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握飯
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むすび
ふりがな文庫
“
握飯
(
むすび
)” の例文
いずれも
握飯
(
むすび
)
、
鰹節
(
かつおぶし
)
なぞを持って、山へ林へと逃げ惑うた。半蔵の家でもお民は子供や下女を連れて裏の隠居所まで立ち
退
(
の
)
いた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
二人の犬殺しは尋常の犬殺しにかかるつもりで、左右から歩み寄って、一人は例の
握飯
(
むすび
)
を投げて、一人は
投網
(
とあみ
)
を構えるように口環を拡げて
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「有難うござります、有難うござります。今日の
生命
(
いのち
)
はこの
握飯
(
むすび
)
一つで生きながらえることが出来まする。ああ有難や有難や」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それとは反対にその家が火災水災にあい、多くのそとの人がきて働いてくれた時にも、成功不成功にかかわらず、やはり
焚出
(
たきだ
)
しの
握飯
(
むすび
)
と酒とがでた。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
谷底の木暗いしじまで
握飯
(
むすび
)
を食べ終ると、龍然は凡太にもすすめておいて、自分は平たい岩塊の上へ仰向けに寝転び、やがて深い睡りに落ちてしまつた。
黒谷村
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
傳「
何
(
ど
)
うだい、大変大きな
握飯
(
むすび
)
じゃないか、もっと幾つにもしてくれゝばいゝに、梅干は
真赤
(
まっか
)
で堅いねえ、あゝ
酢
(
すっ
)
ぱい、
案内者
(
あんないしゃ
)
さんの握飯は大きいねえ」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
釣竿
(
つりざお
)
みたいな物の先に、
稗米
(
ひえまい
)
の
握飯
(
むすび
)
に
梅干
(
うめぼし
)
の入ったのを一つ、竹の皮にくるんで誰か窓から吊り下げてくれた。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ですから御飯になさいなね、
種々
(
いろん
)
な事を
言
(
いっ
)
て、お
握飯
(
むすび
)
を
拵
(
こしら
)
えろって言いかねやしないんだわ。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
工事中の新築の階下へ行って見ると、材木や煉瓦やセメント樽を片寄せて炭火を焚いてる周囲に店員が集って、見舞物の
握飯
(
むすび
)
や海苔巻を頬張ったり
鯣
(
するめ
)
を焼いたりしていた。
灰燼十万巻:(丸善炎上の記)
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
……
稗
(
ひえ
)
か麦の
貧
(
まず
)
しい
握飯
(
むすび
)
を、尊い玉ででもあるかのように両手で捧げ持っている敬虔なようすも、見るたびに、無垢な感動を、キャラコさんのこころのなかにひきおこす。
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
お昼頃になると、二人は堤の上へあがつてお弁当のお
握飯
(
むすび
)
を出して食べました。
虹の橋
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
何を食ってこんな人が生きていられたろう。それには家のものが
握飯
(
むすび
)
を二日分ずつ
笊
(
ざる
)
に入れ、湯は
土瓶
(
どびん
)
に入れて、押入れに置いてくれる。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
来てみて、はじめて口あんぐりと
握飯
(
むすび
)
を食う始末……焼跡をうろついて、あやしまれでもしては、このうえ気の
利
(
き
)
かない骨頂。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この世はほんとに
餓鬼
(
がき
)
地獄じゃ! さあさあ
握飯
(
むすび
)
をやるほどに早く一つずつ取るがよい……才蔵才蔵その袋から握飯を取り出してやるがよいぞ
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
といいながら
両人
(
ふたり
)
が弁当を
開
(
あ
)
けると、大きな
握飯
(
むすび
)
が二つと、梅干の堅いのが入れてある。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
こんなことをいっては申し訳ないのだが、その
握飯
(
むすび
)
は、びっくりするほど黒い色をしている。それに、二つに割ったその
芯
(
しん
)
には、何ひとつ慰みになるようなものもはいっていない。
