しれ)” の例文
改められけるに死人しにんの宿所は幸手宿と云ふ事しれければ早速さつそく其所へ人を遣はし尋ねられける所三五郎としれしにより三五郎の女房を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
初め刑部けいぶに至るまで丸ッきり手掛が無い様に思って居るけれど未だ目がきかぬと云う者だ己は一ツ非常な証拠者しょうこものを見出して人しれず取ておいた(大)エ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
老叟らうそうしづかに石をでゝ、『我家うちの石がひさし行方ゆきがたしれずに居たが先づ/\此處こゝにあつたので安堵あんどしました、それではいたゞいてかへることにいたしましよう。』
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何程どれほど一人で心を痛めたかしれないワ——貴嬢の阿父おとつさんは篠田さんを敵の如く憎んで居らつしやるんですとねエ——まア、うしたらいんでせう——梅子さん
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
危なく声を立てようとして、待てしばし、万一ひょっと敵だったら、其の時は如何どうする? この苦しみに輪を掛けた新聞で読んでさえかみ弥竪よだちそうな目におうもしれぬ。
あかく充血した眼で客の方を見て、「娘の親というものが気に入りません……これは、まあ、私の邪推かもしれませんが、どうも親が背後うしろに居て、娘の指図さしずをするらしい……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
然し詩は総ての芸術中最も純粋な者だといふ事は、蒸溜水は水の中で最も純粋な者だと言ふと同じく、性質の説明にはなるかもしれぬが、価値かちよく必要の有無の標準にはならない。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あのお捨坊ステばうを半年学校へやつて御覧、それこそあのためにどの位結搆けつこうなことだつたかしれませんよ、第一読書のことも少しは覚えられる、またいろ/\身のためになる結搆けつこうなお話しもきける
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
ああ余は死の学理をしれり、また心霊上その価値をさとれり、しかれどもその深さ、痛さ、かなしさ、くるしさはその寒冷なる手が余の愛するものの身にきたり、余の連夜熱血をそそぎて捧げし祈祷をもかえりみず
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ところで犯人も到底とうていしれずにはいまいと考え、ほとぼりのさめた頃京都市を脱出ぬけだして、大津おおつまで来た時何か変な事があったが、それをこらえて土山宿つちやまじゅくまでようや落延おちのび、同所の大野家おおのやと云う旅宿屋やどやへ泊ると
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
御通じくださるべしとお頼み申せしが今にしれず餘り雲をつかやうなる御頼み事なりとて呵々から/\と笑ふを忠八は倩々つら/\聞て何やら其樣子は友次郎御夫婦にて其上印籠を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
雲飛は所謂いはゆ掌中しやうちゆうたまうばはれ殆どなうとまでした、諸所しよ/\に人をしてさがさしたが踪跡ゆきがたまるしれない、其中二三年ち或日途中とちゆうでふと盆石ぼんせきを賣て居る者に出遇であつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
随分生皮いきがわはがれよう、を負うたあし火炙ひあぶりにもされよう……それしきはまだな事、こういう事にかけては頗る思付の渠奴等きゃつらの事、如何どんな事をするかしれたものでない。
音羽町へやりたりしが此時すでに家主は殺され父子おやこ行衞ゆくゑしれぬとて長家はかなへわくが如く混雜こんざつなせば詮方せんかたなく立返へりつゝ云々と三個みたりに告て諸共もろともにお光の安否あんぴ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一体何者だろう? 俺のように年寄としとった母親があろうもしれぬが、さぞ夕暮ごとにいぶせき埴生はにゅう小舎こやの戸口にたたずみ、はるかの空をながめては、命の綱の掙人かせぎにんは戻らぬか、いとし我子の姿は見えぬかと