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凝
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じ
ふりがな文庫
“
凝
(
じ
)” の例文
すぐ私の
背後
(
うしろ
)
に立止まって
凝
(
じ
)
っと覗いているサラリーマンらしい中年紳士の肩越しに、銀座の往来の断面が三分の二ほど映っている。
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
其処
(
そこ
)
に痛い程の快感がある。
凝
(
じ
)
っとしていると体までがこの儘何処へかけし飛んでしまいそうだ。私は再び杖を揮って大声に叫んだ。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
私たちのように
凝
(
じ
)
っと机にかじりついているものは、冬は炭のいるのを気兼ねしいしいというのでやり切れないところがあります。
裏毛皮は無し:滝田菊江さんへの返事
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それだから皆一生懸命だ。就職の必要のない僕にしても雰囲気の刺戟を受けて、なんだか
凝
(
じ
)
っとしていられないような心持がする。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
イエは一瞬そう云う私の面を
凝
(
じ
)
っと見つめ頬をあかくしたが、すぐ笑い顔になって背を見せながら、「うそ、うそ。」と云った。
前途なお
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
▼ もっと見る
と、浮気ぽい根性がうず
痒
(
かゆ
)
く動いて来た。眼をあげると、女はペンキの
剥
(
は
)
げたドアにもたれて、
凝
(
じ
)
っと媚を含んだ眼をこちらに向けていた。
苦力頭の表情
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
最早、四囲を掘荒されたためからの影響として、地盤が落着き、肥料が土地に馴染むまで、
凝
(
じ
)
っと待つより他に途が無かった。
黒い地帯
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
実際、おときは口さきだけでなく、寝しなに戸外へ立った時などは、しばらく
凝
(
じ
)
っと闇を透かして夫の姿を求めるのであった。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
この通り目を開いたっきりで、本人は
内障眼
(
そこひ
)
だと言っていますが、いつまでも瞳が動きません、動けば
凝
(
じ
)
っと
明後日
(
あさって
)
の方を見詰めています。
銭形平次捕物控:042 庚申横町
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
頭髪は少女時代と少しも変らず今だに烏の濡羽のように艶々としている。やがて彼女は両手を膝の上に揃えると
暫
(
しばら
)
くの間
凝
(
じ
)
っと
項垂
(
うなだ
)
れていた。
目撃者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
考えてみたまえ。僕なんか、
凝
(
じ
)
っとこう目を
瞑
(
つむ
)
ればそれで解決はもうついている。哲学なんかいらない。僕のさとりはこれだ
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
法水にそう云われて、里虹は
慇懃
(
いんぎん
)
に頷いた。彼は、懐古とも怖れともつかぬ異様な表情をして、
凝
(
じ
)
っと伏目になっていた。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
散らばつた新築の借家が、板目に残りの日をうけて赤々と
映
(
は
)
えてゐる。それを取り囲んで方々の
生垣
(
いけがき
)
の
檜葉
(
ひば
)
が、地味な浅緑で
凝
(
じ
)
つと
塊
(
かたま
)
つてゐる。
姉弟と新聞配達
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
埒の外から
凝
(
じ
)
っと見詰め通して来た一人であるが、さてその光景や如何にと今それを語らんとするに当って、今更の如く遺憾を感ぜざるを得ない。
芸美革新
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
従僕はあやまるように頭を
低
(
さ
)
げた。
凝
(
じ
)
ッとしていられない気持は、夜明けの遅い秋の朝を自分の責任のように恐縮した。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
語り終って、ぴょこりと頭を低げた小金井穀屋の番頭初太郎を、釘抜藤吉の針のような視線が、
凝
(
じ
)
っと見据えていた。
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
背広の男は一方の群集に混って、
凝
(
じ
)
っとその様子を眺めていた。彼の顔も焔の色に染って、異常な緊張を示していた。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
やがて
食事
(
しよくじ
)
を
了
(
を
)
えて、わが
室
(
へや
)
へ
歸
(
かへ
)
