見做みな)” の例文
今まで用いたる理屈という語は最も簡単の知をば除きて言いしつもりなれど貴書の意は知と理屈とを同一に見做みなされたるかと覚え候。
あきまろに答ふ (新字新仮名) / 正岡子規(著)
ガス体の方則などはガスを均質な連続体と見做みなす時は至極簡単な意味のものであるが、これが沢山な分子の集合体であると見做せば
方則について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この城山つづきを東山一帯に見做みなすことも決して無理ではない。無論、京都の規模には及ばないが、その情趣の髣髴ほうふつは無いではない。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
世間の人は二つの自殺が相前後して発生すると、後の例を前の例の模倣であると見做みなそうとする。しかし、これほど馬鹿げた話はない。
ある自殺者の手記 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
しかし世間の人は彼を笑うて狂人と見做みなすであろう。友人は彼と共に歩くことを嫌うであろう。恐らく先生方も彼を遠ざけるであろう。
自由の真髄 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この見解よりして見る時は人生に於けるその他の問題も皆種族の向上を以つて目的とするものであると見做みなされなければならない。
恋愛と道徳 (新字旧仮名) / エレン・ケイ(著)
罪を犯さぬつもりでゐる過ちのない傲慢な者より救はれ易いと云ふ意味が罪その物を肯定する教と見做みなされた事も当然な事であつたが
ある種の人達からは国力等の立場より見做みなして消極的なものと誤解されている、文学、美術、音楽、演劇等はこの方面に属します。
無題 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
恐ろしく神経をとがらせ、程度次第では、絵図面を引いて公儀の許しを受けなければ、謀叛むほん同様に見做みなされる場合もあったのです。
それはかの通俗小説の作家として今ではう忘れられようとしている Paulポオル de Kockコック を以て嚆矢こうし見做みなさなければならぬ。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何処までも善良なるものと見做みなし、いやしくもこれにもとるものがあれば、ことごとくこれを誤れるものとして一排し去らんとつとむるが如くんば
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
その意味で私は、佐治を危険人物と見做みなすことに躊躇しないのだ。大学を出てから彼は×省へ入って役人になり、今度洋行して来たという。
偽悪病患者 (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
越して行く先から先の近所の人達も当然それを怪しみもせず、おとうさんを女の扱ひにし、おかあさんを男の児と見做みなして仕舞ひました。
秋の夜がたり (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
主客の別は経験の統一を失った場合に起る相対的形式である、これを互に独立せる実在と見做みなすのは独断にすぎないのである。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
しかるに何等なんら玉石を顧みることなく、霊媒の全部を精神異常者と見做みなして、懲罰を加えんとするに至りては、愚にあらずんば正に冒涜である。
通例フジツボを退化したものと見做みなすが、その境遇に於ける生存に適するという点では、決して蝦や蟹に劣るものではない。
翌日から警部は病気と称して引籠ひきこもってしまったのです。それで嫂の死は、自殺であると見做みなして一先ず事件の幕は閉じられてしまったのです。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
立政は、衛律えいりつをもって完全に胡人こじんになり切ったものと見做みなして——事実それに違いなかったが——その前では明らさまに陵に説くのをはばかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
石焼の方は、肥前ひぜんの影響多く、後者は相馬そうま笠間かさまの系統だという。この土焼の方は主として雑器であるから格が一段と下るものと見做みなされている。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
大公爵の動物園の中の珍しい動物のように人々から見做みなされてる、と彼は考え、賛辞は自分へよりもむしろ大公爵へ向けられてる、と考えていた。
又、司法当局も、あなたの平常の素行から推して、今夜の兇行を貴方の夢中遊行から起った事件と見做みなして、無罪の判決を下すかも知れませんネ。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こゝから人間がおどり出ることは、桔梗の方に取ってそんなに意外な事件ではあるまい、従って又、あながちそれを無礼とも見做みなすまい、少くとも
小次郎が戻って見えたら、きょうは彼を稽古台として、またやがて出会う武蔵とも見做みなして、みっちり鍛錬しておこう。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてこれらの作品中の個性というものも、単に、まま者か、変質者であった。職業的文壇圏内では、時にそれを天才的などと見做みなしたのである。
日本的童話の提唱 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わが邦でも昔は兎を八きょうと見た物か、従来兎を鳥類と見做みなし、獣肉を忌む神にも供えまた家内で食うも忌まず、一疋二疋と数えず一羽二羽と呼んだ由
