鶴嘴つるはし)” の例文
このへんは鬼怒川水力電気の工事があるので、至る処、鬼のような工夫に逢う。大きな鶴嘴つるはしを手にして大道の上に五人十人休んでいる。
坑夫等は、鶴嘴つるはしや、シャベルでは、岩石を掘り取ることが出来なかった。で、新しい鑿岩機が持って来られ、ハッパ袋がさげて来られた。
土鼠と落盤 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
「高館の跡の河床の崖になったところに鼠の穴のような横穴があったんだ。念の為に鶴嘴つるはしで二つ三つ叩くと、ポコリと大穴が開いたんだ」
水中の宮殿 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その傴僂男は、鶴嘴つるはし様のものを手にして、うつむいて、熱心に何事かやっている。鶴嘴に力をこめる度に、鶴嘴のほかに、動くものがある。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
『おめえはな、ベンジャミン・ガン、』って奴らは言うんだ。『ここに鉄砲を置いとくぜ、それから鋤と、鶴嘴つるはしとをな。』とね。
近頃いつもブーラトリュエルは、道路に砂利を敷いて手入れをする仕事をごく早めに切り上げ、鶴嘴つるはしを持って森の中にはいってゆくのだった。
鶴嘴つるはしをふりあげたり、スコープをつかったりしてゐる、三人の助手らしい人たちに夢中でいろいろ指図をしてゐました。
銀河鉄道の夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
鶴嘴つるはしで起こしたりしていた、坑夫たちも、まるで造りつけられたように、いろいろな恰好で、じっと見詰め、もの思いに耽っているように見えた。
北を見ると、最早もう鉄軌れえるを敷いた電鉄の線路が、烏山の木立の間に見え隠れ、此方こなたのまだ枕木も敷かぬ部分には工夫が五六人鶴嘴つるはしり上げて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
通り風や、青い火や、幽霊になって現われて、鶴嘴つるはし尖端さきを掴んだり、安全燈ラムプを消したり、爆発ハッパ不発ボヤにしたりする。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
無数の鶴嘴つるはし、無数の斧、シャベル、のこぎり喇叭らっぱ、国旗、その他細々こまごましい無数の道具……もう一つの天幕には食料品が山のようにうず高く積まれてある。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
番丙 これなる老僧らうそうは、ふるへながら溜息といきき、なみだながしてをりまする。只今たゞいま墓場はかばからまゐるところを取押とりをさへて、これなるすき鶴嘴つるはしとを取上とりあげました。
彼はすっかり隙間すきまのないほど身固みがためし、腰にはピストルの革袋かわぶくろを、肩からななめに、大きな鶴嘴つるはしを、そしてズックの雑袋ざつぶくろの中には三本の酒壜を忍ばせて
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それには、たぶん、手伝人たちが穴のなかでせっせと働いている時に、鶴嘴つるはしで二つも食らわせば十分だったろうよ。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
鶴嘴つるはしを使うような工合に首を sagittale の方向に規則正しく振り動かして、膝のそばに寄るようになる。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
「この頃学校じゃあ講堂の焼跡をこわしてるんだ。それがね、労働者が鶴嘴つるはしを持って焼跡の煉瓦壁へ登って……」
冬の日 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
プラツトフオオムの向うには鉄道工夫が三四人、一斉に鶴嘴つるはしを上下させながら、何か高い声にうたつてゐた。
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
凍土は混凝土コンクリートに劣らぬくらい硬いので、鶴嘴つるはしの先が直ぐ傷んでしまう。それを時々研ぎながら、カチンカチンとほんの少しずつ凍土の中に穴を掘って行くのである。
凍上の話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
まだ日は西にかたむいたばかりだ。製造場のうちには、土方等の使っている鶴嘴つるはしや、土堀る道具がおかれてある。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
鶴嘴つるはしの一撃に会えばすべてが崩壊する。すると人は不運だと言い、不慮の災いだと言う。けれども樹木にも少し抵抗力があったならば、決して不運はないであろう。
私は軽快な心をもって陰欝いんうつな倫敦を眺めたのです。比喩ひゆで申すと、私は多年の間懊悩おうのうした結果ようやく自分の鶴嘴つるはしをがちりと鉱脈にり当てたような気がしたのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして鶴嘴つるはしのさきがチラッ、チラッと青白く光って、手元が見えなくなるまで、働かされた。近所に建っている監獄で働いている囚人の方を、皆はかえってうらやましがった。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
セラピオン師は鶴嘴つるはしてこと、提灯とを用意して来ました。そうして夜なかに、わたしたちは——墓道を進みました。その付近や墓場の勝手を僧院長はよく心得ていました。
まず第一が水ですね、水の手がなければ人が住めない、井戸を掘るとか、水口を取るとか、鶴嘴つるはしと、くわと、鎌と、なたのこぎり——そういったような得物を、ここへお出しなせえ。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ここには煩わしきをはばかって言えぬが大要今日の鶴嘴つるはし様に曲ってその中央に柄が付いた鋤を佐比と言い、そのごとく曲った刀を鋤鈎さひちというたとおもう、中古にも紀朝臣佐比物さひもち
