石見いわみ)” の例文
石見いわみ銀山のネズミ捕りという手があるが、あれは、そう簡単に死ねるものでないし、それほどの劇薬ならば、市販を許すはずもない。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
イロヌカ 米の砕けを石見いわみ邑智おうち郡の一部でイロヌカというのはユリヌカであった。またユリヌカといっている土地もこの地方には多い。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もと石見いわみ浜田の藩士で、初め荒木寛畝あらきかんぽに画を学ばれましたが、武芸を好まれて、宝蔵院流の鎗術そうじゅつの皆伝を受けられたそうです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
アチコチと逃げまわった揚句あげく石見いわみの山奥へ這入りまして、関西でも有名な山窩の親分になっておりました者だそうで……
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大手大門わきの矢倉にいた高畠石見いわみと奥村助右衛門のふたりは、あっ、と驚いた様子で、矢倉から飛んで降りた。そして内から門扉もんぴを押し開くと
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど長州藩からは密使を送って来て、若狭わかさ丹後たんごを経て石見いわみの国に出、長州に来ることを勧めてよこした時だ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
男は石見いわみ弥次右衛門という四国の武士であった。彼も喜兵衛とおなじように少年のころから好んで笛を吹いた。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
多胡辰敬は尼子あまこ氏の部将で、石見いわみ刺賀さっか岩山城を守っていた人であるが、その祖先の多胡重俊しげとしは、将軍義満よしみつに仕え、日本一のばくち打ちという評判を取った人であった。
ここで私たちは石見いわみの国に入り、漸次ぜんじ東へと道を取って山陰の品々を探ることに致しましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
この人狐のことを、あるいは狐持きつねもちとも申す。また、芸州げいしゅう辺りにてトウビョウというものがある。あるいはこれは蛇持ちともいう。石見いわみにては土瓶どがめとも申すということじゃ。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
伯耆ほうき印賀鉄いんがてつ、これを千草といって第一に推し、つぎに石見いわみの出羽鉄、これを刃に使い、南部のへい鉄、南蛮なんばん鉄などというものもあるが、ねばりが強いので主に地肌じはだにだけ用立てる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
伊予のの蕪及び絹皮ザボン、大阪のおこし、京都の八橋煎餅やつはしせんべい上州じょうしゅう干饂飩ほしうどん野州やしゅうねぎ三河みかわの魚煎餅、石見いわみあゆの卵、大阪の奈良漬、駿州すんしゅう蜜柑みかん、仙台のたいの粕漬、伊予の鯛の粕漬
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
彼女の父石見いわみからは、足を薙ぐは邪道の剣と、こういわれてたしなめられ、娘には恋を拒絶された。これが彼をして石見を殺し、織江を田沼の生贄いけにえにするべく、策を施した理由なのであった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
柿本人麿が石見いわみの国から妻に別れて上京する時詠んだものである。当時人麿は石見の国府(今の那賀なか下府上府しもこうかみこう)にいたもののようである。妻はその近くのつぬさと(今の都濃津つのつ附近)にいた。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ねずみとり薬を売る「石見いわみ銀山」は日中か夕方に通った。
服部石見いわみ
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
カナイゴという地名は中国地方には弘く分布している。石見いわみ那賀郡雲城村大字七条字若林谷には、金屋子と書いてカナイゴという小字もある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
石見いわみ地方でも、宮方が起って、黒木城に兵を集めたとかの風聞が高い。——要するにみな、尊氏東上のふうを聞き、その背後を突こうとするきざしだ。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今朝の味噌汁に、馬が五、六匹殺せる程の石見いわみ銀山が入って居ましたよ。お勝手をしたのは下女のお六と、あのお夏の二人だが、お六は飯をいたり香の物を
