
云
(
い
)
わば人を馬鹿にして居たようなものです。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
と堀尾君は鄭重にお辞儀をしたが、諸君は一斉に頷いたばかりで
歯牙
(
しが
)
にかけない。直ぐ
旧
(
もと
)
の姿勢に戻って、
夫
(
そ
)
れ/\仕事や雑談を続けた。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
貴様
(
きさま
)
の言うごとく
自
(
みずか
)
ら天下を料理する考えを
真面目
(
まじめ
)
に有するなら、
長州家老
(
ちょうしゅうかろう
)
の
適否
(
てきひ
)
のごとき
歯牙
(
しが
)
にかくるに
値
(
あた
)
いなきものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「なんの、人の世じゃ。とりわけ順慶のごときは、人の中でも、最もありふれた人柄。あれのやりそうなことよ。たれが
歯牙
(
しが
)
にかけようぞ」
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
むす子は
歯牙
(
しが
)
にかけず、晴々と笑っていて、「いいものを見せましょうか」と、台所から
一挺
(
いっちょう
)
日本の
木鋏
(
きばさみ
)
を持ち出した。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私はこん度は、まるでそんな男のことは
歯牙
(
しが
)
にもかけていないといった風に高飛車に出ました。彼女は
蜜柑
(
みかん
)
を食べながら私の顔もみずに言いました。
アパートの殺人
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
狐に関する迷信の類は最初から
歯牙
(
しが
)
にかけず、ほんの一座の座興にお角を怖がらせてみたものとしても、人と獣の区別を判断し損ねたということは
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そのときマダムは「フン」といったような顔をして、まるで
歯牙
(
しが
)
にかけないで、マニキュアを続けているのである。
映画雑感(Ⅳ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
蒼白
(
そうはく
)
なやせたその顔には、妻を
歯牙
(
しが
)
にもかけないごうまんさと、人間的な冷酷さがみなぎっているように見えた。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
そんな人はそんな事は
歯牙
(
しが
)
にかけるに足らないことのように云いもし思いもしながら、衷心の満ち足らなさから、知らず知らずそれを歯牙にかけている。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
なにしろ、独り身で金の使いようもないうえに、週給五百ドルをもらう折竹のことであるから、たかが、千ドルや二千ドルなら
歯牙
(
しが
)
にかけるにも当らない。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
相手が余人ならばおそらく
歯牙
(
しが
)
にもかけなかったことでしょうが、どうかして一度抜けがけの功名をしてやろうやろうと、
栃眼
(
とちまなこ
)
になっている敬四郎でしたから
右門捕物帖:13 足のある幽霊
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そういう利己主義は己にもある。あの時己は理性の光に刹那の間照されたが、
歯牙
(
しが
)
の相撃とうとするまでになった神経興奮の雲が、それを忽ち
蔽
(
おお
)
ってしまった。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
だから、与吉がこうやってころげこんでくるのは、
目下
(
もっか
)
八方ふさがりの証拠で——もっとも、相手が与の公ですから、お藤姐御はてんで
歯牙
(
しが
)
にもかけていない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼の
齎
(
もた
)
らす首尾についての集りではなかったのか。むしろその態度には、彼の帰着なぞは
歯牙
(
しが
)
にもかけぬ無関心さが読みとれた。並んだ背中がそれを語っていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
袋猫々なる迷探偵などは
歯牙
(
しが
)
にもかけていないそうで、袋めは奇賊烏啼を捕えて絞首台へ送ってみせると日頃から宣伝を
怠
(
おこた
)
らず、その実一度だって捕えたこともなく
奇賊は支払う:烏啼天駆シリーズ・1
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
歯牙
(
しが
)
にも掛けずありける九州炭山坑夫の同盟罷工今や
将
(
まさ
)
に断行せられんことの警報伝はるに
及
(
およん
)
で政府と軍隊と、実業家と、志士と論客と
皆
(
み
)
な始めて
愕然
(
がくぜん
)
として色を失へり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
率直にいって、遠州の如きは
歯牙
(
しが
)
