而已のみ)” の例文
一身の小楽に安んじ錦衣きんい玉食ぎょくしょくするを以て、人生最大の幸福名誉となす而已のみあに事体の何物たるを知らんや、いわんや邦家ほうか休戚きゅうせきをや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
当座四五日は例の老人の顔を見る毎に嘆息而已のみしていたが、それも向う境界きょうがいに移る習いとかで、日を経るままに苦にもならなく成る。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
聞れ吉兵衞其方は狂氣きやうきにても致したるや取留とりとめもなきこと而已のみやつかな然ながら千太郎は久八と兄弟なりとは如何の譯にて右樣の儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
斯くて午後六時全く競技を了り本部要館で賞品授与式挙げられ加納会長は『将来は国内而已のみに止らず世界と体育上の交際及び競争を希望す』
オリムピヤ選手予選 (新字旧仮名) / 長瀬金平(著)
? 茶釜ちゃがまでなく、這般この文福和尚ぶんぶくおしょう渋茶しぶちゃにあらぬ振舞ふるまい三十棒さんじゅうぼう、思わずしりえ瞠若どうじゃくとして、……ただ苦笑くしょうするある而已のみ……
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
陳ば去年七月炮戰はうせん騷動さうどう御座候由、扨々大騷ぎの事に御座候半、想像仕に尚あまり有る事に御座候。御祖母樣如何ばかり之御驚嘆と、是而已のみ案勞あんらう仕候儀に御座候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
決而可伺儀けつしてうかゞふべきぎ而者無之候てはこれなくさふらへ共、右殺害に及候者より差出し候書附にも、天主教を天下に蔓延まんえんせしめんとする奸謀之由申立かんぼうのよしまうしたて有之、もつとも、此書附而已のみに候へば
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
... ぐる所以ゆゑんかくごと而已のみ』と。孔子こうしつて弟子ていしつていはく、『とりわれぶをり、うをわれおよぐをり、けものわれはしるをる。 ...
小生は是非を知らず、可否を知らず、ただこれが小生の本来の面目なるを知りたる而已のみ
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
夫故それゆえ江戸には門戸を維持するあたはず始終田舎へ而已のみ飄泊ひょうはく致し候次第なり。『安政絶句』に相洩し候はあえて意あるにらず。唯游歴而已致し候故むことを得ず相洩し候儀に御座候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
而已のみならず私が亜米利加旅行中にも、郷里中津の者共が色々様々な風聞ふうぶんを立てゝ、亜米利加にいっの地で死んだと云い、はなはだしきに至れば現在の親類の中の一人ひとりが私共の母にむかっ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
夫れ物質的の文明は唯物質的の人を生むに足れる而已のみ、我三十年間の進歩は実に非常なる進歩に相違なし、欧米人をしてしりへに瞠若だうじやくたらしむる程の進歩に相違なし、然れども余を以て之を見るに
昇とあのままにして置いて独り課長に而已のみ取入ろうとすれば、渠奴きゃつ必ず邪魔を入れるに相違ない。からして厭でも昇に親まなければならぬ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
盡しけるに母も父が七回忌くわいきあたとし病死なしければ傳吉の愁傷しうしよう大方ならずかつ親類しんるゐは只當村たうむらをさ上臺憑司かみだいひようじ而已のみなれ共是は傳吉の不如意をきらひ出入を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
曩日さきに政府は卑屈無気力にして、かの辮髪奴のためにはずかしめを受けしも、民間には義士烈婦ありて、国辱をそそぎたりとて、大いに外交政略に関する而已のみならず
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「追日向暑、ます/\起居御安和可被成御座奉恭賀候。京都総而そうじて静謐、僕等本月八日入京仕候。途中雨すくなにて、僅一両日微雨に逢候而已のみ、只入京之日半日雨降申候。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
何卒御返濟いたし度、色々手段を𢌞めぐらし候得共、頓と御返べん之道も不相付而已のみならず、利息さへもわづか一年ぐらゐ差上候而已のみにて、何とも無わけ仕合に御座候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
而已のみならず、乙姫様が囲われたか、玄人くろうとでなし、堅気かたぎでなし、粋で自堕落じだらくの風のない、品がいいのに、なまめかしく、澄ましたようで優容おとなしやか、おきゃんに見えて懐かしい。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お政は始終顔をしかめていて口も碌々ろくろく聞かず、文三もその通り。独りお勢而已のみはソワソワしていて更らに沈着おちつかず、端手はしたなくさえずッて他愛たわいもなく笑う。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
とがおとしいれる而已のみならず其妻に不義ふぎを申し掛しだん不屆ふとゞきの至なりよつて二百五十ぺう召上めしあげられおも刑罪けいざいにもしよせらるべき處格別かくべつ御慈悲おじひを以打首うちくびつぎに七助事主人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もはや人道の大義を説くの必要なし、ただ一死以て諸氏に謝する而已のみと覚悟しつつ、兄に向かいてかばかりの大事にくみせしは全く妾の心得違いなりき、今こそ御諭おんさとしによりて悔悟かいごしたれ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
御手教珍敷めづらしく拝見仕候。御気色之事而已のみ案じゐ申候処、足はたたねど御気分はよく候由、先々安心仕候。円山へ御移之由、これは御安堵御事、御内室様もおさよも少々間を得られ可申と奉存候。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
穀物が第一膏而已のみに相成候趣に御座候、今より二ヶ月も相立候得ば必病氣をのぞき可申と、口を極めて申居候。此度は決而きつと全快仕可申候間御安心可成候。此度荒々あら/\病氣の所行なりゆきも申上置候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)