いみ)” の例文
いみもまだ明けないだらうつて。奥さんにも似合はない旧弊なことをおつしやるのですね。忌ぐらゐ明けなくつたつて、いゝぢやありませんか。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
御息所みやすどころいみがもう済んだだろうね。時はずんずんとたつからね。私が遁世とんせいの望みを持ち始めた時からももう三十年たっている。味気ないことだ。
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
単に一つ目小僧の付近の類例があるというだけでなしに、いみを守らぬ者の心の不安は、いつでもこういう形を以て表出せられているからである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
○さて堂内人さんじて後、かの山長やまをとこ堂内に苧幹をがらをちらしおく㕝れいなり。翌朝よくてうおとこ神酒みき供物くもつそなふ、うしろさまにすゝみさゝぐ、正面にすゝむを神のいみ給ふと也。
道綱がそうしていみにこもり出すと、頭の君はこんどは又役所の用事にかこつけては、前よりも一層繁々とお立ち寄りになり、いつまでも上がり込まれて
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
たとえば、死穢しえに触れたとなると、三十日のいみを最上とし、少なくも、七日は、祓除をしなければならない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西国の軍というのは、親討たるれば子は引き下がって、嘆き悲しんで仏事を営み、いみあけてからやおら戦う、また子が討たるればこれを泣いて攻めて来ませぬ。
淑母死して七七日のいみも果てざるに、得三は忠実の仮面を脱ぎて、ようやく虎狼ころうの本性をあらわしたり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宇平の姉りよは叔母婿原田方に引き取られてから、墓参の時などには、しきみを売るうばの世間話にも耳を傾けて、敵のありかを聞き出そうとしていたが、いつかいみも明けた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
れ宋儒は人民精神の発達をいみてこれをこいねがわず、むしろこれを或る範囲内に入れ、その自主を失なわしめ、唯だ少年の子弟をしていたずらに依頼心を増長せしめ、その極や卑屈自からじず
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
ひなは娘らしい恥かしさのせゐか、重三とはろくに口もきゝませんが、いづれ母のいみが明けさへすれば、改めて祝言をさした上、別に小さい世帶でも持たせることになつて居りますから
未だ一年のいみぶくのかかっておる身でございます、がんぜない小供とは申せ、お詫びの申しようもございませんが、そこが父親なしの哀れな小供でございますから、どうかお赦しくださいますように
放生津物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「でも、今年はまだいみがあるんじゃないのかい。」
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
かなたへ、——いみ精進さうじ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
「まあ! 青木さんを連れて行くつて。嘘ばつかり。青木さんなんか、まだ兄さんのいみも明けてゐない位ぢやありませんか。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
是はいみを黒不浄、月のさわりを赤不浄というに対して、白であろうと事もなげに解する者が多いが、産屋のつつしみを白というべき理由はない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
○さて堂内人さんじて後、かの山長やまをとこ堂内に苧幹をがらをちらしおく㕝れいなり。翌朝よくてうおとこ神酒みき供物くもつそなふ、うしろさまにすゝみさゝぐ、正面にすゝむを神のいみ給ふと也。
まだ女王のいみの日が残っているのであるが、心がかりに堪えぬように思召して、一晩じゅう雪に吹き迷わされになりながらここへ宮はお着きになったのである。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
水流にまかせて攻め下るはやすく、水をさかのぼって退くは難い。これ一つ。また叢原をつつんで陣屋をむすぶは兵家のいみ、これ二つ。陣線長きに失して力の重厚を欠く、これ三つ。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三月も末近くなってから、父が京に上って来られたので、私はあんまりこうして暮してばかり居ても息苦しくってたまらなかったし、それにいみたがえがてら、しばらく父の所へ往くことにした。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
