トップ
>
簾
>
みす
ふりがな文庫
“
簾
(
みす
)” の例文
『
愛宕
(
あたご
)
さんの
方
(
はう
)
がよろしいな。第一大けおますわ。』と、お光は横の方に
簾
(
みす
)
のかゝつた
局
(
つぼね
)
とでも呼びさうなところを見詰めてゐた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
私は
簾
(
みす
)
ごしに、だんだん
稍
(
しょ
)
げたようになって私の言葉を聞いていらっしゃる頭の君を見透しながら、更らにすげなく言い続けていた。……
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
一行が市村座へついたのは
巳刻
(
よつ
)
(午前十時)すぎで、茶屋からすぐ桟敷へ通ると、
簾
(
みす
)
をおろして
無礼講
(
ぶれいこう
)
の酒宴がはじまった。
顎十郎捕物帳:11 御代参の乗物
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
や、何とも云へぬ
名香
(
みやうがう
)
のかをり、身も心も消ゆるやうぢや。四方には華の
瓔珞
(
やうらく
)
、金銀、錦の
幡天蓋
(
はたてんがい
)
、
瑇瑁
(
たいまい
)
の障子、水晶の
簾
(
みす
)
。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
「新大納言の
卿
(
きみ
)
におわすか」兵の中から、一人の将が、
薙刀
(
なぎなた
)
の
柄
(
え
)
をもって、
簾
(
みす
)
を
刎
(
は
)
ねあげた。大納言は、おののいて、虚勢も張れなかった。部将は
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
なし已に其議も調のひければ急に
本堂
(
ほんだう
)
の
脇
(
わき
)
なる座敷に上段を
營
(
しつら
)
へ前に
簾
(
みす
)
を
下
(
おろ
)
し赤川大膳藤井左京の兩人は
繼上下
(
つぎかみしも
)
にて其前に
控
(
ひか
)
へ傍らに天忠
和尚
(
をしやう
)
紫の衣を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「末代までもない觀物ぢや。予もここで見物しよう。それ/\、
簾
(
みす
)
を揚げて、良秀に中の女を見せて遣さぬか。」
地獄変
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ある
夜
(
よ
)
月凄じく風冷やかなるに、この勾当の内侍半ば
簾
(
みす
)
を
捲
(
ま
)
きて琴を弾じ給ひけり、中将その艶声に心引かれて、覚えず禁庭の月に立ちさまよひ……」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
二人が水の
滴
(
た
)
りそうな、
光氏
(
みつうじ
)
と、
黄昏
(
たそがれ
)
と、玉なす
桔梗
(
ききょう
)
、黒髪の
女郎花
(
おみなえし
)
の、
簾
(
みす
)
で抱合う、
道行
(
みちゆき
)
姿の極彩色。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夜も
更
(
ふ
)
け行きて、
何時
(
いつ
)
しか
簾
(
みす
)
を漏れて青月の光凄く、澄み渡る風に落葉ひゞきて、主が心問ひたげなり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
今日の源氏が女の同乗者を持っていて、
簾
(
みす
)
さえ上げずに来ているのをねたましく思う人が多かった。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
柳川紬
(
やながわつむぎ
)
の
袷
(
あわせ
)
一枚、これも何うも柳川紬と云うと体裁が
宜
(
よ
)
いが、
洗張
(
あらいは
)
りをしたり
縫直
(
ぬいなお
)
したりした
黒繻子
(
くろじゅす
)
の半襟が掛けてあるが、化物屋敷の
簾
(
みす
)
のようにずた/\になって
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
スルスルと舞台正面の
簾
(
みす
)
が上がると、重ね座布団の上に坐って、にっこりする。
銭形平次捕物控:213 一と目千両
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
さればとて
香爐峯
(
かうろほう
)
の
雪
(
ゆき
)
に
簾
(
みす
)
をまくの
才女
(
さいぢよ
)
めきたる
行
(
おこな
)
ひはいさゝかも
無
(
な
)
く
深窓
(
しんそう
)
の
春
(
はる
)
深
(
ふか
)
くこもりて
針仕事
(
はりしごと
)
に
女性
(
によしやう
)
の
本分
(
ほんぶん
)
を
盡
(
つく
)
す
心懸
(
こゝろが
)
け
誠
(
まこと
)
に
殊勝
(
しゆしよう
)
なりき、
家
(
いへ
)
に
居
(
ゐ
)
て
孝順
(
かうじゆん
)
なるは
出
(
いで
)
て
必
(
かな
)
らず
貞節
(
ていせつ
)
なりとか
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
高座で
簾
(
みす
)
が上るとまず客席を見渡してにっと笑顔、大抵それで悩殺される。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
煤
(
すす
)
に赤黒き障子の、破れという破れにはことごとく眼の輝きが見えた。
蜘蛛
(
くも
)
