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くろうと
ふりがな文庫
“
玄人
(
くろうと
)” の例文
右頸筋に、下から突き上げた傷は、ささくれた肉を盛り上げて、ほとんど長方形に見えるのは恐ろしいうちにも
玄人
(
くろうと
)
の眼をひきます。
銭形平次捕物控:069 金の鯉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
(なるほど孔子は音楽の理論には長じているだろう。しかし、実際楽器を握っての技術にかけては、何といっても自分の方が
玄人
(
くろうと
)
だ。)
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
なるほど、商売人は料理の
玄人
(
くろうと
)
である。しかし、玄人はいろいろの条件において料理をする。第一に値段を考えて料理をするであろう。
味覚馬鹿
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「いや、本気です。現代の婦人美は、
玄人
(
くろうと
)
からすっかり
素人
(
しろうと
)
に移りましたね。今の十七八歳から
二十歳
(
はたち
)
までのお嬢さんの美しさは……」
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
比較的に見るとき、レディにはそのナイーヴさ、素純さ、処女性の新鮮さにおいて、
玄人
(
くろうと
)
にはとうてい見出されない肌ざわりがあるのだ。
学生と生活:――恋愛――
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
▼ もっと見る
こんな単純な金庫など、その道の
玄人
(
くろうと
)
は、鍵がなくても、文字盤の組合せを知らなくても、何の造作もなく開くことができます。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
女がなかなかのあだものであるだけに、またその道の
玄人
(
くろうと
)
だけにあぶないものだ——先方があぶないのではない、こちらがあぶないのだ。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
葭町
(
よしちょう
)
の「つぼ半」という待合の
女将
(
おかみ
)
で、名前は福田きぬ、年は三十そこそこの、どう見たって
玄人
(
くろうと
)
あがりのシャンとした中年増なんです……
あやつり裁判
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
四人とも骨牌では
玄人
(
くろうと
)
の方であったし、その秘密を明かしてくれれば叔父や父ばかりでなく、僕にだってまんざら悪いことではないのだが
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
作る次第を見ていると、
玄人
(
くろうと
)
の技となって始めて充分な細工になることが分る。これも並々ならぬ修業の仕事である。かけだしでは出来ない。
樺細工の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
当時京橋西紺屋町に住んで
玄人
(
くろうと
)
専門の稽古、色の白い上品な白髪の老師匠、稽古は相当やかましく、お弟子は大抵へとへとになって引き下る。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
今それをアニリン
染料
(
せんりょう
)
の紫に
比
(
くら
)
ぶれば、
地色
(
じいろ
)
が
派手
(
はで
)
でないから、
玄人
(
くろうと
)
が見れば
凝
(
こ
)
っているが、
素人
(
しろうと
)
の前では損をするわけだ。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
「その道の
玄人
(
くろうと
)
が
多勢
(
おおぜい
)
かかって
判
(
わか
)
らんことがお前などに判ってたまるもんか。まあ危ない仕事には手を出さん方がいいね」
少年探偵呉田博士と与一
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
上手な
玄人
(
くろうと
)
となると実にふわりと軽くあてがった弓を通じてあたかも楽器の中からやすやすと美しい音の流れをぬき出しているかのように見える。
「手首」の問題
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
番組を
白眼
(
にら
)
んで賭け馬の選択にかかろう——と言ったって、ナオミ・グラハム夫人は兄が
賭人
(
ブッキイ
)
をしているのでいろいろ
玄人
(
くろうと
)
の
予想
(
テップ
)
が貰えるけれど
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
お前さん達
玄人
(
くろうと
)
は、肉からはいって精神へ抜ける。そこで初めて救われる。そいつの手助けをするものが、恋しい懐しいという『恋心』だからな。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
仲麿は作歌の
素人
(
しろうと
)
なために、この差別があるともおもうが、抒情詩の根本問題は、
素人
(
しろうと
)
玄人
(
くろうと
)
