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存外
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ぞんがい
ふりがな文庫
“
存外
(
ぞんがい
)” の例文
正面より見れば
生
(
う
)
まれ
立
(
た
)
ての馬の子ほどに見ゆ。
後
(
うしろ
)
から見れば
存外
(
ぞんがい
)
小さしといえり。御犬のうなる声ほど
物凄
(
ものすご
)
く恐ろしきものはなし。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その時の私は父の前に
存外
(
ぞんがい
)
おとなしかった。私はなるべく父の機嫌に逆らわずに、
田舎
(
いなか
)
を出ようとした。父はまた私を
引
(
ひ
)
き
留
(
と
)
めた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
弓馬
(
きゅうば
)
の
道
(
みち
)
に
身
(
み
)
を
入
(
い
)
れる、
武張
(
ぶば
)
った
人
(
ひと
)
ではございましたが、八十
人力
(
にんりき
)
などというのは
嘘
(
うそ
)
でございます。
気立
(
きだ
)
ても
存外
(
ぞんがい
)
優
(
や
)
さしかった
人
(
ひと
)
で……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
存外
(
ぞんがい
)
遅れずにすんだものだ、——中村はこう思ううちにも、ほっとすると言うよりは損をした気もちに近いものを感じた。
早春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
頭は
存外
(
ぞんがい
)
に小柄で、眼を探すのに骨が折れたが、やっとのことで
彫
(
ほ
)
りこんだような黄色い半開きの眼玉を見つけたときには、余りいい気持はしなかった。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
……凧あげも
存外
(
ぞんがい
)
おもしろいものですが、そうしているうちに、チョイとした妙なことに気がついたんです。
顎十郎捕物帳:07 紙凧
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
其処
(
そこ
)
に四、五年ばかり通学して漢書を学び、その意味を
解
(
げ
)
すことは何の苦労もなく
存外
(
ぞんがい
)
早く上達しました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
この頃体の痛み強く寐返りにいつも人手を借るやうになりたれば傍に人の居らぬ時などのためにかかる窮策を発明したる訳なるが、出来て見れば
存外
(
ぞんがい
)
便利さうなり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
それまで
存外
(
ぞんがい
)
平気で仕事を続けることが出来たのですが、さて棺の蓋を取って、もう一つの彼といってもいい、菰田の死骸と顔を合せる際になると、始めて、何かこう
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
酒に
渇
(
かわ
)
きぬいていた折なので、気を
緊
(
し
)
めながら、宅助、
存外
(
ぞんがい
)
に飲んだ様子である。お米も、昨夜以来、何か思案をかえたとみえて、珍しいほど神妙に、時々、
酌
(
しゃく
)
までしてやった。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
漸々
(
ぜんぜん
)
話し込んでみると元来傾向が同じであったものだから犬猿どころか
存外
(
ぞんがい
)
話が合うので、喧嘩は
廃
(
よ
)
そう、むしろ一緒にやろうじゃないかという訳になって、
爾後
(
じご
)
大分心易くなった。
福沢先生の処世主義と我輩の処世主義
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
一體
(
いつたい
)
文學
(
ぶんがく
)
などいふものは、
一人
(
ひとり
)
がよいといひだすと、いつまでもその
批評
(
ひひよう
)
が
續
(
つゞ
)
くもので
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も、
前
(
まへ
)
の
人
(
ひと
)
の
言葉
(
ことば
)
から
離
(
はな
)
れて
考
(
かんが
)
へることの
出來
(
でき
)
ないものであつて、
存外
(
ぞんがい
)
つまらないものでも
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
「
君
(
きみ
)
がきてくれて、
私
(
わたし
)
は、いい
協力者
(
きょうりょくしゃ
)
ができたと
思
(
おも
)
っている。
人
(
ひと
)
は、たくさんあっても、
信用
(
しんよう
)
のおける
人
(
ひと
)
というものは、
存外
(
ぞんがい
)
少
(
すく
)
ないものだ。」と、いって、
主人
(
しゅじん
)
は
賢
(
けん
)
一をはげましてくれました。
空晴れて
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
まぐろ
通
(
つう
)
から
存外
(
ぞんがい
)
等閑
(
とうかん
)
に付されているものは、大根おろしである。
鮪を食う話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
女学生は蛇や
蜥蜴
(
とかげ
)
の中にいつまでもじっと
佇
(
たたず
)
んでいる。あすこは
存外
(
ぞんがい
)
暮れ易いだろう。そのうちに光は薄れて来る。閉館の
時刻
(
じこく
)
もせまって来る。
早春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
十
干
(
かん
)
十二
支
(
し
)
によって日を
算
(
かぞ
)
える習慣は、南方諸島でも
存外
(
ぞんがい
)
に始まりが早く、必ずしも中世の交通によって、輸入せられたともきめてしまわれない。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
空には星の光が
存外
(
ぞんがい
)
濁っていた。自分は心の内に
明日
(
あす
)
の天気を
気遣
(
きづか
)
った。すると岡田が
藪
(
やぶ
)
から棒に「一郎さんは実際むずかしやでしたね」と云い出した。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「だがね、用心には用心をするがいいぜ。どんなところに
