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所為
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せゐ
ふりがな文庫
“
所為
(
せゐ
)” の例文
旧字:
所爲
「それであの人達が苦んでゐるのは、結局今更どうにもしやうのない秘密の世界をお互して作りあげてしまつた
所為
(
せゐ
)
だと思ふのよ、」
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
三四郎は日英同盟の
所為
(
せゐ
)
かとも考へた。けれども日英同盟と大学の陸上運動会とはどう云ふ関係があるか、
頓
(
とん
)
と見当が付かなかつた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
其頃もう小皺が額に寄つてゐて、持病の胃弱の
所為
(
せゐ
)
か、
膚
(
はだ
)
は
全然
(
まるで
)
光沢
(
つや
)
がなかつた。
繁忙
(
いそがし
)
続きの揚句は、屹度一日枕についたものである。
刑余の叔父
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「そんなに言ふのなら、
還
(
かへ
)
つて阿父さんに話をして見やうけれど、何もその
所為
(
せゐ
)
で体が弱くなると云ふ訳も無かりさうなものぢやないか」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ロダン翁は
老齢
(
とし
)
の
所為
(
せゐ
)
で少し日常の事には
耄碌
(
まうろく
)
の気味だから、逢ふ度に初対面の挨拶をしたり以前の話を忘れて居たりして
訪客
(
はうかく
)
を困らすが
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
窓に金網が張つてあるのでせう。其網の目をもるあかりで細かい仮名を読んだ。其の
所為
(
せゐ
)
で、恐ろしい
近視眼
(
ちかめ
)
、これは
立女形
(
たてをやま
)
の美を傷つけて済みません。
いろ扱ひ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
其が見えたり隠れたりするのは、この夜更けになつて、俄かに出て来た霞の
所為
(
せゐ
)
だ。其が又、此冴え/\とした月夜を、ほつとりと暖かく感じさせて居る。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
尤も此友人は倫敦に永く居た人で英文に堪能である
所為
(
せゐ
)
もあらうが、中々巧く書いてある、
而
(
そ
)
してその言草が好いぢやないか、エスペラントの
容易
(
やさ
)
しいのには驚いたトかうだ。
エスペラントの話
(新字旧仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
其日
(
そのひ
)
は
眠
(
ねむ
)
い所を無理に早く
起
(
おこ
)
されて、
寐足
(
ねた
)
らない
頭
(
あたま
)
を
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かした
所為
(
せゐ
)
か、停車場に
着
(
つ
)
く
頃
(
ころ
)
、
髪
(
かみ
)
の毛の
中
(
なか
)
に
風邪
(
かぜ
)
を
引
(
ひ
)
いた様な気がした。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
不得手なのは
攀木
(
きのぼり
)
に
駈競
(
かけつくら
)
。あれだけは若者共に
敵
(
かな
)
はないと言つてゐた。脚が短かい上に、肥つて、腹が出てゐる
所為
(
せゐ
)
なのである。
刑余の叔父
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
新聞社と雑誌社から頼まれて夜分遅くまで投書の和歌を添削する所から其の安眠不足などの
所為
(
せゐ
)
で、近年
滅切
(
めつき
)
り
身体
(
からだ
)
が痩せこけて顔色も
青褪
(
あをざ
)
めて居る。
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
それは病気の
所為
(
せゐ
)
だ、脳でも
不良
(
わるい
)
のだよ。そんな事を考へた日には、一日だつて笑つて暮せる日は有りはしない。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「いつたい遠野は何のために今朝やつて来たのだ。」それを
苛々
(
いら/\
)
と考へながら道助は跳ね上るやうに半身を起こした。昨日の酒の
所為
(
せゐ
)
か頭が石のやうに重い。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
声
(
こゑ
)
が
籠
(
こも
)
つて
空
(
そら
)
へ
響
(
ひゞ
)
くか、
天井
(
てんじやう
)
の
上
(
うへ
)
——
五階
(
ごかい
)
のあたりで、
多人数
(
たにんずう
)
のわや/\もの
言
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
きながら、
積日
(
せきじつ
)
の
辛労
(
しんらう
)
と
安心
(
あんしん
)
した
気抜
(
きぬ
)
けの
所為
(
せゐ
)
で、
其
(
その
)
まゝ
前後不覚
(
ぜんごふかく
)
と
成
(
な
)
つた。……
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
夜が
更
(
ふ
)
けて、
四隣
(
あたり
)
が静かな
所為
(
せゐ
)
かとも思つたが、念のため、右の手を心臓の上に載せて、
肋
(
あばら
)
のはづれに
正
(
たゞ
)
しく
中
(
あた
)
る
血
(
ち
)
の
音
(
おと
)
を
確
(
たし
)
かめながら
眠
(
ねむり
)
に就いた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
お八重は此反対に、今は他に縁づいた
異腹
(
はらちがひ
)
の姉と一緒に育つた
所為
(
せゐ
)
か、負嫌ひの、我の強い児で、娘盛りになつてからは、手もつけられぬ
阿婆摺
(
あばずれ
)
になつた。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
『あゝ、阿父さんの
所為
(
せゐ
)
でも無い、阿母さんの
所為
(
せゐ
)
でも無い、わしの
