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乾
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いぬい
ふりがな文庫
“
乾
(
いぬい
)” の例文
このとき刑死した同志のなかに、木綿問屋下辻又七らと雲浜貿易に参与した大和五条の医者
乾
(
いぬい
)
十郎、
井沢宜庵
(
いざわぎあん
)
らも入っている。
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
その障子の一枚を踏み破って、のめるように縁の廊下に転び出た
大兵
(
たいひょう
)
の士——月輪剣門にその人ありと知られた
乾
(
いぬい
)
万兵衛だ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そうして十二時が鳴り出したら、大きな声を出して合図をしてくれ、すると御父さんがあの
乾
(
いぬい
)
に当る梅の根っこを掘り始めるからと云いつけた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこから、
乾
(
いぬい
)
の方へ、光りを照り返す平面が、幾つも
列
(
つらな
)
って見えるのは、
日下江
(
くさかえ
)
・
永瀬江
(
ながせえ
)
・
難波江
(
なにわえ
)
などの水面であろう。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
御文庫は松の丸と呼ばれる二の
曲輪
(
くるわ
)
にあって、そこからは少しまわらなければならないが、大手や
乾
(
いぬい
)
門のように知友に会う心配は殆んどなかった。
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
「
乾
(
いぬい
)
」の
烟草屋
(
タバコや
)
の物置きに火が掛かると、ありたけの烟草が一どきに燃え出して、その
咽
(
むせ
)
ることは……焦熱地獄とはこんなものかと目鼻口から涙が出やした」
幕末維新懐古談:15 焼け跡の身惨なはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
金の盃と黄金の鶏とを、その地へ埋めて行かれたので、今でも正月元日の朝は、その黄金の鶏が出て鳴くといっております。(稿本美濃志。岐阜県武儀郡
乾
(
いぬい
)
村)
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
天竺
(
てんじく
)
、即ち
印度
(
インド
)
では
霊鷲山
(
りょうじゅせん
)
の
乾
(
いぬい
)
の
方
(
かた
)
にあり、支那では天台山の乾の方、日本ではこの比叡山の乾、即ち当山、大原来迎院を即ち魚山というのです、慈覚大師
直伝
(
じきでん
)
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
にわかにわたくしが
鷲
(
わし
)
にのってまいったのもそのため、残念ながらあなたの
命
(
いのち
)
は、こよい
乾
(
いぬい
)
の星がおつるとともに、
亡
(
な
)
きかずに入り、腹心のかたがたもなかば以上は
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この
辺
(
あたり
)
からは、峰の松に
遮
(
さえぎ
)
られるから、その姿は見えぬ。
最
(
も
)
っと
乾
(
いぬい
)
の位置で、
町端
(
まちはずれ
)
の方へ
退
(
さが
)
ると、
近山
(
ちかやま
)
の
背後
(
うしろ
)
に海がありそうな雲を隔てて、山の形が
歴然
(
ありあり
)
と見える。……
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
金融界の
乾
(
いぬい
)
の手輩としてN・R漁業権を背景として、政党と政党の対立に山師の貫祿を見せた彼も、内閣が
更迭
(
こうてつ
)
すると疑獄事件のうずのなかに、不治の病を発してしまった。
大阪万華鏡
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
翌朝村人僧の教えのままに、馬頭と金魚、および三足鶏の屍を見出し、また寺の
乾
(
いぬい
)
の
隅
(
すみ
)
の柱上より
槌
(
つち
)
の子を取り下ろす。この槌の子がもっとも悪い奴で、他の諸怪を呼んだのだ。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
十月の
素袷
(
すあわせ
)
、
平手
(
ひらて
)
で水っ
洟
(
ぱな
)
を
撫
(
な
)
で上げながら、突っかけ草履、前鼻緒がゆるんで、左の親指が少し
蝮
(
まむし
)
にはなっているものの、
十手
(
じって
)
を後ろ腰に、
刷毛先
(
はけさき
)
が
乾
(
いぬい
)
の方を向いて、とにもかくにも
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
細君が
指輪
(
ゆびわ
)
をなくしたので、此頃勝手元の
手伝
(
てつだ
)
いに来る
隣字
(
となりあざ
)
のお
鈴
(
すず
)
に頼み、
吉
(
きち
)
さんに見てもらったら、
母家
(
おもや
)
の
乾
(
いぬい
)
の
方角
(
ほうがく
)
高い処にのって居る、
三日
(
みっか
)
稲荷様
(
いなりさま
)
を信心すると出て来る、と云うた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
即ち東南には運気を起し、西北には黄金の
礎
(
いしずえ
)
を据える。……真南に流水真西に砂道。……高名栄誉に達するの姿だ。……
坤
(
ひつじさる
)
巽
(
たつみ
)
に竹林家を守り、
乾
(
いぬい
)
艮
(
うしとら
)
に岡山屋敷に備う。これ陰陽和合の証だ。
鵞湖仙人
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この暗鬱な一隅から僅に鉄道線路の土手一筋を越えると、その
