トップ
>
跳梁
>
ちょうりょう
ふりがな文庫
“
跳梁
(
ちょうりょう
)” の例文
何しろ今日のこの
雑鬧
(
ざっとう
)
である。掻ッさらい、変態者の悪戯など、悪の
跳梁
(
ちょうりょう
)
はもちろん迷い子も二、三にはとどまらなかったであろう。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
西ヨーロッパの国々には、まだ闇の色が濃くたれこめ、いはゆる蛮族の
跳梁
(
ちょうりょう
)
のもとに、あてもない胎動がつづいてゐるにすぎなかつた。
鸚鵡:『白鳳』第二部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
そして近頃ますますロンドンに侵入する米国物資の
跳梁
(
ちょうりょう
)
を憎んだ。が、次の瞬間米国への聯想が夫人の心を広々と明るくしていた。
バットクラス
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
目を閉じれば瞼の裏の眼花となり、目を開けば暗闇の部屋に蠢く怪しい影となって、幻想の魑魅魍魎が目まぐるしく
跳梁
(
ちょうりょう
)
するのだ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それにもかかわらず、法水等が暗中摸索を続けているうちに、その間犯人は隠密な
跳梁
(
ちょうりょう
)
を行い、すでに第二の事件を敢行しているのだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
射撃手が
跳梁
(
ちょうりょう
)
するのは、三人が三人とも申し合わせたように夜間に限るのはどうしたものでしょう。いいですか、これは面白い問題です。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それでも不思議な事にはねずみの
跳梁
(
ちょうりょう
)
はいつのまにかやんでいた。まれに台所で
皿鉢
(
さらばち
)
のかち合う音が聞こえても三毛は何も知らずに寝ていた。
ねずみと猫
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
こういう小者の末まで、まさに
跳梁
(
ちょうりょう
)
しつつあるという苦い思いであった。勝ったものは、家禄を奉還して、代りに開拓地の俸給を
貪
(
むさぼ
)
っている。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「うむ。つぎに、
烏羽玉組
(
うばたまぐみ
)
とやら申す
斬
(
き
)
り
取
(
と
)
り強盗の輩がいよいよ
跳梁
(
ちょうりょう
)
しおるとのことだが、また、例のあの一派の浪人ばらの動静はどうじゃな」
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
現時の、不道徳の
跳梁
(
ちょうりょう
)
、快楽の追求、
懦弱
(
だじゃく
)
、無政府状態、などを僕は少しも恐れない。忍耐だ! 持続せんと欲する者は堪え忍ばなければならない。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
三人は弁当の包みを手に持ったまま暫く足も
蹈
(
ふ
)
み込めないで、子供たちの
跳梁
(
ちょうりょう
)
するのをぼんやり立って眺めていた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あらゆる泥棒人殺しの
跳梁
(
ちょうりょう
)
する外部条件を完備しておりながら、殆ど一人の泥棒もオイハギも人殺しもなかったのである。それで人々は幸福であったか。
魔の退屈
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ではどうするといって、主水の頭から答えは出て来ないが、愚にもつかぬ悪党どもが、自由
気儘
(
きまま
)
に
跳梁
(
ちょうりょう
)
するのを見すごしていては士道の一分が立ちかねる。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それにも拘らず秋蘭を見たいと思う願いがじりじり後をつけて来るのを感じると、彼はますます自身の中で
跳梁
(
ちょうりょう
)
する男の影と蹴り合いを続けるのであった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
目先の利に走る内地商人と、この機会をとらえずには置かない外国商人とがしきりにその間に
跳梁
(
ちょうりょう
)
し始めた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
山脇玄内の
跳梁
(
ちょうりょう
)
はそれからまた一段と目ざましくなりました。襲われるのは大抵高家大名、でなければ大町人で、盗られる金も百両、二百両と
纏
(
まと
)
まった口ばかり。
銭形平次捕物控:096 忍術指南
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして上位者たちの
腐敗
(
ふはい
)
は——一般の不安——
跳梁
(
ちょうりょう
)
する死によってこの都市のおちいった非常事態——と相まって、下層の人たちのある道徳的荒廃をひき起した。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
一つは主我の念、一つは主知の心。前者は自我や個性の
跳梁
(
ちょうりょう
)
により、後者は意識や作為の超過による。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
闇黒を悪魔に与えてその
跳梁
(
ちょうりょう
)
に
任
(
まか
)
し、夢の天国を自ら守る人には、永久に平和が失われないのである。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夜、