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
かぞえれば七月の十五日、老先生の百日の期限までには、ちょうど後三十一日だ。不思議、不思議、誰がどうして、そんなことまで知っているのだろう。そしてこの
握飯
(
むすび
)
をおれにすすめるのだろう
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
みんなが言いおるには、はやく地蔵様へ行って寝ろと言う故、礼を言うて、この小屋を出ると、ひとりが呼び留めて、大きな
握飯
(
むすび
)
を三ツくれた。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と言って、
年長
(
としうえ
)
の婦人は寂しそうに笑った。山歩きでもするように、宿から用意して来た
握飯
(
むすび
)
がそこへ取出された。肥った女学生は黙って食った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そして元気が
恢復
(
かいふく
)
する。それで城下の人々は老人のくれるその
握飯
(
むすび
)
を、「
生命
(
いのち
)
の
握飯
(
むすび
)
」と噂した。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
少し待ってろ、其の間にどうせ山越しで逃げなければ成らぬから、
草鞋
(
わらじ
)
に紐を付けて、
竹皮包
(
かわづゝみ
)
でも宜いから
握飯
(
むすび
)
を
拵
(
こしら
)
えて、
松魚節
(
かつぶし
)
も
入
(
い
)
るからな、
食物
(
くいもの
)
の支度して梅干なども詰めて置け
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
握飯
(
むすび
)
は子供の握り
拳
(
こぶし
)
ほどの大きさしかないので、まもなくすんでしまう。
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
がぶと、茶を飲んでは、
握飯
(
むすび
)
を食っていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
という
母親
(
おふくろ
)
の言葉に、お隅は
握飯
(
むすび
)
を取って、源の手に握らせました。源は夢中で、一口それを頬張って、ぷいと厩の方へ駆出して行って了いました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
抑えられた猿は苦しさに絶叫したけれど、浅ましいことに、胡麻のついた
握飯
(
むすび
)
をその手から放すことではありません。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それに
食物
(
くいもの
)
も何も喰いませんから腹の減った事を打明けて頼んでねえ、どうも斯う腹が減っては狼が来ても逃げる事が出来ませんから、
先
(
ま
)
ず其の前に
握飯
(
むすび
)
でも何でも喰いたいあゝ喰いたい
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
儉約なお婆さんは、それを
握飯
(
むすび
)
に丹精して、醤油で味を附けまして、熱い火で燒いたのをお茶の時に出しました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
籠の中から取り出したのは竹の皮包の
握飯
(
むすび
)
でありました。これはこの者どもの弁当ではなくて、犬を
懐
(
なつ
)
けるために、ワザワザ用意して持って来たものらしくあります。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と云って少しも構いませんから、隣近所から恵んでくれる
食物
(
たべもの
)
で
漸
(
ようや
)
く命を
繋
(
つな
)
いで居ります。或日の事、おあさが留守だから隣にいる納豆売の
彦六
(
ひころく
)
が
握飯
(
むすび
)
を
拵
(
こしら
)
えて老母の
枕許
(
まくらもと
)
へ持って来て
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
田中から直江津行の汽車に乗つて、豊野へ着いたのは丁度
正午
(
ひる
)
すこし過。叔母が呉れた
握飯
(
むすび
)
は
停車場
(
ステーション
)
前の休茶屋で出して食つた。
空腹
(
すきばら
)
とは言ひ乍ら五つ迄は。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
ことに最後に
握飯
(
むすび
)
を差入れろということは、かなり虫のいい注文だと思いました。しかし腹が減っているだろうから、それも無理のない注文だと同情する者もありました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何
(
ど
)
うも
私
(
わたくし
)
は
腹
(
はら
)
が
空
(
へ
)
つて歩かれませぬ、
其上
(
そのうへ
)
塩梅
(
あんばい
)
が
悪
(
わる
)
うございまして。と
云
(
い
)
ふから
仕方
(
しかた
)
なしに
握飯
(
むすび
)
の
二個
(
ふたつ
)
に
銭
(
ぜに
)
の百か二百
遣
(
や
)
ると
