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菱形
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ひしがた
ふりがな文庫
“
菱形
(
ひしがた
)” の例文
そして、その一枚に、不規則な
菱形
(
ひしがた
)
の、紋どころと思える絵をみつけたとき、母の呼ぶ声がしたので、慌ててそれを片づけて立った。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その像は四寸ばかりの大きさで全体は影法師を写したといふために黒く画いてある。顔ばかりやや明瞭で、
菱形
(
ひしがた
)
の目が二つ並んで居る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
その蛇の頭部が、
菱形
(
ひしがた
)
にふくらんで、毒蛇の相を現わしていたからでもあった。だが、その外に、もっと別の感じがあった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
小声で唄いながら、お絹は片手で膝をたたいて拍子を取ると、蛇はなめらかな
膚
(
はだ
)
に
菱形
(
ひしがた
)
の尖った
鱗
(
うろこ
)
を立てて、まぶたのない眼を眠るようにとじた。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
毎日々々
(
まいにち/\
)
面白
(
おもしろ
)
く
可笑
(
をかし
)
く
遊
(
あそ
)
んで
居
(
を
)
る
内
(
うち
)
、
或
(
ある
)
日
(
ひ
)
の
事
(
こと
)
其
(
その
)
老爺
(
をやぢさん
)
が
作
(
こしら
)
へて
呉
(
く
)
れた
菱形
(
ひしがた
)
の
紙鳶
(
たこ
)
を
甲板
(
かんぱん
)
に
飛
(
と
)
ばさんとて、
頻
(
しきり
)
に
騷
(
さは
)
いで
居
(
を
)
つたが、
丁度
(
ちやうど
)
其時
(
そのとき
)
船橋
(
せんけう
)
の
上
(
うへ
)
で
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
さうして
下男
(
げなん
)
には、
菱形
(
ひしがた
)
の四
角
(
かく
)
へ『
多
(
た
)
』の
字
(
じ
)
の
合印
(
あひじる
)
しの
附
(
つ
)
いた
法被
(
はつぴ
)
を
着
(
き
)
せてくれた。
兩掛
(
りやうが
)
けの一
方
(
ぱう
)
には
藥箱
(
くすりばこ
)
を
納
(
をさ
)
め、
他
(
た
)
の一
方
(
ぱう
)
には
土産物
(
みやげもの
)
が
入
(
はひ
)
つてゐた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
一つの顕著な例は三月の桃節供に、必ず
菱形
(
ひしがた
)
の餅を飾ることである。是を
桝形
(
ますがた
)
の餅とも称して、奥州では正月に人の家に贈る餅の、
定
(
き
)
まった一つの形となっていた。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
と見ると、
処々
(
ところどころ
)
に
筵
(
むしろ
)
を敷き、
藁
(
わら
)
を
束
(
つか
)
ね、あるいは紙を伸べ、布を拡げて仕切った上へ、四角、三角、
菱形
(
ひしがた
)
のもの、丸いもの。紙入がある、
莨入
(
たばこいれ
)
がある、時計がある。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
陸尺
(
ろくしゃく
)
や巡礼などの休みたがる、構えの大きいわりに、
燻
(
くす
)
ぶった、軒には
菱形
(
ひしがた
)
の煙草の看板がつるされ、一枚立てきられた腰高障子には大きな
蝋燭
(
ろうそく
)
の絵がある茶店の中に
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一棟はあきらかにきわめて古く、どっしりした石の柱のある張出し窓が突きだして、
蔦
(
つた
)
が生いしげり、その葉かげから、小さな
菱形
(
ひしがた
)
の窓ガラスが月光にきらめいていた。
クリスマス・イーヴ
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
その二は
一樹
(
いちじゅ
)
の
垂楊図
(
すいようず
)
の上部を限る
霞
(
かすみ
)
の
間
(
あいだ
)
より糸の如きその枝を吹きなびかす処、
大
(
だい
)
なる
菱形
(
ひしがた
)
の
井筒
(
いづつ
)
を中央にして前髪姿の若衆
縞
(
しま
)
の
着流
(
きなが
)
し羽織
塗下駄
(
ぬりげた
)
の
拵
(
こしら
)
へにて
居住
(
いずま
)
ひ
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
静かな声は落ついた春の調子を乱さぬほどに
穏
(
おだやか
)
である。幅一尺の
揚板
(
あげいた
)
に、
菱形
(
ひしがた
)
の黒い穴が、
椽