闇
(
やみ
)
の中を
跳梁
(
ちょうりょう
)
するリル、その
雌
(
めす
)
のリリツ、
疫病
(
えきびょう
)
をふり
撒
(
ま
)
くナムタル、死者の霊エティンム、
誘拐者
(
ゆうかいしゃ
)
ラバス
等
(
など
)
、数知れぬ
悪霊
(
あくりょう
)
共がアッシリヤの空に
充
(
み
)
ち満ちている。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
解子さんなどこういう才能の
跳梁
(
ちょうりょう
)
に「私は小説を書いてゆけるかしら」とききに来られました。作家の生活の張りの難しさを深く感じました。書いていると限りなし。
獄中への手紙:03 一九三六年(昭和十一年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
男も女もそれは一塊りの声であり、バラバラの音響なのだ。彼と何のかかわりもない、それらの一群が夕方退去すると、今度は灯の消えた廊下を
鼠
(
ねずみ
)
の一群が
跳梁
(
ちょうりょう
)
する。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そうして彼自身の周囲に取り散らかされているものみなは、紙と言わず書物と言わず狂い廻る彼自身の心臓の
跳梁
(
ちょうりょう
)
のためあらゆる存在を
嘲
(
あざ
)
けるかのように飛び散った。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
私がこの店に入ったのは夏であったが、
南京虫
(
なんきんむし
)
が
跳梁
(
ちょうりょう
)
していて安眠できなかった。皆んな店の間や物干場に寝たりしていた。私は入店に際しパンツと地下足袋を買った。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
或は又凡てを
容
(
い
)
れ凡てを抱いて、飽くまで外界の
跳梁
(
ちょうりょう
)
に身を任かす。昼には歓楽、夜には遊興、身を凡俗非議の外に置いて、死にまでその
恣
(
ほしいま
)
まな姿を変えない人もある。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
話にきくと、北海の
鰊場
(
にしんば
)
には三角眼の不良鴉が
跳梁
(
ちょうりょう
)
しているそうである。子供の頭には乗っかる、突き飛ばす、赤銅色の漁師の腕はすり抜ける、
嚊
(
かかあ
)
衆の洗濯物はばたつかす。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
と思われるほど、
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
中の都会、ことに港町における売春婦の
跳梁
(
ちょうりょう
)
はおびただしいものだ。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
窓越しに仰ぐ青空は恐ろしいまでに澄み切って、無数の星を露出している。嵐は樹に
吼
(
ほ
)
え、窓に鳴って
惨
(
すさま
)
じく荒れ狂うている。世界は自然力の
跳梁
(
ちょうりょう
)
に任せて人の子一人声を挙げない。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
個人意識の勃興がおのずからその
跳梁
(
ちょうりょう
)
に堪えられなくなったのだと批評された。しかしそれは
正鵠
(
せいこく
)
を得ていない。なぜなればそこにはただ方法と目的の場所との差違があるのみである。
時代閉塞の現状:(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
貴婦人の社交も
拡
(
ひろ
)
まり、その他女性の
擡頭
(
たいとう
)
の機運は盛んになったとはいえ、女学生スタイルが
花柳人
(
かりゅうじん
)
の
跳梁
(
ちょうりょう
)
を
駆逐
(
くちく
)
したとはいえ、それは新しく起った職業婦人美とともに大正期に属して
明治大正美人追憶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
現に
独逸
(
ドイツ
)
の
娘子軍
(
じょうしぐん
)
は、
紐育
(
ニューヨーク
)
、
市俄古
(
シカゴ
)
という如き北米の大都市に遠征して
跳梁
(
ちょうりょう
)
を極めており、英国辺でも等しくこの娘子軍の累を受けているが、この
禍
(
わざわ
)
いは
何時
(
いつ
)
までも外よりのみは来らず
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
初手の烏もともに、
就中
(
なかんずく
)
、
後
(
あと
)
なる三羽の烏は、足も地に着かざるまで
跳梁
(
ちょうりょう
)
す。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それならどうして、この文明の日光に照らされた東京にも、平常は夢の中にのみ
跳梁
(
ちょうりょう
)
する精霊たちの秘密な力が、時と場合とでアウエルバッハの
窖
(
あなぐら
)
のような不思議を現じないと云えましょう。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その中にありて、私はこの講義によって、サタンの
跳梁
(
ちょうりょう
)
に対して真理を擁護し、キリストを信ずる者が迫害を怖れて世と妥協することなく、信仰の純粋性を維持すべきことを勧めたのであった。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
……平和な国土を我物顔に
跳梁
(
ちょうりょう
)
する憎むべき賊どもが
巣喰
(
すく
)
っているのだ!
