だし)” の例文
まず朝勃然むっくり起る、弁当を背負しょわせて学校へだしる、帰ッて来る、直ちに傍近の私塾へ通わせると言うのだから、あけしい間がない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
お登和さん、ホントに今だして下すった松茸は良い品物ばかりですね。何故なぜ良い品ばかり揃えて直段ねだんを高くしてうらないでしょう。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それはわたし権内けんないいことなのです。まあ、かんがえて御覧ごらんなさい、わたしかり貴方あなたをここからだしたとして、どんな利益りえきがありますか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして格子戸を開けて、ひしゃげた帽子を拾おうとしたら、不思議にも格子戸がひとりでに音もなくひらいて、帽子がひょいと往来おうらいの方へころがりだしました。
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
つと近年きんねん此餠屋の出店をだしもらひ夫婦とも稼暮かせぎくらす者なりフト吉之助の來てより家業かげふいそがしく大いに身代しんだい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この時演劇は既に今日こんにち吾人ごじん目睹もくとするが如く、セリだしまわり道具、がんどうがえし等あらゆる舞台装置の法を操座あやつりざより応用し、劇場の構造看客かんきゃくの観覧席をもまた完備せしめき。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
不図ふと其中そのうちの一軒から、なまめかしい女が、白いはぎを見せて、今時分いまじぶんガラガラと雨戸をだした。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「どれ、おれげもちつとだしねえか」おつぎは與吉よきちからすこいて自分じぶんくちれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一簡いっかん奉啓上候けいじょうそうろう余寒よかん未難去候得共いまださりがたくそうらえども益々御壮健恐悦至極きょうえつしごく奉存候ぞんじそうろう然者しかれば当屋敷御上おかみ始め重役の銘々少しも異状かわり無之これなく御安意可被下候ごあんいくださるべくそうろうついては昨年九月只今思いだし候ても誠に御気の毒に心得候御尊父を
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
兎に角すばしこく手をおだしなさい。ぼんやりしていないで。
「何うも、お呼びだしして済みません。」と
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
紙入かみいれからさつだししづに渡した。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
川筋によって鮨に適する鮎と外の料理に適する鮎と品が違う事は本文の方にくわしくだしております。先ず鮎の中骨ちゅうぼねを抜いて塩を当てて二、三時間置きます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
動物的の愛なんぞは何処かの隅にそっしまって置き、例の霊性の愛とかいうものをかつだして来て、薄気味悪い上眼を遣って、天から振垂ぶらさがった曖昧あやふやな理想の玉をながめながら
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
思ひだし花は櫻木さくらぎ人は武士とは實に道理ことわりなり武士程立派なる者はなし夫に引替ひきかへ心からとは云ながら二百石の侍士さむらひ紙屑買かみくづかひとなり果たること餘りと云ば情なし是と云ふ思案しあんの外より出來たる事主親を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
れはわたし權内けんないことなのです。まあ、かんがへて御覽ごらんなさい、わたしかり貴方あなたこゝからだしたとして、甚麼利益どんなりえきりますか。御覽ごらんなさい、まちものか、警察けいさつかがまた貴方あなたとらへてれてまゐりませう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そうしないと中の物がふくだして蓋がもちません。深い鍋へ酒に味淋に醤油に煮汁だし美味おいしい汁を沢山こしらえて今の南瓜を柔くなるまで煮て出します。こうしたのは双方の味がよくしみて大層美味くなります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)