の巣を
塵
(
ちり
)
で太らしたのが、
簾
(
みす
)
の如く張り渡された欄間の隙間にも、眼のひらめきが多数に見えた。壁の破れ穴、板戸の節穴。
壁の眼の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
ほととぎす鳴きぬ藤氏を語る夜に秀才なれば
簾
(
みす
)
まきあげよ
短歌
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
周囲は山ばかりだから、昼間だって人に見られる気づかいはなかったので、
簾
(
みす
)
などもすっかり巻き上げさせたぎりだった。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
扨
(
さて
)
も常樂院は
紺屋
(
こんや
)
五郎兵衞を初め四人の者共に威を示し
甘々
(
うま/\
)
と用金を出させんと先
本堂
(
ほんだう
)
の客殿に
請
(
しやう
)
じ
例
(
れい
)
の正面の
簾
(
みす
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「末代までもない観物ぢや。予もここで見物しよう。それ/\、
簾
(
みす
)
を揚げて、良秀に中の女を見せて遣さぬか。」
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
簾
(
みす
)
のうちに在る政子の目には、松明の赤々といぶる中に、無数の武士が列を正し、土民は地に坐って、自分を迎えている有様が、何か、涙なしに見ていられなかった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
源氏の車は
簾
(
みす
)
がおろされていた。今は
右衛門佐
(
うえもんのすけ
)
になっている昔の
小君
(
こぎみ
)
を近くへ呼んで
源氏物語:16 関屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
短き秋の日影もやゝ西に傾きて、風の音さへ澄み渡るはづき
半
(
なかば
)
の夕暮の空、前には閑庭を控へて左右は廻廊を
繞
(
めぐ
)
らし、青海の
簾
(
みす
)
長く垂れこめて、微月の銀鈎空しく懸れる一室は、小松殿が
居間
(
ゐま
)
なり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
スルスルと舞臺正面の
簾
(
みす
)
が上がると、重ね座布團の上に坐つて、につこりする。拵へは時々變りますが、その綺麗なことと言つたら、餘つ程氣を引締めて居ないと、眼先が
霞
(
かす
)
んでポーツとなりますよ。
銭形平次捕物控:213 一と目千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
せし天一樣は將軍樣の
若君樣
(
わかぎみさま
)
なりしか
然
(
され
)
ばこそ急に
簾
(
みす
)
の中へ入せられ御
住持樣
(
ぢうじさま
)
も
打
(
うち
)
て
替
(
かは
)
り御主人の樣に何事も
兩手
(
りやうて
)
を
突
(
つい
)
て
平伏
(
へいふく
)
なさると下男共は此等の事を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
轅
(
ながえ
)
をおさえながら、
簾
(
みす
)
をまき上げると、中から殿はお降りになられて、いきなり「綺麗だなあ」と
仰
(
おっし
)
ゃりながら、いまを盛りと咲いている紅梅を見上げ見上げ
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
などと言い、さらに
簾
(
みす
)
のほうへ寄って
源氏物語:36 柏木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
が、そうこうしているうちに、一人の品のいい青年が中庭からお這入りになっていらしって、目の
疎
(
あら
)
い
籬
(
まがき
)
の前にお立ち止まりになられたのが
簾
(
みす
)
ごしに認められた。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
女が
簾
(
みす
)
を深く下ろさせたまま、その前を遠慮がちに通り過ぎて往ってから、暫くして気がつくと、さっきの男車らしいものが跡から見え隠れしながら附いて来ていた。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
しかし今度は私は、
簾
(
みす
)
も下ろさずに、横なぐりの雨に打たれながら木々が苦しみもだえるような身ぶりをしているのを、ときどき顔をもたげては、こわごわじっと見入っていた。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そのとき急に大門の方に人どよめきがし出したので、巻き上げていた
簾
(
みす
)
を下ろさせて透して見ていると、木の間から灯がちらちらと見えてくる。やっぱりあの方は入らしったのだ。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
“簾(すだれ)”の解説
すだれ(簀垂れ、簾)は、竹や葦などを編んで部屋の仕切りあるいは日よけのために吊り下げて用いるもの。特に葦(ヨシ - アシの忌み言葉)を素材として編まれたものを「葦簀(葭簀、よしず)」という。
(出典:Wikipedia)
簾
漢検準1級
部首:⽵
19画
“簾”を含む語句
玉簾
簾中
珠簾
青簾
葦簾
垂簾
馬簾
御簾中
暖簾
御簾
簾越
葭簾張
下簾
簾戸
小簾
伊予簾
葦簾張
簾外
繩暖簾
蒲簾
...