トップ
>
贋物
>
にせもの
ふりがな文庫
“
贋物
(
にせもの
)” の例文
後刻屍体が発見された時この男にはアリバイがあるし、殺人はこの
贋物
(
にせもの
)
の被害者が部屋にはいって後行われたもののように考えられる。
J・D・カーの密室犯罪の研究
(新字新仮名)
/
井上良夫
(著)
よしんばあの鼓が
贋物
(
にせもの
)
だとしても、安政二年に出来たものでなく、ずっと以前からあったんだと云う想像をするのは無理だろうか
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
今、一本の管を通して、本物と
贋物
(
にせもの
)
と二人の三笠龍介が——稀代の殺人鬼と名探偵とが、まるで友達の様に話し合っているのだ。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
勝平が、
今迄
(
いままで
)
金で買い得た女性の美しさは、
此
(
この
)
少女の前では、皆偽物だった。金で買い得るものと思っていたものは、皆
贋物
(
にせもの
)
だったのだ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
何だかべらべら然たる着物へ
縮緬
(
ちりめん
)
の帯をだらしなく巻き付けて、例の通り
金鎖
(
きんぐさ
)
りをぶらつかしている。あの金鎖りは
贋物
(
にせもの
)
である。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
尤
(
もつと
)
もこちとらは、滅多に小判を見ることもないが、——
兩換屋
(
りやうがへや
)
へ持つて行つて、丁寧に見て貰ふと、こいつは良く出來てゐるが全くの
贋物
(
にせもの
)
だ
銭形平次捕物控:141 二枚の小判
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
覗
(
のぞ
)
いたが、こういう無法な勧進帳はやらない。第一海老蔵という役者は、いま江戸には名をつぐ者がないはず。
贋物
(
にせもの
)
に違いない
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
でも、あの時は、貴方は私には
贋物
(
にせもの
)
には見えなかつた。別れてくれつておつしやれば、仕方がないけれど、それでもいゝものなのかしら……。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
植民地には人間の
贋物
(
にせもの
)
が多いやうに、骨董物にもいかさまな物が少くない。そんな
間
(
なか
)
を掻き捜すやうにして馬越氏は二つ三つの掘出し物をした。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ただ幾人かの老
案山子
(
かがし
)
どもが、二十年前に芸術や政治上の一流新進者を気取っていた者どもが、同じ
贋物
(
にせもの
)
の顔つきで今日もまだいばっています。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
顔の大きな刀傷は、できるだけ、
素顔
(
すがお
)
をかえるために、
絵具
(
えのぐ
)
でかいた
贋物
(
にせもの
)
だったんだ。どうだ机博士、面白い話じゃないか
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
けれども如何に多くの
贋物
(
にせもの
)
があるか。
否
(
いな
)
、真に自らの角度を持ち、しかも之を正しく育てうる人は極めて
稀
(
まれ
)
にしかない。
意慾的創作文章の形式と方法
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
右
(
みぎ
)
の
方
(
ほう
)
に
置
(
お
)
きましたのは、
真物
(
ほんもの
)
で、
左
(
ひだり
)
の
方
(
ほう
)
に
置
(
お
)
きましたのは
贋物
(
にせもの
)
であります。」と、おじいさんは、
申
(
もう
)
しあげました。
ひすいを愛された妃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「お豊が古道具屋へ売った探幽の鬼は
贋物
(
にせもの
)
だったのですね。そうすると、忠三郎という番頭は稲川の屋敷から贋物を受け取って来たのでしょうか」
半七捕物帳:27 化け銀杏
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「私はあなたの仰しやるやうな
贋物
(
にせもの
)
の感情を輕蔑します、さうですとも、セント・ジョン、そんなことを仰しやるなら、あなたを輕蔑しますわ。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
しかし扁理自身はその本物も
贋物
(
にせもの
)
もごっちゃにしながら、ただ、そういうものから自分を救い出してくれるような一つの合図しか待っていなかった。
聖家族
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「ふうむ」とレザールは呻くように、「市長の書斎を掃きながら、
贋物
(
にせもの
)
の女中が掃きすてたという、例の紙屑という奴が、その経文の一部ですな?」
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
