短銃ピストル)” の例文
智恵子は短銃ピストルを突き付けられて、驚いて飛上りました。油断を見すまして取上げようとしたのが、見事にしくじってしまったのです。
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
若奥様が片膝ついて、その燃ゆる火の袖に、キラリと光る短銃ピストルを構えると、先生は、両方の膝に手を垂れて、目をつむって立ちました。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼等はいずれも防弾衣ぼうだんいをつけ、鉄冑てつかぶとをいただき、手には短銃ピストル短剣たんけん、或いは軽機関銃けいきかんじゅうを持ち、物々しい武装に身をととのえていました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
して、短銃ピストルをかたく掴んでおりますぞ。逆上している相手ですからあなどると怪我人けがにんを生じるでしょう。まあ、もう少し見ていてくれい
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友達はそれをしちに入れて一時をしのいだ。都合がついて、質を受出うけだしてかへしにた時は、肝心の短銃ピストルの主はもう死ぬ気がなくなつて居た。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
違うのは、パッと睡眼をさますと共に、白雲は枕許の太刀たちを引寄せたけれども、駒井は蒲団ふとんの下の短銃ピストルへ右の手が触っただけのことでした。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ただお金を出すのはいやだ。その短銃ピストルを売ってくれるなら千円で買おう。お前は私からお金さえ貰えばそんなピストルは要らないだろう」
お金とピストル (新字新仮名) / 夢野久作香倶土三鳥(著)
それ等は四つの主要部分に分類することが出来た——食いたい時の用意として鮭の鑵詰かんづめ、まさかの場合の用意として装填された何挺かの短銃ピストル
電光一閃氏が頭上に加はりしも早速の働き、短銃ピストルを連発せしにより。曲者はその目的を達し得ずたちまちに踪跡をくらましたり。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
と一人の婦人が短銃ピストルを取り出す。キツチナー将軍が武器を取上げるのは私の職務だといふと、今一人の婦人が十八世紀式の短銃ピストルを掴み出して
貴方さまが根岸でパチンとおやんなすった短銃ピストルはあるでしょうねえ、それをわっちにかしておくんなせえまし、今度は私がパチンとやって遣るんだ
短銃ピストルの台尻で彼に一撃を喰わせ、次いで支配人に迫ったが、倒れた筈の岩見がうめき声を挙げたので、遂に曲者は目的を果さずに逃げたのであった。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
その足跡は海岸の背後うしろの大森林まで続いている。岸辺を見ると繋ぎ止められたボートが水に浮かんでいて舟の中には元通り短銃ピストルや万年筆が置いてある。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
事務所の壁には空弾を込めた大型の短銃ピストルが三つばかり何時でも用意してあつたが、事務員の僕と、タイピストのミツキイは、狐や鼬に備へるためではなく
「お父様! お願ひでございます。うぞ、内済にして下さいませ! わたくしが、短銃ピストルで打たれましたなどは、外聞が悪うございますわ。どうぞ! どうぞ!」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
相当経験があるらしく、小銃しょうじゅう短銃ピストルも高価なものをもち、乗馬と二十頭の猟犬りょうけんを連れていた。それで『明日あしたにもロボの首を取ってきてとこの間のかざりり物にする』
おれの短銃ピストル匕首あいくちも持って行ってくれ。おれの武器はそれでたくさんだ。おまえも同じように武装して行け。
今から三年前、下院の廊下において、メルジイ代議士は、何等の遺言もなく、かつまた何等の説明と認められるべきものをも残さず、突然疑問の短銃ピストル自殺をしてしまった。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
まごまごしているうちに、おれは棍棒でしたたか頸筋をどやされた。瞬間、もう駄目だと観念おもったね。何しろ突然なので、君等を呼ぶどころか、衣嚢かくしから短銃ピストルを抜くひまもなかったんだ。
自分はただちに現場において主人のため短銃ピストルにて射殺さるるの惨劇が突発した。
黄昏の告白 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
男はだまって短銃ピストルを懐へしまった。眼が暗がりに馴れてくるにつれて、私は、この男は昼間象や猿にビスケットをやっていた男であることを思い出した。そして一種の親しみを感じてきた。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
そう低い声でいうと、いつの間にか右手には、鈍く光る短銃ピストルが握られていた。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
亜米利加の古つわものバニスタアが、コルトの自動短銃ピストルと懐中電燈を抱いて、三階十四号の寝台に狸寝入りをしている時——音もなく壁の一部が滑って、そっと、黒い人数を吐き出している。
ロウモン街の自殺ホテル (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
どの国もどの国も陸海軍を拡げ、税関の隔てあり、兄弟どころか敵味方、右で握手して左でポケットの短銃ピストルを握る時代である。窮屈と思い馬鹿らしいと思ったら実に片時もたまらぬ時ではないか。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
あかりを消して裸に成つて寝たりしたのは一寸ちよつと凄い気持を与へたが、盗人ぬすびとが忍んで来て犬に吠えられ短銃ピストルを乱発して防ぎながらつひかみ殺されて仕舞しまふのは、其れが見せ場であるだけ俗悪ぞくあくな結果であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そのときどこかで短銃ピストルが鳴った。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