つた
宗助
(
そうすけ
)
は、
又
(
また
)
父母
(
ふぼ
)
未生
(
みしやう
)
以前
(
いぜん
)
と
云
(
い
)
ふ
稀有
(
けう
)
な
問題
(
もんだい
)
を
眼
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
据
(
す
)
ゑて、
凝
(
じ
)
つと
眺
(
なが
)
めた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は別にその人影を怪しいと思ったのではなかった。しかし私はなんということなく
凝
(
じ
)
っと、その人影が闇のなかへ消えてゆくのを眺めていたのである。
蒼穹
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
いつでも、いつでも、どこからか
凝
(
じ
)
っと見ていられる、すべてを知られてしまう、それが妻だとあっては僕は休息することが出来ない。僕は疲れてしまったよ
魔性の女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
何とぞ、御奉公のおん為、又、小さくは私たちをも、
不愍
(
ふびん
)
と
御堪忍
(
ごかんにん
)
あそばされて、
凝
(
じ
)
っと、お
怺
(
こら
)
えくださいますように、お願いに参じましたのでございまする
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
孫伍長は、車窓に走る鋭い岩山や、奇流の泡立つ深い
嶮峡
(
けんきょう
)
を
睨
(
にら
)
みながら、
凝
(
じ
)
っとそんなことを考えていた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
私の傍には
沢山
(
たくさん
)
の人々が居た。その人々を相手に、母はさまざまのことを喋っていた。私は、母の膝に抱かれていたが、母の唇が動くのを、物珍らしそうに
凝
(
じ
)
っと見ていた。
幼い頃の記憶
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
悔
(
くい
)
というかたちもないものの中へ押込めてしまって、長い一生を、
凝
(
じ
)
っと、
消
(
きえ
)
てしまった故人の、恋心の中へと
突
(
つき
)
進めてゆかせようとするのを、私は何とも形容することの出来ない
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
二人の婦人、彼等の兄のセント・ジョン、それから老婆は、
凝
(
じ
)
つと私を
瞶
(
みつ
)
めてゐる。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
不思議な挙動に目を
睜
(
みは
)
って、
凝
(
じ
)
っと見詰めては、父親が泣き出すと、自分も
一緒
(
いっしょ
)
にしくしくと、何時までも泣き続けていた、
黄昏
(
たそがれ
)
の灯のない裏長屋の中のあまりに
侘
(
わび
)
し気な
風情
(
ふぜい
)
だった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
胸が一ぱいになり、あまり苦しくて泣きたくても泣けず、人生の厳粛とは、こんな時の感じを言うのであろうか、身動き一つ出来ない気持で、
仰向
(
あおむけ
)
に寝たまま、私は石のように
凝
(
じ
)
っとしていた。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
吉川君にしてやられたことを知らずに帰って行ったが、そのまゝ
凝
(
じ
)
っとしている筈はない。仲人のところへ相談に出掛けたに定っている。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
長椅子の横一杯に脚をのばし、読んでいる彼女の楽な姿勢を、朝子は
凝
(
じ
)
っと見ていたが、突然顔と頭を、いやいやでもするように振り上げ
一本の花
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして髭を剃るのをやめて、
黙々
(
もくもく
)
と、
炉端
(
ろばた
)
へ行って坐った。松代は
怖々
(
おずおず
)
と、炉端へ寄って行った。そしてお互いにしばらく
凝
(
じ
)
っと黙っていた。
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「…………」お鳥は
凝
(
じ
)
っと唇を噛みました。山で育ったお鳥はこの悪獣の
貪婪
(
どんらん
)
な食慾と、執拗極まる性質を知り過ぎるほど知って居たのです。
裸身の女仙
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「いいえ、
竪琴
(
ハープ
)
の前枠に手をかけていて、私は、そのまま
凝
(
じ
)
っと息を
凝
(
こ
)
らしておりました」と伸子は
躊
(
ため
)
らわずに、自制のある調子で云い返した。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
かう云つて彼は
鷹揚
(
おうやう
)
にワツハツハと笑つた。が、森島和作は「徳兵衛」といふ名前を聞くと後ろを鋭く振返り、その少年の顔を
凝
(
じ
)
つと見つめてゐた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
いかに身を処すかに
就
(
つ
)