文三は
徐々
(
そろそろ
)
ジレ出した。スルト
悪戯
(
いたずら
)
な
妄想奴
(
ぼうそうめ
)
が野次馬に飛出して来て、アアでは無いかこうでは無いかと、真赤な
贋物
(
にせもの
)
、
宛事
(
あてこと
)
も無い邪推を
掴
(
つか
)
ませる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
千利久は茶器の新旧可否を鑑定して
分限者
(
ぶげんしゃ
)
になった男だが、
親疎異同
(
しんそいどう
)
によって、
贋物
(
にせもの
)
を
真物
(
ほんもの
)
、
新
(
しん
)
を
古
(
こ
)
と言い張って、よく人を欺いたということである。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「ハハハハ。そりゃあどうも……。こう申しちゃ何でございますが、
贋物
(
にせもの
)
にしてもずいぶんひどい方で。へへへへ」
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
廊下に出してさえ置けば、狸
奴
(
め
)
が綺麗に
舐
(
な
)
めてくれる。それは至極結構だが、聖堂には狸が出るという評判が立ったもんだから、狸の
贋物
(
にせもの
)
が出来たね。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
尤
(
もつと
)
も御所持の
御什器
(
ごじふき
)
のうちには
贋物
(
にせもの
)
も数かず
有之
(
これあり
)
、この「かなりや」ほど確かなる品は一つも御所持御座なく候。
糸女覚え書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「この大根を此の手の上で真つ二つに切つて御覧に入れます。御覧の通り此の手は
贋物
(
にせもの
)
ではありません。そんなことを云ふと私のおふくろが怒ります。」
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
「僕にも近頃
流行
(
はや
)
るまがい物の名前はわからない。
贋物
(
にせもの
)
には大正とか改良とかいう形容詞をつけて置けばいいんだろう。」と唖々子は常に
杯
(
さかずき
)
を
放
(
は
)
なさない。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今度名古屋へ来た連中もそうじゃ、
贋物
(
にせもの
)
ではなかろうから、何も宗山に稽古をしてもらえとは言わぬけれど、
鰻
(
うなぎ
)
の
他
(
ほか
)
に、
鯛
(
たい
)
がある、味を知って帰れば可いに。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
日本人の家だと
贋物
(
にせもの
)
と
見顕
(
みあらわ
)
されるまでは一年でも二年でも悪い品物を売付けて儲かる儲かると悦んでいます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
おまえさんは知らないが斯う云うものには
贋物
(
にせもの
)
が多い、貧乏人の子供が表に泣いていて、
親父
(
ちゃん
)
もお
母
(
かあ
)
もいない、腹がへっていけねえと云ってワーッと泣くから
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
好人物
(
こうじんぶつ
)
で、善人で、人にだまされやすい弱い鈍い性質を持っていながら、
贋物
(
にせもの
)
の
書画
(
しょが
)
を人にはめることを職業にしているということにはなはだしく不快を感じた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
おまえは本当のキリストか、それとも
贋物
(
にせもの
)
か、そんなことはどうでもよい、とにかく、明日はおまえを裁判して、邪教徒の極悪人として
火烙
(
ひあぶ
)
りにしてしまうのだ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
押領
(
あふりやう
)
せんと
巧
(
たくむ
)
智慧
(
ちゑ
)
の深き事
量
(
はかる
)
べからずと雖も英智の
贋物
(
にせもの
)
にして
悉皆
(
こと/″\
)
く
邪智
(
じやち
)
奸智
(
かんち
)
と云ふべし大石内藏助は其身
放蕩
(
はうたう
)
と見せて君の
讎
(
あだ
)
を討ちしは忠士の
智嚢
(
ちなう
)
を振ひ功名を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「何を言っているんだ。君はこないだ、
贋物
(
にせもの
)
じゃないかなんて言って、けちを附けてたじゃないか。」
不審庵
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
だから私は村々の狸和尚が、いずれも狸の
贋物
(
にせもの
)
であったとはもちろん言わぬが、少なくともいかにしてこれを発見したかは、考えてみる必要があると思うのである。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
果たしてしからば、世間の者は妖怪の
贋物
(
にせもの
)
ばかりをかつぎ出し、真物はかえって知らずにおります。
諺
(
ことわざ
)
