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滾々
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こんこん
ふりがな文庫
“
滾々
(
こんこん
)” の例文
関所は
廃
(
すた
)
れ、街道には草蒸し、交通の要衝としての箱根には、昔の面影はなかったけれども、
温泉
(
いでゆ
)
は
滾々
(
こんこん
)
として
湧
(
わ
)
いて尽きなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
到底昔のように
滾々
(
こんこん
)
とは言葉が湧いて来ないので、結局平素より多少饒舌になり、声の調子が高くなると云う程度にしかなれない。
客ぎらい
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「イヤ至極面白いんだ、何かの話の具合で我々の人生観を話すことになってね、まア
聴
(
き
)
いて居給え名論卓説、
滾々
(
こんこん
)
として尽きずだから」
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
茶臼岳には
又
(
また
)
高湯山の別名がある。これは山の西面から熱湯が
滾々
(
こんこん
)
と湧き出している為であるらしい、高湯山大権現と記した石碑もある。
那須、尾瀬、赤城、志賀高原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
お悦の胸には、細い
機械錐
(
ドリル
)
のようなものが心臓深めに突き刺されていて、そこから、真紅の泉が
滾々
(
こんこん
)
と湧き出してゆくのだった。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
生後二十余年間未開のままで蓄積されていた三木雄の生命の精力が視覚を密閉された狭い放路から今や
滾々
(
こんこん
)
として溢れ出て来るのを感じた。
明暗
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
御母さんの弁舌は
滾々
(
こんこん
)
としてみごとである。小野さんは一字の間投詞を
挟
(
さしはさ
)
む
遑
(
いと
)
まなく、
口車
(
くちぐるま
)
に乗って
馳
(
か
)
けて行く。行く先は
固
(
もと
)
より判然せぬ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
結局先生にとつては、孤独こそ泉のやうに
滾々
(
こんこん
)
と親密の涌き出るもので、他に安んじて身を休める場所はないやうであつた。
群集の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
富士の白雪のもたらす噴泉美は、シャスタ火山あたりにないでもないが、富士の水の
滾々
(
こんこん
)
として、無尽蔵なるにおよばない。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
悠久な愛情が
滾々
(
こんこん
)
と湧き出して、一杯になっていた苦しみを静かに押し流しながら、慎み深い魂全体に満ち溢れるのである。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
妾の全身は、急に
滾々
(
こんこん
)
と精力の泉が湧きだしてきたように思えて肩の凝りも半分ぐらいははやどこかへ吹き飛んでしまった。
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
水は
滾々
(
こんこん
)
として流れている。流の行末をのみ見つめていた彼は、今や、眼を転じて遙かに流の源を見やった。そして考えた。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
が、その代りに感覚的な美を叙述する事にかけては、
滾々
(
こんこん
)
として百里の波を
飜
(
ひるがへ
)
す河のやうな、驚く可き雄弁を備へてゐた。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
胸突き八丁の登り口に近く、青い苔の
生
(
む
)
した断崖からは、
金性水
(
きんせいすい
)
と呼ぶ清泉が
滾々
(
こんこん
)
と
瀑布
(
たき
)
のごとく谷間に流れ落ちている。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
見渡す大空が先ず雪に埋められたように
何所
(
どこ
)
から何所まで真白になった。そこから雪は
滾々
(
こんこん
)
としてとめ度なく降って来た。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
お幸はふっくらと円らかにもれあがった自分の乳房をじっと制えているうちに、自足と自負の感情が
滾々
(
こんこん
)
と湧いて来た。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
儂はこれを思うごとに苦悶
懊悩
(
おうのう
)
の余り、
暫
(
しば
)
し
数行
(
すこう
)
の
血涙
(
けつるい
)
滾々
(
こんこん
)
たるを覚え、寒からざるに、
肌
(
はだえ
)
に
粟粒
(
ぞくりゅう
)
を覚ゆる事
数〻
(
しばしば
)
なり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
まッ暗になった両側の
松並木
(
まつなみき
