停車場ていしやば)” の例文
みなぎるばかりひかりつて、しかかるい、川添かはぞひみち二町にちやうばかりして、しろはしえたのが停車場ていしやばから突通つきとほしのところであつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かういふ理由わけで、H氏が上京する報知が来ると、井上侯はいつも迎へ車を停車場ていしやばまでよこす事を忘れなかつた。
停車場ていしやばから宿屋まで、僅か一町足らずの間に、夜風のひえおとがひを埋めた首巻が、呼気いき湿気しめりで真白に凍つた。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
恭一はすたすたあるいて、もう向ふに停車場ていしやばのあかりがきれいに見えるとこまできました。
月夜のでんしんばしら (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
箱根へ、熱海へと言つて夫や子供と一緒によく出掛けて行つた時には、唯無心に見て通り過ぎた相模さがみの海岸にある小さな停車場ていしやば、そこへ夫人はお鶴と二人ぎり汽車から降りた。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
強盜がうとう間違まちがへられた憤慨ふんがいまぎれに、二人ふたりはウン/\あせしぼりながら、一みちさかい停車場ていしやばで、其夜そのよ汽車きしやつて、品川しながはまでかへつたが、新宿しんじゆく乘替のりかへで、陸橋ブリツチ上下じやうげしたときくるしさ。
翌日よくじつあさはや門野かどの荷車にぐるまを三台やとつて、新橋の停車場ていしやば迄平岡の荷物にもつ受取うけとりにつた。実はうからいて居たのであるけれども、うちがまだきまらないので、今日けふ迄其儘にしてあつたのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どんどんとそのあとでまた太鼓を打つた。欄干てすりの前に置いた大きい床机しやうぎの上で弁当を開く近在の人もある。和歌山の親類の客を迎へに停車場ていしやばへ行つて居た番頭が真先まつさきになつて七八台の車が着いた。
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あるものは「京終きやうはて」の停車場ていしやばのサンドウヰツチの呼びごゑのごと
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
松島まつしまから帰途かへりに、停車場ステーシヨンまでのあひだを、旅館りよくわんからやとつた車夫しやふは、昨日きのふ日暮方ひぐれがた旅館りよくわんまで、おな停車場ていしやばからおくつたをとこれて、その心易こゝろやす車上しやじやうはなした。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もしかH氏が乳母車で乗りつけ度いと言ひ出したら、侯爵は態々わざ/\乳母車を停車場ていしやばまで廻したかも知れない。
かれ泣く停車場ていしやばすゞみぞどく
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
停車場ていしやばの人ごみの中に
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ふうちに、とびかゝつて、三疋四疋さんびきしひき就中なかんづく先頭せんとうつたのには、停車場ていしやばぢかると、五疋ごひきばかり、前後ぜんごからびかゝつた。しつしつしつ! 畜生ちくしやう畜生ちくしやう畜生ちくしやう
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あめが、さつと降出ふりだした、停車場ていしやばいたときで——天象せつはなくだしである。あへ字義じぎ拘泥こうでいする次第しだいではないが、あめはなみだしたやうに、夕暮ゆふぐれしろかつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おもしろいことは、——停車場ていしやば肱下ひぢさがりに、ぐる/\と挽出ひきだすと、もなく、踏切ふみきりさうとして梶棒かぢぼうひかへて、目當めあて旅宿りよしゆくは、とくから、心積こゝろづもりの、明山閣めいざんかくふのだとこたへると、うかね、これ
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)