向
(
むこう
)
にはひろびろした火避地を前に控えて、赤坂御所の
土塀
(
どべい
)
が
乾
(
いぬい
)
の御門というのを
中央
(
なか
)
にして長い坂道をば遠く青山の方へ
攀登
(
よじのぼ
)
っている。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その分家で雲浜の後妻千代の実家村島
内蔵進
(
くらのしん
)
、医者の
乾
(
いぬい
)
十郎、木綿問屋の下辻又七、肥後の松田重助、前記備中の三宅定太郎その他と協議してことを運び
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
戸
(
こ
)
ごとの
燈火
(
ともしび
)
へ赤く
霞
(
かす
)
んでいたが——そのうちに
乾
(
いぬい
)
の方からぐわっと地鳴りが聞えて来たかと思うと——もう大地は発狂したかの如く
震
(
ゆ
)
れに震れ洛中の人家九万余戸
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
次の者は小野大九郎、また
乾
(
いぬい
)
藤吉郎、松木久之助、そして最後の一人が西沢半四郎となのった。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この
家
(
うち
)
がぐわしゃぐわしゃと潰れて
乾
(
いぬい
)
の隅から火が出た、三人の
生命
(
いのち
)
が
梁
(
はり
)
の下で焼けたのだと思うと、色合と言い、皺といい、一面の穴と言い、何だか、ドス黒い沼の底に
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「へへへへへもう水底から呼んではおりません。ここから
乾
(
いぬい
)
の方角にあたる
清浄
(
しょうじょう
)
な世界で……」「あんまり清浄でもなさそうだ、毒々しい鼻だぜ」「へえ?」と寒月は不審な顔をする。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
右側は
乾
(
いぬい
)
(煙草屋)、隣りが
和泉屋
(
いずみや
)
(扇屋)、この裏へ
這入
(
はい
)
ると
八百栄
(
やおえい
)
(料理屋)それから諏訪町河岸へ抜けると此所は意気な土地で、
一中
(
いっちゅう
)
、長唄などの師匠や、落語家では
談枝
(
だんし
)
などもいて
幕末維新懐古談:12 名高かった店などの印象
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
乾
(
いぬい
)
万兵衛。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
あげ、
乾
(
いぬい
)
の門をあけておくのだ。火の手と共におれが突き進んで、自身、彼を成敗してしまうから
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それからおまえさん、大事なのは寝る方角さね、胆石病には
乾
(
いぬい
)
が禁物で、胆石病の者が乾の方角へ頭を向けて寝るのは、欠け茶碗をはだしで踏んづけるようなもんでさあ」
雪の上の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
風少し吹添って、城ある
乾
(
いぬい
)
の
天
(
そら
)
暗く、天満宮の屋の棟が
淀
(
どんよ
)
り曇った。いずこともなく、はたはたと帆を打つ響きは、
幟
(
のぼり
)
の声、町には黄なる煙が走ろう、数万人の形を
掠
(
かす
)
めて。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
暫くすると、
乾
(
いぬい
)
、
巽
(
たつみ
)
の二つの門から、ひたひたと、夜の潮のように、おびただしい人馬が、声もなく
火影
(
ほかげ
)
もなく、城内にはいって来た。そしてまた、墓場のようにしんとしていた。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狂気
(
きちがい
)
になったかの、沖の方へ、世界の
涯
(
はて
)
までと
駈出
(
かけだ
)
すと思う時、水戸屋の
乾
(
いぬい
)
の隅へ、屋根へ抜けて黄色な雲が立ちますとの、赤旗がめらめらと
搦
(
から
)
んで、真黒な煙がもんもんと天井まで上りました。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
生憎
(
あいにく
)
と岡山を出た朝からばしゃばしゃと雨なのだ。ことしの五月下旬のことで、土地の
乾
(
いぬい
)
利一氏や牧野融博士が心づよいことをいってくれるので、とにかく出かけてしまった自動車である。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いまから五十年前——まだ
桓帝
(
かんてい
)
の
御宇
(
ぎょう
)
の頃です。遼東の人で
殷馗
(
いんき
)
という予言者が村へきたとき申しました。近頃、
乾
(
いぬい
)
の空に
黄星
(
こうせい
)
が見える。あれは五十年の後、この村に稀世の英傑が宿する
兆
(
しらせ
)
じゃと。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『
乾
(
いぬい
)
の空に、あれ、あんな大きな
彗星
(
ほうきぼし
)
が——』
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“乾”の意味
《名詞》
(いぬい)北西の方角。戌(いぬ)と亥(い)の間であることから。
(出典:Wiktionary)
“乾”の解説
乾(けん)は八卦の一つ。卦の形はであり、三爻がすべて陽。または六十四卦の一つであり、乾為天。乾下乾上で構成される。
(出典:Wikipedia)
乾
常用漢字
中学
部首:⼄
11画
“乾”を含む語句
乾燥
乾酪
乾干
乾魚
干乾
乾涸
乾葡萄
乾飯
乾坤
乾物
乾草
乾枯
乾鮭
生乾
乾杯
乾菓子
乾菜
乾田
乾麺麭
乾声
...