融通ゆうづう)” の例文
「旦那、まだありますよ、——身上を潰してしまつた研屋五兵衞に、三千五百兩といふ大金を融通ゆうづうしたのは、ありや、何の爲でした」
しかし、月きふの上る見込みこみもなかつたし、ボオナスもるばかりの上に、質屋しちやちかしい友だちからの融通ゆうづうもさうさうきりなしとはかなかつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
こまねぎて居たりしが彼浪人め一文貰もんもらひの身分にてわづか二三日の中に十三兩と云金子の出來樣はずなし融通ゆうづうせし金なりと云ともなんぞ袖乞に十兩からの金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きかねど晦日みそかつきなか十五夜じふごややみもなくてやはおく朦朧もうろうのいかなる手段しゆだんありしか新田につた畫策くわくさくきはめてめうにしていさゝかの融通ゆうづうもならず示談じだん
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちゝくなつた此際このさいにも、叔父をぢ都合つがふもとあまかはつてゐない樣子やうすであつたが、生前せいぜん義理ぎりもあるし、またをとこつねとして、いざと場合ばあひには比較的ひかくてき融通ゆうづうくものとえて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
伝道なども少こし融通ゆうづうくやうに頼みますよ、今も言ふ通り梅子の結婚談で心配して居るんだが、信仰が如何どうの、品行が如何のと、頑固ぐわんこなことばかり言うて困らせ切つて仕舞ふのだ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
大島さんがこれに相槌あいづちをうった。各小学校の評判や年功加俸ねんこうかほうの話などが出る。郡視学の融通ゆうづうのきかない失策談が一座を笑わせた。けれど清三にとっては、これらの物語は耳にも心にも遠かった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
箱に入れたようにして、そのあいだに少しも融通ゆうづうがあられない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
佐原屋の身上しんしやうがどうなつて居るか、現金かね融通ゆうづう、材木、山元との取引など、仲間にいたら判るだらう。出來るだけくはしく調べてくれ。
おもことに一せん融通ゆうづうかなふまじく、いはゞたからくら番人ばんにんにておはるべきの、らぬつままでとは彌〻いよ/\重荷おもになり、うき義理ぎりといふしがらみのなくば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
入れんと云に四郎右衞門書付には及び申さず御同商賣の事故たがひに融通ゆうづうは致すはずなりと眞實面に顯れければ三郎兵衞はまことかたじけなしと厚く禮を述て歸らんとするを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
青木さん夫婦ふうふわづかな金の融通ゆうづうのために仕方しかたなく手離てはなしたのであつたが、それがもなく五とう百円のくじにあたつたこと無論むろんるはずもなかつた。—一四・四・一八—
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「そりや、あのときそうさんが若干いくらいてきなすつたことは、きなすつたが、それはもうりやしないよ。叔父をぢさんのきて御出おいで時分じぶんから、御前おまへ學資がくし融通ゆうづうしてたんだから」とこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私に五十兩の金を貸して下すつた方も、私の口の固いのを見込み、私の大難を見るに見兼ねて、主人の金を融通ゆうづうしてくれたのでございます
ふきつゝはなしかくれば長庵はわざと目をぬぐひ涙に聲をくもらせてひんの病は是非もなし世の成行なりゆき斷念あきらめよ我とてはたくはへ金は有ざれども融通ゆうづうさへ成事なら用立ようだつ遣度やりたしと手紙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「番頭の七兵衞が、うんと溜め込んでゐるといふ話だ。家も二三軒持つてゐるし、自分の名義で諸方に融通ゆうづうして居る金も二三千兩はあるだらうといふことだ」
ツイ父親に内證ないしよで五百兩といふ大金を染五郎の一存で融通ゆうづうしたことなどが知れた爲だと言はれて居ります。
入れ過ぎて、菊屋さんから、二年越し融通ゆうづうして頂きました。他樣よそさまよりは利息も安く廻して下すつたのに、無盡で五十兩といふ金が入つたのを、默つては居られません
松前樣のお金を融通ゆうづうして、一代に萬といふ金を拵へたが、主人三郎兵衞は女房のお駒と、小さい娘のお君を遺して五年前に病死——それにも變な噂がありますが、兎も角も
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「その金を内々で八分に融通ゆうづうしてゐるが、半分は踏み倒されるといふから、あまり利口な人間ぢやありませんね。せつせと稼いで溜めた金は、三文無くしても惜しいわけだが」
何んかの手蔓てづるで田原屋から千とまとまつた大金を融通ゆうづうしてもらひ、それで漸く家業は立ち直つたが、その恩があるから、田原屋の言ふことなら、どんな無理なことでもいやとは言へない
融通ゆうづうのきかねえ野郎だ、兎も角、今のうちから心掛けて、カラせきでもして居るが宜い」
菊屋から融通ゆうづうさして居るんだとも言ひますがね、——そんな内證事ないしよごとまではわかりませんよ
「幸ひ石川樣が融通ゆうづうして下すつて研屋の身上を建て直したやうなわけでございます」
「なんにも御座いません。金も少しは融通ゆうづうして居りますし、土地も家も人樣に貸して居りますが、無理な取立てはいたしません。縁談もまだ決つた口がないので、心配して居ります」
それから一番いけないのは、店の金を三百兩ほど持出して、私にも相談をせずに、實家の仕事に融通ゆうづうしてしまひ、その仕事も縮尻しくじつてしまつて、取り返すても無くなつてしまひました。
三千石の大身ですが、無役の呑氣さで、渡り中間の半次が長い間住み付いて、庭もけば、使ひ走りもし、主人の供もすれば、若樣の道樂指南番もやると言つた、申し分なく融通ゆうづうのきく男です。
先刻藤井樣が直々御見えになつて、金は二日前に入用であつた、散々待つたが屆けてくれなかつたので、他から融通ゆうづうして用事は濟んだ。株賣買のことはこれで打切るやうにとのお言葉で御座いました