小女こをんな)” の例文
君の今度の歌は、なんだか細々しく痩せて、少ししやがれた小女こをんなのこゑを聞くやうである。僕はもつと圖太づぶといこゑがいいやうに思ふ。
釈迢空に与ふ (旧字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
りよ小女こをんなんで、汲立くみたてみづはちれていとめいじた。みづた。そうはそれをつて、むねさゝげて、ぢつとりよ見詰みつめた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
てば、掛りの小女こをんなが飛んで參ります。夜は、私が來るだけで、尤も、この二た晩ばかりは、風邪の氣味で、私も此離屋へは參りませんでしたが
鼻緒の二本が右左みぎひだりで色が違ふ。それで能く覚えてゐる。いま仕事中しごとちうだが、ければあがれと云ふ小女こをんな取次とりつぎいて、画室へ這入はいつた。ひろい部屋である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何のおたなものの白瓜しろうりがどんな事を仕出しいだしませう、怒るなら怒れでござんすとて小女こをんなに言ひつけてお銚子の支度
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すゝめけれども夫は面倒めんだうなりとて只一人子のそだつをたのしみに小女こをんな一人若者二人遣ひて居酒屋ゐざかや渡世とせい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
上等の切符を出すと今度は小女こをんなが丁寧に階子段へ案内した。二階かと思へばまだ階子段がある。結局三階だ。立派な床の間が付いてゝ花など活けてある坐敷を一つ独占さして呉れる。
坊つちやん「遺蹟めぐり」 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
四時過ぎに役所から帰つて来て洋服の儘に机の前に坐つて居たが、妙に心気が苛立いらだつのでいつのまにか倒れてしまつた。妻は姉が来て芝居へつれだしたとかで小女こをんなが独り留守をして居た。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
きはめてせま溝板どぶいたの上を通行の人はたがひに身をなゝめに捻向ねぢむけてちがふ。稽古けいこ三味線しやみせんに人の話声はなしごゑまじつてきこえる。洗物あらひものする水音みづおときこえる。赤い腰巻こしまきすそをまくつた小女こをんな草箒くさばうき溝板どぶいたの上をいてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
其處そこへ、門内もんない植込うゑこみ木隱こがくれに、小女こをんながちよろ/\とはしつてて、だまつてまぜをして、へいについて此方こなたへ、とつた仕方しかたで、さきつから、ござんなれとかたゆすつて、あし上下うへした雀躍こをどりしてみちびかれる
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
華美はでな姿の小女こをんな
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
なんのおたなものゝ白瓜しろうりんなこと仕出しいだしませう、をこるならをこれでござんすとて小女こをんなひつけてお銚子ちようし支度したく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小女こをんな一人ひとり使つかつて、あさから晩迄ばんまでことりとおともしないやうしづかな生計くらしてゝゐた。御米およねちやで、たつた一人ひとり裁縫しごとをしてゐると、時々とき/″\御爺おぢいさんとこゑがした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これでは旅立たびだちばさなくてはなるまいかとつて、女房にようばう相談さうだんしてゐると、そこへ小女こをんな
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
そでいま苦勞くらうはつらくとも暫時しばし辛抱しんばうぞしのべかし、やがて伍長ごちやう肩書かたがきたば、鍛工場たんこうぢやう取締とりしまりともはれなば、いへいますこひろ小女こをんなはし使づかひをきて、そのかよわきみづまさじ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)