所為
(
せゐ
)
でも無い。みんな
彼奴
(
あいつ
)
のわざだ。
貢
(
みつぐ
)
、
意久地
(
いくぢ
)
があるなら
彼奴
(
あいつ
)
を
先
(
さき
)
に
切
(
き
)
るがいゝ。』
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
それだから
所謂
(
いはゆる
)
『娘らしい』ところが余り無い。自分の思ふやうに情が濃でないのもその
所為
(
せゐ
)
か知らんて。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
いや、
行燈
(
あんどう
)
が
又
(
また
)
薄暗
(
うすくら
)
くなつて
参
(
まゐ
)
つたやうぢやが、
恐
(
おそ
)
らくこりや
白痴
(
ばか
)
の
所為
(
せゐ
)
ぢやて。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「お天気の
所為
(
せゐ
)
かな。」と道助は歩きながら考へた。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
其眼
(
そのめ
)
が血ばしつてゐる。二三日
能
(
よ
)
く
眠
(
ねむ
)
らない
所為
(
せゐ
)
だと云ふ。三千代は仰山なものゝ云ひ
方
(
かた
)
だと云つて笑つた。代助は気の毒にも思つたが、又安心もした。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
倫教
(
ロンドン
)
は
巴里
(
パリイ
)
に比べて北へ寄つて居る
所為
(
せゐ
)
か、七月になつても
薄寒
(
うすさむ
)
を覚える様な気候である。
巴里
(
パリイ
)
の様に
上衣
(
うはぎ
)
を脱いでコルサアジユ
丈
(
だけ
)
で歩く女を
未
(
ま
)
だ一人も見受けない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
『
皆様
(
みなさん
)
お上手よ。私なんか今迄余り加留多も取つた事がないもんですから、敗けて
許
(
ばつか
)
り。』と
嫣乎
(
につこり
)
する。ほつれた髪が頬に乱れてる
所為
(
せゐ
)
か、其顔が常よりも艶に見えた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
呆気
(
あつけ
)
に
取
(
とら
)
れて
見
(
み
)
る/\
内
(
うち
)
に、
下
(
した
)
の
方
(
はう
)
から
縮
(
ちゞ
)
みながら、ぶくぶくと
太
(
ふと
)
つて
行
(
ゆ
)
くのは
生血
(
いきち
)
をしたゝかに
吸込
(
すひこ
)
む
所為
(
せゐ
)
で、
濁
(
にご
)
つた
黒
(
くろ
)
い
滑
(
なめ
)
らかな
肌
(
はだ
)
に
茶褐色
(
ちやかツしよく
)
の
縞
(
しま
)
をもつた、
痣胡瓜
(
いぼきうり
)
のやうな
血
(
ち
)
を
取
(
と
)
る
動物
(
どうぶつ
)
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
所へ汽車が轟と鳴つて孟宗藪のすぐ
下
(
した
)
を通つた。
根太
(
ねだ
)
の具合か、
土質
(
どしつ
)
の
所為
(
せゐ
)
か座敷が少し
震
(
ふる
)
へる様である。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
窓が多い
所為
(
せゐ
)
で堂内の明るいのは
難有
(
ありがた
)
さを減じる様に思はれた。塔の正面の
丹
(
たん
)
を塗つた三ヶ所の汚れた扉は薄
黒
(
ぐろ
)
く時代の附いた全体の石
造
(
づくり
)
と調和して沈静の感を与へた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
『胃の
所為
(
せゐ
)
ですな。』と頷いて、加藤は新しい
紛帨
(
ハンケチ
)
に手を拭き乍ら坐り直した。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「どうです具合は。頭痛でもしますか。あんまり人が
大勢
(
おほぜい
)
ゐた
所為
(
せゐ
)
でせう。あの人形を見てゐる連中のうちには随分下等なのがゐた様だから——何か失礼でもしましたか」
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
此木田
(
このきだ
)
老訓導は胸の中で
斯
(
か
)
う勘定してゐる。その
所為
(
せゐ
)
でもあるまいが、校長に何か宿直の出来ぬ事故のある日には、此木田訓導に
屹度
(
きつと
)
差支へがある。代理の役は何時でも代用教員の甲田に転んだ。
葉書
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
自惚の
所為
(
せゐ
)
か、おれの顔より余っ程手ひどく遣られてゐる。おれと山嵐は机を並べて、隣り同志の近しい仲で、御負けに其机が部屋の戸口から真正面にあるんだから運がわるい。
坊っちやん
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
田舎には稀な程晩婚であつた
所為
(
せゐ
)
でもあらうか、私には兄も姉も、妹もなくて唯一粒種、
剛
(
きつ
)
い言葉一つ懸けられずに育つた為めか背丈だけは普通であつたけれども、ひよろ/\と痩せ細つてゐて
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
こんな、狭くて暗い部屋へ押し込めるのも茶代をやらない
所為
(
せゐ
)
だらう。見すぼらしい
服装
(
なり
)
をして、ズツクの革鞄と毛繻子の蝙蝠傘を提げてるからだらう。田舎者の癖に人を見括つたな。
坊っちやん
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
此批評家の云ふ
事
(
こと
)
が、果して真相の解釈であるか
何
(
ど
)
うか、是も自分には分らない。唯遠くにゐて、其土地の空気を呼吸しない
所為
(
せゐ
)
か、
斯
(
か
)
ういふ説明は自分から見て
何
(
ど
)
うも切実でないやうな気がする。
点頭録
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
“所為”の意味
《名詞》
(しょい)
(せい ;現在では通常仮名書きされる)
(出典:Wiktionary)
所
常用漢字
小3
部首:⼾
8画
為
常用漢字
中学
部首:⽕
9画
“所為”で始まる語句
所為無