酒代さかて)” の例文
「おウッ! 駕籠え! いそぎだ、酒代さかてエはずむぜ、肩のそろったところを、エコウ、あらららうアイ! てッんだ。やってくんねえ!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あちらまで辛抱して行けば酒代さかては遣ろうけれどもさもなければ一文も遣ることは出来ない。この後は決してそんな事を言うな
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
早駕はやかご三挺ご用意。十分に酒代さかてをくれ、道中肩つぎなし、なるべくは通し約束、賃銀にかけかまいなく、足ぶし腕ぶしの達者をえらんでおくこと。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大高源吾ともあろう武士さむらい素町人すちょうにんの馬子に酒代さかてと詫証文を取られたのですから、骨身に沁みて口惜しかったでしょうよ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
車夫はまるで濡鼠、酒代さかてが好いかして威勢よく、先づ雨被あまよけ取除とりはづして、それから手荷物のかず/\を茶屋の内へと持運ぶ。つゞいて客もあらはれた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
お春は駕籠を下り立って、いくらかの酒代さかてを二人につかわし、礼の言葉を後に聴いて、小走りに急ぎながら、物寂しい夜半の寺内へはいってしまうのでした。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
さう言ふ渡し守のずるさうな顏を見ると、染五郎はツイ餘計な酒代さかてをはずまなければならなかつたことなど——今はもう悲しい思ひ出になつてしまつたのです。
半四郎は振拂ひゆかんとすれば雲助共は追取卷おつとりまきどつこいにがして成ものか此小童このこわつぱめどうするか見ろいのちをしくば酒代さかてを置て行とふところへ手を入れければもう勘忍かんにんはならずと半四郎は其腕を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「だが、君は貧乏人だから、酒を買うぜにに困るだろう、ひとつ君のために酒代さかてを心配しよう」
酒友 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
酒代さかてをしまぬ客人きやくじんなり、しか美人びじんせたれば、屈竟くつきやう壯佼わかものいさみをなし、曳々聲えい/\ごゑはせ、なはて畦道あぜみちむらみちみにんで、三みちに八九時間じかん正午しやうごといふのに、たうげふもと
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
日本に帰って千代町の役場に奉職している時は毎月五円の月給(巡査の月給二円五十銭、警部が三円時代)を貰っていたが、その殆んど全部が酒代さかてになっていた事は云う迄もない。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ヴァシーリイ・セルゲーイチは黙って酒代さかてを出して、馬車に乗って出掛けて行った。
追放されて (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
金を二分二朱やったほかに酒代さかてを二朱出して、以前、船へ一しょに乗った野郎共を呼んで酒を呑まして、今は剣術遣いになったことをはなして笑ったら、みんなが肝をつぶしていた。
おれはあの男にうさんくさく見えるのだろうか? 酒代さかてでももらいたいのか? ところが、寺男はKに見られているのに気がつくと、右手で、その二本の指にはまだ一つまみの煙草を押えていたが
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
「いやですよ。そんな酒代さかてにするやうな銭はありませんよ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
酒代さかてに一クラウンあげるよ。これを読んでいいね?