いずれ母のいみが明けさえすれば、改めて祝言をさした上、別に小さい世帯でも持たせることになっておりますから、嫌いというほどではなく、従って黙ってその運命を待っているはずもありません。
「慎しみませい、灸のいみじゃ、男のそばへ寄ってもならん。」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しゆくし奉つれり奧方看病かんびやうのため國元くにもとへいらせられ若君わかぎみ誕生たんじやうにては公儀こうぎへ對しはゞかりありとて内々ない/\にて養育やういくのおぼしめしなりまた大納言光貞卿は當年たうねん四十一歳にあたり若君わかぎみ誕生たんじやうなれば四十二の二ツ子なりいかなる事にやむかしよりいみきらふ事ゆゑ光貞卿にも心掛こゝろがかりに思召おぼしめしある日家老からう加納將監かなふしやうげん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「まあ! 青木さんを連れて行くって。うそばっかり。青木さんなんか、まだ兄さんのいみも明けていない位じゃありませんか。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
以前は幾つかの行事がこの日に集合していたのを、後々鼠のいみを厳粛にするようになって、とくにその日を隔離する必要が起こったのではあるまいか。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
○およそ 菅神をまつやしろにはおほかたは雷除らいよけ護府まもりといふ物あり。此 御神雷の浮名うきなをうけ玉ひたるゆゑ、 神灵しんれいらいいみ玉ふゆゑに此まもりかならずしるしあるべし。
自分の命も今日が終わりになるのであろうとお考えられになる日も多かったが、結局四十九日のいみの明けるのを御覧になることになったかと院は夢のように思召した。
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
○およそ 菅神をまつやしろにはおほかたは雷除らいよけ護府まもりといふ物あり。此 御神雷の浮名うきなをうけ玉ひたるゆゑ、 神灵しんれいらいいみ玉ふゆゑに此まもりかならずしるしあるべし。
すなわち家に血のいみなどがあるのに、いて山に入って行く場合がアテで、たいていはその結果が凶だが、また時あって法外に好い仕合せに出逢うこともあるといっている。
アテヌキという地名 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
四十九日のいみも過ごしてから静かに事の運ぶようにするのがいいのであるとも知っているのであるが、それまでにまだあまりに時日があり過ぎる、もううわさを恐れる必要もない
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
これらの㕝逃入村にごろむら不思議ふしぎに類せり。しかれどもくだんの二ツはやしろありて丹後の人をいみはかありて盲人めくらをきらふなり、逃入村にごろむらつかあるゆゑに天満宮の神灵しんれい此地をいみ玉ふならん。
おといみ饗宴きょうえんのこと、その際の音楽者、舞い人の選定などは源氏の引き受けていることで、付帯して行なわれる仏事の日の経巻や仏像の製作、法事の僧たちへ出す布施ふせの衣服類
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それがかどつじ川原かわら等に、別に臨時の台所だいどころを特設した理由であり、子どもはまた触穢しょくえいみに対して成人ほどに敏感でないと考えられて、特に接待掛りの任に当ったものと思われる。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これらの㕝逃入村にごろむら不思議ふしぎに類せり。しかれどもくだんの二ツはやしろありて丹後の人をいみはかありて盲人めくらをきらふなり、逃入村にごろむらつかあるゆゑに天満宮の神灵しんれい此地をいみ玉ふならん。
しずかな村里の生活をする少年たちには、食物の変化は大きな刺戟しげきであった。やがて祭だとか、是からいみに入るとかいうことを、心に銘記させるには是がたしかな方法の一つだった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たくさん話はたまっていますから、ゆっくりと聞かせてあげたいのだけれど、私は今日までいみにこもっていた人なのだから、気味が悪いでしょう。あちらで休息することにしてまた来ましょう。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
熊本県の南部等において、人が死ぬとすぐに作る枕団子を、オハナというのはいみ言葉であろう。すなわちこういう必要から、いつとなく米の粉もハナというようになり得るのである。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
羽後の方では八人組十人組という二組のマタギ、一方はいみおそれてすげなく断ったに反して、他の一方では小屋のかしらがただの女性でないと見て快く泊め、小屋で産をさせて介抱をした。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)