などの問題などではない。よって此歌を選んで置いた。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
武蔵は、その彫りに向って、技巧を心得ている
玄人
(
くろうと
)
ではない。また、賢い逃げ道や、上手らしい小刀の
痕
(
あと
)
をつけて
誤魔化
(
ごまか
)
してゆく方法を知らない。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
常に春琴を弟子に持っていることを
誇
(
ほこ
)
りとして人に
吹聴
(
ふいちょう
)
し
玄人
(
くろうと
)
筋の門弟たちが大勢集まっている所でお前達は鵙屋のこいさんの芸を手本とせよ〔注
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「では、雷には
玄人
(
くろうと
)
の旦那には、雷が手玉に取れるとでも云うのですかネ。そんなことがあれば、仕事の上に大助かりだね。教えて貰いたいものだ」
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
踊の
玄人
(
くろうと
)
にしろその心の
鄙
(
いや
)
しさをその巧妙な手振りでは
蔽
(
おお
)
いかくせぬものがあろう。だから、これは教養だ、人だ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
玄人
(
くろうと
)
らしく
馴
(
な
)
れた調子で経文の説明を聞かせたりするのは反感が起こることでもあって、昼間は公務のために暇がない薫のような人は、静かな
宵
(
よい
)
などに
源氏物語:47 橋姫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
主人
玄人
(
くろうと
)
はまあ
素人
(
しろうと
)
より芸術のことを考へさうだね。しかしそれも考へて見れば、実は五十歩百歩なんだらう。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私はこれを願いとし、これを初心としたいと思っているので、いつも不断に初心に
還
(
かえ
)
ることを努めるのである。古寺巡礼の
玄人
(
くろうと
)
にはなりたくないものだ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
要塞地
(
ようさいち
)
の様子も
玄人
(
くろうと
)
以上ださ。それを集めにかかってみた。思うようには行かんが、食うだけの金は余るほど出る
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
殊
(
こと
)
に
玄人
(
くろうと
)
になると
雀
(
すずめ
)
や
頬白
(
ほおじろ
)
を撃つて
徒
(
いたずら
)
に猟の多いことを誇るやうなことはせぬやうになり、
自
(
おのずか
)
らその間に道の存する所の見えるのも喜ぶべき一カ条である。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
事変が起ったとき文学の
玄人
(
くろうと
)
は、玄人界の打開という面からのもさくとして、ルポルタージュを見直しましたが、今やその段階はもっと進んだと思います。
獄中への手紙:08 一九四一年(昭和十六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それよりも、そのまま地上にいるのを撃つ、つまり
玄人
(
くろうと
)
の猟師のいわゆる「人殺し」をやったほうがいい。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それが此の時代に於いては動かすべからざる
格言
(
モットー
)
として
何人
(
なんぴと
)
にも信ぜられていた。劇場内部のいわゆる
玄人
(
くろうと
)
は勿論のこと、外部の素人もみんなそう信じていた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「まあ、知れるまで知らないことにしようよ。あいつに
玄人
(
くろうと
)
のやることはめったに
判
(
わか
)
りゃしないから。」
売春婦リゼット
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「祝儀? 貰っても
宜
(
い
)
いね。
玄人
(
くろうと
)
を呼べば、三十円包むところだ。特別をもって、二十円に負けてやる」
冠婚葬祭博士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
この時代の一流の
玄人
(
くろうと
)
作家はみな、同じような社会的不遇の中で、歌だけに心を傾けていたのであった。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
而已
(
のみ
)
ならず、乙姫様が囲われたか、
玄人
(
くろうと
)
でなし、
堅気
(
かたぎ
)
でなし、粋で
自堕落
(
じだらく
)
の風のない、品がいいのに、
媚
(
なまめ
)
かしく、澄ましたようで
優容
(
おとなし
)
やか、お
侠
(
きゃん
)
に見えて懐かしい。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その中に彼女は惡魔の憎惡の調子やまつたくひどい言葉に私の名前を混へ時折叫ぶのです——どんな
玄人
(
くろうと
)
の淫賣婦だつて、あの女以上の汚い言葉を使ひはしないでせう。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