其処で働く人達を坑夫と云つて、ランプで照されながら鶴嘴つるはしで、岩を打叩いてこはして行く。同時に他の者は、岩の毀れた塊を外に持ち出す、その石の塊の中に銅があるのだ。
ボートルレは伯爵の持ってこさせた鶴嘴つるはしで階段のところを壊し初めた。ボートルレの顔色は気が引きしまっているためにまっ蒼であった。突然、鶴嘴は何かにあたってはね返った。
めいめい鶴嘴つるはしをもっている。兄貴のは、蹄鉄屋ていてつやに注文して鉄で作らせたのである。にんじんは、木で自分のやつをひとりで作った。二人は庭作りをしている。仕事はぐんぐんはかどる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
五郎兵衞老人は玩具におどかされるやうな男では無かつた。その鶴嘴つるはしを手にしだした時はすでに六十三歳であつたが、せかずいそがず、毎年々々コツ/\と路を造つた。七年の歳月は過ぎた。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
既にこの頃では、人夫の声や、鶴嘴つるはしの音や、トロッコの響きなどが崖の下で聞こえる。土の崩壊する音を聞くたんびに、彼は彼の世界が、いや彼の生命そのものが崩壊していくように感じた。
二人の盲人 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
うしろに一人ずつ人がついて路からはずれる材木を鶴嘴つるはしき集める。それが河のように流れて降りてくる。山に筏が動くのは生れて始めてである。なぜこの窯が今も昔のように作るかがよく分る。
日田の皿山 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
我国の大衆文芸は、その範囲未だ極めて狭く、鶴嘴つるはしの触れてない未採掘の分野は、尚尊い金鉱を蔵してその儘、我々の足もとに広く、深く横たわっていることを知らなければならないのである。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
へそまで泥だらけにして鶴嘴つるはしを肩にした男が、ギロッと眼だけ光らして通ったかと思うと、炭車トロを押して腰にかすりの小切れを巻いた裸の女が、魚のように身をくねらして、いきなり飛び出したりした。
坑鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
金鉱が発見されてからは、成金なりきんを夢見る山師たちが、鶴嘴つるはしをかついで、ほうほうたる髯面ひげづらを炎熱にさらして、野鼠の群のように通行したところで、今では御伽話おとぎばなしか、英雄譚えいゆうたんの古い舞台になっている。
火と氷のシャスタ山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
金鉱夫になるとらくに一日三十ドルになった(もっとも物価の方も、たとえば茶、珈琲コーヒー、砂糖が一ポンド四ドル、靴一足四十五ドル、肝心な金掘道具の鶴嘴つるはしやショベルが五ドルから十五ドル、という有様だった)
重い大きい鶴嘴つるはしを地面のなかに打込む君等
地を掘る人達に (新字新仮名) / 百田宗治(著)
鶴嘴つるはしのひとつらね日に光りもだえひらめく。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この大地へ鶴嘴つるはしでぶつつける
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
鶴嘴つるはしを打つ群を見てゐる
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
鶴嘴つるはしとスコップともっこう
サガレンの浮浪者 (新字新仮名) / 広海大治(著)
光る鶴嘴つるはし
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
鶴嘴つるはしを振ってサッと打ちこむと、石垣は手に従って二つ三つ四つ、用水堀の中に落ちて、その跡へ、方五尺程の大穴がポカリと口を開きます。
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
前に言ったとおり彼が時々家をあけたのは、そのためだった。彼は人の気づかない茂みの中に一本の鶴嘴つるはしを隠しておいた。
崩れた処を掘り起す、それからトロで河原へも行きましたが次の日などは砂利が凍ってもう鶴嘴つるはしが立たないんです。
化物丁場 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
消防隊はシャベルや鶴嘴つるはしをもって、穴のまわりに集ってきた。蒸気で動くハンマーも、レールの上を動いてきた。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
如何にも窓の下は、すぐ駅の構内になっていて、何本も汽車のレールが並び、その一本は、修繕中と見えて、四五人の工夫が鶴嘴つるはしを揃えて仕事をしている。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と吐き出すように云って、眼の前の机の上に、新聞紙を敷いて横たえてある鶴嘴つるはしを睨みつけた。その尖端の一方に、まだ生々しい血のかたまりが粘りついている。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あと一ときというところまでは、その上にいて鶴嘴つるはしをあてている。それから安全なところへ移って一つぐわんとやるんだ。すると大きいやつがどどーんと落ちて来る」
冬の日 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
「そうだ、この倉矢や、衣笠などの働き振りをみんな見習え! 十分鶴嘴つるはしに力を入れて!」特曹は、訓練所出の一群を指さした。「高取! もっとしッかり麻袋にドロをつめる!」
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
医師は、謀叛人どもが逃げる時に棄てて行った鶴嘴つるはしを一挺取りに、グレーを戻らせた。