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齧
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かじ
ふりがな文庫
“
齧
(
かじ
)” の例文
のし餅十枚に
煮小豆
(
にあずき
)
二升を平げた大関や、大沢庵十六本以上とか
齧
(
かじ
)
ってみせた小結の肩書には、自ら敬意を表したくなってしまった。
醤油仏
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ある冬の日の暮、
保吉
(
やすきち
)
は
薄汚
(
うすぎたな
)
いレストランの二階に
脂臭
(
あぶらくさ
)
い焼パンを
齧
(
かじ
)
っていた。彼のテエブルの前にあるのは
亀裂
(
ひび
)
の入った
白壁
(
しらかべ
)
だった。
保吉の手帳から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見向きもしないで、山伏は
挫折
(
へしお
)
つた其の
己
(
おの
)
が片脛を
鷲掴
(
わしづか
)
みに、片手で
踵
(
きびす
)
が
穿
(
は
)
いた
板草鞋
(
いたわらじ
)
を
毮
(
むし
)
り
棄
(
す
)
てると、
横銜
(
よこぐわ
)
へに、ばり/\と
齧
(
かじ
)
る……
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ヘエ、じゃないよ。
齧
(
かじ
)
り付いたら、
雷鳴
(
かみなり
)
が鳴っても離さないのが岡っ引のたしなみだ。見ればガン首も手足も無事じゃないか」
銭形平次捕物控:138 第廿七吉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私の母は歯が丈夫で、七十七歳で世を終るまで一枚も欠損せず、硬い
煎餅
(
せんべい
)
でも何でもバリバリと
齧
(
かじ
)
った。それと反対に、父は歯が悪かった。
はなしの話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
ぎゅっと
掴
(
つか
)
む。
齧
(
かじ
)
りつく。頭をぶつける。粉ごなにする。そして、かけらを飛ばす。まわりに居並ぶ
親同胞
(
おやきょうだい
)
は、珍しそうにそれを見ている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
節子は暇さえあれば
炬燵
(
こたつ
)
に
齧
(
かじ
)
りついて、丁度巣に隠れる鳥のように、勝手に近い小座敷に
籠
(
こも
)
ってばかりいるような人に成った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私はすでに二十五歳にもなっていて、最早親の
臑
(
すね
)
を
齧
(
かじ
)
っているのも工合が悪くまた家庭の事情もいつまでも私を養うわけにはゆかなくなっていた。
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
まいてや雄は妾より、先立ち登る死出の山、峰に
生
(
お
)
ひたる若草の、根を
齧
(
かじ
)
りてやわれを待つらん。追駆け行くこそなかなかに、心楽しく侍るかし。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
トオストを
齧
(
かじ
)
りながら、
栗色
(
くりいろ
)
の髪の若い女が何やらもの静かに話しかける
度毎
(
たびごと
)
に、荒あらしくそちらへ体をねじ曲げては無雑作に答えるかと思うと
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
生米を
齧
(
かじ
)
り酒を飲んで三十三年も地中に生きていたとも考えられないが、また人の一人や二人が呼吸する程の熔岩の隙間がなかったともいえないので
紙魚こぼれ
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
ええママヨとふてくされて
齧
(
かじ
)
りつくと
忽
(
たちま
)
ち狂犬の如くになったので、アラレもなくエゲツないやり口が
寧
(
むし
)
ろ家康の
初々
(
ういうい
)
しさを表していると見てもよい。
家康
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
金博士は、後向きに椅子に腰をかけて、
西瓜
(
すいか
)
の種をポリポリ
齧
(
かじ
)
っている。さっきから何ひとつろくに返事をしない。
地軸作戦:――金博士シリーズ・9――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「
齧
(
かじ
)
ってもかじっても、目高の尾というものは、すぐ、生えてくるものよ、だから、可哀そうなことないわ。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
鉄ぶちの眼鏡をかけて昔はリーダーの一冊くらい
齧
(
かじ
)
ったような顔をしていて、古びた紺絣の上下、羽織の紐の代りに今にも切れそうな
観世縒
(
かんぜより
)
を結んでいた。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