)
の根もとから、サラサラサラサラ……という水音がしてたちまち
滾々
(
こんこん
)
とあふれてくる
清冽
(
せいれつ
)
が、その駕籠をうごかして
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
我輩も策に於てはあまり人に劣らぬという自信をもっておるが、
梓
(
あずさ
)
君が事に処し物に当って、その策の
滾々
(
こんこん
)
として
尽
(
つき
)
ざる奇才には我輩も
頗
(
すこぶ
)
る驚いた。
東洋学人を懐う
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
それが
遂
(
つい
)
に思いがけぬ出口を見つけた地下水のように、その物語の静かな表面に
滾々
(
こんこん
)
と
湧
(
わ
)
きあがってくるところを書き終えたばかりのところだった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
十五、六
丁
(
ちょう
)
いった
谷間
(
たにま
)
に、一つの
清水
(
しみず
)
がありました。それが、この
旱魃
(
ひでり
)
にも
尽
(
つ
)
きず、
滾々
(
こんこん
)
としてわき
出
(
で
)
ていました。これはいい
清水
(
しみず
)
を
見
(
み
)
つけたものだ。
神は弱いものを助けた
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
私は其の時から直ちに
滾々
(
こんこん
)
たる眠りに陥りました。何時間眠ったか、何日眠ったかそれは私には全く判りません。
悪魔の弟子
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
悲痛の涙は
滾々
(
こんこん
)
として千載に尽くることなく、今もなお一つの清泉となって女神像下に流れ
出
(
い
)
づるもの、即ちこのエジェリヤの涙泉であると伝えている。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
この上体を静寂な調和のうちに安置する大らかな
結跏
(
けっか
)
の形といい、すべての面と線とから
滾々
(
こんこん
)
としてつきない美の泉を湧き出させているように思われる。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
古土佐
(
ことさ
)
の大和絵にでもあるような、あの美しいスロープの道を半ばまで来た時分。俗にその辺は姫の井といって、路傍には美しい清水が
滾々
(
こんこん
)
と湧いている。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
不思議な威力に駆られて、人間の世の狭い処を離れて、
滾々
(
こんこん
)
として流れている大きい水の方へ進んだのである。
鴉
(新字新仮名)
/
ウィルヘルム・シュミットボン
(著)
芸妓、
幇間
(
たいこ
)
の騒いだも無理はありません。大村兵庫の左の眼に楊弓の矢が真っ直ぐに突立って、血潮は
滾々
(
こんこん
)
として頬から襟へ滴っているではありませんか。
銭形平次捕物控:040 大村兵庫の眼玉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は元来新羅山人の作品が好きであるが、それは単に絵がうまいばかりでなく、常にそうした気持が画題に含まれて、そこに
滾々
(
こんこん
)
たる興味が尽きせぬからである。
画室の言葉
(新字新仮名)
/
藤島武二
(著)
痴人
(
しれもの
)
というのはそち達がことじゃ。先夜上野の山下で初めて汝らに巡り合い
滾々
(
こんこん
)
不心得を
訓
(
さと
)
したにも
拘
(
かか
)
わらず、今夜再び現われ出で、押し借りの悪行を働くとは天を
紅白縮緬組
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうして、彼らの傷口から
迸
(
ほとばし
)
る血潮は、石垣の隙間を漏れる泉のように
滾々
(
こんこん
)
として流れ始めると、二人の体を染めながら、窪地の底の
蘚苔
(
こけ
)
の中まで滲み込んでいった。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
母親の白い肉体から、乳とは違った、真赤な見事な泉が
滾々
(
こんこん
)
として湧き出していたのだ。彼女は心酔せる父親の狐色の肉体を眺めた。すると、そこからも同じ
紅
(
くれない
)
の泉だ。
江川蘭子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
あたかも漆黒の体躯の底に光りの泉があって、絶え間なく
滾々
(
こんこん
)
とあふれ出てくるように思える。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
達磨
(
だるま
)
百題、犬百題、その他何十題、何五十題といふが如き、あるいは
瓦当
(
がとう
)
その他の模様の意匠の如き、いよいよ出でていよいよ奇に、
滾々
(
こんこん
)
としてその趣向の
尽
(
つ
)
きざるを見て
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
血は
滾々
(
こんこん
)
と益す流れて、
末期
(
まつご
)
の影は次第に
黯
(
くら
)
く
逼
(
せま
)
れる気色。貫一は見るにも
堪
(
た
)
へず心乱れて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
