種々いろん)” の例文
わたし児心こどもごゝろにも、アレ先生せんせいいやかほをしたなトおもつてつたのは、まだモすこ種々いろんなことをいひあつてからそれからあとことで。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その顔を、凝乎じっと見ると、種々いろんな苦労をするか、今朝はひどく面窶おもやつれがして、先刻洗って来た、昨夕ゆうべの白粉の痕が青く斑点ぶちになって見える。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
なアにさ、ここが観音くわんおん仲見世なかみせだ。梅「なにかゞございませう玩具店おもちやみせが。近「べた玩具店おもちやみせだ。梅「どれが……。近「あの種々いろんなものを玩具おもちやふのだ。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
正に此新潮にさをさして彼岸に達しようと焦慮あせつて居る人なので、彼自身は、其半生に種々いろんな黒い影を伴つて居る所から、殆ど町民に信じられて居ぬけれど
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
じったっていると手足がしびれて来てだんだん気が遠くなった。遂に何処にどうしているのやら分らなくなった。——種々いろんなものが見えた。種々な音が聞え始めた。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
許婚いいなづけの人も居たんだけれど、寄りつきもしなくなったわ。あなた許婚なんてこと嫌いだわね。私も嫌いよ。で、けっきょくその方がよかったわ。それから種々いろんな惨めな目を見て来たわ。
掠奪せられたる男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
種々いろんな奴が入り込むから、油断がなりませんな」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
けれどもそうして書箱に、そんな種々いろんな書籍があって、それを時々出して見ていれば、其処に生きがいもあれば、また目的あてもあるように思えた。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
串戯じょうだんではなくってよ。貴郎あなたが持って来て、あそこへ据えてから、玄関のかたなんぞも、この間中種々いろんな事を言ってるんですよ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは兎も角もまた茂之助さんが来て種々いろんな事をいうのをハイ/\と柳に受けてれば、また増長して手出しをする
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『胃の惡いのは喰ひ過ぎだ。朝から煙草許りんでゐて、怠屈まぎれに種々いろんな物を間食するから惡いんだよ。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
やはり雪がふったので水の上には雪が溜っていた。きっとこの池の周囲まわりに住んでいる狐か狸が大雪で、食物に困って種々いろん真似まねをやるのだろうと思って、その夜は寝た。
北の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう両親ふたおやのことなんかすっかり忘れてしまったの。許婚の男のことも、種々いろんな面白いことやらつらいことも。そして今は人の妾の身分だわ。けれどもそれもすぐに忘れてしまうわ、屹度。
掠奪せられたる男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
二度にいたりなどして受取っているのだが、分けても此の頃は種々いろんなことが心の面白くないことばかりで、それすら碌々に書いてもいない。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
まずいものを内服のませて、そしてお菓子を食べては悪いの、林檎を食べては不可いけないの、と種々いろんなことを云うんですもの。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『胃の悪いのは喰過ぎだ。あさツから煙草許りんでゐて、躰屈たいくつまぎれに種々いろんな物を間食するから悪いんだよ。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
三「いえうじゃア無いんですが、方々へ種々いろんな会がありますと、ビラなんぞをあつらえられてるんでげすが、御飯ごはんを召上るてえなら是非此処じゃア松源まつげんさんでげしょう」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はたから見ると私は年よりもずっとけてるでしょう。種々いろんな苦労をしたからよ。小さい時に母親を失ったのよ。そしてその後で父は失敗してしまったので、どうにもすることが出来なかったわ。
掠奪せられたる男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そればかりではなかった、私の児心こどもごころにも、アレ先生が嫌な顔をしたな、トこう思って取ったのは、まだモ少し種々いろんなことをいいあってから、それから後の事で。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真黒まつくろに煤びた屋根裏が見える、壁側に積重ねた布団には白い毛布がかかつて、それに並んだ箪笥の上に、枕時計やら鏡台やら、種々いろんな手廻りの物が整然きちんと列べられた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
