同心どうしん)” の例文
西町奉行にしまちぶぎやう荒尾但馬守あらをたじまのかみが、江戸表えどおもてから着任ちやくにんするといふので、三十與力よりきは、非番ひばん同心どうしんれて、先例せんれいとほ守口もりぐちまで出迎でむかへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
去程さるほど同心どうしん原田大右衞門松野文之助まつのぶんのすけの兩人いづれも旅裝束たびしやうぞくにて淺草三間町の自身番へ來りければ虎松も豫々かね/″\申付られしこと故支度したく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
門外に来てゐるのは二にんの少年であつた。一にんは東組町同心どうしん吉見九郎右衛門よしみくらうゑもんせがれ英太郎えいたらう、今一人は同組同心河合郷左衛門かはひがうざゑもんの倅八十次郎やそじらう名告なのつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
おこさせて新田につたとは名告なのらすれど諸事しよじ別家べつけかくじゆんじて子々孫々しゝそん/\末迄すゑまで同心どうしん協力けふりよくことしよあひ隔離かくりすべからずといふ遺旨ゐしかたく奉戴ほうたいして代々よゝまじはりを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自身番じしんばんへ馳けこんで、ちょうど外の涼み台で、祭りの御神酒おみきみかわしていた番太ばんたや、同心どうしんたちへ早口にうったえた。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あくる朝、秋山嘉平次は同心どうしんの奥野久平を呼んで、柳島の伊兵衛殺しの一件について特別の探索方を命令した。
真鬼偽鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
侍の口ぶりだ、与力よりき同心どうしんだな。——どういう仔細だときかれて、相手の助二郎はくどくどとなにか説明した。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それは如何いかに忘れようとしても、忘れることの出来ない、南町奉行みなみまちぶぎょう同心どうしん、渡辺金兵衛の姿なのだ。——
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
道頓堀どうとんぼりの芝居に与力よりき同心どうしんのような役人が見廻りに行くと、スット桟敷さじきとおって、芝居の者共ものどもが茶をもって来る菓子を持て来るなどして、大威張おおいばりで芝居をたゞ見る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
町奉行配下の与力よりき同心どうしんを始め町方の御用聞きに到るまで、言い合わしたように町道場の主とその高弟たち、さては諸国から上って来た浪人の溜りなどへしきりに眼を光らせてきたが
鶴亀々々つるかめつるかめ。しかし二本差した先生のお供をしていりゃア与力よりきでも同心どうしんでも滅多めったな事はできやしめえ。」と口にはいったけれど仙果は全く気味悪そうに四辺あたりを見廻さずにはいられなかった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それを護送するのは、京都町奉行まちぶぎょうの配下にいる同心どうしんで、この同心は罪人の親類の中で、おも立った一にんを大阪まで同船させることを許す慣例であった。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
各々おの/\つてゐるだらう、御城與力おしろよりき同心どうしんは、御城代ごじやうだい勤役中きんやくちうあづけおく、といふ上意じやういだが、町奉行まちぶぎやうへは與力よりき同心どうしん勤役中きんやくちうくだされおくといふ上意じやういになつてる。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
此時このとき越前守殿高聲かうしやうにコレ段右衞門左右とかくおのれがつみかくさぎからす言黒いひくろめんとするは扨々不屆き者なりと白眼付にらみつけられ夫より同心どうしんに豫て申つけおきたる品川宿の馬士まご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひる時分なので、広いかこいを見る同心どうしんも歩いていず、あなたの役宅もシンとして、折からこの山屋敷の奥は、わらを敷いて日向ひなたにならんだ若い仲間の男とあでやかな娘には、至って
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東町奉行所で小泉を殺し、瀬田を取り逃がした所へ、堀が部下の与力よりき同心どうしんを随へて来た。跡部あとべは堀と相談して、あけ六つどきにやう/\三箇条の手配てくばりをした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
配下はいか與力よりき同心どうしんふるへあがるし、人民じんみん往來わうらいあるくにもひさくなつて、足音あしおとさへてぬやうにした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
伴うて間毎々々まごと/\にはり向の物置部屋へ案内したり爰には數十人の與力よりき同心どうしんばんをなし言語同斷の無禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
見るとそれは、夕刻、今井二かんと少し話して帰った、山屋敷常詰じょうづめ同心どうしん河合かあいでん八。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
護送の役をする同心どうしんは、そばでそれを聞いて、罪人を出した親戚眷族しんせきけんぞくの悲惨な境遇を細かに知ることができた。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
捕縄とりなわをとって三十年、目明めあか小頭こがしらの下役から、同心どうしん与力よりきと出世して、歴代の江戸町奉行をたすけ、その非凡な大眼識と巨腕は、近代稀れな鬼才と称された名探偵——塙隼人はなわはやとであった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
跡部が淡路町あはぢまちの辻にゐた所へ、堀が来合きあはせた。堀は御祓筋おはらひすぢ会所くわいしよで休息してゐると、一旦散つた与力よりき同心どうしんが又ぽつ/\寄つて来て、二十人ばかりになつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
と、郡代ぐんだい同心どうしんが、いかにも田舎いなか役人らしい権柄けんぺいあごをすくう。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを護送してゆく京都町奉行付まちぶぎょうづき同心どうしんが悲しい話ばかり聞かせられる。あるときこの舟に載せられた兄弟殺しのとがを犯した男が、少しも悲しがっていなかった。
高瀬舟縁起 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
同心どうしん等が三道具みつだうぐを衝き立てて、嚴めしく警固してゐる庭に、拷問に用ゐる、あらゆる道具が並べられた。そこへ桂屋太郎兵衞の女房と五人の子供とを連れて、町年寄五人が來た。
最後の一句 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
同心どうしんらが三道具みつどうぐを突き立てて、いかめしく警固している庭に、拷問に用いる、あらゆる道具が並べられた。そこへ桂屋太郎兵衛の女房と五人の子供とを連れて、町年寄まちどしより五人が来た。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
取調役とりしらべやくのさしずで、同心どうしん一人ひとり長太郎の手から書付かきつけを受け取って、縁側に出した。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)