酢漬の胡瓜を
齧
(
かじ
)
りながらウォトカを飲み、ピジャマのまま七昼夜の旅行が出来るという汽車はほかにない。
川波
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
しかし姓名も職業も不明であり、油屋は持って来た
濁酒
(
どぶろく
)
と、なにかわからない野鳥の焼いたのを
齧
(
かじ
)
りながら濁酒を湯呑茶碗で飲み、りつ子をしきりにからかった。
おごそかな渇き
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
俳句の歴史を聞き
齧
(
かじ
)
ったりしてみますと、俳句とはどんなものか、という質問に対する私の答えは少しずつ変化を起こしてこねばならぬことになったのであります。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それをがつがつと
齧
(
かじ
)
ると、ほんとうに胸が清々した。ほっとしたが、同時に夜が心配になりだした。
秋深き
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
幸子もひとりぼっちになると
屡〻
(
しばしば
)
ピアノに
齧
(
かじ
)
り着いて時を過したが、それにも飽きると二階の八畳で手習いをしたり、お春を呼び入れて琴の稽古をしてやったりした。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかもそれまでは一文の金を
儲
(
もう
)
けるどころではない、常に親の
脛
(
すね
)
を
齧
(
かじ
)
っており、そうして学校を出てからの儲け高が少いから、双方の親が寄合って何というであろうか。
教育の目的
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
よく、青葉病といって、急に憂鬱になるか、それとも、見境いなく
齧
(
かじ
)
りつくような、
亢進症
(
ニムフォマニー
)
になるか——。とにかくあれは、殻を割りたくても、割り得ない悩みなんだ。
一週一夜物語
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
天下も国家も忘れ果てゝ、月給の上るのを待っている。
若
(
も
)
し主義があれば、
齧
(
かじ
)
りつき主義だ。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
私も、思わず彼のに追従した悲鳴を挙げて、その首根に蛙のように
齧
(
かじ
)
りつかずには居られなかった、凡そ以前のゼーロンには見出すことの出来なかった驚くべき臆病さである。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
俺
(
おいら
)
あ、もうこうなりゃ、承知できねえ。破れ、かぶれだ。あん畜生の首根っ子を押えて、うんと、いわすか、いわさんか。畜生、いわなけりゃ、鼻の頭を、
齧
(
かじ
)
りとっちまうんだ
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
もう一人の嫁のヷルヷーラは、開けはなした二階の窓際で、
向日葵
(
ひまわり
)
の種子を
齧
(
かじ
)
っていた。
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「そんなことを言って驚かさないでください。松島はいままで本にばかり
齧
(
かじ
)
りついていて、工場には慣れていない人ですから、そんなことを言われると本当にしてしまいますわ」
猟奇の街
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
暫くすると今度は年長で、セルブ語もちよつと
齧
(
かじ
)
つてゐる倉本といふ給仕がやつて来た。
灰色の眼の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
父は腹這になりながら枕に
齧
(
かじ
)
りつくようにして、顔をもち上げ、喘ぎ喘ぎ口をきいた。
雲の裂け目
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
吝嗇
(
りんしょく
)
の事や、さもしい夫婦
喧嘩
(
げんか
)
、下品な御病気、それから容貌のずいぶん醜い事や、身なりの汚い事、
蛸
(
たこ
)
の脚なんかを
齧
(
かじ
)
って
焼酎
(
しょうちゅう
)
を飲んで、あばれて、地べたに寝る事、借金だらけ
恥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もちろん圭一郎は千登世に對して無上の恩と大きな責任とを感じてゐた。飛んで灯に入る愚な夏の蟲にも似て、彼は父の財産も必要としないで石に
齧
(
かじ
)
りついても千登世を養ふ決心だつた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
その
他
(
ほか
)
大してためにもならなかったフランスのパン屑みたいな学問だのを
齧
(
かじ
)
っていた頃でさえ、君はいつだって存在を認められていたし、僕はいつだって——存在を認められなかったんだ。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
