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ふりがな文庫
“
稀代
(
きたい
)” の例文
田原町
(
たわらまち
)
の
経師屋
(
きょうじや
)
東作
(
とうさく
)
、四十年輩の気のきいた男ですが、これが描き菊石の東作といわれた、
稀代
(
きたい
)
の兇賊と知る者は滅多にありません。
銭形平次捕物控:075 巾着切りの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「あいつに馳け向っては無理もない。
稀代
(
きたい
)
な
刃
(
は
)
がね
鞭
(
むち
)
の使い手だ。だがさ、なんだッてまた、そんな無謀な深入りをしなすッたのか」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
林泉奥深うして水
碧
(
あお
)
く砂白きほとり、鳥
啼
(
な
)
き、魚
躍
(
おど
)
つて、念仏、念法、念僧するありさま、
真
(
まこと
)
に
末世
(
まっせ
)
の
奇特
(
きどく
)
、
稀代
(
きたい
)
の浄地とおぼえたり。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
……すべてこれ、信長公をたばかり、その甘心を買はうとの魂胆ぢや。さるにても、むざとその手に乗せられた信長公こそ
稀代
(
きたい
)
のうつけ者。
ハビアン説法
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
...
稀代
(
きたい
)
の
兇獣
(
きょうじゅう
)
でござる」「ほう、ではこれが土産にくださるという品か」「いかにも」「して御所望と云わるるのは?」
備前名弓伝
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
その代り木唄——さっきは木唄と云った。しかしこの時、彼らの揚げた声は、木唄と云わんよりはむしろ
浪花節
(
なにわぶし
)
で
咄喊
(
とっかん
)
するような
稀代
(
きたい
)
な調子であった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
もっとも私は
稀代
(
きたい
)
のオッチョコチョイであるから、当時流行の思潮の一つにそんなものが有ったのかも知れない。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
爲しをり
不※
(
ふと
)
阿蘭陀
(
おらんだ
)
の名醫より
傳習
(
でんじゆ
)
したりし
稀代
(
きたい
)
の
妙藥
(
めうやく
)
テレメンテーナと
稱物
(
いふもの
)
にて則ち
癲癇
(
てんかん
)
の
良劑
(
りやうざい
)
なり然れども今の
品
(
しな
)
耳
(
のみ
)
ならず
阿蘭陀
(
おらんだ
)
人より傳へられたる
奇藥
(
きやく
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
この春彦が明日にもあれ、
稀代
(
きたい
)
の
面
(
おもて
)
をつくり出して、天下一の名を取つても、お身は職人風情と
侮
(
あなづ
)
るか。
修禅寺物語
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「ふうん、貴様が例の闇太郎か! 大名、富豪の、どんな厳重な
緊
(
しま
)
りさえも
呪文
(
じゅもん
)
で出入りするかのように、自由に出没すると言う、
稀代
(
きたい
)
の賊と言うのは、貴様か?」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
勘「うるさいな、ナニ
稀代
(
きたい
)
だって、師匠は来てえるに
違
(
ちげ
)
えねえ、今連れて行くんじゃアねえか」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
おまえは、
稀代
(
きたい
)
の不信の人間、まさしく王の思う
壺
(
つぼ
)
だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身
萎
(
な
)
えて、もはや
芋虫
(
いもむし
)
ほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった。
走れメロス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「誠に誠に
稀代
(
きたい
)
の術、妖術の一種でござりまするかな?」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すりゃわたしたちに取っても
稀代
(
きたい
)
の見聞さ。
狐
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
という
稀代
(
きたい
)
な条件をつけて死んでしまった。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
「——
常人
(
つねびと
)
の配所へ流されるのは、悲しみかも知れぬが、頼朝のきょうの門立ちは、
稀代
(
きたい
)
な吉日と、
欣
(
よろこ
)
んでよいはずではないか」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
赤い振袖を着た
稀代
(
きたい
)
の美男が、復讐の快感にひたって、キラキラと眼を輝かす様は、言いようもなく
物凄
(
ものすさ
)
まじい
観物
(
みもの
)
です。
銭形平次捕物控:002 振袖源太
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
遂
(
つい
)
にチェーホフは芸術・科学・愛・霊感・理想・未来など、およそ人間の抱くかぎりの一切の希望を、
杖
(
つえ
)
の先の一触れで
忽然
(
こつぜん
)
と
枯
(
か
)
れ
凋
(
しぼ
)
ませる
稀代
(
きたい
)
の魔術師に仕立てられてしまう。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
佐藤、葛西、両氏に於いては、自由などというよりは、
稀代
(
きたい
)
のすねものとでも言ったほうが、よりよく自由という意味を言い得て妙なふうである。ダス・ゲマイネは、菊池寛である。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
近所の建具屋に談判して寝台
兼
(
けん
)
机として製造せしめたる
稀代
(
きたい
)
の品物である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
り
先
(
まづ
)
は
首尾
(
しゆび
)
よく行て來たゆゑ
必定
(
ひつぢやう
)
破談に成るだらうと咄してゐたは氣が付ねど常には
中
(
なか
)
の
惡
(
わる
)
き
兄弟
(
きやうだい
)
今日のみ一つ座敷に在て酒
汲交
(
くみかは
)
すは
稀代
(
きたい
)
なことと思つてゐたが咄しの樣子と
彼是
(
かれこれ
)
考
(
かんが
)
へ合すればいよ/\
渠奴
(
きやつ
)
に相違ない惡さも惡き
二個
(
ふたり
)
の者如何してくりようと
拳
(
こぶし
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「ところが御時勢の激しいおかげで、のんきな色恋小説が売れるんだから面白い、なにしろ『艶色恋の手車』がまた重版でげすからね、どっちにしたって面白くなけれあご看客は買わねえ、こないだ脱稿した『歌暦』なんぞは、初版が三千という
