夜汽車よぎしや)” の例文
夜汽車よぎしや新橋しんばしいたときは、ひさりに叔父をぢ夫婦ふうふかほたが、夫婦ふうふとも所爲せゐれやかないろには宗助そうすけうつらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
がかつたつむぎ羽織はおりに、銘仙めいせんちやじまをたのと、石持こくもち黒羽織くろばおりに、まがひ琉球りうきうのかすりをたのが、しよぼ/\あめなかを、夜汽車よぎしやつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
僕は九月二十日の夜汽車よぎしやで日本へ帰る晶子をマルセエユまで送つて行つた。倫敦ロンドンから着いた平野丸は乗客じようかくが満員になつて居て、一二等を通じて空いた部屋が無かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
何事なにごとも、しかし、まと打撞ぶつかるまでには、ゆみへども道中だうちうがある。つてふのではないけれども、ひよろ/\夜汽車よぎしやさまから、御一覽ごいちらんねがふとしよう。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
京都きやうといた一日目いちにちめは、夜汽車よぎしやつかれやら、荷物にもつ整理せいりやらで、徃來わうらい日影ひかげらずにらした。二日目ふつかめになつてやうや學校がくかうると、教師けうしはまだ出揃でそろつてゐなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
水の上の街は夜霧よぎりの中にぼんやりと黒く浮いて居る。乗客じようかくすくな夜汽車よぎしやから降りた三十人程の者は夜が明けてのちに来る一銭蒸汽を待つつもりか大抵停車場ステエシヨンの待合室へはひつて仕舞しまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
あとでくと、夜汽車よぎしやが、箱根はこね隧道トンネルくゞつて鐵橋てつけうわた刻限こくげんには、うち留守るすをした女中ぢよちうが、女主人をんなしゆじんのためにお題目だいもくとなへると約束やくそくだつたのださうである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……さびしいにつけ、陰氣いんきにつけ、隨所ずゐしよ停車場ステエシヨンともしびは、夜汽車よぎしやまどの、つきでもはなでもあるものを——こゝろあての川崎かはさき神奈川かながはあたりさへ、一寸ちよつとだけ、汽車きしやとまつたやうにおもふまでで
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夜汽車よぎしやが、芽峠めたうげほたるんで、まどには菖蒲あやめいたのです——ゆめのやうです。………あの老尼らうには、およねさんの守護神まもりがみ——はてな、老人らうじんは、——知事ちじ怨靈をんりやうではなかつたか。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
の、面影おもかげを、——夜汽車よぎしやシイトの、いまこゝに——
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)