にかけるほどのものでさえないと思われてならぬ。今日遠州流と呼ばれるものは茶道にも華道にもあるし、遠州好みといわれる品々が数々残る。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「彼は、狩うどは信心ぶかい人間ではないという、聖句などは
歯牙
(
しが
)
にかけなかった。」
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
曾ての同輩は既に
遥
(
はる
)
か高位に進み、彼が昔、鈍物として
歯牙
(
しが
)
にもかけなかったその連中の下命を拝さねばならぬことが、往年の
儁才
(
しゅんさい
)
李徴の自尊心を
如何
(
いか
)
に
傷
(
きずつ
)
けたかは、想像に
難
(
かた
)
くない。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それは諸君のような議論が出て来ない間は、本来の平凡な言葉として
歯牙
(
しが
)
にかけるに足らないであろうが、ひとたびそれらの説が現れ来ることに
依
(
よ
)
って
俄
(
にわか
)
に表面にその光を現して来る。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
歯牙
(
しが
)
にもかけたくない、生若い男女の学生が、たとい貴族の子女であるにしろ、今日の会場の
中央
(
まんなか
)
で、たとい自分の顔を見知らぬにせよ、自分の目前で、自分の生活を
罵
(
ののし
)
るばかりでなく
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼はてんから
歯牙
(
しが
)
にかけなかったばかりか、その種の話がまずたいていは、御自身その腕さえあれば悪事を働きたくってうずうずしている連中の創作にかかるものであることも承知していた。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
日本の僧侶など一向
歯牙
(
しが
)
にも掛けなんだらしいが、それは洋人が、『古事記』『日本紀』を
猥雑
(
わいざつ
)
取るに足らぬ書と評すると一般で、余が交わった多くのインド学生中には羅摩の勇、私陀の貞
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
然し勿論そんな
些事
(
さじ
)
を
歯牙
(
しが
)
に掛ける秀吉では無い。秀吉が氏郷を遇するに別に何も有った訳では無い、ただ
特
(
こと
)
に之を愛するというまでに至って居らずに
聊
(
いささ
)
か冷やかであったというまでである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼は、初めて、彼が、ほとんど、
歯牙
(
しが
)
にもかけなかった、低級な人間の中に、高級な彼をも威圧して射すくめてしまうだけの威厳を見た。それは、全く、何も持っていない、
一人
(
ひとり
)
の労働者だ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
と
歯牙
(
しが
)
にもかけない。すくなくともかけていないポーズを取っています。
凡人凡語
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
広海屋は、
歯牙
(
しが
)
にかけぬように笑って、杯に注がせて、口に運んだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
山の
麗
(
うるは
)
しと
謂
(
い
)
ふも、
壌
(
つち
)
の
堆
(
うづたか
)
き者のみ、川の
暢
(
のどけ
)
しと謂ふも、水の
逝
(
ゆ
)
くに過ぎざるを、
牢
(
ろう
)
として抜く可からざる我が半生の
痼疾
(
こしつ
)
は、
争
(
いか
)
で
壌
(
つち
)
と水との
医
(
い
)
すべき者ならん、と
歯牙
(
しが
)
にも掛けず
侮
(
あなど
)
りたりし
己
(
おのれ
)
こそ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
いかにも先方は恐れ入ったように聞こゆるけれども、さて先方に
質
(
ただ
)
してみると、一
向
(
こう
)
やられたともなんとも
歯牙
(
しが
)
にかけないでおることがある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
畢竟
(
ひっきょう
)
、これはみな大塔ノ宮の背後力によるものと人は察した。高氏もそう解した。
直義
(
ただよし
)
、師直らは、うすら笑って、
歯牙
(
しが
)
にもかけぬ風だった。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狐
(
きつね
)
や
狼
(
おおかみ
)
や角のある家畜、鋭い
歯牙
(
しが
)
をもった動物や非凡な胃袋をもった動物、食うためにできてる動物や食われるためにできてる動物、それらが
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
瀬戸君はこの会話を全く
余所
(
よそ
)
に、ポケットから洋書を出して読み始めた。二人を
歯牙
(
しが
)
にかけないという態度だった。吉川君は安達君に目まぜをした。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