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
これは夜の意識が
仮初
(
かりそめ
)
に到達した安心の
境
(
さかい
)
ではあるが、この境が幸に
黒甜郷
(
こくてんきょう
)
の近所になっていたと見えて、べろべろの神さんの相変らず
跳梁
(
ちょうりょう
)
しているにも拘らず、純一は頭を夜着の中に
埋
(
うず
)
めて
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
地獄の文学というのは
畢竟
(
ひっきょう
)
、極楽の世界を望見して到底あの世界に達することは出来ない、
唯
(
ただ
)
病苦、貧困、悪魔の
跳梁
(
ちょうりょう
)
に任していなければならぬ苦しい世界があるのみと感ずるところに出発する。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
しかしていずくんぞ知らん、その脳中の魔鬼は
跳梁
(
ちょうりょう
)
してもって
渠輩
(
きょはい
)
を駆って復古の事業を行なわしめんと欲することを。ああ日本人よ満足するなかれ。改革の事業はいまだ半途にだも至らざるなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ところが、上記の固陋の思想は、近年に至って政治界における軍国主義の
跳梁
(
ちょうりょう
)
に伴い、それと結合することによって急に勢を得、思想界における反動的勢力の一翼としてその暴威を振うようになった。
日本歴史の研究に於ける科学的態度
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
また友人の遭難以来いっそう
嫌悪
(
けんお
)
の念を増し、警戒おさおさ怠るものではなかったのであるが、こんなに犬がうようよいて、どこの横丁にでも
跳梁
(
ちょうりょう
)
し、あるいはとぐろを巻いて悠然と寝ているのでは
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
かれらの
跋扈
(
ばっこ
)
跳梁
(
ちょうりょう
)
に任かしておいた形がある。
半七捕物帳:43 柳原堤の女
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大胆は道義を
蹂躙
(
じゅうりん
)
して
大自在
(
だいじざい
)
に
跳梁
(
ちょうりょう
)
する。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼の血をわけた兄も、辻風典馬といって、伊吹山から野洲川地方へわたって、生涯、血なまぐさい中に
跳梁
(
ちょうりょう
)
した野盗の頭目であった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これが兇悪「蠅男」の
跳梁
(
ちょうりょう
)
する大阪市と程遠からぬ地続きなのであろうかと、分りきったことがたいへん不思議に思われて仕方がなかった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
当時都には「黒手組」と自称する
賊徒
(
ぞくと
)
の一団が人もなげに
跳梁
(
ちょうりょう
)
していまして、警察のあらゆる努力もその甲斐なく、昨日は某の富豪がやられた。
黒手組
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
現今物理学の研究問題は、分子、原子、エレクトロン、エネルギー素量となって、至るところに混乱系が
跳梁
(
ちょうりょう
)
している。
時の観念とエントロピーならびにプロバビリティ
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
さてここまで道具立てが
揃
(
そろ
)
えば、あとはシェストフ一流の切れ味のいい直観的論理の
跳梁
(
ちょうりょう
)
に任せるのみである。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
そして又、僕は、無理な諸観念の
跳梁
(
ちょうりょう
)
しないそういう時代に、
世阿弥
(
ぜあみ
)
が美というものをどういう風に考えたかを思い、
其処
(
そこ
)
に何の疑わしいものがない事を確めた。
教祖の文学:――小林秀雄論――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
凶賊黒旋風の
跳梁
(
ちょうりょう
)
は、妙月庵から淡路屋と、銭形平次を相手に、益々積極的にノシかかって来るのです。
銭形平次捕物控:243 猿回し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
技巧の不必要なる
跳梁
(
ちょうりょう
)
です。形態は
錯雑
(
さくざつ
)
となり、色彩は多種になり、全体として軟弱な感じを免れることができません。これも明かに一種の病状を示した藝に過ぎないのです。
民芸の性質
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
“跳梁”の意味
《名詞》
跳梁(ちょうりょう)
跳ね回ること。
特に悪者などがのさばること。
(出典:Wiktionary)
跳
常用漢字
中学
部首:⾜
13画
梁
漢検準1級
部首:⽊
11画
“跳梁”で始まる語句
跳梁跋扈
跳梁権
跳梁奔馳