編輯へんしゅう)” の例文
これよりさき生田葵山書肆しょし大学館と相知る。主人岩崎氏を説いて文学雑誌『活文壇かつぶんだん』を発行せしめ、井上唖々と共に編輯へんしゅうのことをつかさどりぬ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
日本鳥学界で編輯へんしゅうした『狩猟鳥類方言』の中には、この類の方言の十数種が載せられてある。それを一々ここに引くのは無益だが
これはやはり開成中学にも教鞭きょうべんをとった天野という先生が編輯へんしゅうしていたが、その中に、幸田露伴先生の文章が載ったことがある。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
明治三十四年五月、東京麹町区こうじまちく飯田町いいだまち皇典こうてん講究所では神職の講習会があった。宮地翁はその時「神仙記伝」と云うものを編輯へんしゅうしていた。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
少年の筆らしくない該博の識見に驚嘆した読売の編輯へんしゅう局は必ずや世に聞ゆる知名の学者の覆面か、あるいは隠れたる篤学であろうと想像し
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
もし今後こんご中央公論ちゅうおうこうろん編輯へんしゅうたれかにゆずってひまときるとしたら、それらの追憶録ついおくろくかれると非常ひじょう面白おもしろいとおもっていました。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼に地位がないという点にほかならなかった。売れもしない雑誌の編輯へんしゅう、そんなものはきまった職業として彼女の眼に映るはずがなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この頃『大英百科全書』の第九版の編輯へんしゅうが進行していた。これにレーリーの「光学」と「光の波動論」が出ることになった。
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
一月いちげつ二十五日津軽承昭つぐてるは藩士の伝記を編輯へんしゅうせしめんがために、下沢保躬しもさわやすみをして渋江氏について抽斎の行状をさしめた。保は直ちに録呈した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
僕らが「言葉」という飜訳ほんやく雑誌、それから「青い馬」という同人雑誌をだすことになって、その編輯へんしゅうに用いた部屋は芥川龍之介あくたがわりゅうのすけの書斎であった。
青い絨毯 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そうかと云って商売物の雑誌の種を取りに来たにしては、編輯へんしゅうの人を同伴している様にも見えぬ。どうも、社長様が種取りをするはずはないのだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「だって、あの人たちが久しぶりだから御飯をおごると言ってくれるし、編輯へんしゅうの人たちにえば女はそう事務的にばかりも行かないものなのよ。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
更にそれを書き改めたりなぞして、明治の末の年から大正のはじめへかけ当時西村渚山しょざん君が編輯へんしゅうしている博文館の雑誌「中学世界」に毎月連載した。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
雑誌『解放』は、吉野博士を中心にして、帝大法科新人会の人たちが編輯へんしゅうをしていた、高級な思想文芸雑誌だった。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
更に私たちは細胞会議の決議として、「マスク」の編輯へんしゅうで、工場内のファシスト、社会ファシストのバクロを新しく執拗しつように取り上げてゆくことにきめた。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
潤三郎は編輯へんしゅう校正に当りましたが、その後も遺文は続々発見せられますので、それに遺族の思い出をも加えて一冊にしたのが『鴎外遺珠と思ひ出』です。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
古参の外交記者で、十年も警視庁のクラブの主にされて居る虎井満十が、編輯へんしゅう助手のテーブルの上へ、横合から薄禿げた頭を突き出してんなことを言うのです。
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
……右隣りへは一面のS文学士が坐った。左隣りには三面の編輯へんしゅうにいるAという早稲田わせだ出の新進作家がいた。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
床の間には重豪の編輯へんしゅうした「成形図説」の入った大きい木の函があったし、洋式鉄砲、香炉、掛物の万国地図。それから、棚には呼遠筒が、薄く光っていた。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
しかも編輯へんしゅうの都合で伸縮自在のうきめにあったもので、そのために一層ありのままで文飾などありません。
教師をしていた間けちけちとめていた貯金もすっかり心細くなってしまい、寺田は大学時代の旧師に泣きついて、史学雑誌の編輯へんしゅうの仕事を世話してもらった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
編輯へんしゅう主任たる私には一言の挨拶もなく、書留郵便にて、玉稿御返送敢行いたせし由、承知いたし、いまは、私と彼等二人の正義づらとの、面目問題でございます。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それでこの本は私の書いたものの幾つかを年代を追ってあつめたものだが、それは全く私の著作に詳しい浅川園絵さんの注意深い配慮によって編輯へんしゅうされたものである。
中山は彼より二つ年上で、ある週刊雑誌の編輯へんしゅうをしている。あまり有能ではないという話であった。若いときからの酒好きで、しらふのときでも鼻が真赤であった。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
私達は『太平洋』という日本の最初のグラフィックを編輯へんしゅうしていた。浜田君はその時学校を出たばかりで、ハイカラな新知識で、その週刊の経済面を担当していた。
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そして戦争中編輯へんしゅう局長たりし水谷君のためにも退社はよろしい。いずれいいところから礼を厚くして招聘があろう。しかし当分作家へ復帰してもらいたいと思っている。
