赫々かくかく)” の例文
彼は赫々かくかくたる未来ある有為の人物だったが、その後咽喉病に犯されたために夭死した。その男がリヴァプール駅で一切の手筈をやった。
また、悪夢よけの法中に、「赫赫陽陽日出東方、断絶悪夢辟除不祥。」(赫々かくかく陽々、日は東方より出ず。悪夢を断絶して、不祥を辟除へきじょす)
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
一向ひたぶるに名声赫々かくかくの豪傑を良人おっとに持ちし思いにて、その以後は毎日公判廷にづるを楽しみ、かの人を待ちこがれしぞかつは怪しき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
その地方における彼の功績は赫々かくかくたるものがあり、その地方の衆人の意見も一致していたので、国王は再び彼を市長に任命した。
と、俄然がぜん先生せんせい命令めいれいは、長吉ちょうきちあたまうえちたのであります。かれみみけるようにあつくなって、きゅうのぼってかお赫々かくかくとなりました。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
刑事、黒田清太郎氏は、今赫々かくかく武勲ぶくんに、光り輝いている。世人は同氏を和製のシャーロック・ホームズとまで讃嘆している。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
逆賊となっても赫々かくかくの光を失わず、勝は、一代の怜悧者りこうものとして、その晩年は独特の自家宣伝(?)で人気を博していたが、小栗はうたわれない。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この国の人々は頭に何もかぶらず、殊に男は頭のてっぺんを剃って、赫々かくかくたる太陽の下に出ながら、日射病が無いというのは面白い事実である。
病床で川上が言続けていた、フランス・パリーの博覧会——そここそ、マダム貞奴の名声を赫々かくかくげさせたものである。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
西瓜を食うのは赫々かくかくたる炎暑の中にも多少の涼味が動き初めてから——秋意のほのめくようになってからが多いかと思う。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
ほとんど英仏の同盟軍が北支那を占領して、東洋に於て威望赫々かくかくたる両大国の代表者は、我々を非常にいじめたのである。それは無論むろん悪意ではない。
平和事業の将来 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
今ほど此室ここかけり来て、赫々かくかくたる洋燈ランプ周囲めぐりを、飛びめぐり、飛び狂い、火にあくがれていたりしが、ぱっと羽たたき火屋ほやの中へ逆さまに飛び入りつ
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赫々かくかくの光を放ちて、天下万民を悦服せしめしばかりののちなれば、かゝる不祥の事は起るべくもあらぬ時代なり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかして農夫のこれを導く者また戦争の功労ありしものなりと。吾人はまた聞くマニオス・キネリオスなる人あり。武勲赫々かくかく威名四隣を圧するの豪傑なり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その中には、げに、天の、地の、大海の、——また海と地と高き天とを支配した魔神の、赫々かくかくたる歴史がある。また巫女みこの言った言葉にも、多くの知識があった。
この兵力に加うるに当時赫々かくかくたる西郷の威望があるのだから、天下の耳目を驚かせたのは当然である。
田原坂合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
東晋とうしんの大司馬桓温かんおんは威勢赫々かくかくたるものであったが、その晩年に一人の比丘尼びくにが遠方からたずねて来た。
司令は誰あろう、この前の第三次世界大戦の空戦に赫々かくかくたる勲功くんこうをたてた大勇将として、人々の記憶にもはっきりのこっている、あの隻脚せっきゃく隻腕せきわん大竹おおたけ中将であった。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
熱帯の陽はそこに赫々かくかくとして輝き、白雲はくらめかしく悠々と白光のうちにうかんでいるにもかかわらず、密林は妖しげな陰影かげをうつろわせて、天日もなんとなく仄暗ほのぐら
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
秋の日は赫々かくかくたる眼光を放ちて不義者の心を射透いとおせるなり、彼は今日もじ籠りて炉の傍に坐し、終日飯も食わずただ息つきてのみ生きておれり、命をかけて得たりし五十金
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
浮世絵は概して奉書ほうしょまたは西之内にしのうちに印刷せられ、その色彩は皆めたる如くあわくして光沢なし、試みにこれを活気ある油画あぶらえの色と比較せば、一ツは赫々かくかくたる烈日の光を望むが如く
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その満足を理解してくれるものは三千代だけであった。三千代以外には、父も兄も社会も人間もことごとく敵であった。彼等は赫々かくかくたる炎火のうちに、二人を包んで焼き殺そうとしている。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
赫々かくかくとした夏の真昼に、樹々は濃い緑から汗を流し、草花は芳香を強く立て、渓流たにがわは軽快な笑声を上げ、兎や鹿は木の間に刎ね、一切万象は自由に大胆に、その生命を営んでいた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
赫々かくかくたるしかもばかげた成功だった。弱められもしくは滑稽こっけい化された自分の面影を、自分の作品の反映を、凡庸な人々の頭脳の中に見出すこと、それは少しも愉快なことではなかった。
日蔭ひかげゆうに笑む白い花もあわれ、曇り日に見る花のやわらかに落ちついた色も好いが、真夏の赫々かくかくたる烈日を存分受けて精一ぱい照りかえす花の色彩の美は何とも云えぬ。彼は色が大好きである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
諸君よ、今暁吾々が行う潜行は、祖国を頽廃たいはいから救う、偉大なる隠れんぼうである。しかし、怖れることはない。普魯西プロシヤには、われわれ以前に、赫々かくかくたる功勲にかがやく、戦友が多々いるのである。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