明治座前で停ると少女は果して降りて行く、そのあとから自分も降りながら背後から見ると、束ねた断髪の先端が不揃いに鼠でも
齧
(
かじ
)
ったような形になっているのが妙に眼について印象に残った。
初冬の日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私がここにいう二つの誤解の第一のものは、哲学をたいへんに高遠で
深邃
(
しんすい
)
なことと考えて、かような哲学をちょっとでも
齧
(
かじ
)
ることを非常に偉大なことと心得て思いあがる人々に属するものである。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
葉子は
周章
(
あわて
)
てお
煎餅
(
せんべい
)
を一口
齧
(
かじ
)
ると、衣裳部屋を飛出して行った。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
私
(
わたくし
)
はよく
間近
(
まじか
)
の
岩
(
いわ
)
へ
齧
(
かじ
)
りついて、
悶
(
もだ
)
え
泣
(
な
)
きに
泣
(
な
)
き
入
(
い
)
りました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
豹は人間の頭を
齧
(
かじ
)
った。猛犬は足へ喰い付いた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それから林檎に
齧
(
かじ
)
りついた。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
一
ト
破片
(
かけ
)
大
(
おほ
)
きく
齧
(
かじ
)
りました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
愛の小枝の樹皮をば
齧
(
かじ
)
り
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
泳げないのが船底へ
齧
(
かじ
)
り付いて助かるものだ、——遠州屋の主人が死んで、疑いが六郎の方へ掛るのを見て金之丞は細工を始めたのだよ。
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その間、日吉は
無聊
(
ぶりょう
)
な顔して、ふところから
黍
(
きび
)
の
茎
(
くき
)
みたいな物を出してはポリポリ
齧
(
かじ
)
っていた。その茎の汁は青臭いなかに甘い味があった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
店へ来る客の中に、
過般
(
いつか
)
、
真桑瓜
(
まくわうり
)
を丸ごと
齧
(
かじ
)
りながら入つた
田舎者
(
いなかもの
)
と、それから帰りがけに
酒反吐
(
さけへど
)
をついた紳士があつた。
蠅を憎む記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたしの母は歯が丈夫で、七十七歳で世を終るまで一枚も欠損せず、硬い煎餅でも何でもバリバリと
齧
(
かじ
)
った。それと反対に、父は歯が悪かった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一夜、鼠どもが、手箱の最後のかけらを
齧
(
かじ
)
りつくし、砂糖入れの
蓋
(
ふた
)
を
開
(
あ
)
けて見たが、
空
(
から
)
なので、もうやって来なくなる。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
あかえではないがそれは結局ぽりぽり
齧
(
かじ
)
つてみるか、食べて了ふかしなければけりがつかないだらう、と言つてこれは猥りにたべるといふわけにはゆかない
末野女
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
ドイツ語などを
齧
(
かじ
)
っておって、医学の心得などがあるが、探偵のこととなると決して敏腕とは申されない。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
もし上陸して
遭遇
(
であ
)
う最初の日本人があったなら、知る知らぬに
関
(
かかわ
)
らずその人に
齧
(
かじ
)
り着いて見たいような、そんな心持で帰って来たばかりの自分のような気もして来る。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この時局下を切り抜けるためには何とかしてその位置に
齧
(
かじ
)
りついているより仕方がないこと、などを語り、新婚旅行から帰り次第、直ちにサラリーマン生活に
這入
(
はい
)
るのであるが
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
またある日、学校でおひる時間に、私が弁当箱をあけてみたら、おかずの玉子焼を誰かが食い
齧
(
かじ
)
った形跡があった。これらの犯人が誰であるか、私にはうすうす見当がついていた。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
齧
漢検1級
部首:⿒
21画
“齧”を含む語句
生齧
聞齧
齧歯獣
豊齧
齧歯
齧附主義