石見いわみ益田ますだには二つ心を引かれるものがある。一つは最も有名な雪舟せっしゅうの庭、一つは名もない粗陶器。誰も後者について語ったものはなかろう、ここで味方になって弁護しよう。
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
伊勢国(山田、松阪、津、一身田、四日市、桑名) 尾張国(名古屋、熱田、津島、大野、半田) 三河国(豊橋、岡崎、北大浜、西尾、蒲郡、豊川) 遠江とおとうみ国(掛川、浜松、平田、中泉) 駿河するが国(静岡、小川、清水、藤枝) 相模さがみ国(大磯) 武蔵国(忍) 上総かずさ国(千葉、茂原) 近江おうみ国(大津、豊蒲、五ヶ荘、愛知川、八幡、彦根、長浜) 美濃国(岐阜) 上野こうずけ国(安中、松井田、里見、高崎、八幡) 岩代いわしろ国(福島) 陸前国(築館、一迫) 陸中国(盛岡、花巻) 陸奥むつ国(弘前、黒石、板屋野木、鰺ヶ沢、木造、五所川原、青森、野辺地) 羽前うぜん国(米沢、山形、寒河江、天童、楯岡、新庄、鶴岡) 羽後うご国(酒田、松嶺、湯沢、十文字、横手、沼館、六郷、大曲、秋田、土崎、五十目、能代、鷹巣、大館、扇田) 越後国(新井、高田、直江津、岡田、安塚、坂井、代石、梶、新潟、沼垂、葛塚、新発田、亀田、新津、田上、加茂、白根、三条、見附、浦村、片貝、千手、六日町、塩沢、小出、小千谷、長岡、大面、寺泊、地蔵堂、新町、加納、野田、柏崎) 丹波国(亀岡、福知山) 丹後国(舞鶴、宮津、峰山) 但馬たじま国(出石、豊岡) 因幡いなば国(鳥取) 伯耆国(長瀬、倉吉、米子) 出雲国(松江、平田、今市、杵築) 石見いわみ国(波根、太田、大森、大国、宅野、大河内、温泉津、郷田、浜田、益田、津和野) 播磨はりま国(龍野) 備前びぜん国(閑谷) 備後びんご国(尾道) 安芸国(広島、呉) 周防すおう国(山口、西岐波、宮市、徳山、花岡、下松、室積、岩国) 長門ながと国(馬関、豊浦、田辺、吉田、王喜、生田、舟木、厚東、萩、秋吉、太田、正明市、黄波戸、人丸峠、川尻、川棚) 紀伊国(高野山、和歌山) 淡路国(市村、須本、志筑) 阿波国(徳島、川島、脇町、池田、撫養) 讃岐さぬき国(丸亀、高松、長尾) 伊予国(松山、宇和島、今治) 土佐国(高知、国分寺、安芸、田野、山田、須崎) 筑前国(福岡、若松) 筑後国(久留米、吉井) 豊前ぶぜん国(小倉、中津、椎田) 豊後ぶんご国(日田) 肥前ひぜん国(長崎、佐賀) 肥後ひご国(熊本) 渡島おしま国(函館、森) 後志しりべし国(江差、寿都、歌棄、磯谷、岩内、余市、古平、美国、小樽、手宮) 石狩国(札幌、岩見沢) 天塩てしお国(増毛) 胆振いぶり国(室蘭)
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
石見いわみ三瓶さんべ山の裾野の産がよく知られている(郷土研究一巻三号)。郡によってはコーカ茶といい、またカーカ茶ともいう。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
石見いわみ長門ながと播磨はりま美作みまさか、備前、備中にまでわたる諸州の武士の名であった。それがみなお味方を誓って来ていた。中には児島高徳らの名もみえた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、そうまでいわれては仕方がない。実は、棟梁佐太郎が死んだのは、あれは砒石ひせき中毒かも知れない——石見いわみ銀山鼠捕りでも呑まされたのだろうと一度は思ったが」
今年になってからは豊後ぶんご、日向を調査し、帰って四国に旅立ち、信州に行き、また最近には周防すおう、長門を経て石見いわみに入りました。丹波たんばを訪うたのはわずか旬日前のことです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
なおヒヨ・ヒョウという地名の盛んに分布するのは、山陰では石見いわみ隠岐おき、南海では淡路・伊予・土佐である。日代・日余等の字を宛てている。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
自分は因幡いなば伯耆ほうき出雲いずも石見いわみの兵をひきい、行く行く丹波、但馬たじまの兵も合して、一挙、京畿けいきに進み、本願寺と呼応して直ちに、信長の本拠安土をこう
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「有難うございました、良いことを伺いました。ところでもう一つ、今朝の味噌汁には石見いわみ銀山鼠捕りが入って居たと聴きましたが、中毒したものの様子はどうでございました」
津和野に入ると石見いわみに入ったという想いがする。なぜなら緑の山や森の背景に赤瓦あかがわらが急に輝き出すからである。それは自然をかえ建築をかえる。こればかりは他の国々では見られない。
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