に「盲者千人に明者一人」とは、もっともの格言ではありませぬか。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
なかには、『琥珀の中の蝿』がホン物のしるしだと思っているものもあるようだけれどもしかし
贋物
(
にせもの
)
の琥珀の中には贋物の蝿を入れとくくらいのことは、商売の常識だからね。
黄色な顔
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
「他でもない。お前の方の八幡様は
贋物
(
にせもの
)
だって話だが、矢っ張り
御利益
(
ごりやく
)
があるのかい?」
ある温泉の由来
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ほんとうの神秘を見つけるにはあらゆる
贋物
(
にせもの
)
を破棄しなくてはならないという気がする。
春六題
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
安部
(
あべ
)
の
多
(
おおし
)
が大金で買った毛皮がめらめらと焼けたと書いてあったり、あれだけ
蓬莱
(
ほうらい
)
の島を想像して言える
倉持
(
くらもち
)
の
皇子
(
みこ
)
が
贋物
(
にせもの
)
を持って来てごまかそうとしたりするところがとてもいやです
源氏物語:17 絵合
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
確かに
線香花火
(
せんこうはなび
)
のように容易に熱し、たちまち火花を散らす感激はなくなったが、同時にまた
贋物
(
にせもの
)
にのぼせ上がり、くわせ物にだまされることのなくなったのが、大人の眼の効果である。
大人の眼と子供の眼
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「父が生きてゐるうちは今の財産を使つちまつても、父の恩給で米代ぐらゐはありますが、父が死んだらこんな道具類でもぽつ/\売つて喰つて行くより手はありません。それにしても
贋物
(
にせもの
)
が多くて」
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「やっ、
贋物
(
にせもの
)
だ! いつの間にすりかえられたんだろう?」
紅色ダイヤ
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
わたしなんぞにはその水の
贋物
(
にせもの
)
は丸で見えません。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
しかし葉子から見るとそれはみんな
贋物
(
にせもの
)
だった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
掛けた当座は腰の
業物
(
わざもの
)
を奉納しようと思ひながら、願が叶ふとついそれが惜しくなつて、飛んだ
贋物
(
にせもの
)
で
胡麻化
(
ごまか
)
してしまふ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼女は大江春泥の脅迫状が
贋物
(
にせもの
)
であって、最早や彼女の身に危険がなくなったと知って、ほっと安心したものに相違ない。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして、それから間もなく、顔に大きな傷のある、スペイン人みたいな男に、黄金メダルの半ペラを売りつけたが、そのメダルは
贋物
(
にせもの
)
だったんだよ。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「それからすぐに万助の家へ飛び込んで、よく調べてみると、万助の奴め、ぼんやりしている。どうしたんだと訊くと、その探幽が
贋物
(
にせもの
)
だそうで……」
半七捕物帳:27 化け銀杏
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いわば形でこしらえた
贋物
(
にせもの
)
といっていいが、あらゆる点に於て贋物の形が大きい。贋物としては本格的である。
神童でなかったラムボオの詩:中原中也訳『学校時代の詩』に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
化粧を直し衣裳を着換え、再び現われたお六の姿は、誰の眼にも
贋物
(
にせもの
)
とは見えず本物の鳰鳥そっくりであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
見ることもないが、——両替屋へ持って行って、丁寧に見て貰うと、こいつは良く出来ているが全くの
贋物
(
にせもの
)
だ
銭形平次捕物控:141 二枚の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それがまたどうして崋山の
贋物
(
にせもの
)
を売り込もうと
巧
(
たく
)
んだのかと聞くと、坂井は笑って、こう説明した。——
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“贋物”の意味
《名詞》
にせもの。紛い物。
(出典:Wiktionary)
贋
漢検準1級
部首:⾙
19画
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
“贋物”で始まる語句
贋物堂
贋物様
贋物的