凡そ中層階級が自らも他からも健全なりと見做みなさるる理由は、自らその生活を保持し、これを充実し向上せしめ、他の施設恩恵をたぬがためである。
人民をただ納税義務者とのみ見做みなして居る位に過ぎぬ戦乱の世の奉行なんどよりは、此の公私中間者の方が、何程か其土地を愛し、其土地の利を図り
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
兇行のあったのは、後に警察医の検診によって、午前の三時頃ということが分ったが、兇行の理由と見做みなすべき事柄は、やや曖昧あいまいにしか分らなかった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そのエー男女なんにょ同権たる処の道を心得ずんば有るべからず、しばらく男女同権はなしと雖も、此事これは五十百把の論で、先ず之をたきゞ見做みなさんければならんよ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
防寨ぼうさいをすべて暴行と見做みなす。彼らの所説をとがめ、彼らの目的を疑い、彼らの内心を恐れ、彼らの良心を難ずる。
童女のことを歌っているのが珍しいのであるが、あの時代には随分小さくて男女の関係を結んだこともあったと見做みなしてこの歌を解釈することも出来る。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それは少くとも彼を、ヘーゲルを思弁的として排斥したランケ、或は歴史を一種の芸術と見做みなしたブルックハルト流の歴史家となすことができたであらう。
ゲーテに於ける自然と歴史 (新字旧仮名) / 三木清(著)
かかれているが、私はそれを多少仏体に似た岩を偶然発見したものと見做みなして、どうも此岩を古く見た人がある為に伝説が生じたとは信じ兼ねるのである。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
私たちはいくら何でもそれ等の些々ささたる行為が私たちの全てだと見做みなして終はれやうとは思ひませんでした。
妹にしろ妻にしろ、自分を世間に出しては取り柄のない人間と見做みなして、さう見做した上で、身内のよしみで、とこしへの愛情を寄せて呉れることを望んでゐた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
私は、やはり、人生をドラマと見做みなしていた。いや、ドラマを人生と見做していた。もう今は、誰の役にも立たぬ。唯一のHにも、他人の手垢てあかが附いていた。
一種の苦い感じが夕立雲の空に拡がる如く急に心頭におほひかぶさつて、折角の感興も之が為に台なしにされたとかで、氏はたゞちに之を日本人の排外思想と見做みな
露都雑記 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
ただ生平その機関たる新聞雑誌に言うところの政議を採りてこれを一の論派と見做みなし去らんと欲するのみ。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
佐太夫なる一美形の生涯に想像したるところをこと/″\く此粋に帰す可きにはあらねど、其境界より見れば、即ち世の俗粋をたらかし尽し、世の金銀を砂礫と見做みな
人にして人にらず、画家にして画かきに非ずとさえ見做みなされる事が、日本では殊の外あったようである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
ともう日記を読まれたのを当然の成り行きと見做みなすようになった。人が好いから自由自在に操縦される。
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と云うよりは、むしろそれは慰みであり、一種の遊び事ででもあるかのようにさえ見做みなされたのである。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
俳句のようなものは時代遅れもはなはだしいものと見做みなされた。続いて自然主義文学がもてはやされて、そういう傾向の文学でないと通用しないような傾向であった。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
罪を罰し悪をただし規律を維持するをのみ神の属性と見做みなす時、人はわが罪のむくいを怖れて平安やすきを得ない。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
鶴見の動物観は人間を輪廻の一環と見做みなしている。人間の霊が永遠の女性に導かれて昇天するよりも、永遠の輪廻の途を輾転てんてんするのが順当だと思っているのである。
貴族や富豪に虐げられる下層階級者に同情していても権力階級の存在は社会組織上止むを得ざるものと見做みなし、渠らに味方しないまでも呪咀じゅそするほどに憎まなかった。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
要するに解放とは社会と宗教と道徳とを無視する放恣ほうしと罪悪の無分別であるかの如く見做みなされたのである。女権論の代表者はかくの如き誤解に対して甚だしく憤激した。
婦人解放の悲劇 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
当時の第一流として見做みなされるようになったのですから、なんと驚くべきではありますまいか。
ヘルムホルツ (新字新仮名) / 石原純(著)
奨学資金なる投資は失敗だつたと見做みなすべきである、それを取立てるなんて、なぞと満員で臭い空気のつまつた省線電車の中で自分はれいによつてぶつぶつ憤慨してゐた。
現代詩 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
... 一種の勝利と見做みなす云々」スティブンソンの「宝島」やなんかを私たちは面白がらないのだが