手抜
(
てぬか
)
りがあるまいものでもねえ。早い話がこの俺がだよ。鳥打や背広だけお前達の仲間で、中身は
存外
(
ぞんがい
)
敵かも知れないからね」
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
僕等も歩き出したのは
勿論
(
もちろん
)
です。松林は路をあましたまま、ひっそりと高い草を伸ばしていました。僕等の話し声はこの松林の中に
存外
(
ぞんがい
)
高い反響を起しました。
手紙
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
路は
存外
(
ぞんがい
)
広くなって、かつ
平
(
たいら
)
だから、あるくに骨は折れんが、雨具の用意がないので急ぐ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一旦その中心をはずれると
存外
(
ぞんがい
)
容易に、そこだけは改まって行くということと、女の子は比較的古い形を守るものだということとが、是だけの材料からでも言いうるかと思う。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
屋根つきの
東屋風
(
あずまやふう
)
の共同ベンチの側を通りかかると、その奥の暗いところで
喧嘩
(
けんか
)
らしい人声がした。この公園の浮浪人共は
存外
(
ぞんがい
)
意気地
(
いくじ
)
なしで、危な気がないと考えていた紋三は、
一寸
(
ちょっと
)
意外な気がした。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
が、
大勢
(
おおぜい
)
の面会人は誰も
存外
(
ぞんがい
)
平気らしかった。殊に
丹前
(
たんぜん
)
を二枚重ねた、
博奕
(
ばくち
)
打ちらしい男などは新聞一つ読もうともせず、ゆっくり
蜜柑
(
みかん
)
ばかり食いつづけていた。
冬
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これも一つの習慣にはちがいないが、オヤツやお三時の起こりは
存外
(
ぞんがい
)
にあたらしいものなのである。以前は食べる日が一年のうちに、指をおってかぞえられるほどしかなかった。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その時分は今に比べると、
存外
(
ぞんがい
)
世の中が
寛
(
くつ
)
ろいでいましたから、内職の口はあなたが考えるほど
払底
(
ふってい
)
でもなかったのです。私はKがそれで充分やって行けるだろうと考えました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と波越氏は
存外
(
ぞんがい
)
呑気
(
のんき
)
な返事である。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
僕は
早速
(
さっそく
)
彼と一しょに
亀井戸
(
かめいど
)
に近い
場末
(
ばすえ
)
の町へ行った。彼の妹の縁づいた先は
存外
(
ぞんがい
)
見つけるのに
暇
(
ひま
)
どらなかった。それは
床屋
(
とこや
)
の裏になった
棟割
(
むねわ
)
り
長屋
(
ながや
)
の一軒だった。
彼
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
病人の
枕辺
(
まくらべ
)
は
存外
(
ぞんがい
)
静かであった。頼りなさそうに疲れた顔をしてそこに坐っている母を
手招
(
てまね
)
ぎして、「どうですか様子は」と聞いた。母は「今少し持ち合ってるようだよ」と答えた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この手ぬかりを見た水兵たちの一人は砲身の上へ
跨
(
またが
)
るが早いか、身軽に砲口まで
腹這
(
はらば
)
って行き、両足で
蓋
(
ふた
)
を押しあけようとした。しかし蓋をあけることは
存外
(
ぞんがい
)
容易には出来ないらしかった。
三つの窓
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
踏む石は
天鵞毧
(
びろうど
)
のごとく
柔
(
やわら
)
かと見えて、足音を
証
(
しょう
)
にこれを
律
(
りっ
)
すれば、動かぬと評しても
差支
(
さしつかえ
)
ない。が輪廓は少しく浮き上がる。余は画工だけあって人体の骨格については、
存外
(
ぞんがい
)
視覚が鋭敏である。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ細い
釣竿
(
つりざお
)
にずっと黄色をなするのは
存外
(
ぞんがい
)
彼にはむずかしかった。
蓑亀
(
みのがめ
)
も毛だけを緑に塗るのは
中々
(
なかなか
)
なまやさしい仕事ではない。最後に海は代赭色である。バケツの
錆
(
さび
)
に似た代赭色である。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
従兄
(
いとこ
)
はこの窓の向うに、——光の乏しい
硝子
(
ガラス
)
窓の向うに円まると
肥
(
ふと
)
った顔を出した。しかし
存外
(
ぞんがい
)
変っていないことは幾分か僕を力丈夫にした。僕等は感傷主義を
交
(
まじ
)
えずに手短かに用事を話し合った。
冬
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼はいつも
床
(
とこ
)
の上に細い
膝
(
ひざ
)
を
抱
(
だ
)
いたまま、
存外
(
ぞんがい
)
快濶
(
かいかつ
)
に話したりした。しかし僕は部屋の隅に置いた便器を眺めずにはいられなかった。それは
大抵
(
たいてい
)
硝子
(
ガラス
)
の中にぎらぎらする
血尿
(
けつにょう
)
を
透
(
す
)
かしたものだった。
彼
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、ちょっとためらった
後
(
のち
)
、
存外
(
ぞんがい
)
はっきり返事をした。
古千屋
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“存外”の意味
《名詞》
存外(ぞんがい)
思いの外。想定外。意外。
(context、dated)もってのほか。無礼。
《形容動詞》
存外(ぞんがい)
思いの外。想定外に。意外に。
(出典:Wiktionary)
存
常用漢字
小6
部首:⼦
6画
外
常用漢字
小2
部首:⼣
5画
“存外”で始まる語句
存外六