またその作品をまじめな
玄人
(
くろうと
)
にも興味深いものとするような、なにかある神経的な効果である。
ルイスヒェン
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
玄人
(
くろうと
)
から見れば
素人
(
しろうと
)
は不粋である。自分に近接している「
町風
(
まちふう
)
」は「いき」として許されるが、自分から疎隔している「屋敷風」は不意気である。うぶな恋も野暮である。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
そんなら、又他の小説家や、彼の會社の連中などが夢中になる程、
玄人
(
くろうと
)
の特徴も頂けなかつた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
たまに
玄人
(
くろうと
)
の女に接することがあっても、後の感銘は実に索漠たるものだった。殊に家庭に於てはそれが甚しかった。そのために私の家庭には、冷かな風が流れ込んできた。
或る男の手記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
けれども
玄人
(
くろうと
)
は、大きな字で地図の端から端までひろがっているような名を選ぶのだ。
盗まれた手紙
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
玄人
(
くろうと
)
でいた頃、あの二人が張り合っていたそうでござりましてな、売ったお武家さまは、腰本治右衛門とかおっしゃるお歴々、売られたお方は湯島とやらの町絵師とかききました。
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
即ち
玄人
(
くろうと
)
と素人、芸術と批評、実際と理想……と、そうした裏と表の両面から
篩
(
ふるい
)
にかけて選み出されたものはキット内容の充実した……舞台表現として成功した曲にきまっている。
能とは何か
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
これら本職のやり方を見ていて、僕は
素人
(
しろうと
)
と
玄人
(
くろうと
)
の釣り方の差をはっきりと知った。
魚の餌
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
疎
(
あら
)
い
縞
(
しま
)
お
召
(
めし
)
の
羽織
(
はおり
)
を引っ掛けて、
束髪
(
そくはつ
)
に巻いていたが、
玄人
(
くろうと
)
染みた
粋
(
いき
)
な女だった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
けれども決して
玄人
(
くろうと
)
の間ではそんなものでない。いかに大きくっても薬にならんのはごく安いです。この
宝鹿
(
ほうろく
)
という鹿はどこに多く居るかというと、チベットの東南部に最も多く居るです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
男に
逢
(
あ
)
う前は、かならずこうした
玄人
(
くろうと
)
っぽい地味なつくりかたをして、鏡の前で、
冷酒
(
ひやざけ
)
を五
勺
(
しゃく
)
ほどきゅうとあおる。そのあとは歯みがきで歯を
磨
(
みが
)
き、酒臭い息を殺しておく事もぬかりはない。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
大体
素人
(
しろうと
)
と
玄人
(
くろうと
)
とは、どれだけの差があるのかというと、これはなかなかややこしいもので、小さい時から絵が好きで絵を描いているうちに勝手に上達して本職となってしまった人もあれば
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
玄人
(
くろうと
)
だって別に神さまじゃありませんよ、全く! なんだってわざわざご
馳走
(
ちそう
)
を口の傍まで持ってきてもらいながら、素通りさせる必要があります? 僕はすてきな本を二つ三つ知っています。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
おまけに儲けたって仕様がないから今までの財界の
玄人
(
くろうと
)
がみな尋常一年生になっちゃったんだ。現に新東が焦げつき相場でじっとしたままだよ。それが証拠じゃないか。上げも下げもならんのだよ。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
いずれは
玄人
(
くろうと
)
あがりと思われる白粉焼けした顔をしかめて言った。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
残余の聴衆は交響詩に退屈しきって、
玄人
(
くろうと
)
筋の決議に雷同した。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
“玄人”の意味
《名詞》
玄人(くろうと くろと 稀:ゲンジン)
あることに習熟し、職業として生計を立てている人ないしその水準にある人。
水商売を専業とする女性。商売女。
(出典:Wiktionary)
玄
常用漢字
中学
部首:⽞
5画
人
常用漢字
小1
部首:⼈
2画
“玄人”で始まる語句
玄人筋
玄人跣足
玄人上
玄人向