短銃ピストルを握りカクテル見詰めたり
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
発止はつし、余は短銃ピストル高く
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
糸子は「踊る美人像」の前に立って、短銃ピストルをその右手に持たせましたが、踊りの姿勢になって居る手になかなか短銃ピストルは止まって居ません。
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
幾度か水火の中に出入して、場数巧者の探偵吏、三日月と名に負う倉瀬泰助なれば、何とてもろくも得三の短銃ピストルたおるべき。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あなたの書いたもののうちには、人が気狂きちがいになる所があります。人が短刀で自殺する所も、短銃ピストルで死ぬ所もあります。
木下杢太郎『唐草表紙』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
放送局裏に、不可解ふかかいの部隊が集結しているぞ。突入とつにゅう誰何すいかしろ。友軍だったら、短銃ピストルを二発射て。怪しい奴だったら、三発うて。避難民だったら、四発だ。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「お父様! お願いでございます。うぞ、内済にして下さいませ! わたくしが、短銃ピストルで打たれましたなどは、外聞が悪うございますわ。どうぞ! どうぞ!」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
今の短銃ピストルの音に、墓場のあいだに、チイハの夢占ゆめうらをむさぼっていた人間たちは、びっくりして飛び起きた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『ありゃ、レオナールです……短銃ピストルを握っていたんで……死ぬ前に一発撃ったんです……』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
すべて将軍家とか、大家たいけの檀那方とかいふものは、出入の者が白い徳利を持つてゐようと、短銃ピストルを持つてゐようと、成るべく見て見ぬ振をしなければならぬ。もしかとがだてをして
私はすぐにかの手紙をよみ始めると、Fはわたしが命令した通りの武器を入れて来た小さい箱をあけて、短銃ピストル匕首あいくちを取り出して、わたしの寝台の頭のほうに近いテーブルの上に置いた。
潮飛沫しおしぶきに濡れたのはそのまま海に投込んだ。空砲も打った。短銃ピストルも放った。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ごろん、と音がすると短銃ピストルが落ちた。畔柳博士はすくい取るように拾った。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
うしろをふり向くと二間ばかりはなれたところに、一人の男が中腰になって、私の胸のあたりへ短銃ピストル銃口つつぐちを向けている。顔はよくわからぬが、どこかで見たことのある人のようにも思われる。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
智恵子は同じ長椅子に腰を下して、そっと糸子の短銃ピストルの手の上へ自分の手を持って行きました。油断を見て、取り上げようと思ったのでしょう。
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そのうちでも音松君が洞穴の中からおどり出す大蛸おおだこと戦った記事を大変面白がって、同じ科の学生に、君、蛸の大頭を目がけて短銃ピストルをポンポン打つんだが
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんだ。強盜がうたうだ、情人いろだ。」とひさま、ドンとけて、はひつて、短銃ピストル差向さしむけて、一目ひとめるや、あ、とさけんで、若旦那わかだんなおもはず退すさつた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夫人は短銃ピストルを握り直したが、僕はなにも持っていなかった。武器を持つのは、いよいよ最後のときに限る。軽率けいそつに武器をとり出すことは、できるだけ避けたい。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ふたりがいいつのっているところへ、ドアを押して、ひらりッと、はいって来た者があった。ポケットの口にハーモニカを短銃ピストルのようにのぞかせているトム公だった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はまだ短銃ピストルを握つたまゝ、突つ立つてゐた。直也の父も、木下も、此の犯人の手から、短銃ピストルを奪ひ取ることさへ忘れて居た。殊に、子爵の顔は子のそれよりも、血の気がなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
短銃ピストルは弾一つで人一人しか殺さないが、騒々しい音曲は近所隣りの良民をすつかり狂人きちがひのやうにしてしまふ。実際自分などは下手な謡曲うたひを聴かされると気が荒くなつて直ぐに決闘でも申込みたくなる。
短銃ピストルくうを撃った。警官の弾丸たまに撃たれて入口へ倒れ込んだ。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
『だが先刻さっき短銃ピストルの音は?』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
赤毛の西洋人の膝の上に持ったハンケチの下には、紛れも無い短銃ピストル——黒磨きの物凄い自働ピストル——がちらりと電灯の光を受けて見えたのです。
天才兄妹 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)