もとより
歯牙
(
しが
)
にかくるに足らず、竜之助は邸へ帰った時分には、そんなことは人にも話さなかったくらいですから道で忘れてしまったものと見えます。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この一段に
至
(
いたり
)
て、かえりみて世上の事相を
観
(
み
)
れば、政府も人事の一小区のみ、戦争も群児の
戯
(
たわむれ
)
に
異
(
こと
)
ならず、中津旧藩のごとき、
何
(
なん
)
ぞこれを
歯牙
(
しが
)
に
止
(
とむ
)
るに
足
(
た
)
らん。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
無論その表書き通りであったら、たやすく開門させることは困難であろうと思われたのに、しかし退屈男は、まるでその制札なぞ
歯牙
(
しが
)
にもかけないといった風でした。
旗本退屈男:04 第四話 京へ上った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
二千年来伝わった日本人の魂でさえも、打砕いて
夷狄
(
いてき
)
の犬に喰わせようという人も少なくない世の中である。一代前の云い置きなどを
歯牙
(
しが
)
にかける人はありそうもない。
津浪と人間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
一日々々と、ひとりでに軽んじる気持になっていた。殊にこういう多勢で向い合ったときには、もはや
歯牙
(
しが
)
にかけるほどのものでも無い。ふふん——と彼は鼻で笑った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
元より
歯牙
(
しが
)
に掛ける必要もないのだが、
然
(
し
)
かし此頃娘共の
話
(
はなし
)
して居た所を聞くと、近来教会に
於
(
おい
)
ても、
耶蘇
(
ヤソ
)
教徒は戦争に反対せにやならぬなど、無法なことを演説すると云ふことだが
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
羊の皮を
被
(
かぶ
)
って来た
狼
(
おおかみ
)
の
面皮
(
めんぴ
)
を、真正面から、引き
剥
(
は
)
いだのであるから、その次ぎの問題は、狼が本性を現して、飛びかゝって来る鋭い
歯牙
(
しが
)
を、どんなに防ぎ、どんなに避くるかにあった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
歯牙
(
しが
)
に懸けるには足りない。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「彼らはなんと一生懸命に
噛
(
か
)
みつくことだろう!」と彼は言った。「全身
歯牙
(
しが
)
となっている、小人どもが……。」
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
玄蕃のために、あたまからがんと
喝破
(
かっぱ
)
されて、手痛く参ったようにも見えるし、反対に、
冷眼一瞥
(
れいがんいちべつ
)
、相手を
歯牙
(
しが
)
にもかけていないとも見られるのである。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人間の
体躯
(
たいく
)
も骨ばかりでは用をなさぬ、筋肉もあれば
脂肪
(
しぼう
)
もある、腹や
股
(
もも
)
が柔であるから、人体は柔であるといえぬ。
爪
(
つめ
)
や
歯牙
(
しが
)
があるから剛だともいわれぬ。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
しかし
歯牙
(
しが
)
にかけないという
風
(
ふう
)
を示す為めに、泰然としてレシーバーを
被
(
かぶ
)
ろうとした。
或良人の惨敗
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
むろん阿賀妻は見向きもしないし、
歯牙
(
しが
)
にもかけていなかった。気もつかなかったのだ。彼はまた彼自身の問題に囚われていた。
袂
(
たもと
)
のなかに腕を組んで、ぼんやり、疲れたようにつっ立っていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
もとより高尚なる理論上よりいえば、位階勲章の如き、まことに俗中の俗なるものにして、
歯牙
(
しが
)
にとどむべきに非ずというといえども、これはただ学者普通の公言にして、その実は必ずしも然らず。
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
と、義貞のこだわりは
歯牙
(
しが
)
にもかけられず、話はすぐほかの実際的な軍議のほうへすすんでいた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「じつに、
不埒
(
ふらち
)
極まる武芝です。上命を無視し、中央の辞令などは、てんで
歯牙
(
しが
)
にもかけません」
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“歯牙”の意味
《名詞》
歯と牙
(出典:Wiktionary)
歯
常用漢字
小3
部首:⽌
12画
牙
常用漢字
中学
部首:⽛
4画
“歯牙”で始まる語句
歯牙香