“寢顏(ねがほ)” の例文
新字:寝顔
その風雪(ふうせつ)の一握(にぎ)りのつぶては、時々(とき/″\)毛(け)のやうな欄間(らんま)の隙(すき)や戸障子(としやうじ)の仲(なか)を盜(ぬす)み入(い)つて、目(め)に見(み)えぬ冷(つめ)たいものをハラ/\と私(わたし)の寢顏(ねがほ)にふりかけてゆく。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
取出し拔て行燈(あんどう)の火影(ほかげ)に佶(きつ)と鍔元より切先(きつさき)掛(かけ)て打返し見れども見れども曇(くもり)なき流石(さすが)は業物(わざもの)切味と見惚て莞爾と打笑(うちわら)ひ鞘(さや)に納めて懷中(ふところ)へ忍ばせ父の寢顏(ねがほ)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
寢顏(ねがほ)に電燈(でんとう)を厭(いと)つたものであらう。嬰兒(あかんぼ)の顏(かほ)は見(み)えなかつた、だけ其(それ)だけ、懸念(けねん)と云(い)へば懸念(けねん)なので、工學士(こうがくし)が——鯉(こひ)か鼈(すつぽん)か、と云(い)つたのは此(これ)であるが……
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
あの頑是(ぐわんぜ)ない太郎(たらう)の寢顏(ねがほ)を眺(なが)めながら置(お)いて來(く)るほどの心(こゝろ)になりましたからは、最(も)う何(ど)うでも勇(いさむ)の傍(そば)に居(ゐ)る事(こと)は出來(でき)ませぬ、親(おや)はなくとも子(こ)は育(そだ)つと言(い)ひまするし
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
神樣(かみさま)がそれを御覧(ごらん)になりました。これは、なんといふ瘻(やつ)れた寢顏(ねがほ)だらう。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
いまその露(つゆ)を含(ふく)んで、寢顏(ねがほ)の唇(くちびる)のやうにつぼんだのを、金色(こんじき)のひとみに且(か)つ青(あを)く宿(やど)して……木菟(みゝづく)よ、鳴(な)く。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
見するも過世(すぐせ)の因縁(いんえん)成(なる)か不便の者をと嘆(かこ)ちしが我から心を鬼になし道途(だうと)に迷ふ親の身を助(たす)かる手便(てだて)は此乳子(ちご)を捨るより外に思案なしと我が子の寢顏(ねがほ)を打詠(なが)め涙ながらに心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夜(よ)もすがら枕近(まくらちか)くにありて悄然(しよんぼり)とせし老人(としより)二人(ふたり)の面(おも)やう、何處(どこ)やら寢顏(ねがほ)に似(に)た處(ところ)のあるやうなるは、此娘(このむすめ)の若(もし)も父母(ちゝはゝ)にてはなきか、彼(か)のそゝくさ男(をとこ)を始(はじ)めとして女中(ぢよちゆう)ども一同(どう)旦那樣(だんなさま)御新造樣(ごしんぞさま)と言(い)へば
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
生甲斐(いきがひ)なや五尺(ごしやく)の身(み)に父母(ふぼ)の恩(おん)荷(にな)ひ切(き)れずましてや暖簾(のれん)の色(いろ)むかしに染(そ)めかへさんはさて置(お)きて朝四暮三(てうしぼさん)のやつ/\しさにつく/″\浮世(うきよ)いやになりて我身(わがみ)捨(す)てたき折々(をり/\)もあれど病勞(やみつか)れし兩親(ふたおや)の寢顏(ねがほ)さし覗(のぞ)くごとに我(われ)なくば何(なん)とし給(たま)はん勿體(もつたい)なしと思(おも)ひ返(かへ)せど沸(わ)くは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)