当人
(
たうにん
)
は喜んで
其場
(
そのば
)
を
立退
(
たちの
)
くといふ。
是
(
これ
)
が
商売
(
しやうばい
)
になつて
居
(
ゐ
)
ました。
行倒の商売
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
塩の
握飯
(
むすび
)
をくれとでも言って、今にも
屋外
(
そと
)
から帰って来るような気がしますよ——わたしはあの塩の握飯の熱いやつを
朴葉
(
ほおば
)
に包んで、よく子供にくれましたからね。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
いい男が、いいかげん気取ったしなをして、懐中から取り出した一物が何かと見れば、それはつけ焼きの
握飯
(
むすび
)
であって、それをその男が二つばかり、もろにかじってしまいました。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
此の上は死ぬより外はないと仰しゃるのを聞いて、長家中の者がお気の毒に思い、
折々
(
おり/\
)
食物
(
たべもの
)
を進ぜました、
今日
(
こんにち
)
も納豆売の彦六
爺
(
おやじ
)
が
握飯
(
むすび
)
を御老母に上げて
居
(
お
)
る処へ、おあさ殿が帰って来て
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
吸い物の
皿
(
さら
)
を出す前に持って来るパンは、この国のことで言って見るなら
握飯
(
むすび
)
の代わりだ。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
お
握飯
(
むすび
)
なり、おかちんなり、ほんの
凌
(
しの
)
ぎになるだけ——お松にでもお言いつけ下さって、あの、こちらのお庭の臥竜梅がございます、あの梅の大木のうつろの中へ、明晩でもひとつ……
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一
番
(
ばん
)
町
(
ちやう
)
にて
倒候
(
たふれさふらふ
)
節
(
せつ
)
は、六
尺
(
しやく
)
棒
(
ぼう
)
にて
追払
(
おひはら
)
はれ、
握飯
(
むすび
)
二個
(
ふたつ
)
、
番茶
(
ばんちや
)
一
杯
(
ぱい
)
。
行倒の商売
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
石工
(
いしく
)
の坐ったと思われるところの
蓆
(
むしろ
)
の上へ米友は坐り込んで、背中の風呂敷から、お角の家でこしらえてもらった竹の皮包の
胡麻
(
ごま
)
のついた
握飯
(
むすび
)
を取り出して、眼を円くしていましたが
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と叔父夫婦は気を
揉
(
も
)
んで、暦を繰つて日を見るやら、
草鞋
(
わらぢ
)
の用意をして呉れるやら、
握飯
(
むすび
)
は三つも有れば沢山だといふものを五つも
造
(
こしら
)
へて、竹の皮に包んで、別に瓜の
味噌漬
(
みそづけ
)
を添へて呉れた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
亥「云われて始めて腹が減った、そんなら森松、
握飯
(
むすび
)
でも呉れや」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そのつもりで、さっき、
握飯
(
むすび
)
を三つ四つ
拵
(
こしら
)
えてもらってあるから、あれを
噛
(
かじ
)
って江戸まで行けば、それから先はお膝元だ。どっちへころげるかがんりきの運試し、兄貴、またあっちで会おう
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「源、お
前
(
めえ
)
も
握飯
(
むすび
)
はどうだい。たべろよ。
沢山
(
たんと
)
あって残っても困るに」
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と二人とも
十箇
(
とお
)
ばかりの
握飯
(
むすび
)
と
菜
(
さい
)
まで残らず
食
(
しょく
)
してしまいました。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それからついでに、お
握飯
(
むすび
)
に
沢庵
(
たくあん
)
をつけて三つ四つ差入れてもらいてえ
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と云いながら、
握飯
(
むすび
)
をポカーリッと
投
(
ほう
)
り付けました。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「
俺
(
おい
)
らがここに置いた、
胡麻
(
ごま
)
のついた
握飯
(
むすび
)
を盗んで行きやがった」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
握
常用漢字
中学
部首:⼿
12画
飯
常用漢字
小4
部首:⾷
12画
“握”で始まる語句
握
握拳
握手
握太
握緊
握〆
握り
握力
握占
握鮓