成程あれは旦那のお気に入りましょうよ、旦那は種々いろんな真似をなすって諸方で食散くいちらかして居らっしゃるから、かえってあんなうぶなお嬢さん筋で無くちゃアいけますまい
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「舟の中で沢山種々いろんなものをいただきましたから。」
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
がんもどきッて、ほら、種々いろんなものが入った油揚あぶらあげがあらあ、銀杏ぎんなんだの、椎茸しいたけだの、あれだ、あの中へ、え、さかなを入れてぜッこにするてえことあ不可いけねえのかなあ。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一廻り廻って向うの横町に附いてくと、菓子屋だの蕎麦屋だの種々いろんなものがあるから、其の間を這入って、突当りが手水場だから、其の傍の井戸へ附いて左へ曲って
野村は力が抜けた様に墨を磨つて居たが、眼は凝然ぢつと竹山の筆の走るのを見た儘、種々いろんな事が胸の中に急がしく往来して居て、さらでだに不気味な顔が一層険悪になつて居た。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
がんもどきツて、ほら、種々いろんなものがはひつた油揚あぶらあげがあらあ、銀杏ぎんなんだの、椎茸しひたけだの、あれだ、あのなかへ、え、さかなれてぜツこにするてえことあ不可いけねえのかなあ。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
種々いろんな人に接触して居たし、随つて一寸普通なみの人には知れぬ種々な事が、目に見えたり、耳に入つたりする所から、「要するに釧路は慾の無い人と真面目な人の居ない所だ。」
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
種々いろんな方に出会でっくわしますな、花魁え、何うもすっかり御様子が変りましたから間違いたんでげすが、花魁ばかりは何うも只の花魁じゃアない、お姫さまの筋の花魁だっていってましたが
「ですから御飯になさいなね、種々いろんな事をいって、お握飯むすびこしらえろって言いかねやしないんだわ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
急造にはかづくりの新聞だから種々いろんな者が集まつたので、一月経つか経たぬに社内に紛擾さわぎが持上つた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
新「夢を見たのだよ、種々いろんな事で気を揉むからう云う夢を見るのだ、夢だよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ウアツハハ」と高く笑つて、薄く雪明ゆきあかりのした小路を、大跨に歩き去つた。——其後姿が目に浮ぶと、(此朝私の頭脳あたまは余程空想的になつて居たので、)種々いろんな事が考へられた。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
妙にお客あしらいで、私をばお大事のもののようにして、その癖ふざけるから、みんな種々いろんなこと云うんじゃアあるまいかね。立派に姉さんの顔をして、貢、はい、というようにして御覧。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから種々いろんな面倒が起るかも知れないから、何処までも他人で居て、子のようにしようと思うからの事だ……おゝ寒い、斯様こんな所で云合ったッて仕方がない、速く帰ってゆっくり相談をしよう
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
やつ少許すこし入口のを開けては、種々いろんな道具の整然きちんと列べられたへやの中を覗いたものだ。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
汐見橋しおみばしの上で見た者がある、前兆だなんて種々いろんなことを謂ったもんです。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
へえゝ……種々いろんものりますな、此間このあひだ山田やまださんのぼつちやんがつていらしつたのをわたしにぎつたら、玩具おもちやだとおつしやいましたが、成程なるほどさま/″\のものりますよ、此方こつち玩具おもちや……彼方あつち玩具おもちや
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
種々いろんな事が胸に持上がつて来る。渠はそれと戦つて居る。思出すまいと戦つて居る。幾何いくら圧しつけても持上がる。あれもこれも持上がる。終には幾十幾百幾千の事が皆一時に持上がる。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ちゃんの脛ばかりは咬っていねえ、是でもお客がえら有れば種々いろんな手伝をして、洗足すゝぎ持ってこ、草鞋わらじを脱がして、きたねえ物を手に受けて、湯うわかして脊中を流してやったり、みんなうちの為と思ってしているだ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)