この日を作始めという例は信濃しなのにも石見いわみにもある。丹後たんご因幡いなばで春亥の子というのも、この二月始めの亥の日であって、共に田畠に出て耕作のまねをした。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
安芸にいるともいわれ、石見いわみに隠れたままだともいわれたが、ついにその生涯も分明せずに終っている。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとなんと恐ろしいじゃございませんか、石見いわみ銀山鼠捕りが、ほんの少し、うっかり水を呑んだくらいでは気が付かないほど入っていたのでございます。玄庵さんは申しました。
山陰道さんいんどう丹波たんば丹後たんご但馬たじま因幡いなば伯耆ほうき出雲いずも石見いわみの七ヵ国でこれに隠岐おきの島が加わります。県は主として鳥取県と島根県とでありますが、東寄りの国々は京都府や兵庫県の一部を占めます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
西部播磨には芝と書いたものが多く、長門・石見いわみ辺には高下というものの方が多い。上の六種の異例の中では、注意すべきは峡下の字をこじつけたものである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そうか。よかったよかった。それ聞いて、いささか安堵あんど。——助右、石見いわみ。わしの馬を曳いて来い」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石見いわみ吉賀よしが注連川しめがわという村では、その成長する大石を牛王石ごおういしといっております。これは昔四国を旅行した者が、ふところに入れて持って帰った石だと申しています。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
六月に入ってもまだ一ト粒の雨すらみせぬひでりの空は、乾き切った山野の人畜とは没交渉なもののように、この数日も、照りつづいており、石川、石見いわみ川、東条川、水分みくまり
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう師泰もろやす石見いわみへ出陣していた。つづいて尊氏も師直と共に自身中国へ下向げこうしていたのである。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
備前の児島こじま郡でも同じ草をチンチングサ、石見いわみ鹿足かのあし郡ではカンカン草ともいっている。
山名の本拠は但馬たじまである。——さきに石見いわみに落ちていた足利直冬ただふゆとむすび、伯耆ほうき、出雲の兵をあつめて、それはたちまち、京都をおびやかす一団の疾風雲はやてぐもになり出していた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
島根県の西部海上、石見いわみ高島の鼠の話が、本居もとおり先生の『玉勝間たまかつま』巻七に出ている。この島鼠多く、人をも害することあり、或年あるとし浜田より人をつかわし駆除せしめらるるもこうしとある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それ以前の家の業はいわゆる鉱山師やましで、石見いわみ銀山の採掘さいくつをもっぱらにしていたものだが、同じ富を掘るものなら海外の無限な天地に求めるべきだと、貿易へ転業したのである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石見いわみの牛尾三千夫君なども早くからこれに注意しているから、同君と話し合いをした上でないと、うかとした断定も下しにくいが、こういう上代にはなかったらしい名が新たに生まれるのは
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこはもう石見いわみ沿岸寄りの近くで、名も知れぬ島嶼とうしょのかげに隠れこんだ相手の大小の船をみると、その帆ばしらやみよしには、樺色地かばいろじに白く“唐梅紋からうめもん”を抜いた海賊旗をかかげている。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石見いわみ美濃郡小野村大字戸田字小野谷小字秈田とうぼうしだ
の旗上げをふれ、土佐や長門へ打って出ていたし、また石見いわみノ国高津港の海賊、高津道性たかつどうせいも海陸軍ふた手にわかれて、中国探題の長門の庁——北条時直の居館を水陸から攻めていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
イタンドリ 石見いわみ那賀なか
赤尾新兵衛、浅井石見いわみ、そのほかの側臣や一族も、彼と前後して、敵へ当った。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)