つか)” の例文
新字:
「はい」と答へて、お綱は薄刃庖丁うすばばうちやうを持つて來て、水仕事につかれたと云ふ樣子で、ぺッたり爐ばたに坐わり、籠の中のをむき初める。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
看護かんごひとつかれぬ、雪子ゆきこよわりぬ、きのふも植村うゑむらひしとひ、今日けふ植村うゑむらひたりとふ、かはひとへだてゝ姿すがたるばかり
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
朝はまだバスの女車掌さんにもつかれは見えないし、少年工も口笛を吹いて、シエパードを呼ぶ坊ちやんに劣らぬ誇りを生産に持つ。
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
ことに、既に長き旅路につかれたる我をして、嚢中のうちう甚だ旅費の乏しきにも拘らず、ふるつてこの山中にらしめたる理由猶一つあり。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
覺えて鹽尻峠しほじりたふげも馬に遊ばんと頼み置きて寐に就く温泉にてつかれを忘れ心よくねぶりたれば夜の明けたるも知らず宿の者に催されてやうやくに眼を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
のみ代錢は拂ひたれども心氣のつかれにて思はず暫時しばし居眠ゐねふ眼覺めざめて後此所を立ち出で途中にて心付懷中を見し處に大事の財布さいふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
机上の爲事しごとつかれた時、世間のいざこざのわづらはしさに耐へきれなくなつた時、私はよく用もないのに草鞋を穿いて見る。
彼としては非常な大骨折おほゞねをりで、わづか二三日の間に、げツソリ頬の肉がけたと思はれるばかり體もつかれ心もつかれた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ああいふ數でこなす藝術は目と耳とをつからせるだけで土産話の種より外には役立たぬ。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
あいちやんは、ねえさんとどてうへにもすわつかれ、そのうへることはなし、所在しよざいなさにれず、再三さいさんねえさんのんでる書物ほんのぞいてましたが、もなければ會話はなしもありませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
なれつかれたらば吾一人にても試みるべし。
花枕 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
かまどの灰や、歳月さいげつに倦みつかれ來て
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
日暮れつかれて道の邊に
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
兎に角、非常につかれてゐる。そして手や足が自分のものではないやうに顫へて、自分の目のしたのあたりに絶えずぴく/\と痙攣けいれんがある。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
夕暮の野路でも、彼女たちはつかれきつて、默々と、まだ夜露にしめらない、土埃りのたつ道路みちを、まつ黒い影で二三人づつ歩いてゆくのだつた。
桑摘み (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
振り起しイザヤ他の酒樓に上りて此の憂悶を散ずべしかねこゝにて大盛宴を開くつもりならずや我輩つかれたりと云へどよく露伴太華の代理として三人分を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
かり着替きかへぬれ着類きるゐ竿さをに掛け再び圍爐裡ゐろりはたへ來りてあたれば二日二夜のくるしみに心身しんしんともつかれし上今十分に食事しよくじを成して火にあたゝまりし事なれば自然しぜん眠氣ねふけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たびは今宵は此驛にやどらんと思ひしが、猶脚のつかれざると、次の驛なる須原すはらまで左程遠くもあらざるに勇を鼓して、とある茶榻ちやたう一休憩ひとやすみしたる後、靜かに唐詩を吟じつゝ驛を出づ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
母が「あなたは今日はおつかれでせうからもうお休みなさい。」と言つた。
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
そのらふたげさつからしさ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
つかれて何の道かある
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
拙者がうちだと思へばいハテ百年住み遂げる人は無いわサト痩我慢の悟りを開き此所このところの新築見合せとし田へ引く流に口をそゝ冗語むだつかれの忘れ草笑聲わらひ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
やがてはつかれて來たと見え、こちらの寒さにふるへてゐる膝の上にその兩手を兩肱までかけ、そのうへへその顏とからだの上半身とを托してしまつた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
悉皆のこりなく呼出よびだされ村井長庵は兩度りやうど拷問がうもんにても白状はくじやうせざる事故身體しんたいつかはてかゝる惡人あくにんなりといへどてんさだまりて人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
渠は、東京にゐた時から、つかれるまでは、あけがたの三時までも、四時までも、褥に這入らないのが習慣であつた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
二人とも足はつかれて來るし、日暮れには近くなるし、薄暗い低林ていりんの間の葉は半ば赤く、紫色の花は既にしぼんだブシ(とりかぶと)の立ち並んだ道路を進み、屡々しばしば小川を渡る度毎に
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)