稀代
(
きたい
)
の部刷りだ」
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
どうか奴らを
懲
(
こ
)
らして、
稀代
(
きたい
)
な名馬
白獅子
(
しろじし
)
をお取り返しなすッて下さい。「——お願いの筋はそれなんで」と、金毛犬の
段
(
だん
)
は、百拝した。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次は十手を左に持ち替えながら
呶鳴
(
どな
)
りました。相手は
稀代
(
きたい
)
の忍術使いです。
銭形平次捕物控:096 忍術指南
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかも、今日の御法規には、申すもはばかられるが、何とも、人間共の前代にない、
稀代
(
きたい
)
な御無理もあるのではござるまいか。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今はほかへ心も急がれるが、彼は、この
稀代
(
きたい
)
な一少年を、忘れえない。亡き日野資朝の形見としても、このまま離せるものではないと思った。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかも、女
自雷也
(
じらいや
)
と名乗る
稀代
(
きたい
)
な女賊じゃ。南町奉行所のお手にかかって、近いうちには、獄門でお目にかかれましょうぞ。……サア瓦版瓦版。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とはいえ、西の
扈家荘
(
こかそう
)
の女将軍一
丈
(
じょう
)
青
(
せい
)
は、日月の双刀をよく使う
稀代
(
きたい
)
な女傑ですし、独龍岡そのものも、不落の城、充分お気をつけなさいまし。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
稀代
(
きたい
)
な景観に見えたのだろう。毎日、西へゆく軍馬の流れを見ぬ日はない。その馬糞が、鎌倉から都まで、一条につづいているとなす童心の空想は
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この若者は浜松の町で、
稀代
(
きたい
)
な
槍法
(
そうほう
)
をみせた
鎧売
(
よろいう
)
りの男で——いまは、この島に落ちぶれているが、もとは武家生まれの、
巽小文治
(
たつみこぶんじ
)
という者であった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おひかえなさい
轟
(
とどろき
)
、敵をあなどることはすでに
亡兆
(
ぼうちょう
)
でござるぞ。伊那丸は有名なる
信玄
(
しんげん
)
の孫、兵法に
精通
(
せいつう
)
、つきしたがう
傅人
(
もりびと
)
もみな
稀代
(
きたい
)
の勇士ときく。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何かしらないが、高麗村の御隠家様とかで、今度、
稀代
(
きたい
)
な
仮面
(
めん
)
をお手に入れなすッたそうで、お屋敷内の石神堂でその仮面納めの祭りをやるというわけ。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おまえも
鞍馬
(
くらま
)
の竹童というと、いかにも
稀代
(
きたい
)
な神童だが、こんなところは、やッぱり年だけのわからず屋だな、これ竹童、そちはクロを失ったかわりに
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たかのしれた小僧と思いきや、
稀代
(
きたい
)
な野槍の鋭さに、彼ひとりでさえタジタジでいた安蔵と梅市は半五郎にうしろを襲われて、もう一堪りもありません。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
通り越して、馬鹿じゃよ。
稀代
(
きたい
)
の馬鹿者じゃよ。——家康に泣きついては、家康の飾り物にされ、秀吉に抱き込まれると、秀吉のいい道具につかわれる……
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御意のとおり、家の宝としても
稀代
(
きたい
)
な名品、
羅馬
(
ローマ
)
の王家へ戻しやれば、多大の
報酬
(
ほうしゅう
)
のある品物でございます。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何しろ、捕えた男が、
稀代
(
きたい
)
な変物で、それに根気を
摺
(
す
)
り
減
(
へ
)
らしました。一体、
彼奴
(
きゃつ
)
は、ほんとの唖聾でございましょうか、それとも偽者でございましょうか」
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十一ヵ年、信長に抗戦した本願寺陣営には、実に、鈴木重行という
稀代
(
きたい
)
な謀将がひそんでいたのである。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「開山いらい、叡山百十六世、まだかつて、こんな
稀代
(
きたい
)
な座主は、この
御山
(
みやま
)
に見たことはない」と。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これは、どういう
由縁
(
ゆかり
)
から起った銘か、
瓶割
(
かめわり
)
の刀とよばれ、
稀代
(
きたい
)
な名刀と知っているので、死せる善鬼もかねがね、師匠が死んだら俺の物と、独り極めにしていたほどの刀だった。
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
前々代五代将軍の綱吉の
治下
(
ちか
)
に起っており、人間を畜生以下のものに規定した
稀代
(
きたい
)
な悪政治のもとに、お袖という悲命な運命児も生れ、お燕という陽なたを知らない宿命の花の
胚子
(
たね
)
もこぼされ
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幼少すでに彼は
稀代
(
きたい
)
な空想児だった。だが
生
(
お
)
い育つに従って、
荊棘
(
けいきょく
)
の現実は、空想の子を空想の中にのみ夢みさせておかなかった。現実は
艱難
(
かんなん
)
また艱難を与えて、彼に荊棘を切り
拓
(
ひら
)
く快味を教えた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「時に、わしは近頃、
稀代
(
きたい
)
な人を見たぞよ」
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まことに、
稀代
(
きたい
)
な眺めだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(
稀代
(
きたい
)
なる大魔王)
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
稀代
(
きたい
)
な足だ」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“稀代”の意味
《名詞》
稀代(きたい、きだい、「希代」に「同音の漢字による書きかえ」がなされる)
世にも稀なこと。
不思議なこと。
(出典:Wiktionary)
稀
漢検準1級
部首:⽲
12画
代
常用漢字
小3
部首:⼈
5画
“稀”で始まる語句
稀
稀有
稀薄
稀世
稀〻
稀々
稀覯
稀覯書
稀品
稀人