海野十三敗戦日記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
六本木の古本屋で、大杉栄の獄中記と、正木不如丘まさきふじょきゅう編輯へんしゅうの四谷文学という古雑誌と、藤村の浅草だよりという感想集三冊を八十銭で求める。獄中記はもうぼろぼろなり。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
私が忘れられない追憶といったのは、そこで第二次「新思潮」の編輯へんしゅう会議をしたことである。
芝、麻布 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
頑張ってやっています。だんだん投書も少くなるし、内地の現代向の人に代えろと始終、編輯へんしゅう主任に攻撃されもしますが、なに、これだけは死ぬまで人にはやらせない積りです
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
中川と呼ばれしは二年ほど前に大学を卒業し今は或る文学雑誌の編輯へんしゅうに従事する人物。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この取り扱い方は、学而篇が単に孔子の智慧を伝えるためばかりでなく、孔子およびその弟子の智慧を、すなわち孔子学派の智慧を伝えるために編輯へんしゅうせられた、ということを示している。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
編輯へんしゅうの方について申せば、私の持論に、執筆者は勇をして自由自在に書くべし、他人の事を論じ他人の身を評するには、自分とその人と両々相対あいたいして直接に語られるような事に限りて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これは当時「苦楽」を編輯へんしゅうしていた川口松太郎君が執筆したものだった。
わが寄席青春録 (新字新仮名) / 正岡容(著)
今更贔屓分ひいきぶんでいうのではありません、——ちょッ、目力めか(助)編輯へんしゅうめ、女の徳だ、などと蔭で皆憤懣ふんまんはしたものの、私たちより、一歩ひとあしさきに文名をせた才媛さいえんです、その文金の高髷たかまげの時代から……
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この時代の珍重すべき武鑑は——もはや武鑑とはいわず『藩銘録はんめいろく』と題されているのだが、わたしの手もとにあるのは明治三年庚午こうご初春荒木氏編輯へんしゅう、御用書師和泉いずみ屋市兵衛、須原屋茂兵衛共同出版の
武鑑譜 (新字新仮名) / 服部之総(著)
「——××××の編輯へんしゅうをしていなさるのよ」
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
各郡ではまた郡制廃止の記念とし、やはり厖大ぼうだいな郡誌などを編輯へんしゅう公刊して、その序文にはいずれも郷土研究の抱負が掲げてある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「あなたは、神仙のあることをお信じになって、これを編輯へんしゅうなされておりますか、それとも、ただ面白い記録として編輯なされておりますか」
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
巴里の Bingビング は美麗なる月刊雑誌 Japon Artistique(『日本の美術』)を編輯へんしゅうしよく原画の趣を
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それがいつまでつづくかは、私の筆の都合つごうと、紙面の編輯へんしゅうの都合とできまるのだから、判然はっきりした見当は今つきかねる。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日本の文化界はだらしがなく、いまだに旧態依然として男の子が編輯へんしゅうの席の大半を占めているから、全然ダメである。
インチキ文学ボクメツ雑談 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「何だか青木君もいろいろなことをやってるようだね。普連土フレンド教会で出す雑誌の編輯へんしゅうなぞまでやってるようだね」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
間人連老の作だとする説は、題詞に「御歌」となくしてただ「歌」とあるがためだというのであるが、これは編輯へんしゅう当時既に「御」を脱していたのであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
闇から闇へと——イヤ編輯へんしゅう長のテーブルの上から紙屑籠の中へと——葬られて行く事件は、決して少くはありません
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
私は今工場に出ていないので、Sからその編輯へんしゅうを引き受けて、私の手元に伊藤、須山の報告を集め、それをもとにして原稿を書き、プリンターの方へ廻わした。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
雑誌の編輯へんしゅうに急がれて思うようにかけません。宿屋のランプの下で書いた日記の抄録に止めます。
日光小品 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
グレタ・ガルボ主演の「接吻せっぷん」というのを見たが、編輯へんしゅうのうまいと思うところが数箇所あった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
の一首に、これまでの武子夫人の歌に見られなかったような情熱を覚えると同時に、かなり感激した心持でこの新しい歌集『白孔雀』の編輯へんしゅうに従うことが出来たのであった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
今日の金港堂は強弩きょうどすえ魯縞ろこう穿うがあたわざる感があるが、当時は対抗するものがない大書肆だいしょしであった。その編輯へんしゅうに従事しその協議にあずかるものは皆錚々そうそうたる第一人者であった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
本書のいまだ整理せられざる切抜の一部と仮目次とをれたり。乱擾らんじょう尚全く平ぐに及ばず、剣戟けんげきの声鏘鏘そうそうたる九段坂上くだんさかうえの夜、公余に編輯へんしゅうを続行せし当時を思へば感慨未だ尽きず。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)