(
えん
)
の下へ抜けているのを
眺
(
なが
)
めながら取次をおとなしく待つ。返事はやがてした。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
石槍 此石器は長さ二三寸より五六寸に至り、
扁平
(
へんぺい
)
にして紡錘形或は
菱形
(
ひしがた
)
をなすものなり。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
菱刺には多く白と
藍
(
あい
)
と紺との三色が用いられ、上着のみならず
股引
(
ももひき
)
にも刺し、また色糸入で
前掛
(
まえかけ
)
も作ります。刺し方で模様が
菱形
(
ひしがた
)
をとるので「菱刺」の名を得たのであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
女の
懐中
(
ふところ
)
から
菱形
(
ひしがた
)
をなした、
蝮
(
まむし
)
の首が現われて、彼の手を目がけて延びたからであった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あるいは十字架を花の
環
(
わ
)
の形に、あるいは
菱形
(
ひしがた
)
に、あるいは円形に意匠したその窓々の
尖端
(
せんたん
)
、あるいは緑と紅との色の中心に描かれてある聖者の立像、それらが皆夕日に輝いた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その船は
舷側
(
げんそく
)
に
菱形
(
ひしがた
)
の桟を
嵌
(
は
)
めた船板を使ったので、
菱垣船
(
ひしがきぶね
)
と云った。廻船業は
繁昌
(
はんじょう
)
するので、その廻船によって商いする問屋はだんだん殖え、大阪で二十四組、江戸で十組にもなった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
山の空にはやはり
菱形
(
ひしがた
)
の凧。
北原白秋
(
きたはらはくしう
)
の歌つた凧。うらうらと幾つも
漂
(
ただよ
)
つた凧。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
菱形
(
ひしがた
)
に白く霜置く田の
畔
(
あぜ
)
の
寒々
(
さむざむ
)
しもよ遠く続きて
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
菱形
(
ひしがた
)
なせる
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
希代なのは、その
隙間形
(
すきまなり
)
に、怪しい顔が、細くもなれば、長くもなり、
菱形
(
ひしがた
)
にも円くもなる。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
紅
(
あか
)
、青、黄、紫のあざやかな色の糸で、花や
菱形
(
ひしがた
)
のうつくしい形に飾ったので、そのうつくしさを女の
児
(
こ
)
が愛していたために、ゴム毬になってからのちも、なおしばらくのあいだは
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ところがその帽子の裏には当人の名前がちゃんと、
菱形
(
ひしがた
)
の白いきれの上に書いてあったのです。それで事が面倒になって、その男はもう少しで警察から学校へ照会されるところでした。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
菱形
(
ひしがた
)
の
凧
(
たこ
)
。サント・モンタニの空に
揚
(
あが
)
つた
凧
(
たこ
)
。うらうらと幾つも
漂
(
ただよ
)
つた凧。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私はかかる風景の
中
(
うち
)
日本橋を背にして江戸橋の上より
菱形
(
ひしがた
)
をなした広い水の
片側
(
かたかわ
)
には
荒布橋
(
あらめばし
)
つづいて
思案橋
(
しあんばし
)
、片側には
鎧橋
(
よろいばし
)
を見る眺望をば、その沿岸の商家倉庫及び街上
橋頭
(
きょうとう
)
の繁華
雑沓
(
ざっとう
)
と合せて
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一、
菱形
(
ひしがた
)
走馬燈一箇
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
あの暗灰色の
菱形
(
ひしがた
)
の
魚
(
うお
)
を、三角形に積んで、
下積
(
したづみ
)
になったのは、軒下の石に
藍
(
あい
)
を流して、上の方は、浜の砂をざらざらとそのままだから、海の底のピラミッドを影で
覗
(
のぞ
)
く
鮮
(
あたらし
)
さがある。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
菱
漢検準1級
部首:⾋
11画
形
常用漢字
小2
部首:⼺
7画
“菱形”で始まる語句
菱形屋
菱形筏
菱形轡
菱形金剛石