ねぢ)” の例文
これは荒川が仏蘭西へ行つた当座、物珍らしい最中に、巴里パリの町で買つたのである。口は入違いりちがひになつて銀の小さい玉をねぢつて開けるやうになつてゐる。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
われ何處どこくんだ。こうれ」勘次かんじつかまうとしたがおつぎはねぢつてさつさとく。勘次かんじあわてゝ草履ざうり爪先つまさきつまづきつゝおつぎのあといた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
粗羅紗の長上衣を著て長いねぢれた泥鰌髭をはやした楽師がきゆうを一触するや、一同の者が否応なしに、一斉に調子をそろへて踊り出す、その光景を眺めては
「菓子がなければ、早く買つてけばいのに」と代助は水道のせんねぢつて湯呑に水をあふらせながら云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ば折られても、二度と父母の処へも戻ったのぢゃ。なれどもすこやかな二本の脚を、何面白いこともないに、ねぢって折って放すとは、何といふ浅間あさましい人間の心ぢゃ。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
『よろしい、まいりませう。』と琵琶びはてゝ、一番いちばんたゝかつたが、たちまちウンとねぢたをされた。
うもこれは耳へけてくのに、ギン/\とかすかにきこえて判然はつきりわからぬやうだが、うかう耳へあてずに器械きかいをギユーとねぢると、判然はつきり音色おんしよく席中せきぢうぱい大音だいおんきこえるやうにたいものだ。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
鳥屋の店先であをぶくれの若者が、パタ/\あがいてゐる鷄をつかんで首をおツぺしよるやうに引ンねぢツてゐることや、肉屋の店に皮を剥がれたまゝの豚がかぎに吊されて逆さになツてゐることや
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
廊下を二角ふたかどまがつてギヤルソンのけたのは白い冷たい感じのする部屋であつた。かちかちと云はせてあちこちのねぢをねぢると、あるだけのが皆いた。黄色いに見えるやうになつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
滿身すべて涜聖とくせいの言葉にねぢ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
暖かい日の午過ひるすぎ食後の運動がてら水仙の水を易へてやらうと思つて洗面所へ出て、水道のせんねぢつてゐると、其看護婦が受持のへやの茶器を洗ひに來て、例の通り挨拶をしながら
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
およ後方こうほうまうけられたる遞進機ていしんきとを使用しようして、のぼ山道やまみち大木たいぼく巨巖等きよがんとうちからに、螺旋形らせんけい尖端せんたん螺釘らていごと前方ぜんぽう大木たいぼくねぢみ、車内しやない揚上機やうじやうき運轉うんてんともに、その螺旋らせん自然しぜん收縮しゆうしゆくして
そとひかりたおしなにはぐにはおつぎの姿すがたえなかつたのである。戸口とぐちからではおつぎの身體からだかまどおほうてた。返辭へんじするととも身體からだねぢつたのでそのあかえたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
満身すべて涜聖とくせいの言葉にねぢ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
根性こんじやうねぢれてつからだあ、晩稻おくいねつくんなつちのに」女房にようばう一人ひとりまたいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)