男は前にも云う如く、身には
一糸
(
いっし
)
を附けざる赤裸で、致命傷は
咽喉
(
のど
)
であろう、
其疵口
(
そのきずぐち
)
から
滾々
(
こんこん
)
たる
鮮血
(
なまち
)
を噴いていた。更に驚くべきは、鋭利なる刃物を以て
其
(
そ
)
の顔の皮を剥ぎ取ったことである。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
暗い内部には、青苔のぬらぬらした朽ち果てた浴槽があって、湯が
滾々
(
こんこん
)
とあふれている。手を触れる者さえなくて、噴泉は樋をつたい、外の石畳に落ち、遠く湯川となって、葦の間を流れてゆく。
浅間山麓
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から
滾々
(
こんこん
)
と、何か小さく
囁
(
ささや
)
きながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手で
掬
(
すく
)
って、一くち飲んだ。
走れメロス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
満谿を傾け尽して狭い落ち口から一度に切って放たれた水が、ドット迸り出でさま虚空を跳って末広がりに
滾々
(
こんこん
)
と落ちて来る。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
握飯には、きまって
胡麻塩
(
ごましお
)
がつけてあり、沢庵は麻縄のように硬かった。その前に坐ると、彼らの唾液は
滾々
(
こんこん
)
と流れた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
その涙の跡は、片時もウルリーケの心の底を離れやらぬ幻——故フォン・エッセン男を慕って火よりも強く、
滾々
(
こんこん
)
と尽きるを知らぬ熱情の泉だった。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
おそらくあなたの胸のそのあたりにそのような深さで
滾々
(
こんこん
)
と湛えられている思いが、感じとられるばかりです。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
恋の歓楽の壺の中に秘められた甘露の、汲めども/\尽きざる美味が、
滾々
(
こんこん
)
と流れ出て、不思議にも、今迄体中に充ち充ちて居た恐怖は、拭ふが如くに忘れられる。
Dream Tales
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
けれども、
混沌
(
こんとん
)
と、迷いに入るばかりだった。禅は禅、
技
(
わざ
)
は
技
(
わざ
)
、ばらばらである。自己の一体に溶けて一つの力となって生命の泉を
滾々
(
こんこん
)
と音立てて湧かして来ない。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こういう時の夢には、
滾々
(
こんこん
)
としてふき出している泉や、
釣瓶
(
つるべ
)
から釣られたばかりの玉のような水、
草叢
(
くさむら
)
の間を
潺々
(
せんせん
)
と流れる清水などが断えず眼の前に出て来るもので
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
頭の往来を通るものは、無限で無数で無尽蔵で、けっして宗助の命令によって、留まる事も休む事もなかった。断ち切ろうと思えば思うほど、
滾々
(
こんこん
)
として
湧
(
わ
)
いて出た。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
雪の
穹門
(
きゅうもん
)
から水が
滾々
(
こんこん
)
と湧き出ていて、洞内に高山植物などが美しく咲いている、但し夏日うっかり奥まで深く這入ると、雪がくずれて圧倒する危険がないとも限らぬ。
高山の雪
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
かの女の本真は芸術の坪をはみ出して生活に情熱を
漲
(
みなぎ
)
らす女である。かの女がその多量で
滾々
(
こんこん
)
と湧いて尽きない新鮮な愛情は幾人かの男女をさまざまの意味の愛で愛し取った。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
滾々
(
こんこん
)
尽きず、善謀鬼略の打出の小槌に恵まれてゐたのだ。秀吉はアッサリ信雄に降伏して単独和議を結び、家康の戦争目的、大義名分といふものを失はせたから、負けて勝つた。
二流の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
頭の中の流は、丁度空を走る銀河のやうに、
滾々
(
こんこん
)
として何処からか溢れて来る。彼はその
凄
(
すさま
)
じい勢を恐れながら、自分の肉体の力が万一それに耐へられなくなる場合を気づかつた。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見ると衣服の胸の上に、大きな赤い穴が明いて、そこから鮮血が
滾々
(
こんこん
)
と吹きだして、はだけた胸許から頸部の方へちろちろと流れてゆくのであった。——男はいつの間にか、姿が見えない。
不思議なる空間断層
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
滾
漢検1級
部首:⽔
14画
々
3画
“滾”で始まる語句
滾
滾滾
滾転
滾〻
滾沸