昨日と違つて日は赫々かくかくと海、波、岸の草原を照射した。
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
その他二十年間わが邦人の耳目に赫々かくかくたる土木築造のごとき、採鉱のごとき、あるいは農工商の改良のごとき、これみな明治政府の事業にあらざるはなし。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
一時日本に亡命のかくたりし朴泳孝ぼくえいこう氏らも大政たいせいに参与し、威権赫々かくかくたる時なりければ、日本よりも星亨ほしとおる岡本柳之助おかもとりゅうのすけ氏ら、そのへいに応じて朝廷の顧問となり
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
秋になったというものの、赫々かくかくたる驕陽きょうようは依然として天地にちている。木々のこずえも夏のままに青葉が茂っている。その青葉を渡る風に、自らなる秋を感ずる。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
ある人、夢に極楽に遊び、四面光明赫々かくかくたるを見、驚きさむれば、炉中にたきぎの突然火を発するを見たり。
妖怪報告 (新字新仮名) / 井上円了(著)
どれもこれも言い合わせたように、東へ向ってかじをとっていた。太陽は中天に赫々かくかくと輝いていた。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてほとんど不可能のうちに絶対の勝利を占めたるその赫々かくかくたる初心者は、いったい何を意味したか? ほとんど息をもつかず、同じ一群の兵士より成る道具を手にして
五百年間勤王一途いちずの忠勤をつくした家柄で、山陽をして「翠楠必ずしも黄花に勝らず」と云わしめたが、活躍の舞台が、近畿でないから、楠公父子の赫々かくかくたる事蹟には及ばない。
四条畷の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
浮世絵は概して奉書ほうしょまたは西之内にしのうちに印刷せられ、その色彩は皆めたる如くあわくして光沢なし、試みにこれを活気ある油画あぶらえの色と比較せば、一ツは赫々かくかくたる烈日れつじつの光を望むが如く
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この雑多の仕事の中では、もちろんその大部分は、赫々かくかくたる成功を収めているのであったが、しかしまたその二三のものでは、全く避けがたい、不可能な失敗に終ったものもあった。
太陽はあの通り赫々かくかくたるものだから、れるわけにはゆかないが、月はあの通り涼しいではないか、星はあの通りクルクルと舞っているではないか、毎夜毎夜、人間と遊びたがって
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やがて二人の間に破滅の末の日が来て、具張氏は寂しい姿で、桜子夫人のもとにと帰っていった。ささやの三階から立ち出た人には、あまり天日てんぴ赫々かくかくとあからさますぎた事であろう。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しかも盛夏の赫々かくかくたる烈日の下に、他の草花のしおれ返っているのをよそに見て、悠然とその大きい花輪をひろげているのを眺めると、暑い暑いなどと弱ってはいられないような気がする。
我家の園芸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ある人、夢に極楽に遊び、四面光明赫々かくかくたるを見、驚きさむれば、炉中にたきぎの突然火を発するを見たり。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
また安政三年三月時事に感じ、作りたる詩中にも「朝廷を推尊し幕府を重んぜば、大義赫々かくかくとして天下にあらわれん。しかる後神州た一新し、東夷とうい北狄ほくてき、赤県を仰がん」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それから夕陽が赫々かくかくと赤耀館の西側の壁体に照り映えるころを迎えましたが、窓から街道を見下していても、鯨ヶ丘を指して帰って来る嫂の姿は発見されなかったのです。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
暑さの句というものは赫々かくかくたる趣を捉えたのが多いが、これはまた一風変ったところに目をつけた。一日中照りつけられた石が、夜になってもほてりがさめきらずにいる。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
ただし女としては早晩そうばんおっとを持つべきはずの者なれば、もし妾にして、夫をえらぶの時機来らば、威名赫々かくかく英傑えいけつに配すべしとは、これより先、既に妾の胸にいだかれし理想なりしかど
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
それはごく天真爛漫らんまんなる時期であって、ちょうどランク伯爵が、上院議員の服装をし綬章じゅしょうをつけ、あの長い鼻をして、赫々かくかくたる行ないをなした人にふさわしいいかめしい顔付きで
その上武威赫々かくかくたる信玄の遺臣として、その時代に畏敬されていたのであろう。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
赫々かくかくたる功業もなく、帝王の家にも生れなかった、大工の子の生れた時から、西洋の歴史が始まるという、この単純な事実の解釈が、どうしても駒井の頭で消化しきれなくなったのです。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし翌日になるともう朝の中から何とも知れず身体中が薄淋しいような妙な心持がして、とても夕方までは待ちきれず午飯ひるめしをすますとすぐ赫々かくかくたる日中の炎天をも恐れず外に飛出してしまった。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もし赫々かくかくたる哲眼を開ききたりてこれを徹照しきたらば、またその愚を笑わざるを得ず。なんとなれば、学者の妖怪にあらずとするもの、また一種の妖怪なればなり。
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
それを発見した木戸博士の名声は、世界の学界を照す太陽の如く、赫々かくかくとしてうち昇った。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)