「どしどし駆けさしてくれ。酒代さかては二倍出す。」
俺たちだって、何もご隠居から毎日、酒代さかてをいただいているからの、ごひいきになっているからのと、そんなケチな量見で加勢するわけじゃねえ。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう言う渡し守のずるそうな顔を見ると、染五郎はツイ余計な酒代さかてをはずまなければならなかったことなど——今はもう悲しい思い出になってしまったのです。
我等われら今度こんど下向候処げこうそろところ其方そのほうたい不束之筋有之ふつつかのすじこれあり馬附之荷物積所うまつけのにもつつみしょ出来申候しゅったいもうしそろつき逸々はやばや談志之旨だんしのむね尤之次第もっとものしだいおおきに及迷惑申候めいわくをおよぼしもうしそろよっ御本陣衆ごほんじんしゅうもって詫入わびいり酒代さかて差出申候さしだしもうしそろ仍而件如よってくだんのごとし
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
時々暗い個所ところで駕籠を停めて前棒が闇黒やみに隠れることがあったが、酒代さかてでも強請ねだりに客を追うのだろうくらいに考えて、辰は別に気にもとめなかったというが
見て非人共は耳語さゝやきあひ何と彼の座頭ざとうは幸手の富右衞門とやらの由縁ゆかりの人と見えるがどうだ少しでも酒代さかてもらつてくびやらうではないかと相談なしモシ/\御座頭おざとうさん高くは云れねへが首を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
殊に強盗の沢山居るブータンに行ったら殺されてしまうより外はない。お前そんなに酒代さかてが欲しいのか。一月七円五十銭の給金といえばチベットに居って一年も働かなければ得られない給金だ。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
おっしゃるもんじゃあございませんよ、山下の立場たてばから吉原まで二百五十のきまりの上に、多分の酒代さかてまでいただいてあるんでございますから、今更どうのこうのっていうわけじゃございませんよ
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
駕籠やは、酒代さかてにありついて、喜んで戻って行く。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
酒代さかてでもふんだくってやればいいに
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お袖に会わせてやる約束だったが、七面倒くせえから、駕籠やに酒代さかてをくれて、途中で撒いて来てしまいました」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頼まれた仲間にしたところで、ちょいと女をこづいてから、痛くないようにころがりさえすれあ、殿様が酒代さかてを下しおかれるというので、みんな手をたたいて喜んだ。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
持て夜通しに松山迄ゆくと云は怪い奴だ飛脚と云ではなし大方若いのが主人の金を盜出ぬすみだしたにちがひはあるめへもしたつて乘ずば酒代さかてもらへ/\そんな奴に此街道をたゞとほられてつまるものかオイ若衆酒代を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そうだ、かご屋も真面目なやつはだめだぜ。酒代さかてさえウンとにぎらせれば、どんな事でもやッてのけるというような、頼母たのもしいやつをさがしてくれ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「賃銀はいくらでもとらせる。酒代さかても存分につかわそうほどに、めちゃくちゃにいそいでくれっ!」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そう思い立つと、眼が冴えてしまい、おまえを起すのも気の毒と思ったから、旅籠はたご賃や酒代さかても、枕元に包んで置いてある。少ないが、あれを納めてくれ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長庵がこっそりふところを探って駕籠屋につかませたのは、酒代さかてさきにやったのだろう。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
駕の者をねぎらッて、手代が酒代さかてをつつんで与えている間に、二人の侍はおッとりと駕を抜けて、衣紋ただしく
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よけいなことをおいいでないよ。じゃ酒代さかてぐるみ一分上げるから急いでおくれ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あれだ! というと棟梁が、三人の船頭に、十両ずつの酒代さかてを投げだして、腕ッ限りがせました。何がなんだか分りゃあしません、途方もねえ大暴風雨おおあらしです。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「オイ、イソ的の小父おじさん、駕籠賃をはらってくんな。酒代さかてもたんまりやってな」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そう筑前守様にはおおせられて、他意なく働くからには、酒代さかても充分とらせて励ませとの御沙汰だ。ありがたくお礼をのべて、酒代をいただき、すぐ仕事にかかれ
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒代さかてをハズんで一気に急がせ、例の獄門橋のやぶだたみに身を隠して、お蝶の通るのを、待ち伏せている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるべく、たんまり酒代さかてが出ますように、ひとつ、退屈しのぎに、ごきげんを伺いやしょうかね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時に彼は、自分から半日の駄賃と酒代さかて詐取さしゅした十幾人もの人間が世間に満ちてはいるが
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『拙者を、振り落してもかまわぬと思って駈けろ。金はくれるぞ、酒代さかてははずむぞ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「太い奴だ。手ぶらで帰るのが嫌ならのべがねをやろう! どいつだ、酒代さかてがほしいのは」と、さなきだに、弦之丞を討ち損じた腹立ちまぎれ、そぼろ助広を抜いておどしにふりこむと
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旦那、ちょっとお待ち下さい。——いつぞや頂戴した酒代さかてで、実はきょう、みんなと相談の上、蜜柑と切餅を買って来ました。碑のできた慶びと、祭の祝いに、見物に来た女子供に、それを
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そやつの挨拶とは、何かいいがかりをつけて酒代さかてをねだるつもりであろう。押しの太い尺八乞食め、見せしめにくびをぶち落してくれるから召し連れて来い」ひどくかんにさわったらしく
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あいつらが、酒代さかてを貰ってくれというんですが……」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)