いて自信も経験もなかった。誰かが何とか収拾してくれるだろう、と、
凝
(
じ
)
ッと耐えて待っていた。動けば作法に外れそうであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
赤犬は、いや、あいつは私が見覚えのある眼色で
凝
(
じ
)
っと私を見つめた。私は子供のとき教室でこの眼を見たときの感情が、自分のうちに
甦
(
よみが
)
えるのを感じた。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
凝
(
じ
)
っと、死んだように貼りついていた。——いったい
脾弱
(
ひよわ
)
な彼らは日光のなかで戯れているときでさえ、死んだ蠅が生き返って来て遊んでいるような感じがあった。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
表面からは
濛々
(
もうもう
)
と立ち昇る烟のような霧が、吹き下ろす風に捲かれて、雪渓の真中を渦を巻きながら押し寄せて来る、
凝
(
じ
)
っと見ていると霧に足が生えているようだ
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
幼少から自分の側を離れないこの二人が、眼に涙を溜めているの見ると、内匠頭も瞼が
凝
(
じ
)
っと熱した。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
孫軍曹は、ぎょっとした様子で
凝
(
じ
)
っと小孩の顔を見ていたが、
堪
(
たま
)
らなくなったらしく面をそむけた。そして、泣きじゃくっている小孩をしっかり抱えて店の中へ入って来た。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
どうもあの水蜜桃の食ひ具合から、青木堂で茶を呑んでは烟草を吸ひ、烟草を吸つては茶を呑んで、
凝
(
じ
)
つと正面を見てゐた様子は、正に此種の人物である。——批評家である。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
凝
(
じ
)
つと私を視て、この昏睡的な状態は過度の、長い間の疲勞から來た反動の結果だと云つた。そして醫者を呼ぶ必要はない、その儘
凝
(
じ
)
つと自然に
放任
(
はうにん
)
して置くのが一番いゝだらうと云つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そして
凝
(
じ
)
っと待っていた。時間の経過は実に
遅
(
のろ
)
く彼には何時間か経った様な気がした——と、その時
扉
(
ドア
)
がそっと開かれた。スパイダーは棍棒を握りしめ、
扉
(
ドア
)
の近くに身を寄せて息を凝らしていた。
赤い手
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一時間ほど
凝
(
じ
)
っと身動きせず、
謂
(
い
)
わば死んだ振りをしていたのであるが、船酔いの気配は無かった。大丈夫だと思ったのである。そう思ったら、寝ているのが、ばかばかしくなって起きてしまった。
佐渡
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私、もう先月から知っているんですよ、自首なすったら如何? 罪が軽くなりますからってね。主人は
凝
(
じ
)
っと考え込みました。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
全身の注意を集注した様子で、
凝
(
じ
)
っと揺れの鎮るのを待っている。階下に来て見て、始めて私は四辺に異様な響が満ちているのに気がついた。
私の覚え書
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
継母の烈しい言葉の前に、関子は
凝
(
じ
)
っと立ちすくみました。その顔は
白粉
(
おしろい
)
の色が変るほど真っ蒼になって、美しい口許がピリッピリッと
痙攣
(
ひきつ
)
ります。
悪魔の顔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれども、その時儀右衛門は、塑像のように動かなくなり、釣竿を腕に支えたまま
凝
(
じ
)
っと戸板の上を見詰めていた。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
彼は失神の状態で、幾日も幾日もぶらぶらと、仕事を休んでいた。どうかすると、両の眼にぎらぎらと涙を溜めて、空間を
凝
(
じ
)
っと視詰めているようなことがあった。
馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
私達は一つの桶の周囲に六人ほどずつかたまって、熱い湯の中に
凝
(
じ
)
っと手を浸した。五分間で交替した。それを毎朝やった。私の掌はそれでもすこしあかぎれがした。
その人
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
彼の
凝
(
じ
)
ッとしておれない気持がふいに
沸
(
たぎ
)
りあげて来た。これからトウベツに行こうと心が決った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
凝
常用漢字
中学
部首:⼎
16画
“凝”を含む語句
凝然
凝視
凝結
凝乎
混凝土
凝固
凝塊
凝滞
凝集
三上水凝刀自女
凝脂
凝灰岩
思凝
凝議
凝坐
煮凝
凝固土
凝如
凝着
唐太常凝菴
...